Sabotage Studioは、新作RPG『Sea of Stars』をPC(Steam/Microsoftストア)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/ニンテンドースイッチ向けに配信開始しました。
本作は『クロノトリガー』『スーパーマリオRPG』『ガイア幻想紀』など、1990年代の日本のRPG作品に影響を受けて制作された、美麗なピクセルアートが特徴の作品。邪悪な錬金術師の野望を食い止めるために世界を冒険する2人の戦士とその仲間たちの物語が描かれます。
開発を手がけるSabotage Studioは、高評価アクションゲーム『The Messenger』で知られるカナダのインディーデベロッパー。『Sea of Stars』は『The Messenger』と同じ世界観の前日譚で、2020年に開催されたKickstarterキャンペーンで目標額の10倍以上の支援を集めた注目作です。
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本稿では、待望のリリースとなった『Sea of Stars』のプレイレポートをお送りしていきます。
懇切丁寧な導入部!キャラを動かす時点ですでに楽しい!
『Sea of Stars』の物語は、世界のどこかにある大書庫に住む記録官の語りから始まります。記録官が語るのは、かつて「フレッシュマンサー」と呼ばれる災禍によって大きな傷を受けた時代の物語。ゲーム内ではストーリーを進めるごとに記録官の語りが登場し、物語を印象付けます。
本作の主人公となるのは、ヴァレアとゼイルという2人の若者。彼らは世界の脅威に立ち向かう使命を持つ「至点の子」と呼ばれる存在です。ゲーム開始時には仲間を率いるリーダーを選択する必要がありますが、これはメインで操作する対象が変わる程度でストーリーに影響はありません。そのうち変更もできるので、まずは気軽に選びましょう。
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ゲーム本編は「至点の子」である2人が儀式のために山を訪れるシーンから始まり、チュートリアルを含めて子供時代からの回想へ。ヴァレアとゼイル、そしてその親友のガールという少年が過ごしたやんちゃな少年期、そしてやがて訪れる別れはとても印象的です。
物語はやがて、ゲーム冒頭の山のシーンへ戻っていきます。そこで驚きの再会や試練、強力なボスとの戦いを経て認められた主人公たちは、新たな役目を果たすために世界へと旅立つことになるのです。非常に丁寧なストーリー導入はチュートリアルとして親切で、物語の説明としてもわかりやすく機能しています。
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個人的に特筆したいのは、キャラ操作が可能になった時点での行動の自由度の高さです。崖を飛び越えたり、狭い通路をギリギリ通ったり、ちょっとした段差を見つけて乗り越えたりと、自由な移動が直感的にしかもスムーズにできるので、単純にキャラクターを動かしているだけでも楽しいですね。
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敵の行動を阻止せよ!戦略性の高いバトルが楽しい
本作のバトルはシンボルエンカウント式のターン制バトル。プレイヤーの行動時に、敵が何ターン後に行動するかが表示されるので、いかに被害を抑えるかを考える必要があります。攻撃と防御時にタイミング良くボタンを押すことでボーナスを得られます。
主人公たちは通常攻撃だけでなくスキルも使用可能です。スキルの発動にはMPを消費しますが、MPは通常攻撃することで回復することもできます。スキルはいずれも強力なものが多く、例えばヴァレアの「ムーメラン」というスキルはタイミング良く弾き返すことで攻撃回数が増えるといった特性もあります。
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ほかにも戦闘中たまるゲージを消費するコンビ技「コンボ」や、魔力を吸収して攻撃する「ブースト」なども。本作の戦闘難易度はわりと高く、雑魚敵との戦いでも油断すると大ダメージを受けてしまうため、これらの技や行動順を適切に考える必要があります。
戦闘でもっとも重要なのが、敵が繰り出す大技を阻止するということでしょう。敵が大技を出す準備中には、さまざまな属性の書かれたスロットが表示されます。発動ターンまでに、そのスロットを全て破壊すれば行動を阻止できるのです。
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ただし、序盤はMPが足りなかったり、そもそもこちらのスキルが足りないことも。行動スロットは全て壊さなくても威力が落ちるので、ときには生き残るための行動を取らなければなりません。パズルを解くように最善手を見つけ出すのも本作の醍醐味です。
スキルで相手の位置を変えたり、なるべく被害を減らすために行動の遅い敵を狙ったりと、バトルは常に考えて行動する必要があります。もちろん装備の充実やレベルアップも大切ですよ。
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世界はどこまでも広い!探索が楽しすぎる
