2023年3月28日、PC用レトロゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」を運営する株式会社D4エンタープライズは、同サービスをニンテンドースイッチ向けに「プロジェクトEGG for Switch(仮)」として開発中であることを明かしました。
同社は現在サービス中のPC版「プロジェクトEGG」と同様に、スイッチ版でも可能な限り配信できるように開発中とのこと。ニンテンドースイッチで往年の作品を気軽にプレイできるかもしれないということで、ユーザーから多くの注目を集めました。
上記のツイートやプレスリリースにはイメージ画像として
『ハイドライド(MSX2版)』
『ザナックEX(MSX2)』
『RELICS(MSX2版)』
『メルヘンヴェール(PC-8801版)』
以上の4タイトルが使用されていますが、現状ではどのタイトルが配信され、どんなサービス内容になるのか詳細は明かされていません。
そこで今回は、PC版「プロジェクトEGG」で配信中のタイトルの中から、ニンテンドースイッチ版「プロジェクトEGG」でぜひ配信してほしい10タイトルを選出し、各タイトルについて紹介していきます。
1.『イース』
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『イース』は日本ファルコムより1987年にリリースされたアクションRPGで、現在もシリーズが続いている人気タイトルです。赤毛の冒険者・アドルを主人公に、彼が残した各地での冒険譚を一作ごとに描くシリーズで、第一作では「エステリア」での冒険が描かれます。
本作は難解であることが良しとされた当時のゲームにおいて「優しさ」を売りにしたことが特徴です。難易度を低く抑えることで誰にでも物語を楽しめるようにしたユーザーフレンドリーな作りはプレイヤーから支持され、その後の日本産RPGの潮流に大きな影響を与えました。敵との戦闘は押し相撲のように接触してダメージを与える方式で、アドルと敵の接する箇所を少しずらす「半キャラずらし」と呼ばれるテクニックを用いれば、ほとんどダメージを受けずに敵を倒すことができます。
『イース』はヒットを記録したことで当時の各PCやコンシューマーゲーム機に移植され、数多くのリメイクにも恵まれましたが、最初にリリースされたPC-8801mkIISR版をプレイできる機会は多くありません。2023年9月28日にリリース予定の最新作『イースⅩ -NORDICS-』の前に、原典に触れてみてはいかがでしょうか。
2.『アルゴー』
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『アルゴー』は呉ソフトウェア工房から1986年にリリースされたギリシア神話を題材にしたRPG。アルゴー船の冒険で有名な英雄・イアソンを主人公とし、200日以内に黄金の羊毛を手に入れることがゲームクリアの目的となっています。
日本製のRPGとしては、大元となるギリシア神話の設定を忠実にゲーム化した作品はなかなか珍しいのではないでしょうか。基本的には主観視点のダンジョンRPGの形式を採っており、フィールドではNPCやモンスターと遭遇すると会話や戦闘といったコマンド選択を求められます。
NPCの中にはイアソンに協力的な者もいれば害をなす者もおり、話し合いに応じず攻撃を仕掛けてくることもあります。だからといってこちらから誰彼構わず攻撃しているとイアソンのモラル値が下がって神から見放されてしまうため、その見極めが重要になります。道中では巨大モンスターと遭遇することもあり、こちらの戦闘では3D視点のアクションバトルに切り替わるなど、王道でオーソドックスな物語とは裏腹に、野心的で遊び心あふれるシステムで作られているゲームです。
3.『未来』
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宇宙世紀 Seven-Two-O
地球における人類の生命は絶たれ、宇宙への移住を余儀なくされていた。
次の移住予定地として、REINBOW星雲にその運命が託されたが、
REINBOW星雲は、全く異なった環境の6つの惑星とそれを統治する1つの惑星によりなりたっており、完全に我々を敵視している。
時の流れとともに疾走した謎のソルジャー。彼が5つのきらめきをもつアーマードスーツを観た時その運命は変った。
未来へ
――『未来』プレイヤーズマニュアルより引用
『未来』はザインソフトから1986年にリリースされた横スクロール型アクションRPG。宇宙世紀Seven-Two-Oの未来世界を舞台に、強化装甲「アーマードスーツ」を装着した主人公が、地上と地下を行き来しながら過酷な世界を進んでいきます。
「アーマードスーツ」には常に減っていく燃料の要素があり、それが尽きると体力まで減り、あっという間にゲームオーバーになってしまいます。本作はボスを倒して先に進むステージクリア方式で、ひとつのステージもさほど長くはありませんが、お金を稼いで武器を買い揃えたり、燃料や体力を回復する場所が用意されていたりとRPG的な面もしっかり存在します。
