イラストやテキストの生成、さらには動画編集などAIによる自動化が何かと話題をさらう今日この頃。2023年7月14日から7月16日にかけて京都市勧業館「みやこめっせ」で開催された日本最大のインディーゲームイベント「BitSummit Let’s Go!!」でも、そんなAIの波が押し寄せつつある光景を見ることができました。
それが、モリカトロン株式会社が発表した新作マーダーミステリーゲーム『Red Ram(仮)』のブース。なんでも自動生成AIの力で「ほぼ無限に」ミステリーを生み出せるゲームなのだとか。一体どのような代物なのか、体験してその精度を確かめてきました。
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指定されたワードと条件から事件と4人の容疑者を生成
モリカトロンは「AI×ゲーム」開発の第一人者とも呼ばれる森川幸人氏が代表取締役を務めるゲーム・エンタメ向けAI専門の研究開発会社。そんなモリカトロンがコンセプトモデルとして開発したゲームが、今回の『Red Ram』という訳です。
『Red Ram』を非常に簡単に説明すると「必要な項目を入力すると、それに適合する殺人事件を自動生成AIが出力してくれるソフト」という具合で、プレイヤーはその事件の犯人を推理するミステリーゲームをプレイできます。
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入力してからゲームができあがるまでは約10分程度。時折うまく生成できないケースもあるようで、筆者の入力データも残念ながら事件が完成しませんでしたが、そんな時もご安心を。実は『Red Ram』では他のプレイヤーが作成した事件もプレイできるのです。
というわけで今回はお顔も存じませんが「かつおだし」さんのデータから作られた『地下鉄ホームの殺意』をプレイしていきます。
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ゲームの流れとしては「事件が発生」→「刑事であるプレイヤーが調査で手掛かりを得る」→「次の手掛かりを調査」……と繰り返し、4人の容疑者から真犯人と思われる人物を告発します。早い段階で犯人を突き止められれば高評価となるようです。
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登場人物は被害者を含めて5人で、聞き込みを含めて様々な手がかりが調査可能。中には殆ど推理とは関係のない手がかりも含まれており、いかに素早く核心に迫る情報を得られるかが攻略スピードのポイントになります。
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ある程度調査を進めたところで犯人っぽい人物が浮かび上がったので思い切って「告発」してみたところ見事に正解。どうやらまだ断定できる証拠を入手できていなかったのか、それなりに調査をしたつもりですが高評価をいただきました。
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他にもいくつかの事件をプレイしてみましたが、序盤で急に証拠が見つかることもあれば意外と終盤まで絞り切れないことも。急に登場人物の口調が変わったり会話が噛み合ってなかったりと「粗さ」を感じる部分はありますが、どの容疑者も「自分はやってない」としっかり否定してくるので、ちゃんとテキストを読んで論破しなければならず、十分に推理ゲームとして成立している印象でした。
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今回はたまたま自分以外のプレイヤーが作成した事件をプレイしましたが、新鮮な情報ばかりでむしろ自分で情報を入れるよりも楽しめる気がします。AIによる自動生成がどの程度ミスリードを仕込んでくるのかが未知数なので「それっぽい証拠」を見つけても決断しづらく、意外な面白さに繋がっているのではないでしょうか。
3日間で生成されたマーダーミステリーは実に250件以上と、人間では到底不可能なスピードで量産を果たした『Red Ram』。記事中ではついついツッコミ所のある画像の紹介が多くなりましたが、殆どの事件が破綻なくゲームとして成立しているあたりAIの能力には驚きを禁じえません。
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今回はBitSummitの来場者が好きなワードを放り込みまくるカオスな状況ながらも十分にその仕事を果たして見せたAIくん。もしかすると『Red Ram』で魅力的なシナリオを生み出させるキーワード入力を突き詰めるのもまた面白いかも知れません。
BitSummit会場にて展示された『Red Ram』は7月31日までの期間限定でブラウザゲームとしてプレイ可能。残念ながら新たに事件の生成はできないものの、すでに制作された多数の事件にチャレンジすることは可能なので、興味のある方はこちらからプレイされてみてはいかがでしょうか。