火星―我々が住む地球と同じ様に太陽の周囲を公転するこの惑星は、過去何度も探査がなされてきました。
旧ソ連のマルス計画に、アメリカのマリナー計画やディスカバリー計画。探査車や探査機による衛星軌道上からのものなど、こうした探査の試みは、失敗を重ねつつも着実に成果を上げては、研究者や天文ファンに多くの話題を提供してきたのです。
重力の違いに表面温度の低さ、大気組成の違いに太陽から受け取るエネルギーの量など、火星と地球には多くの違いが当然ながら存在する一方で、水の存在した痕跡の発見や金星や水星、あるいは木星などよりかは落ち着いた地表環境、また地球からの距離といった各種要因から、火星に対する植民ないしテラフォーミングは科学的研究やSFなどの娯楽作品のテーマとして幾度となく取り上げられてきたのです。
アイザック・アシモフの「火星人の方法」にアーサー・C・クラークの「火星の砂」、「機動戦艦ナデシコ」に「テラフォーマーズ」に「アルドノア・ゼロ」に「カウボーイビバップ」。ゲーマー的には『ZONE OF THE ENDERS』や『レッドファクション:ゲリラ』などが挙げられるかと思います。
こういった作品では、地球との差こそあれ既に植民作業は完了し、ビルなどの高層建築や整備された交通網など、火星社会が一定の発展を遂げているものが殆どです。むしろ環境破壊や戦争などで自身の星を荒廃させたにも関わらず、「人類発祥」のただ1点のみを根拠に横柄な態度、ないし強権的で抑圧的な姿勢を隠さない地球サイドとの対立構造といった具合のものは、SF作品として鉄板の背景設定だったりするわけです。「与圧服無しでは生きれないこの星で、どれだけ先人は苦労してきたと思っているんだ、奴らは!」と。
本日、ご紹介するのはPyramid GamesとPlayWay S.A.のオープンワールドSFサバイバル『Occupy Mars: The Game』です。
作品の舞台となるのは太陽系第4惑星火星。居住施設や屋内型の植物栽培プラントなどからなるコロニーが点在しつつも、壁の向こう側は放射線と低温が容赦なく人体を蝕み、そして特有の赤い砂塵が吹き荒れる与圧服必須の荒涼とした死の世界が広がる、そんな星が本作の舞台なのです。
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主人公は、そんなとあるコロニーに赴任した1エンジニアです。ロケットから降り立ち、仮想世界での習熟訓練を終えた後は晴れて火星の大地を踏みしめつつ、ここでの生活への期待に胸踊らせることとなります。ここには多くの同僚がいますから、幾人かとは生活を通じて良き友人となることでしょう。上司も人使いこそ荒いものの信頼できそうですし、いざという時にも安心の医療スタッフ含め体制も完璧。なにせ長い人生の一時をここで過ごすこととなるのです、どうせなら楽しまなければ。
ですが、そんな期待は突如崩れ去ります。ロケットの打ち上げに失敗し、コロニーは全面的に崩壊。なんとか生き残ったものの既に同僚たちはロケットで脱出し、たった一人取り残されることに。思いがけずサバイバル生活を送る事となってしまったのです。
極薄の大気に見渡すかぎりの砂と岩。脱出ポットの中に備え付けてあった限られた工具と、投入された原料から各種物資を生み出す3Dプリンターが頼みの綱です。片手間に放棄された残骸からサルベージしつつ、辺りの岩を採掘しては3Dプリンターに放り込む日々。そうして出てきた酸素ボンベをしっかと握りしめ、また物資集めに外出です。
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食事はもちろん3食全て宇宙食。ここは地球と異なる星だけに、狩りをするにも獲物がいないし、採取するにも植物もない。肉汁滴るステーキも、油こってりなラーメンもここでは贅沢品を通り越して、どう逆立ちしたって手に入らない品なのです。強いて言うなら、新鮮な野菜こそが現実的に手に入る最も贅沢な食べ物な訳ですが、植物プラントから井戸、コンポスターまで自身が用意する必要がありますから、遠い道のりとなるでしょう。
果たして主人公は火星で生き残ることができるのでしょうか?