地上と地下ではキャラの大きさや戦闘方法が変化するといったシステム面での特殊性も見受けられますが、それ以上に「ザインソフト節」とも言うべき世界設定や、ゲーム全体から醸し出されるどこか不思議な雰囲気につい引き込まれてしまう一作です。
4.『夢幻の心臓』
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『夢幻の心臓』はクリスタルソフトから1984年にリリースされたRPG。現世での死の淵に「夢幻界」と呼ばれる世界に落とされた主人公が、3万日の期間内に「夢幻の心臓」というアイテムを探し出し、夢幻界からの脱出を図る……といったストーリー設定を持っています。
国産RPGとしては最初期のゲーム(例としてファミコン版『ドラゴンクエスト』は1986年発売)ということもあり、現在広く普及している日本のRPGとはやや異なったプレイ感覚を味わうことができます。「夢幻の心臓」を探すという大目的は提示されますが、そこに到達するまでに具体的に何をすればいいかは、プレイヤー自身が冒険しながら探っていかなければなりません。加えて、移動やセーブといった行動を行えば時間が経過するうえ、襲い掛かってくる敵も強力なので常にこれらのリスクを念頭に置く必要が出てきます。
幸い、「プロジェクトEGG」ではステートセーブ機能が用意されているので、こまめにセーブを行って難易度を下げることもできます。総じて現代の目から見るとアドベンチャーゲームに近く、久しく聞かなくなった「ゲームを解く」という言葉を思い起こさせてくれる手ごたえのある作品です。
5.『ナイトアームズ』
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『ナイトアームズ』はアルシスソフトウェアから1989年にリリースされた3D&横スクロールロボットシューティングです。本作はステージ構成が特徴的で、ステージ開始直後は『スペースハリアー』のような3Dシューティング面、ステージ後半は任意スクロール型の横シューティング面へと変化します。当時高性能を誇ったPC「X68000」の性能もさることながら、ハードの限界に迫る3Dスクロール表現には本作を開発したアルシスソフトウェアの技術力の高さが伺えます。
見た目こそアーケードの体感ゲームに近い趣を持っていますが、スコアは存在せず、持てる技術の粋をグラフィックや演出に傾けたゲームとなっています。同社に所属していたコンポーザー・山中季哉氏が手がけたBGMとともに主役機「ナイトアームズ」が縦横無尽に駆ける姿はSFロボットアニメさながらで、プレイヤーがパイロットになったような体験をもたらします。
6.『ルナティックドーンII』
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『ルナティックドーンII』はアートディンクより1994年にリリースされたフリーシナリオ型のRPG。
自由な冒険を楽しめる『ルナティックドーン』シリーズの第二作である本作は、冒険者として思いのままに人生を過ごしていくことが特徴的なゲームです。ゲームに特定の目的は存在せず、世界の中で冒険者がどのように生きていくのかはプレイヤーに委ねられています。ゲームを起動してキャラクターメイキングを終えると、特段説明もなく街に放り出されます。何か行動を起こすにもお金が必要なので、ひとまずは宿屋で依頼を受注し、仲間を募って旅に出るのがいいでしょう。もしかしたらその途上で自分だけの目的が見えてくるかもしれませんし、ただ漫然と日々を過ごしても誰からも文句は言われません。
名声を高めて王を目指す、悪逆非道を尽くし生を終える、結婚して引退する……こうした様々なプレイを許容してくれる本作は、シミュレーションゲームを得意とするアートディンクらしい、ライフシミュレーターのような側面を持った異色のRPGです。
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7.『BURAI 上巻・下巻』
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『BURAI』はリバーヒルソフトから上巻が1989年、下巻が1990年にリリースされたRPGで、上・下巻の二部構成になっている大作タイトルです。
邪伸を復活させた皇帝ビドーによる支配が進みつつある世界で、8つの玉に選ばれた勇士たちの活躍を描くストーリーとなっており、「南総里見八犬伝」が本作の設定の下敷きとなっています。8人の勇士はそれぞれ個別のシナリオを持ち、どのシナリオからスタートするかはプレイヤーが自由に選択することができます。本作は当時の各コンシューマー機にも移植されましたが、『下巻』が発売されたのはPCエンジンSUPER CD-ROM²版のみで、かく言う筆者もかつてはスーパーファミコン版『上巻』だけしかプレイしたことがありませんでした。
