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オーディオ機器メーカーのデノンより、AVアンプ「AVR-X4800H」が新たに発表されました。実はGame*Sparkはこの「AVR-X4800H」のメディア向け発表会へと足を運んでいたのです。
ゲームメディアなのに、なぜAVアンプの発表会?筆者が編集部から依頼を受けた時、つい首を捻ってしまいました。そもそも、今の30代以下は「アンプって一体何?」と言ってしまう人が大半ではないでしょうか。
音楽を鳴らすプレーヤーの出力信号をそのままスピーカーに送っても、満足な音量は出ません。つまり、その出力信号を増幅させるのがアンプと呼ばれるもの。しかし最近のスピーカーはアンプと一体化されていることが殆どのため、わざわざ個別にアンプを揃える必要はありません。
にもかかわらず、なぜGame*Sparkはアンプの発表会に興味を示したのか?
そのような疑問を抱きつつも、筆者は川崎市の記者発表会場に足を運びました。
ゲームをするのにアンプは必要か?
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デノンより今回発表されたのは「AVR-X4800H」という製品です。筆者の手元にある資料には「9.4chプレミアムAVサラウンドレシーバー」とありますが、要はAVアンプです。基本的な役割は上述に書いたように、プレーヤーからの出力信号を増幅させることにあります。
しかし、今回はこの「AVR-X4800H」をゲーミングに用いれるのではないか……!という方向性で取材に臨みました。
ゲームをプレイするのに、音響面でこだわる人は日本では決して多くありません。もちろんオンラインのシューターゲームでは「敵の足音」は「遠くの銃声」を聞き取ることが重要な要素になりますが、そうではなくて徹頭徹尾娯楽としてのBGMやSE音を本格的な音響機器で味わおう……という発想は、我々の国ではまだ根付いていないのが現状です。
ところが、生まれながらにして重低音大好きのアメリカ人はゲームをするにも立派なアンプやスピーカーを用意していたりします。もちろん、家の大きさの違いも考慮しなければなりませんが、限りあるはずの可処分所得を音響機器に振り分けているという点はやはり注目に値します。
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さて、話を「AVR-X4800H」に戻します。この製品の希望小売価格は31万3,500円。さすがに安いもんじゃありませんね。「アンプにこんなにも出せねぇよ!」と、読者からお叱りの声もあるかもしれません。
しかし実は、この価格であってもデノンが頑張ってコストを抑えた結果です。現代のアンプは映像の入力と出力にも対応していなければなりませんが(だからこそのAVアンプです)、本機は8K/60Hzに対応。1080Pや4K解像度のHDMI映像信号を、8Kに成長させて出力することが可能という製品です。しかもHDMI入力端子は7つ、出力端子は3つも搭載されています(8K対応出力端子はそのうちの2つ)。
ただ実際問題、全ての端子を常時フル活用する世帯は日本にはあまりないとも思います。そもそも俺はスピーカーじゃなくてワイヤレスイヤホンでゲームをプレイしてるぞ! という読者もいるはず。
ご心配なく。「AVR-X4800H」はBluetooth接続による送受信にも対応しています。スマホからの音楽を「AVR-X4800H」で増幅したり、壁の薄いアパートでゲームをする場合はワイヤレスイヤホンに音声を送ってご近所トラブルを回避する……ということもできます。
メイド・イン・白河
弊誌はオーディオメディアではないので、あまり細かい技術的解説は避けたいと思います。
しかし、それでも以下の2つはしっかりくっきりはっきり言及します。
まずひとつは、「AVR-X4800H」の内部構造は極力配線接続を避け、基板を多用しているという点。
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いろいろとゴチャつくワイヤーをやめて1枚の基板にしたほうが生産効率も良くなり、結果としてユーザーに恩恵が発生します。小売価格が安くなる、ということですね。
もうひとつは、この製品が福島県白河市で生産されているという点。
去年夏の高校野球で優勝したのは仙台育英高校。これは東北勢初の快挙で、テレビの報道番組でもSNSでも「白河の関越え」というワードが注目されました。白河の関は、今も昔も東北地方と関東地方の境目の基準点。そして白河の関より北の人々は、非常に強い郷土愛の持ち主でもあります。
実際、筆者がガジェット系他メディアで全国各地の製品の取材をすると、東北6県の企業の存在感がとても強いことに気づきます。また、そのメーカーの本社は首都圏所在でも生産工場は東北にあるということも珍しくありません。みちのくは昔からモノづくりが盛んなんですよ、本当に!
冬になれば容赦なく雪の積もる地域の人々は、それ故に忍耐強く勤勉で、なおかつ仕事も丁寧。デノンのハイエンドモデルが白河で生産されているというのは実は驚くべきことではなく、むしろ「東北だからこそ実現し得る製品」とも言えます。
タイファイターって怖い乗り物だ!
そんな「AVR-X4800H」を使って、ゲームをしてみました。今回は少し前のタイトルですが、『スター・ウォーズ バトルフロント(2015)』のデモ映像で試してみます。
これは皆さんお馴染み『スターウォーズ』のアクションシューティングゲーム。個人的にはタイファイターのコクピットの劣悪な視野性を体験できる貴重な1本という認識なのですが、これに本格的なスピーカーと「AVR-X4800H」を導入すると、まさに自分が帝国兵になったような錯覚にすら陥ってしまいます。
てか、音がリアルになった分だけタイファイターのコクピットには恐怖しか感じない! これ、マジで「空飛ぶ棺桶」なんだな!?
もちろんこの音響パフォーマンスは、アクションシューティングだけでなくホラーゲームにも活用できるはずです。
ホラーゲームの肝、それは「音」です。たとえば、誰もいない古びた屋敷をたったひとりで探索する場面でも、主人公の足音や部屋のドアを開ける音、そしてどこからか聞こえる不気味な物音が必ずあります。しかし一般的なアンプ内蔵型スピーカーでは、それらの音を「フラットな一枚絵」として表現してしまいます。実際ならあるはずの「奥行き」が一切ない、ということです。
……てか、もしも「AVR-X4800H」を使ってホラゲなんかやった日にゃ、小便漏らしちまうんじゃねぇか!?Game*Sparkがアンプの発表会に興味を示したのにもようやく納得です。
近未来のゲームプレイ
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此度の発表会には、ガジェットメディアや家電メディア、オーディオメディアの記者が集まりました。その中でゲームメディアの記者というのは異色を放っていたかもしれませんが、資料を読めば読むほど「AVR-X4800H」は「近未来のゲームプレイの在り方」にピッタリ適合する製品ということが分かります。
このような良さを一度感じてしまうと、「ゲームプレイでの利用を前提にしたAVアンプ」が続々開発を夢見たくもなるところです。
「AVR-X4800H」は2023年1月27日に発売予定です。