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2023年にNuverseよりリリース予定のPC/スマートフォン向け本格SFサバイバルTPS『アース:リバイバル』。Game*Spark編集部は、本格的なSFテイストをウリにサバイバル要素などを詰め込んだ本作の中でも、「AI」や「3Dプリント」を盛り込んだ未来的なギミックに注目しました。
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本作で描かれるのは、激しい異常気象や異星の生命体に脅かされた地球での生存を懸けた戦い。サポートAIや人間のように振る舞うホログラム、3Dプリントで“出力”される乗り物といったSFらしいエッセンスが、物語を更に彩ります。
そこでGame*Sparkは、小説家として活動しながら、日本でも10人しかいないという“SF考証家”としても知られる高島雄哉さんにインタビューを実施。作家として「ランドスケープと夏の定理」で第5回 創元SF短編賞を受賞し、SF考証家としては「ゼーガペインADP」「機動戦士ガンダム 水星の魔女」などを手掛けている高島雄哉さんに、『アース:リバイバル』の世界観や設定について伺いました。
『アース:リバイバル』公式サイト『アース:リバイバル』とは? インタビューの前にあらすじをチェック
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『アース:リバイバル』はTPSとサバイバルクラフト要素を併せ持ったSF作品。地球外生命体との戦争に辛勝したものの、その余波で崩壊してしまった地球が舞台です。
本作を語るためのキーワードのひとつに「テラフォーミング」という概念が挙げられます。本来なら火星などを人類の住める環境に構築し直す「テラフォーミング」ですが、『アース:リバイバル』では“敵性生物が地球にテラフォーミングを仕掛けている”というストーリーが語られます。
テラフォーミングの一環として「ポラリアン」という寄生生物が放たれ、宇宙戦争の余波が根強く残る地球……プレイヤーはそこで目覚めた主人公として、『アース:リバイバル』の世界に身を投じていくことになります。
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また、作曲家には「ブレードランナー2049」で劇伴を担当したBenjamin Wallfisch氏、スペシャル・バトルスーツ・デザイナーには「マクロス」「アクエリオン」で知られる河森正治氏、チーフ建築デザイナーには世界的に注目されている建築家・馬岩松氏が参加。SFファンであれば要注目なトップクラスのクリエイター達が関わっています。
ここからは『アース:リバイバル』について、SF考証家・高島さんに近未来要素についての質問を投げかけながらインプレッションを伺ったインタビューの様子をお届けします。
高島雄哉さんにインタビュー。「作品ならではの未来らしさ」を追求するSF考証とは
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――高島さんは、これまでどのような作品のSF考証に関わってきたのでしょうか。また、SF考証に携わるようになったきっかけについてもお聞かせください。
高島雄哉さん(以下、高島)初めてSF考証家として参加したのは、2016年のサンライズ作品「ゼーガペインADP」でした。同年に創元SF短編賞を受賞した「ランドスケープと夏の定理」を読んでくれたアニメスタッフに依頼されたことが、SF考証家としてのスタートです。そんなわけで、小説家としてもSF考証家としてもほぼ同じタイミングで始まったと言えますね。
また、同じくサンライズ作品の「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」の4章から6章にも参加しました。その後はSteamでも配信されている『VOIDCRISIS』やVRゲームにも携わっています。最近はゲームとアニメ、半々くらいですかね。
――「SF考証家」としての仕事内容はどのようなものでしょうか。
高島作品が持つSF要素をリッチにすることが主な仕事です。アニメだったら監督やシナリオライターのやりたいことに対して、「こういうアイデアはどうだろう」と提案する形が多いですね。
SF考証家は「作品が“科学的あるいはSF的に正しいかどうか”を厳しくチェックする人」だというイメージもあるようですが、僕の場合は、そういう監修系もしながらも、比率的には作品を面白くするためのアイデアを出すほうが多いです。新しい都市の設計思想を考えることもあれば、そこで使われる「文字」をつくることもあります。
――「文字を作る」というのは、具体的にどのようなことでしょう……?
高島将来は、たとえば“E”が“3”に置き換わることもあるでしょうし、新しいアルファベットが一つ追加されるかもしれません。関係するところだと、メディアも考えます。紙はあるのか、全部ホログラムなのか、などです。
――なるほど。ゲームのSF考証にも関わられていますが、普段からいちプレイヤーとして遊ぶことはありますか?