ゲーム業界のみならず異業種で活躍するクリエイターが関わって製作された本作は、当時のRPGの潮流を踏襲しつつ、その型を覆す新要素を意欲的に盛り込み、壮大なスケールの世界設定を作り上げています。当時の日本製RPGが迎えていたひとつの臨界点を知ることができる記念碑的な一作です。
8.『バイオメタル』
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『バイオメタル』はアテナから1993年にリリースされたスーパーファミコン用の横スクロールシューティングゲーム。実は「プロジェクトEGG」では往年のPCゲームばかりではなく、ファミコンやスーパーファミコンといったコンシューマー向けのゲームも配信されています。
2023年5月現在、「Nintendo Switch Online」やバーチャルコンソールでも配信されていない本作は、アーケード移植ではなくスーパーファミコンオリジナルのタイトルで、攻防一体の兵器「G.A.M.」を駆使して敵の攻撃を切り抜けていく遊び応えのあるゲームです。
難易度の高い本作ですが、敵の出現パターンは固定されているうえ、「G.A.M.」が敵弾を無効化してくれるのでシューティングが得意でなくてもある程度先に進むことができるでしょう。ここぞというときに「G.A.M.」を使うのが楽しく、その難易度とは裏腹に初心者がシューティングの面白さに触れるのに適した一作かもしれません。
9.『東京トワイライトバスターズ~禁断の生贄帝都地獄変~』
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『東京トワイライトバスターズ~禁断の生贄帝都地獄変~』は日本テレネット/ウルフチームから1995年にリリースされた、大正時代を舞台にした伝奇アドベンチャーゲーム。父の失踪の謎を追い、主人公・草薙祥が帝都・東京にはびこる事件を調査していきます。
本作は、キャラクターのバストアップ画像が表示されテキストを読み進めるコマンド選択型のパートと、画面内のキャラクターに指示を与えるポイント&クリック型のふたつのパートで構成されています。後者のパートでは得意分野の異なる複数のキャラクターを操作することで謎を解いたり、襲い掛かる敵と戦闘を行うなど、見た目以上に戦略性が高いゲームです。
日本テレネット/ウルフチームはもともとビジュアル表現に定評がありましたが、本作は同社がPC-98の最後期にリリースしたタイトルということもあり、非常に優れたグラフィックとなっています。不穏な影を落とす時代背景を織り交ぜつつ、落ち着いたトーンで描かれる東京の姿は舞台として魅力的で、オープニングからじっくりとゲームの世界に浸りたいという人におすすめしたい一作です。なお、本作は2010年にスターフィッシュ・エスディからニンテンドーDS版がリリースされています。
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10.『ボルフェスと5人の悪魔』
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『ボルフェスと5人の悪魔』はクリスタルソフトから1987年にリリースされたアクションRPG。見習い魔法使いのボルフェスが、師匠から魔法使いの免許をもらうために大魔神ナイキン・ナイキスの討伐に向かいます。
タイトルにある「5人の悪魔」とは、ナイキン・ナイキスを含めた悪魔たちのことです。
ナイキン・ナイキス以外の悪魔たちは道中で手に入るツボの中に封印されており、アイテムとしてツボを使用することでボルフェスは悪魔に変身することができます。グラフィックの雰囲気や両手にアイテムを割り振れる構成、ややとぼけた調子のテキストなど、現在の目で見るとどことなく前年にリリースされた『ゼルダの伝説』に通ずるものを感じます。
高難易度のゲームですが、MSXのタイトルとしてはスクロールがなめらかで操作感も良く、おとぎ話のような愛らしい設定や耳に残るポップな音楽も相まって、気持ちよくプレイできます。
なお、本作のメインBGMは2023年開催のオンライン型ゲーム音楽展示「Ludo-Musica Ⅲ」の一作として選出されています。
紹介した10タイトルの中に、気になるゲームや遊んだことのあるゲームはあったでしょうか?
「プロジェクトEGG」は、現在実機で遊ぶことが難しい過去のタイトルに触れる機会を提供してくれるサービスです。PC版「プロジェクトEGG」は月額課金550円+ゲームタイトル個別購入(無料タイトルも多数あり)という方式ですが、スイッチ版の料金形態や配信タイトルについては今後の続報を待つばかりとなります。
本サービスを展開するD4エンタープライズは、かつてWiiのバーチャルコンソールでもMSXやネオジオといったハードの復刻タイトルを多数配信していた実績があり、もしかしたらその時のように一作ずつ買い切り型になるのかもしれません。いずれにせよ「プロジェクトEGG for Switch(仮)」がサービスを開始すれば、「Nintendo Switch Online」やハムスターの「アーケードアーカイブス」とあわせて、膨大な数の作品群がニンテンドースイッチでプレイできるようになるので、心して待つとしましょう。