2023年8月22日、エレクトロニック・アーツがパブリッシャーを、Ascendant Studiosが開発を担う新作シングルプレイヤーFPS『アヴェウムの騎士団(Immortals of Aveum)』が各プラットフォームでついに発売されました。
今回は、リードコンバットデザイナーのジェイソン・ウォーンケ氏にオンラインでインタビューを行う機会を頂きました。時にユーモアを混ぜながら説明してくださる同氏の話に、ついつい時間を忘れてしまいそうになった、その様子をお届けいたします。
筆者は23年5月にアメリカはカルフォルニア州で行われたハンズオンイベントにも参加したので、今回はデモ版から製品版にかけての調整・変化について聞いていきたいと思います。早速やってまいりましょう。
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――本日はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。早速ですがデモ版では、各ステージエリアにおける移動可能箇所にかなり制限がかかっていたと記憶していましたが、製品版ではどの程度規模が大きくなったのでしょうか?
イベントにおいて、ゲーム中の各ステージは全体の1/5または1/3程度に規模が制限されていました。それと比べると、製品版ではより広いエリアが移動および探索可能となっています。
――敵とのバトルでも立体的な動きの足場としても機能するステージですが、製品版にあたり、何か戦闘に影響を与えるような変化はありましたか?より有利になる、またはより地形デザインのバリエーションが増える……などなど。
主にバリエーションが増えています。これは一つ前の話とも繋がりますが、やはり製品版ではステージの規模が大きくなっており、ゲーム進行に合わせて様々なものが用意されています。これは登場する敵も同様ですね。本作の魅力の一つは「バラエティ豊かな戦闘」ですが、例えば開けた場所で大量に現れる小型の敵を掃討したり、反対に狭い場所で巨大な敵を相手取って戦ったりと、ステージはそれら戦闘を引き立てるようにデザインされています。
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――その戦闘について、本作は魔法がテーマのゲームで、赤青緑といった色に基づいてデザインされていますよね。製品版にあたり、何か攻撃力やリキャストタイムなどの性能に調整や変更があったりしますか?
そうですね、イベントから多くのバランス調整を行いました。プレイヤー操作キャラクターや各敵のパラメータのバランスを整えるだけでなく、イージーまたはハードモードいった難易度にも手を入れました。イベントのデモ版では実装していませんでしたが、製品版では、いくつかのより挑戦的な難度も用意しています。難しさを求めるプレイヤーの皆さんには是非トライしてみて欲しいですね。
――戦闘のレベルデザインについてですが、製品版に向けたバランス調整の中で、本作が目指す主なプレイフィールは何でしょうか?爽快感のあるバトルなのか、それとも難しい戦闘の駆け引きなのか。
これは少々難しい答え方になってしまうのですが……まず開発が始まった5年前において我々はチャレンジング、難しめなFPSという方向性を持っていました。そして当初、我々が想像していた魔法というのは「一発が遅くて重い」といった所謂ステレオタイプなもので、その時点で出来上がったシステムもそういった視点に基づいていました。しかし遊んでみると何かが違う……。
そこから例えば、『CoD』シリーズのようなリコイルやリロードといった、アクションを魔法に取り込んでみようといった試行錯誤が始まり、最終的に「速くて、熱狂的で、爆発的なゲーム体験」という方向性に落ち着きました。その結果、製品版では瞬間ごとに戦術的な判断を求められるスピード感のあるプレイフィールになっていると思います。
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――なるほど、ありがとうございます。そのプレイフィールについてもう少し伺いたいのですが、大小様々なサイズの敵が登場するなかで、それぞれの敵に対して戦闘のリズム・爽快感を保つために気をつけたことはありますか?
