1977年(日本公開は78年)の初作「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」から足かけなんと42年、2019年の「スター・ウォーズスカイウォーカーの夜明け」を以て、「スター・ウォーズ」シリーズのナンバリング、「スカイウォーカー・サーガ」全9作品は完結しました。紆余曲折あったものの、世代を超えて銀河系の彼方の世界を共有できた作品は偉大に違いありません。
かねてから複数のスピンオフや派生作が展開される人気シリーズですが、スカイウォーカーのメインストーリーが完結した後も「マンダロリアン」や日本の人気アニメ制作会社が集うアニメアンソロジー「スター・ウォーズ:ビジョンズ」といったネット配信専用の作品も人気を博しています。
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それら全てを追いかけるのもなかなか大変なので、スカイウォーカー・サーガ全9作は観たけれどスピンオフまでは手を出していない人も少なくないとは思いますが、前作『STAR WARS ジェダイ:フォールン・オーダー』(以下、ジェダイ:フォールン・オーダー)と、この度発売された『STAR WARS ジェダイ:サバイバー』(以下、ジェダイ:サバイバー)は、最前線に立つ人も一線を退いた人も、ライトセイバーをエアで振り回したことがあるならば是非ともプレイしていただきたい作品です。これまでも「スター・ウォーズ」のゲームはたくさん出ましたが、本作品はまさに「映画そのままのフォース体験」を実現した、「SW」ゲームの新次元なのです。
ジェダイナイトになったカル・ケスティスの冒険は大きくスケールアップ
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前作『ジェダイ:フォールン・オーダー』では、「エピソード3/シスの復讐」から5年後、ジェダイの生き残りである主人公、カル・ケスティスがフォースの力を取り戻して、パダワン(見習い)から一人前のジェダイナイトへ成長する過程を辿りました。
今作ではさらにその5年後、「エピソード3」から数えると約10年後が描かれています。作中では「エピソード3」から「エピソード4/新たなる希望」の間が約19年なので、ルークの時代に一気に近づいてきましたね。前作では遺跡探索が中心でしたが、『ジェダイ:サバイバー』では帝国対レジスタンスの戦いが本格的に始まっているようです。孤独な探求の旅から、仲間が増えていく共闘にシフトして、カルの冒険はいよいよスケールアップしていきます。
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今作では正式なジェダイナイトになったため、戦い方のバリエーションが増えて無敵のジェダイを一層演じやすくなりました。ライトセイバーの構えは前作にあった2種類に加え全5種類になり、なんとブラスターも使えるように。フォースの扱いもさらにパワーアップし、巨大なオブジェクトもどんどん動かせます。ジェダイでやってみたかったアクションの大半が『サバイバー』で実現しているのではないでしょうか。その他詳細はこちらのレポートを参照してください。
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ジェダイらしい戦いをやる上で是非試して頂きたいのが、ゲームオプションの「スロウモード」です。これはカルが敵の動きを止めるフォースとは別のもので、戦闘場面の時間を遅くし、回避やパリィをよりやりやすくする機能です。最大で30%まで減速できて、難易度緩和のためでもあるのですが、ポイントはゲームプレイの難易度とは独立していることです。ゲームの難易度は敵の攻撃頻度も調整があるので、普通に下げるだけではブラスターの攻撃量も散発的になり、ストーリーモードでは迫力が全然足りません。ゲームとしてはそれで正解でも「ジェダイ体験」とはずれてしまいます。やっぱりブラスターの弾幕をバシバシ弾き返したいですよね。
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そこで、ゲーム難易度はあえて上げた状態でスロウモードを強く適用させれば、敵の攻撃は苛烈であっても、ジェダイの超反射神経でパリィ回避を見てから余裕でできる状態にできるのです。一部演出もスローになってしまいますが、ある意味これがジェダイの見ている景色なのかもしれません。
新世代機での体験は劇場映画に匹敵する驚異の完成度
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「スター・ウォーズ」の演出に欠かせないのが強烈な光と飛び散る火花です。テーマを象徴するような陰影、そして特撮感溢れるド派手な視覚効果が醍醐味なのですが、新世代機の表現力によって、その全てがゲームに揃ったと言っても過言ではありません。『フォールンオーダー』と比較して、光の表現が圧倒的に向上しているのは一目瞭然です。レイトレーシングでライトセイバーの光が周辺に影響するのは見応えがありますし、夕日に眩しさを感じるのは特に重要です。強い明滅があるので過敏な人は注意が必要ですが、一昔前のCGアニメーションと遜色ない映像を自分の手で動かせる、これって結構すごいことじゃないですか?
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PS5版ではハプティックフィードバックの機能が付いていて、これが今まで味わえなかった「フォース体験」をもたらしてくれます。フォースの挙動はもちろん、ライトセイバーを起動するとほんの僅かに震えて、振ったときの唸りに合わせてしっかり強弱が付いています。他のゲームで似たような振動は経験していないので、今のところ本作でしか味わえない動きではないでしょうか。映画館にはバイブレーション機能を含めた4DXシステムがありますが、それをコントローラーで再現しているような感触ですね。
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もう一つ驚いたのは、劇場ではウーファーがやっている重低音の振動までコントローラーが担っていたことでした。ウーファーを設置できる環境は限られるため、あの迫力を自宅ではなかなか再現できませんが、本作では音の特徴に振動がぴったり合わせてあり、しかも左右の位置まで連動していました。「スター・ウォーズ」の効果音は特に重低音が響くので、スタジオ推奨の音質でやると、まるで映画館の没入感がそのまま自宅に届いたような気分です。これが映像ソフトに付いてきたら……なんてつい考えてしまいました。
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ハードウェアの進歩によってゲームの表現力は向上してきましたが、『ジェダイ:サバイバー』は劇場映画に匹敵する水準に達したと言えるでしょう。一方で、残念ながらPC版では最適化不足の声が多く、公式から声明が出る事態になっています。映像表現の水準が高い故に多様な環境があるPCだと動かすハードルが上がってしまったのでしょうか。今回使用したPS5版では、致命的な問題はプレイ中になかったものの、ホームメニューの挙動に影響が出るなどの不具合はあり、動作の安定性をはかる改善が必要だと思われます。映像表現はもちろん、ゲームとしての完成度も高いので早期の改善を期待したいものです。
問題も指摘しましたが、生き生きとした異星生物やドロイド達、思わずクスッと笑ってしまう敵兵の雑談、ちょっと間抜けなやられっぷりなど、どこをとっても「あのスター・ウォーズ」が目の前にあります。そして、フォースとライトセイバーの唸りをプレイヤーが操り、自分の手に伝わってくる――。ゲームでしかできないジェダイ体験は、映画を観た人であれば絶対に夢中になれるはずです。サーガの間を繋ぐ新たなカル・ケスティスの新たな物語を、今度はあなたの手で演じてみませんか?
¥10,209
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)