Fireshine Gamesは、Auroch Digitalの手がけるビール製造シミュレーター『Brewmaster: Beer Brewing Simulator』をPC(Steam)/ニンテンドースイッチ/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに配信中です(ニンテンドースイッチ版はパブリッシャーGame Source Entertainment)。
本作は、海外では一般的な趣味である自家醸造(ホームブリューイング)を体験できるシミュレーター作品。プレイヤーはビールづくりの材料や器具の準備はもちろん、熱管理などを含む本格的な醸造を行いながら自分だけのビールを作り上げていきます。
登場する材料は麦芽やモルト、ホップやイーストなどの原料だけでなく、ハーブやフルーツエキスなどの副材料も用意されています。本格的なビールからIPAなどの人気のビール、さらにはフルーツビールなど多数の種類が製造可能で、ネーミングや瓶詰め、ラベリングまで行った“理想のビール”を作り上げることができる作品です。
Game*Sparkでは、開発のAuroch Digitalへとメールでのインタビューを実施しました。今回インタビューに答えてくれたのは、本作リードゲームデザイナーであるAuroch DigitalのMatt Bone氏です。こだわり抜いた超本格的なビールづくりの工程や計算、開発チームへのビールへの愛情など、さまざまな『Brewmaster: Beer Brewing Simulator』への愛が伝わってきました!
『Brewmaster: Beer Brewing Simulator』メールインタビュー
◆ゲーム開発について
――『Brewmaster: Beer Brewing Simulator(以下『Brewmaster』)』を作ろうと思ったきっかけは何ですか?
Matt:自家製ビールを造るということは、奥深さや実験性、器具や材料を実際に使う楽しさなど、ゲームとして魅力的な面がたくさんあると思います。また、とてもリラックスできる趣味でもあるので、それをゲームに取り込もうとしたんです。
クラフトビールの爆発的な人気の背景には、人々がさまざまなスタイルのビールを知り、そのスタイルがどのように作られるかに興味を持つようになったことの証明なのだと思います。
ただし、現実に自家製ビールを作るには、設備やスペースが必要なので、少し敷居が高いです。だからこそプレイヤーには費用や時間をかけず、好きなだけ技術を学び、実験することができる場を提供したいと考えたのです。
――醸造時の細かなデータなど「シミュレーター」としてこだわったこと、苦労したことを教えてください。
Matt:これは非常に大きなチャレンジだったと思います!
化学的なシミュレーションは、このゲームにおける醸造の骨格そのもので、プレイヤーが試してみたいと思うすべての項目に対応できるよう、できる限り正確に作ろうとしました。
ゲームに登場する原材料の量や種類を考えると、これはかなりの量になります。そのため、ゲーム内でイースト菌と砂糖を混ぜ合わせれば現実と同じような結果が得られるような、複雑な化学反応にしっかりと対応し、確認する必要がありました。
――厳密なデータ管理の一方で操作や温度管理、原料のフレーバー情報など“ゲームとして遊びやすくなる工夫”が随所に見られます。「ゲームの面白さ」のためにこだわった点を教えてください。
Matt:そうですね、(遊びやすくすることは)ゲームを作る上でとても重要なチャレンジでした。
醸造というものは非常に複雑で、初めての人にはとても難しく感じることがあります。そこで、化学的なシミュレーションを行っている複雑さを抑えながら、醸造初心者にも親しみやすい表現のゲームにしたいと考えました。
「ゲームの面白さ」という点については、ゲーム内のチュートリアルを充実させたり、シンプルなインタラクトにすることで「ビールを造るのに化学の学位は必要ない」ということをプレイヤーに呼びかけて、安心させるということに開発での多くの時間を費やしました。
もし簡単に遊びたいならば、レシピに従うだけで、醸造過程が実際にどのように行われるかをプレイヤーが考える必要はありません。もちろん、本当に醸造というものを極めたいプレイヤーには、とても深い知識が必要になります。
私がビール醸造の好きなところとして、料理と同じく非常に科学的なアプローチから試すこともできますし、ただ材料をたくさん並べて何が起こるか見ることもできます。このゲームはその両方のアプローチをサポートしています。おまけにキッチンを汚さずに済みますね(笑)
――ゲーム内の「Brewpedia」に書かれているビールについての歴史や知識など、とても読みごたえのある面白い内容でした。コミュニティ向けのグッズとしての独立DLCや物理書籍として販売したりしないのでしょうか?
Matt:現在のところその予定はありませんが、プレイヤーの皆さんが「Brewpedia」を面白い読み物として感じてくれているのはとても嬉しいです!
