2023年7月14日より京都・みやこめっせにて開催されていた日本最大級のインディーゲームの祭典「BitSummit Let's GO」。会場内には所狭しと数多くの作品が展示され、多くの人々が試遊やイベントを楽しんでいました。
Gamera Gamesのブースでは多くのパブリッシング作品が展示され、その中には2023年4月21日にリリースされた娘育成シミュレーション『火山の娘』の試遊も行われていました。
『火山の娘』は、愛する亡き妻との間に生まれた娘を育成していく作品。剣と魔法、錬金術が盛んな「火山国」を舞台に、プレイヤーは父親として娘を導きながら、幼少時から成人までの成長を見守っていきます。
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今回、本作を開発した养蛋人工作室 Egg Hatcherのお二人へのインタビューを実施しました。本稿ではゲーム愛に溢れたお二人の回答を紹介していきます!
『火山の娘』開発者インタビュー
今回インタビューに答えてくれたのはFry氏とZoy氏のお二人。今回のインタビューは、Gamera Gamesの方による通訳を通して行われています。
――本日はよろしくお願いします。まず、開発者のお二人の自己紹介とスタジオの紹介をお願いします。
Fry氏:Fryです。私はアートをメインに担当しています。
Zoy氏:Zoyです。私はエンジニアとしてプログラミングを担当しているほか、アートやプランニングなども行っています。
――『火山の娘』の開発経緯を教えてください。
Fry氏:私たちは開発スタジオという形式のものを持っていないんです。元々高校でのクラスメイトで、同じ大学にも通っていました。
Zoy氏:私は学校でゲームデザインを学んで、Fryはアートを学んでいました。その時代から「中国で美少女を育成するゲームを作りたいな」と。それで二人でゲームを作り始めました。
――どうして美少女ゲームを作ろうと思ったのでしょうか?
Zoy氏:私たちは二人とも、昔から日本の『プリンセスメーカー』が好きだったんです。なので、いつかこういった美少女を育てられるようなゲームを作ってみたいと思っていたんです。
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――ゲームのコンセプトや、世界観設定についてのこだわりを教えてください。
Zoy氏:まず2020年頃から、作品のテーマを作ろうと思い「火山」というものを思いついたんです。火山は噴火するという危険もあるのでサバイバル感もあるし、イタリアのポンペイ遺跡のような「噴火で滅んでしまったもの」など、ひとつのテーマとして使えるかなと思ったんです。
「火山」というテーマを設定してから、育成シミュレーション+RPGというジャンルに相応しい世界観を作り上げていったんです。そこで中世のような時代背景や文化が出来上がり、本作の舞台である「火山国」というテーマの世界が完成した感じですね。
あと、私たちが2人とも『ファイアーエムブレム 風花雪月』が好きなので、騎士や騎士学校といった要素も盛り込んでいきましたね。
――綿密なスケジュール管理が必要な育成シミュレーションを作る際の、苦労した点や楽しかった点を教えてください。
Zoy氏:実はゲームシステム構築自体はそこまで大変だとは思っていないんです。
『火山の娘』は3年間かけて制作していて、開発当初は本当にシンプルなゲームシステムだったんです。そのシステムの上にバトルなどのシステムを重ねていった形でした。
個人的には開発を急ぐつもりはなくて、時間をかけても新しいものを作り込みながら、いいものを作ろうと考えていました。そうして気がついたら3年間経っていたと言う感じですね(笑)
(筆注)『火山の娘』は開発中の3年間で3回ほど大規模なアップデートを行い、そのたびに大きくバランスやシステムを変えることもあったとのこと。以前のバージョンは製品版と比べると、かなり要素が多すぎたこともあり、かなり削って今のバランスになったということです。パブリッシャーの方も「良いものを作るために急がなかった」とコメントしていたのも印象的でした。
――とてもかわいいグラフィックが印象的です!キャラクターへのこだわりを教えてください。
Zoy氏:キャラクターデザインは2人がそれぞれ6キャラクターを担当して作っています。(ZoyとFryの)お互いの性格もあって、完成したキャラクターも性格や個性がかなり異なっていますね。
Fry氏:ユーザーには、キャラクターを見てその人物のことをより深く知ってほしいという思いを持っています。
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――娘が悩んでいる時に話しかける事ができたり、親子のふれあいという優しさに溢れています。制作の際に、子育ての面で参考にした部分などはあるのでしょうか?
