5月5日、『Dの食卓』や『エネミー・ゼロ』、『リアルサウンド~風のリグレット~』といったゲーム史に名を残す作品を手掛けた故・飯野賢治氏が代表を務めたワープの代表的なゲーム音楽が各音楽配信サービスでサブスク解禁されます。
Game*Sparkではかねてより2013年に42歳という若さでこの世を去った飯野賢治氏の足跡や実像を解き明かす取材を重ねており、企画の進行にあたっては妻である飯野由香さんにも多大な協力をいただいています。そんな折、サブスク解禁のアナウンスがあったので、改めて由香さんにメールでコメントをいただきました。
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ゲームクリエイター・飯野賢治への供養がしたかった
――改めて由香さんの現在の立場について教えてください。
飯野由香さん(以下、飯野):フロムイエロートゥオレンジの飯野由香と申します。飯野賢治の妻です。
ワープは社名変更し、現在フロムイエロートゥオレンジ(fyto フィトと読みます)となり、来年で30周年をむかえる会社となりました。2022年8月に縁あって、私がfytoの代表に就任いたしました。
――現在fytoではどのような事業を行っているのでしょうか?そしてなぜ飯野賢治作品の楽曲を配信しようと思ったのでしょうか?
飯野:現在、fytoは音楽配信をメインに事業展開しています。就任後の初仕事として「まずは(fytoの前身である)ワープ制作のゲーム音楽を配信したい」と目標をたてました。
ワープのゲーム音楽は当時、ゲームと同様にこだわって制作されており、ゲーム発売と同時にサントラCDが販売されていました。しかし、現在のサブスク中心の音楽配信サービスでは聴くことができない状態であったため「この素晴らしい音楽がこのまま埋もれてしまってはもったいない。デジタル配信をして多くの方に聴いていただきたい」と思い、fytoの企画として実現化に向けて動き出した次第です。
――配信にこぎ着けるまでに苦労はありましたか?
飯野:権利関係の整理など、予想以上に多くの確認作業があったことです。私自身はゲーム業界に身を置いていたわけではないので、決して順風満帆に進みませんでしたが、セガサミーホールディングスさまをはじめ、周りの方々に「飯野賢治の追悼ならば、喜んでやらせてもらう」と申し出を快諾していただきました。10年経った今、夫がいかに周りの方々に愛されていたかを改めて知る機会となり、ありがたい気持ちになることばかりでした。
――由香さんが思い入れのある楽曲を教えてください。
飯野:私のイチ押しは「おやじハンターマージャン」です。このアルバムは、当時ゲームに同梱されていたものであるため、CD販売もされておらず、かつてゲームを購入したプレイヤーしか知らない名曲だと思います。
ゲームのテーマソングであるため、アニメソング風ですが、夫が他界してから心が折れそうになった時、寂しくて辛すぎる時に、何度も聴いて励まされたファイトソングです。
――改めて今回の配信にあたっての思いを教えてください。
飯野:今年は、夫が旅立ってから丸10年という節目の年でもあり、「ゲームクリエイター飯野賢治に対してなにか供養をしたい」という気持ちも強くもっています。おかげさまで、セガサミーホールディングスさまをはじめ、関係各社のありがたい温情と、全面的なサポートを得ることができ、無事配信する運びとなりました。
生存していれば53歳となるはずであった、夫・飯野賢治の誕生日(5月5日)に、飯野賢治の作曲家・プロデューサー・ゲームの総監督としての世界を存分に味わっていただける音楽をお届けいたします。
Game*Sparkの連載初回は坂元裕二氏のインタビュー!
既にお知らせしているとおり、Archipelとの共同企画としてドキュメンタリー映像を鋭意制作中ですが、Game*Sparkの連載も間もなくスタートします。連載初回は記事のコメント欄やTwitterでの要望も多かった坂元裕二氏へのインタビューをお届けする予定です。あの「300万本売れるRPG」の裏側や、飯野賢治氏との関係性などたっぷりとお話を伺いました。
また、現在fytoの特設サイトではGame*Sparkでの特集のほか、今回の配信情報などもまとめられています。誕生日であり配信解禁日となる5月5日にはファミ通.comでも特集記事が公開されるほか、fytoの公式サイトも更新されるということなのでそちらもあわせてご覧ください。
飯野賢治没10周年企画 特設サイト© SEGA