Private Divisionは、スペインのデベロッパーPiccolo Studioの手がける3Dアドベンチャーゲーム『After Us』を、PC（Steam）/PS5/Xbox Series X|S向けに2023年5月24日リリースします。
本作は、欲望と犠牲と希望をテーマにした心揺さぶる物語が描かれるアドベンチャー。人類がいなくなった後の世界を舞台に、主人公の精霊・ガイアが絶滅した動物たちの魂を救い出すための冒険を行います。幻想的な世界と破壊された痛ましい風景、そしてガイアによる命と再生など、さまざまな表現とストーリー性の高い展開が印象的な作品です。
本稿では『After Us』のプレイレポートをお届けします。なお、ゲームプレイおよびスクリーンショット撮影はPC（Steam）版を使用しています。
最後の動物が死んだ世界の生命を救う旅へ
本作は冒頭、主人公の精霊・ガイアが緑の生い茂る大地にいるシーンから始まります。ガイアの周りにはウサギやシカ、馬やゾウといった生物が存在し、ガイアはそんな動物たちに触れ合うのが大好きなようです。しかし、その風景は突如として一変、動物たちが突如として消え去ってしまいます。
取り乱すガイアに話しかけたのは、母なる生命である「マザー」でした。この世界はすでに“貪りびと”と呼ばれる恐るべき存在によって破壊され、そこに住むすべての動物の命が絶たれてしまったというのです。マザーは殺された動物の魂を救うため、すべての力を使って彼らの魂を「うつわ」に閉じ込めて保護したといいます。
そして、精霊であるガイアに、その動物たちの魂を見つけ出してマザーの「ゆりかご」へと連れてくる使命を与えます。動物たちの魂を取り戻すことで、マザーは力を取り戻して再び世界に生命を与えることができるのです。マザーはガイアに孤独で厳しい旅をさせる代わりに、自身の持つ心の力を与えます。
こうしてガイアは破壊された世界をめぐり、「うつわ」で保護されている動物たちの魂を救い出す冒険の旅へと出ることに。人間の影響によって壊滅的な打撃を受けた世界で、果たしてどのような物語が待ち受けているのでしょうか……。
主人公のガイアは喋ることができず、冒頭で動物たちが消えた際もただ狼狽えることしかできないのですが、その悲痛な叫びはとても印象的。また、拠点となる「ゆりかご」の美しさと、動物たちが消えた寂しさにも要注目です。
命を紡ぎ出すアクションを使いこなせ！
本作の旅の目的は、滅びゆく世界を巡りながらマザーが保護した魂を見つけ出すこと。舞台となるステージは崩れている道路やビルなど、人間社会の残骸を思わせる風景が広がっています。そして、世界を飲み込もうとする「油」と、油にまみれて生命を求める飢えた「貪りびと」が存在しているのです。
ガイアはジャンプやダッシュ、滑空といった移動方法のほかに、マザーから与えられた「命」の力を使用することが可能です。命の力を撃ち出すことでステージを覆う油を破壊したり、扉の開閉など一部のギミックを作動させるために使用できます。
また、チャージさせて周囲に命の力を放射する「命の炸裂」を使用すれば、世界にわずかに残された緑を再生させたりすることも。これらの命の力はギミックで使用するだけでなく、ステージ内でガイアに襲いかかってくる「貪りびと」と戦うためにも使います。
ジャンプアクションや壁移動がメインの本作ではありますが、戦闘もなかなかやり応えがあります。ステージが進むことで新たなギミックやアクションも登場し、世界はどんどん広がっていくのです。ゲーム内で条件を満たすことで、これまでの旅路やゆりかごへファストトラベルも使用できるようになります。
「貪りひと」は決してすべて襲いかかってくるわけではなく、各ステージにどこか悲しい石像として多く存在しています。なかには家族や友達などの“繋がり”を感じさせるものもあり、その背景を想像させます。また、ガイアの歩んだ場所には一時的ですが美しい草花が描かれます。それは滅んでしまった世界の中でのガイアの旅路を示すものでもあり、ゲームとしての道標でもあるのです。
少しずつ蘇る、寂しくも美しき世界
ガイアの冒険の途中、さまざまな場所に動物たちの魂が「精霊」として隠されています。精霊は物語のあまり重要な目的ではないのですが、彼らを解放することで各ステージ内に動物たちの姿が登場して（魂ではありますが）自由に動き回ったり、空を飛び回るようになります。
また、ガイアに襲いかかる「貪りびと」を命の力で倒すことで、その世界における人間の「記憶」を獲得できることも。その記憶は各ステージごとにひとつの物語になっていて、ある人物の人生とその風景を描いたり、世界が破壊される前の、かつての人間の生活の様子が窺えます。絶滅をもたらした「貪りびと」の記憶には、愛や進歩、希望なども描かれているのです。
「精霊」と「記憶」はいわゆるコレクションのようなもので、ゲーム内ではガイアが歌うことでその位置を調べられます。各ステージに存在している「精霊」「記憶」の数は簡単に調べることができますが、その多くがそれなりに難しいアクションやギミックを解くことで獲得できるものなので、すべて集めるのは大変です。
しかし、苦労して集めたシカの魂が群れでくつろいでいたり、鳥の魂たちがステージ内を飛び回ったりと、それぞれの生命ごとにあわせてステージ内で行動する姿を見ることができます。精霊は近づいて撫でたり、手を振って反応する姿を見ることもできるので、殺風景な景色で“生命”を感じられるようになる喜びも味わえますよ。
物語はマザーの「うつわ」にいる動物の魂をすべて集めることですが、こういったコレクションでステージが変化していく姿を見るのも本作の醍醐味。ストーリーはもちろん、こういったコレクションでも謎だらけの「貪りびと」を巡る物語も非常に気になる作りになっている作品です。
崩壊と再生の壮大なテーマを見事に描き出す
滅んでしまった世界を舞台に生命を救う旅という『After Us』の壮大なテーマ。それを美麗なグラフィックと表現で描き出し、世界観の根幹をたっぷり味わえるような豊富なアクション要素によって、ゲームとしての面白さもしっかりと考えられています。
ゆったりと世界観に浸るタイプのゲームだけでなく、ジャンプを含むアクションは比較的スピーディーで軽快です。カメラワークに慣れないうちはジャンプの足場を見失ったり、奇襲してくる「貪りひと」にやられてしまうことも珍しくありませんが、リトライ自体は早いのでストレスはなく、むしろやりごたえを感じられると思います。
そして本作で特に推したいのが「精霊」と「記憶」の存在。各ステージは基本的に殺風景なのですが、少しずつ精霊たちで彩られていくその姿は美しく、プレイしていると「もっとこの世界を精霊を満たしたい！」と思うようになります。記憶で描かれる物語も各ステージの雰囲気に合わせたもので、その中にある多くの“思い出”がプレイヤーへ呼びかけます。
本作は決して派手なタイプの作品ではありませんが、遊ぶほどに世界の行く末がどんどん気になっていくゲームデザインは非常に秀逸。言葉を喋らないガイアですが、その表情や“歌”で思いが伝わってくるのも印象的に感じられます。映像やスクリーンショットで興味を持った人には、是非ともガイアの旅路を体験してもらいたい作品です。
『After Us』公式サイトはこちら！美麗なグラフィックと考えさせられる物語。探索・アクション面もしっかり楽しめるスパ！
タイトル：After Us
対応機種：PC（Steam）/PS5/Xbox Series X|S
記事におけるプレイ機種：PC（Steam）
発売日：2023年5月24日
記事執筆時の著者プレイ時間：11時間
