
4月11日、インドネシア・ジョグジャカルタにオフィスを構えるPendopo Creationsが開発した近未来2.5Dアクションゲーム『Rendezvous』が正式配信されました。
舞台は2064年のネオ・スラバヤ。セキュリティーエンジニアとして働く主人公セチョは、ごく普通の勤め人です。しかし、昔馴染みの男と行きつけのバーで再会したことがセチョの運命を少しずつ狂わせます。彼は愛する妹を救うため、サイバーランナー・グループと戦います。
疑似的な立体感を持たせたドット絵が繰り広げる近未来の世界。しかもここは日本でもアメリカでもヨーロッパでも中国でもなく、インドネシアです。果たして、どのような光景に出くわすことができるのでしょうか?
意外とアナログな近未来

『Rendezvous』で描写されている2064年は、ある意味で我々の固定概念を覆してしまう光景です。
たとえば、現実世界では既に「スマートロック」というものが存在します。Bluetooth接続機能のある錠前は、家主のスマホを検知すると自動的に解錠してくれます。もはや物理的な鍵は前時代の代物になりつつあるのですが、『Rendezvous』ではアパートの玄関ドアを開けるのにその鍵を使ったりします。ダイヤル式の金庫からスペアキーを取り出す、という展開も。

街へ出ればロボットやドローンが警察官の代わりにパトロールし、色鮮やかなデジタル広告が通りを飾ります。しかし薄暗い場所では落書きもあり、その片隅でホームレスが座り込んでいる……という光景も見受けられます。

どうやらネオ・スラバヤは、我々が漠然と考えるような「ロボットやAIが何でもやってくれる近未来」ではないようです。その証拠に、セチョの仕事は職場に出勤する業務。自宅の中でリモートワーク、というものではありません。

ビルの中の警備は、武装したロボットが行います。しかし、マルウェアが侵入して誤動作を起こしてしまえば、結局はセチョたちエンジニアが構内を駆け回る羽目に。「便利になればなるほど人間の負担が大きくなる」という冷酷な現実を、『Rendezvous』は容赦なく描いています。
そのような清潔と不潔、光と闇をひとまとめに抱えたネオ・スラバヤは、かなり的確に近未来を予測しているのかもしれません。
どこかで見たようなアクション性

さて、上述の通りこのゲームは2.5Dのビジュアル。移動中に特定の場所で止まってキーを押すことで「向こう側に行ける」という動作を再現していますが、基本的には左右どちらかにしか移動できない平面構造です。
戦闘シーンもそれに倣います。ボクシングで言うところのサイドステップができないため、しゃがんだり後退したりという動作がそのまま回避行動に……これ、どこかで見たような動きだぞ。え~と、どこだったか……。
そうだ、『エレベーターアクション』だ!
80年代のゲームセンターの重鎮だった『エレベーターアクション』と『Rendezvous』、よく考えたら操作性やアクション性が酷似しています。しかし『Rendezvous』の場合はそこにパズル要素や推理要素があり(開始早々、金庫の暗証番号を推理しなければならない場面が出てきます)、じっくり時間をかけて考えるゲームだったりします。

その推理要素には、賛否両論が分かれそうだなぁ……とも思います。というのも、「次はどこにどのようにして行けばいいのか」というヒントがあまりなかったりして、いつまでも同じ場所を右往左往してしまうことも。
2Dのビジュアルであれば、ベルトスクロールアクションゲームのような「道案内の矢印」があってもいいのでは、とも思います。たとえば、先述したATMは背景に馴染み過ぎているせいで、それを見つけるのに15分も街中を徘徊していました。え? それは筆者・澤田が間抜けだからだって? そりゃ失礼しました!
インドネシアの古都「ジョグジャカルタ」発のゲーム

さて、この『Rendezvous』を開発したPendopo Creationsはこれも先ほど書いた通りジョグジャカルタに所在します。
インドネシアの首都ジャカルタではありません。両都市の距離は幹線道路を使えば500km以上、鉄道では最短6時間ほどかける必要があります。ジョグジャカルタはジャワ文化圏にある古都で、共和国の中にありながら今も絶対王政が敷かれています。現国王ハメンクブウォノ10世はジョグジャカルタ特別州の知事です。なお、ハメンクブウォノ10世陛下の長女プンバユン第一王女は自分でたこ焼き屋を経営してしまうほどの親日家。とにかくジョグジャカルタの人々は極めて親日的で、この都市自体が京都市と姉妹都市提携を結んでいます。
そしてジョグジャカルタには大学や教育機関が数多くあるため、若者が多いことも特徴。大学を卒業したばかりの人材が、出身地に帰郷せずに引き続き物価の安いジョグジャでゲーム開発会社を作る……というのは、実は極めて自然な流れと言えます。
そんな一風変わったアクションゲーム『Rendezvous』は、Steamで配信中です。対応機種はWindowsで、英語インターフェイス/字幕でプレイできます。