本作におけるプレイヤーのコア体験のひとつに、「強力なパワーをもった、バトルメイジを楽しむ」というものがあります。そのため敵が攻撃を受けた時のリアクションがドラマチックになるよう拘っており、例えば、派手なエフェクトの範囲攻撃魔法に多くの敵が吹っ飛んでいくといったものですね。他には、身体の大きな敵がこちらの魔法を耐える動きを見せてくる、さあどう攻めるか……といった具合です。
こういった戦闘のデザインには『モンスターハンター』シリーズから大きな影響を受けました。巨大なモンスターが自らの大きな尻尾などを叩きつけてくるといったものは、個人的に大好きです。『アヴェウムの騎士団』では、魔法シールドで降り注ぐ遠距離攻撃を凌いでいるところへ、体の大きい敵がこちらの反撃をものともせずにハンマーを振りかぶって突っ込んできて……!という感じでしょうか。
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――最高ですね……!ところでイベントのデモ版を触った時に感じたのですが、本作は魔法のエフェクトだけでなく装備品のデザインにも力が入っています。例えば、『CoD』シリーズでいうところの武器の構えやリロードアクションといったアニメーションは、特にバリエーションがあったと記憶しています。そのアニメーションは、本作に登場する武器や装備品に全て用意されているのでしょうか?
もちろんです。全ての魔法(スペル)、装備品は、それが例え一時的なパワーアップアイテムであったとしても、アニメーションが用意されています。「手の動き」は、プレイヤーがゲームをプレイ中に何度も目にするものですからね。「ドクター・ストレンジ」的な、個人的に物凄く好きなんですけども(微笑)、とにかく手の動きに関しては、プレイヤーが重さを感じることができるよう、アニメーションに気を配りました。
面白いもので、『CoD』シリーズであれば銃を構える、トリガーを引く、射撃の反動が来る……といった具合に、プレイヤーは手応えをもってアニメーションのイメージを簡単に持つことができます。しかし魔法は?(ドクター・ストレンジのポーズをして微笑むウォーンケ氏)ということから、ゲーム内における魔法などの要素に規則性をもたせて、それらを視覚的にわかりやすく演出することを心掛けました。
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――これは質問ではなく、私の感想で申し訳ないのですが、個人的にゲームをたくさん遊び始めた頃に触れた『Halo3』や『バイオショック』が大好きで、特にリロードしかり特徴的なそれぞれのアニメーションに心奪われていました。いまのお話を聞いて、本作もそういった演出に拘りがあることが改めてわかり、とても嬉しく思います。本当に楽しみです。
おお、『バイオショック』も良い参考です。プラスミドのエフェクトで、手のまわりに電撃や炎が走ったり、蜂が纏わりついたりするのはインパクトがあって記憶に残りますよね。我々のゲームにおけるアニメーションの演出でも、そういったものを目指しています。
――ところで、装備の話で気になっている点を伺います。製品版にあたり何か追加された装備品などはありますか?または隠しアイテムとか……いや、イースターエッグ的な……?
イースターエッグ……フフフ……どうかな?(顎を撫でながらニヤリとするウォーンケ氏)
――あははははは!
私のキャリアは『CoD』シリーズ、ゾンビモードと共にありますが、いち開発者として隠しコンテンツを用意するのが好きで、それをプレイヤーの皆さんが見つけてくれるのが嬉しくてしょうがないですね。過去に携わった作品では、シークレットを見つけたプレイヤーが動画などをアップすることを楽しみに待っていました。
――今回も気になりますね……!ともあれ最後に、本作を楽しみにしているプレイヤーの皆さんに何かコメントを頂けたら幸いです。
新しい装備やスキルの組み合わせによるビルドだったり魅力は色々ありますが、本作が持つコンテンツのすべてを開発チームの我々と同じくらい楽しんで遊んでもらえたら幸いです。
――改めて、本日はお時間を頂きありがとうございました。
魔法の設定に規則性を設け、それをベースに視覚的な演出へ昇華するなど、プレイヤーが楽しめるようゲームデザインを徹底的に拘った本作。デモ版でも十分な完成度でしたが、製品版ではさらに磨きをかけているようです。Game*Sparkでは、製品版リリースに際してプレイレポも掲載予定。興味のある方は是非そちらもご確認下さい。
『アヴェウムの騎士団』は、PS5/Xbox Series X|S/Windows(Steam、Epic Games Store、EA app)向けに配信中です。