Fry氏:私たちはどちらも親子関係にとても恵まれていました。ゲームの中の会話には、実は私たち自身のリアルな体験が反映されているものもあります。
Zoy氏:舞台である「火山国」は非常に厳しい世界です。それでも、ゲームの基本的な雰囲気はリラックスして、優しかったり、豊かだったり、父が娘を守ろうとする、みたいな繋がりをしっかり見せたかったのがあります。
――システムとして、悩んでる娘のケアをする/しないという選択肢がありますが、愛しい娘のために「声をかけない」選択を取ることがなかなかできませんでした(笑)
Zoy氏:『火山の娘』では、娘が成長することで、やがて娘がほかのキャラクターとデートしたりするようになり、ゲームとして「父親」の存在が弱くなっていくんです。
それでも娘は悩むことがあります。そういう場面で、プレイヤーがどうやって10代の娘に父親として関わっていくか、それとも関わらないのか、そういった「親の悩み」という選択肢を用意したかったんです。
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――エンディングの数がとても多いので驚きました。開発初期からこれくらいの数を想定していたのでしょうか?
Zoy氏:最初からエンディングの数は多くしようと決めていました。やはり育成シミュレーションジャンルを遊ぶユーザーのみなさんはマルチエンディングをもとめているので、満足させるためにたくさん用意しようと思っていましたね。
もちろん、ユーザーのなかには1つか2つのエンディングをプレイしただけで満足してしまう人もいると思うんです。でも、ゲーム内で娘の経歴などを表示することで、もっと色々と遊ぼうという人が増えてくれればいいな、とも思いましたね。
――リリースからおよそ2ヶ月後に日本語が追加されました。この件について、日本のユーザーからの反響はありましたか?
Gamera Games『火山の娘』担当 Mien氏:『火山の娘』はリリース当初から日本語実装予定だったんですが、翻訳が遅れてしまったという事情がありました。
(中原麻衣さんによる)日本語吹替は、最初のトレイラーで中国のユーザーを喜ばせたかったというところもあります。でも、吹替ボイス入りのトレイラーを公開したら日本の皆様からとても大きな反響があったんです。その反響もあり、吹替をより強化したところがあります(笑)
ちなみに、なんで中原麻衣さんだったのかと、ひとことでいえば、趣味ですね(笑)『ひぐらし』とか好きだったので…。
Fry氏:私達もアニメ「舞-HiME」などで中原麻衣さんのことは好きでしたよ!(笑)
――『プリンセスメーカー』がきっかけで育成ゲームを作ろうとしたということですが、最初にプレイした際にどのようなことを思いましたか?
Zoy氏:最初にプレイしたときはとにかく面白くて、絵が綺麗で、キャラクターが可愛くて、そしてちょっとエッチだなと思いました(笑)。ちなみに、中国だと案外「オタク向け」といったカテゴリーがなくて、こういった作品もかなり幅広い層が遊んでいるんです。『プリンセスメーカー』については自分はほぼ全作品を遊んでますよ。
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――『プリンセスメーカー』はちょっとエッチだと思ったということですが、『火山の娘』はかなり上品なイメージですね(笑)
Zoy氏:そこは全年齢作品なので(笑)
――『火山の娘』で、かつて遊んだ日本の育成ゲームを初めて遊んだような感情に近づけることはできたでしょうか?
Zoy氏:日本の育成ゲームはキャラクターを手前に立てて、背景があるという画面が多いので、そこは再現できたと思います。
ゲームシステムに関しては『ファイアーエムブレム』『英雄伝説 軌跡シリーズ』などから、育成やデートといった部分の影響も大きく受けていると思います。それらのタイトルには色々と学ばせてもらいました。直接の影響ではないですが、『オクトパストラベラー』なども好きな日本のゲームですね。
――『火山の娘』が完成しましたが、次回作の構想などもすでにあるのでしょうか?
Zoy氏:そうですね。実はすでに育成シミュレーションの次回作の構想をはじめています。
個人的には『火山の娘』で少しシステムが浅かったなと言う部分もありました。次回作では全く新しい世界観で、必ずコンテンツをボリュームアップさせたものにしようと考えています。
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――最後に、日本のファンの皆様にメッセージをお願いします!
Zoy氏:『火山の娘』の日本語翻訳は、まだまだ完璧なものとは言えないと思います。今も日本のユーザーの皆さんから多くのフィードバックを送っていただいて、本当に感謝しています。
Fry氏:実はSNSなどを通じて、こっそり『火山の娘』のファンアートなどを拝見させてもらっています(笑)。皆さんキャラクターを愛してくださって本当にありがとうございます!
次回作についての情報も飛び出した今回のインタビュー、開発のお二人が日本のゲームをとても愛しているのが伝わってくるのがとても印象的でした。
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『火山の娘』はPC(Steam)向けに配信中。Game*Sparkでは、本作のプレイレポートも掲載中です!