
日本でも大好評のコーヒーショップADV『コーヒートーク』の続編『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』(以下『コーヒートーク2』)の発売日が、今年4月20日に決定しました。
降雨の多いアメリカ・シアトルのとあるコーヒーショップを舞台にした内容で、人間のみならず様々な種族の亜人がこの喫茶店を訪れます。そんな彼らの様々な飲み物を提供しつつ、この世界で起こっている現象や問題を窺い知る……というストーリーテリング重視のタイトルです。
このゲームの開発元は、インドネシアのToge Productions。そのため、インドネシアのメディアはしばしば『コーヒートーク2』の話題を取り上げます。
インドネシアの大手報道機関がゲーム情報を!
インドネシアは、日本よりも遥かに国民平均年齢が若い国。2億5,000万人の人口を牽引するのはミレニアル世代とZ世代で、報道メディアもそれに合わせた記事を配信しています。
現地で最も大きな影響力を持つメディアはKompasです。報道や出版事業を広く手掛けるKompas Gramediaグループの新聞Kompas、そのWeb版がKompas.com、そしてインドネシア最大手の出版社及び書籍チェーン店がGramediaという具合に、一国のメディア事業をほぼ手中に収めています。日本で言えば、読売グループと一ツ橋グループが合体したような巨大メディア。まさに怪物です。
WebメディアであるKompas.comが伝えるニュースは多岐に渡ります。国内、国外の事件から政治の話題、芸能、スポーツ、ライフハック、そして「テクノ」。これにはスマホやPC、アプリ、そしてゲーム情報も含まれます。
もしもGameSparkとインサイドが読売グループに買収されて、読売新聞オンラインの一項目になったら……ということを想像してみてください。Kompas.comは、大雑把に表現すればそんな規模のメディアなのです。もっともこれはKompas.comに限ったことではなく、Kompas Gramediaグループとは関係のないSCTVのポータルメディアLiputan 6もゲーム関連情報を取り扱っていたりします。
これらの大手報道メディアにとって、インドネシア製ゲームの動向は大きな関心事。たとえば、『コーヒートーク』の開発者ムハンマド・ファーミ氏が去年3月に亡くなった際、Kompas.comはその話題を取り上げています。
全国紙がゲームクリエイターの逝去を伝える、という現象は「若者の国」らしさも表しています。
『コーヒートーク2』リリース日決定の報道

さて、此度の『コーヒートーク2』リリース日決定について、現地メディアはどう報じているのでしょうか?
まずはゲームメディアのGamedaim。こちらは公式トレーラーを掲載すると同時に、ゲームの特徴や配信プラットフォーム等を伝えています。
また、カルチャーメディアのKAORI Nusantaraでは『コーヒートーク』の魅力をより詳細に伝えると同時に、過去にFacebookでライブ配信した『コーヒートーク』のプレイ動画を掲載しています。
ただし、記事執筆時点(1月24日)ではKompas.comやLiputan 6といった大手報道メディアには『コーヒートーク2』リリース日決定の話題は出ていない模様。これらのメディアは、先頃正式配信が開始された『A Space for the Unbound』の話題に重点を置いているようです。
多民族国家とスマホ

『コーヒートーク』の舞台はシアトルですが、実はインドネシアの実情が反映されているゲームでもあります。
インドネシアという国はメルカトル図法の世界地図で見れば小さく見えてしまいますが、実際は世界最大の島嶼国家。その中に約300もの民族が存在し、それぞれの郷土言語も異なります。
ところが首都ジャカルタに行くと、「パプア出身の小隊長とアチェ出身の小隊付下士官が重要施設を警備している」というような光景をところどころで見かけます。かつて独立紛争で燃えたティモール島出身の人、華人、世界最大の女系民族ミナンカバウ人、ジャワ人、マドゥーラ人、バリ人などなど、真面目に書いていたら記事にならないほど多くの民族が同じ環境下で共存しています。

その中で、2015年あたりから100ドル程度で購入できるAndroidスマホが一気に普及しました。
ここから先の事象は、まさに『コーヒートーク2』が取り上げるテーマです。SNSや動画投稿サイトを利用してインフルエンサーになる人も現れますが、その傍らで他民族への誹謗中傷を発信する者も出てきます。そして、誹謗中傷のせいで人生の大チャンスを潰された人も……。
今現在のインドネシア人は、ある意味で日本人以上にテクノロジーに寄り添った生活を送っています。スマホの2台、3台持ちは珍しくなく、SNSのアカウントは複数持っているのが常識。買い物の支払いも現金ではなく、スマホのQRコード払いです。この光景はパンデミック前から既に成立していたことにも言及しなければなりません。
ですが、それ故の問題も発生しています。「多様性の中の統一」を掲げているインドネシアの中で、民族や宗教の違いによるヘイトがネットを介して拡散されています。