あなたは一定の時期を季節としてとらえ、それを越えてきた自負はありますでしょうか。先日PS4/5/PC向けに発売された『シーズン ~未来への手紙~』の初報のエモいティーザーは筆者の心を強く惹きつけました。本作の導入となる物語部分からしてエモさを主栄養として純粋培養された感じが満点です。
物語のきっかけとなるのは、主人公の親友が見た予知夢。それはこの「季節」がもう終わる証なのだそう。あらたな時代に入るんだと。大変動が起きると。筆者としてはこれだけでもうワクワクものですが、村の外へ出たことがない主人公は長老に村を出ていいかと問い、博物館に記憶……記録したことを届けることを条件に村を発ちます。こうして「世紀末」というには優しく、あやふやで、そして風情に満ちた旅が始まります。

この冒頭部分では母子の間で呪術的なニュアンスでの会話が展開し、なんの脈絡もなく世界が次の季節に移り変わり滅ぶわけではない、と物語の雰囲気を示しています。それでいて詩情あふれる雰囲気で、母と子の別離を鮮やかに描いています。

なお、今回筆者がプレイした環境はPC版でゲームパッドを使用しています。
実際のゲームプレイ

冒頭の約1時間はまるでカットシーンのような静かさで、ともすればとまどってしまうほどでしたが、自転車を入手してから一気に「ほしかった触り心地、ポエジーあふれる旅程による旅情」が得られます。ややスロースターターの気はしますが、やはりプレイヤーの第一印象通りの作品だったと思えることでしょう。

プレイを進めると、より増していくその詩情的な印象は本作を貫いています。雨が降る中、レコーダーにあったテープに話を尋ねる、要は1人遊びのようなものですが、そうやってさまざまな村の過去と対峙する。教えを請う。そしてまた旅を続ける。

本作のメインプレイは、道中で撮った写真や録った音声をノートにしたためながら順路をゆくことにあります。本作でプレイヤーに物事を伝える、言語依存と非言語依存の2つの要素はいずれも十分に調和しています。

自転車での移動の挙動はすいすいと進められるものですが、それでいて非常に味があり爽快感もあります。慎重に触れないと壊れてしまいそう、そんなことをビデオゲームにおいて思わせてくれるなんて、なんて素晴らしい作品なのだろうか、そう思わされました。きっと、言葉にするとこぼれ落ちてしまうところに魅力が詰まった作品なのです。
ここまで読んできた読者の多くはこう思うことでしょう。「具体的なことがない」と。実際このゲームはなんなのかすらわからないセカイの実像に迫っていく、といった謎をはらんでおり、それは進めなければわかりません。

本作がそのような作りであるからこそ、これ以上の言及はまたの機会として、ここから先は読者の皆様がこの抜群のエモさに酔いしれられることだけは保証します。
最後に一言だけ言うならば、今日を切り取る写真は朝焼けにしておきたい、そう思うのです。
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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
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