醸造というものはおよそ7000年ほどの歴史があるので、魅力的な項目がたくさんあります。過去に大きく広まったビアスタイルも、流行にいたるまでの歴史的な背景があるんです。
個人的な話ですが、ビアスタイルの歴史や中身を詳しく知ることで、ゲーム内でそのスタイルのビールを醸造しようとするとき、本物のビールを試すとき、さまざまな場面で自分なりの深い評価を得ることができるようになったと思います。
開発中は「Brewpedia」を、実際の本や雑誌のように見せることにかなりの時間を費やしました。なので、ゲーム内で読んだときに、その“物理的な満足感”が少しでもユーザーの皆さんに伝われば嬉しいなと思います。
――本作は日本語に対応する予定はありますか?また、日本語に対応する予定がない場合、例えばコミュニティによる翻訳をすることは可能でしょうか?現在、日本では開発者の許可なくコミュニティで翻訳することは違法とされています。
Matt:現在のところ、ローカライズ言語を追加する予定はありませんが、コミュニティが自ら翻訳してくれるのであれば嬉しいことですね!
もちろん、私たちはそのローカライズの品質を保証することはできませんが、コミュニティがゲームを翻訳し、それを他の人々と共有することで、彼らの『Brewmaster』でより良い体験ができるのであれば、それは喜ばしいことだと思います。
◆ビールについて
――日本では自家醸造に関する厳しい法律があり「ホームブリューイング」というものが一般的ではありません。開発チームのみなさんは、実際にホームブリューイングを行っていたりするのでしょうか?
Matt:実際にゲームを開発する準備期間中にアメリカンペールエールを自家醸造したのですが、これは楽しいチャレンジでした。この経験を通じて醸造の喜びやその難しさについて、多くのことを学びました。20リットルの熱湯を室温まで冷ますためには約1日かかることを知りませんでした!
ゲームでは、その醸造というものの喜びを楽しく表現しつつ、ビールを造る上での不満点を軽減できればと思いました。例えば、ゲーム内で時間を簡単に早送りできる機能をつけたのは最重要なポイントでした。
さらに、本作を開発したことで、地元のクラフトビール会社「Moor Beer」から、私のオリジナルレシピを元にしたビールが発売されたんです。そのビールは、私が作ったものよりもずっとずっと美味しかったですね!
――スタッフの皆さんが一番飲んでいるお酒は、やはりビールなのでしょうかですか?
Matt:開発チームが好きなお酒は、ビール以外にもかなりバラエティに富んでいると思います。実はビールを飲まないスタッフもいるくらいです(笑)
ビールを作る過程を楽しいゲームにするためには、ビールを飲むことよりも、クリエイティブな趣味に没頭することの方が重要です。私自身『Brewmaster』を開発するまではビールについてかなり詳しいつもりだったのですが、いかに知識がなかったのかに気付かされました。でも、そのおかげで色々な種類の、素晴らしいスタイルのビールを試すことができたのだと思います。
――「自分の好きなビール」をゲーム内で作ったことはありますか?
Matt:はい。ゲームの開発の初期に、実際に自家醸造したビールを『Brewmaster』で醸造してみたんです。同じ原料の組み合わせと醸造工程にすることで、狙い通りの正しいスタイルになるかという、化学シミュレーションのテストにも役立ちました。そして、幸いなことに狙った通りの結果を得られました!
このやり方と経験は、ゲーム内のシミュレーション全般の改善に大きく役立ちました。特定のスタイルの実際のレシピを用いることで、それがゲームの中で正しく再現されることを確認したんです。
ちなみに、その自家製ビール「Auroch Digitale」のレシピはSteam Workshopで公開しています。ぜひとも試してみてください。
――日本にも多くの地域ごとのクラフトビールが存在しています。これまで日本のビールで飲んだことのある銘柄はありますか?
Matt:本作のプロダクション・ディレクターが、「常陸野ネストビール レッドライスエール」や「常陸野ネストビール セゾン・ドゥ・ジャポン」などの、優れた日本のクラフトビールを紹介してくれています。ただし、これらの銘柄は残念ながらイギリスではなかなか手に入らないのが残念ですね。
大きな日本のブランドビールだとアサヒやキリンも素晴らしいのですが、個人的にはサッポロビールを選ぶことが多いです。あと、ビールではないのですが、明石酒類醸造の明石鯛の梅酒が大好物です!
――実際の醸造所と協力してビールを発売したことは、ビールシミュレーターとして素晴らしいことだと思います。今後もこういったコラボレーションは行っていくのでしょうか?
Matt:今後もできるかどうかはわかりませんが、コラボレーションビールをリリースしたのは本当にエキサイティングな体験でしたし、非常に勉強になりました。
このコラボレーションビールは、販売からすぐに売り切れてしまったんです。 素晴らしいビールを作ってくれた「Moor Beer」に本当に感謝しています!
――最後に、日本の『Brewmaster』ファン、そしてビール好きに向けてメッセージをお願いします!
Matt:日本の皆さん、私たちのゲーム『Brewmaster』 に興味を持っていただき本当にありがとうございます。こういったことは、開発チームにとって大切で嬉しいことです!
綿密な科学的シミュレーションの再現だけでなく、ゲームとしての面白さを考えた『Brewmaster: Beer Brewing Simulator』はビール好きならぜひとも一度は遊んで欲しいゲームです。今回インタビューでも紹介された「常陸野ネストビール」のお酒を飲んでプレイしてみるのも面白いかも知れませんね!
『Brewmaster: Beer Brewing Simulator』は、PC(Steam)/ニンテンドースイッチ/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに配信中です。