胸高鳴る新生活!その実、儚く消える一夜の春の夢…
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ゲーム開始後には、まずキャラクリエイト。世界各国の国旗を模したミッションパッチなどを用いて、自キャラを設定します。
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次にモード選択。一定のストーリー性のあるキャンペーンモードや各種設定を変更可能なフリープレイなどから選択します。現在開発中ですが、オンラインでの協力プレイなども実装予定なので、友人たちとワイワイ楽しむのよいかもしれませんね。
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火星の様子を伝えるムービーの後、与圧服を装着。スーツに内蔵されたAIの指示に従い、仮想世界での習熟訓練を行い、その後、上司となる基地司令の元へ訓練の結果報告のために向かいます。
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本作はサバイバル系のゲームの中でも、比較的リアル寄りとなっています。機械なども1クリックで即起動というわけでもなく、フタを開けたり閉じたりコックを捻ったり、細々とした作業を行わなけねばなりません。物によっては判定の細かさもあり、正直少しイライラすることもあります。
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この後は、農業区画での食材確保や食堂でのアイテム化など、しばらくはマーカーの指示に従って仕事をこなしていくことに。ブレーカーの修理といったエンジニアらしい仕事をすることとなります。
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と、当然響き渡る火災警報。初期消火から修理までエンジニアの仕事なのです。ただ、焼けた基板の修理は少々厄介そうで、本腰を入れる必要がありそうです。
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気が付いた時には、何がどうしてこうなったかはわかりませんが、たった1機のロケットのせいで基地は崩壊寸前。助かっただけでも幸運そのものです。
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辛うじて残っていた脱出用ロケットに飛び乗って、基地を後にします。その後、本編であるサバイバルモードとなります。
咎めるものは誰もなし!生き残るために片っ端から分解してどんどん環境を整備せよ
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本編となるサバイバルモードでは、放棄された施設からのサルベージや岩石などの採掘など通じて資源を確保し、搭乗していたポット内にある3Dプリンターにてアイテム化するというのが序盤の流れとなります。
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周辺には放棄された施設も点在していて、ちょっと整備すれば再稼働できそうですがちょっとガマン。というのも、分厚い塵に覆われた太陽光パネルの清掃だけでも、あっという間にボンベを消費し尽くしてしまうからです。
食料は施設内で、鉄板やネジ、アルミニウム板といった素材はサルベージで十分確保できるので、最優先すべきは水分確保のための井戸となります。そして、井戸作成のネックとなるのが、電子部品となります。
どうもこの電子部品は、サルベージによる獲得ができないようでどれだけ解体作業を行っても一向に増える気配は0。作成のために採掘が必須となるわけです。
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で、無心に採掘していたところ自キャラが突然死しました。どうも崩落に巻き込まれたようです。ちょっと難易度的にシビアなところがあります。
火星を舞台にサバイバル生活を送る本作。数あるサバイバル系ゲームとしては珍しく、敵対的な生物がいないというのが個人的には新鮮に感じられます。牙の鋭い肉食獣も敵対的な火星人もなし。なので、銃やブラスターといった武器の類もありませんし、隙きあればこちらの持ち物を盗んでいく盗人なんてのもいません。純粋に低温や放射線、砂嵐といった自然の脅威に対処しつつ、酸素や水などの確保に奔走する。そのようなサバイバル系ゲームとなっています。
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設定次第というところもありますが、難易度は結構高めです。うっかり遠出なんてしたら、拠点となるポットに帰れずに迷子になって凍死なんてのはよくあること。出先での与圧服の動力切れに酸素切れ、それに水分不足にはかなり苦労させられます。
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特に夜は暗いですし、気温もガンガン低下しますから、ちょっとの油断が命取りになりますから要注意です。
あと、全体的に細々とした作業を要求されるのも本作の特徴であり、また微妙なストレス源だったりします。
コンセントがうまく刺さらないなと思ったらフタが閉まったままだったり、当たり判定の問題で空振りしたりといった部分ですね。なかなかリアルで面白い部分ではあるのですが、回数を重ねるとなかなかイラッときます。オンラインプレイでも、「フタ開けっ放し派」と「開けたフタは閉める派」でケンカになりそうな気がする、そんな要素となっています。
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筆者はまだ体験できていませんが、ジェットパックや多様な地上車両があるようなので、手段が整ってくると移動にしろ生活にしろ色々捗りそうです。でも、筆者の性格上、雑に操作して地面に激突してあっという間にゲームオーバーになりそうな気も…。
スパくんのひとこと
火星を舞台としたオープンワールドSFサバイバルの本作。細々とした作業をリアルとみるか面倒とみるかで評価が変わる、そんな1作スパ。
タイトル:Occupy Mars: The Game
対応機種:PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:PC
発売日:2023年5月11日
記事執筆時の著者プレイ時間:3時間
価格:2,800円(5月18日までリリース記念セールにつき2,380円)