高島もちろん遊びますよ。Steam Deckも持ってます。子どものころからゲーセンに通っていて、ここ数年あまり行けていませんでしたが最近はまた遊びに行っています。
――Steam Deckは羨ましいですね! 個人的に遊ぶときでも、SFや未来的な世界観の作品を選ばれるのでしょうか。
高島仕事柄、選びがちではあります。それこそ今、SFという作品ジャンルでの最先端ってゲームにあると思うんですよね。特にビジュアル面が強くて、他の分野からはなかなか敵わないなと感じてます。
――『アース:リバイバル』のテーマである「ポストアポカリプスSF」は、映画や小説などでもよく見られる題材です。このテーマでSF考証をするに当たって重要視するべきポイントはどこにあるのでしょうか。
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高島SF考証としては最初に“作品ならでは”の見せ方を考えていきます。『アース:リバイバル』の世界であれば、どういうテクノロジーが使えるのか、どの規模でどういう仕組みで残っているか、などから進めていくと思います。なのでポストアポカリプスだからこうするということはあまりありません。分かりやすさと新しさを作品に入れ込んでいくのが、SF考証だと考えています。
――なるほど。
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高島『アース:リバイバル』のストーリーは、SF的には現代を超える「超科学」な設定が入っていて、更にそれが一度崩壊している……というものですよね。既に作品内で取り入れられていますが“メガストラクチャー”を作るのは、SF的にも非常に分かりやすい設定です。あとは「月」に何かしてみるとか。そうやって作品のキービジュアルみたいなのを作ると、SFらしさが伝わりやすくなりますよね。
――シンボル的なものがあれば、一気に「現代とは異なる時代の話」と分かるということですね。
高島ええ。僕はいつも「この作品ならではの未来らしさ」を追求しています。とりあえず、作品が表現したいものを優先して作るんです。本作は「ポストアポカリプス」が主軸ですけど、崩壊の原因が「自然破壊」とか「隕石が落ちた」とかじゃなくて「宇宙人」なんですよね。これは珍しいと思いました。
――そうですね。『アース:リバイバル』の世界では酸性雨や砂嵐、危険な胞子を含んだ霧が発生し、人々を脅かしています。この中で特に危険視するべき異常気象はどのようなものでしょうか?
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高島えー……全部避けたほうがいい!(笑)。少し違う角度から回答すると、日本だと気象SFってあまり流行っていないんですよ。しかし海外では「Sci-Fi(サイファイ、Science Fiction)」のかわりに「Cli-Fi(クライファイ、Climate Fiction)」というジャンルが10年くらい前から盛んになっています。「気象SF」ですね。環境問題、異常気象をテーマにしていて、おそらく『アース:リバイバル』でもそのあたりを意識されてるんだろうな、という印象を受けました。
――なるほど。ぶっちゃけ、どれに遭っても死んでしまう可能性が高いのですね。
高島はい、そうですね(笑)。
――SF作品の「敵対生物」について考証する際、どのようなところから着手されますか?
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高島監督がイメージを決めている場合が多いんですけど、特にない場合は幅広く提案します。『アース:リバイバル』では“外宇宙からのファーストコンタクトを描くもの”という設定が制作最初期からあったんでしょうね。だから、それに沿って地球外生命体という形で考えていくと思います。
SF考証家って、作品の中で描かれる「世界」の全体像から関わっていくんですよ。だから読み書きする文字を変えていくのも「文化全体」を考えてからのことですし、未来世界の政治経済についても考えていきます。もちろん、先も言ったようにゲームの面白さが最優先なので、先にゲームがあって後から考えていくということではありますけどね。
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高島『アース:リバイバル』の一般的な敵は、人間サイズが基準になっていると思います。こういった設定は、基本的には最初にゲーム性から決めていくのだと考えられますが、設定的にも本作の敵は乗っ取り系ということで、きちんと整合性が取れています。このようなこともSF考証の仕事です。
地球の建物って、当然「地球人が使うサイズ」に決まっているじゃないですか。だから敵性生物が設定的に大き過ぎたり小さ過ぎたりすると、ゲーム内で建物の中に入り込めない。でも本作の敵は乗っ取り系なので、ゲームの面白さを優先しながらも閉鎖空間での戦いを描けていると思います。
――「犬にミサイルランチャーや銃を装備させる」といった設定に現実味は感じましたか?
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高島現実味……あるんじゃないですか……? いや、そもそも「無い」って言っていいんですか、コレは(笑)。
――大丈夫です!(笑)
高島まぁ、もちろん無いわけじゃないですし『アース:リバイバル』の舞台はヤバい世界で、当然生き残るためになんでもすると思うので……(笑)。
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――ちなみに、「この動物に武器をつけたほうが強いぞ!」という生き物を挙げられたりしますか?
高島どうですかね(笑)。ただ、作品によってリアリティラインが異なります。もし2030年くらいの地球で考えるとすると、数が多いから、犬とか猫になるかなと。でも、技術力の設定によって変わっちゃうんですよね。
――なるほど。犬や猫に重たい武装がつけられないとかですね。
高島そうですね。それもあります。でも、今でも軍用犬っているじゃないですか。ああいうイメージで、すでに各国研究してるんじゃないかと思います。
この軍用犬の例のように現実のネタを交えて話したりもするんですけど、「元ネタがあるからSFとして面白いのか?」という問題もあります。これはSF考証あるあるですね。
「ドラえもん」にも作品のリアリティを保つ“SFライン”がある!
――SF考証家として作品制作に参加していく中で、シナリオライターや監督と意見衝突が起こったりはしますか?
高島基本的には、作品を演出する技術や設定を確認されることが多いので、あんまり無いかも……。もし衝突するとすれば「SFライン」みたいなものでしょうか。言うなら「ドラえもん」にもSFラインがあるんです。例えば、ドラえもんって近所の人に認知されてるじゃないですか。
「また野比さんちのあのロボットが、変な道具を出したみたいだ」とご近所さんから存在を認知されながらも、別に政府が作中に大きく出てくるわけでもない、本当はなかなか不思議な世界観ではあります。しかし藤子・F・不二雄先生が作り上げたその設定は作品内で完成されていて、誰も「リアルではない、おかしな設定だ」とツッコミを入れたりしませんよね。
そういう意味では「いきなり最後に宇宙人を出すと作品のジャンルが変わります」と言うことはあります。アリならアリで、その方向で面白くするアイデアを考えていきます。
――昨今では「AI」「VR/AR」「自動運転」といった技術的なトピックが盛んですが、高島さんはSF考証家として、日頃からどのように情報を収集しているのでしょうか。
高島イベント会場に取材したり、知り合いの大学関係者に連絡を取ったりします。AIについてですと、僕は「AIのべりすと文学賞」を受賞しているのですが、小説家以外にもいろいろな現場でAIを使って当然な状況になっていくと考えてます。「文書作成にWordを使ってます」みたいな、当然の感覚になるんじゃないかなと。
あと「Wikipedia」や「arXiv(論文検索サービス)」をずっと見るのが趣味……というか、仕事なのか謎ですけど(笑)。特に論文系は僕の中の教養というか、「そういう情報を知ったうえでアイデアを出さないと面白くならない」と思っていますね。
――今、個人的に注目している最先端の技術について教えてください。
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高島「ジオエンジニアリング」ですね。地球でテラフォーミングをするという技術です。「化石燃料を使用しない」といった方向性ではなく、もっと人間の側から積極的に、人工の“雲”の量を増やして気温を変化させるなど、環境に人為的に介入していくという発想です。今盛んに研究されています。
――『アース:リバイバル』の設定やゲームプレイから、高島さんが感じた印象をお聞かせください。
高島まずは「こういうのやれていいなぁ!」と感じました。「都市を管理するAI」はAI研究の最先端を取り込んでいますし、それをAIと言わずにホログラムと言っているのもおしゃれです。SFの長編小説を1冊書けそうなアイデアがいくつも入っていて、それが矛盾なく活かされていて非常に刺激的です。
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あとはバトルスーツ含め、身体拡張技術も今ホットな技術です。「タイダル(作中組織)」のボスみたいな男性も、背中から複数の腕を出していたりしましたね。日本の大学でも義肢や義足の技術を拡張した研究が動いていて、「6本目の指」や「3本目の腕」という発想が見られてます。
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高島『アース:リバイバル』制作者の方々が実際の技術や知識の中でどのようなものを採用するのかは、同業者としても目を向けました。実際に映像やプレイ中に見つけると「ああ、これを使ってきたのか!」と思ったところもありましたね。
「オーロラ・アライアンス(作中組織)」という名前も印象的で、人類を包括する組織なら“世界政府”くらいの名称でも良かったはずです。しかし本作ではここで“オーロラ”という、地球と宇宙が関係するキーワードを入れることによって、この作品らしい名称になっています。細部までこだわっておられて、素晴らしいと思います。
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インタビュー中にも高島さんに『アース:リバイバル』をプレイしていただきました。しかし、編集部が用意したセーブデータはよりにもよって「暗い夜の中で敵に追い詰められている最中」というもの……! ハードコアな状況でしばしの銃撃戦ののちダウンしてしまいましたが、そんな中で高島さんが注目したのは本作の「夜空」の描写でした。
救援待ちでただただ空を見上げることしか出来ないところでしたが、「月」や「天の川」が丁寧に描かれているのは宇宙SFとして重要な要素とのこと。我々が知っている天体が、未来を舞台にしたSF作品でも登場している……これもひとつの「SFとしてのリアリティライン」を作るポイントなのかもしれません。
また、高島さんは『アース:リバイバル』の将来的な物語として“宇宙が舞台になる可能性”も予測されていました。地球での過酷なサバイバルを体験する本作ですが、その物語は「宇宙での大戦が集結した後」のこと。微に入り細に入り“宇宙SF要素”が詰め込まれた本作で、どのようにストーリーが展開されていくのか興味がそそられます。
SFらしい世界をベースに、サバイバルクラフトとオンラインTPSの要素を楽しめる『アース:リバイバル』は2023年春にリリース予定。2月22日(水)より事前登録を受け付け中です。対応機種はPC/iOS/Androidとしており、詳細は公式サイトやTwitterにて公開中です。