世界の崩壊を食い止める役目を持つ「至点の子」の旅の舞台は、さまざまなエリアが用意されています。先述の通り非常に自由度の高い移動ができる本作では、マップ内をくまなく探索することも大切な要素です。
マップ内には宝箱はもちろん、プレイヤーを助ける料理のための食材も隠されています。料理は宿屋やキャンプで作ることができます。システム上MPが低めの作品なので、初期の回復リソースとしてとても重要です。料理に関しては序盤のチュートリアルでもしっかり学べますよ。
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また、戦闘だけではロクにお金を稼ぐことができません。そのため、探索してお金になる宝物を探したり、装備品を見つけたりすることも必要です。マップ内にはかなり多くの宝箱があり、装備品も入手しやすいので、ゲームを進めやすくするためには探索は必須です。
とはいえ決して探索が作業になることはなく、むしろ「なんかあそこ行けそうだな?」となる場所を探すのも本作の楽しい部分。高い崖から飛び降りて壊す床など、多くの隠し場所が直感的に解法として理解でき、そこに到る道を見つけ出すのが何よりもやり甲斐があり、その報酬もしっかり用意されています。
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ストーリーが進めば新たなギミックも増えますし、元の地点までのショートカットも用意されます。気楽に探索ができますし、なにより美麗なグラフィックを堪能するためにもどんどん世界を冒険していきましょう。
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レトロスタイルと遊びやすさのバランス
『クロノトリガー』などの作品に影響を受けた本作は、やはりグラフィックの雰囲気など多くの点でレトロスタイルを踏襲しているなと思わされます。ただし、単純にレトロなだけでなく現代向けのシステムも多く採用しており、遊んでいて「どこか懐かしいけど新しい」と感じさせます。『Sea of Stars』は、そのレトロ&現代のバランスがとても絶妙です。
顕著な例としてはゲーム内の「秘宝」というもの。これはプレイヤー自身がゲーム内の難易度を調整できるというもので、例えば“戦闘時のHPボーナス&戦闘終了時に体力回復”や“一定確率でオート防御する”というルールを追加することができるシステムです。戦闘が比較的難しいゲームなので、慣れてない人には嬉しい要素だと思います。
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一方で便利な回復アイテムである料理の所持上限が決まっているなど、いくつかの点で「ゲームの面白さを調整するための不便さ」がシステムとして採用されている印象です。一旦離脱した仲間がアクセサリーを落とさないなど、ちょっと懐かしいなと思うような場面もあるのですが、これはゲームを進めるのが困難なものではなく、個人的には懐かしさのアクセントとして楽しめる部分でした。
なによりも、やはり『The Messenger』の開発チームならではのキャラクターの個性が光ります。主人公たちや親友のガールはもちろん、道中を助けてくれる多くのキャラクターや町の人々、敵キャラクターまで一見してわかるような強烈な個性を持ち、とても軽妙な会話が楽しめます。町などの会話もしっかりと楽しんで欲しい部分です。
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ここまで紹介してきた『Sea of Stars』。90年代のJRPGに影響を受けたというアートスタイルやゲーム性はどこか馴染みやすく、そして個性豊かなキャラクターたちが彩る王道な物語をとても強く印象付けています。雑魚敵であっても油断できない戦闘は歯ごたえがあり、それが難しい人向けの調整も完備。誰でも楽しくプレイできるようなゲームデザインが非常に好印象です。
『クロノトリガー』などで知られる光田康典氏が作曲に参加しているBGMは全体的に雰囲気も心地よく、ゲームのテンポの良さとも相性抜群です。探索することで多くのアイテムや隠し要素が見つかる本作は、美麗で細微に描かれたグラフィックの世界を探検することにゲームとしての意味と楽しさを持たせています。
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遊べば遊ぶほど、調べれば調べるほどにゲームとしての面白さや便利さ、そして世界観の魅力などが広がっていく作品です。じっくり遊べるJRPG好きな人、世界観やアートスタイルに惹かれた人、同社の前作『The Messenger』が好きだった人、色々な人にオススメできる間違いのない名作だと思います!
ちなみに『The Messenger』と世界観が共通している本作ですが、この作品から始めてもまったく問題ありません。もちろん『The Messenger』も名作なので、アクションゲームを遊びたいな、という人には是非とも遊んでほしい作品です。
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美麗なグラフィック・サウンド・ゲームシステムすべてが良好でやりごたえも抜群!日本語も入っているので是非とも気軽に遊んで欲しい傑作スパ!
タイトル:Sea of Stars
対応機種:PC(Steam/Microsoftストア)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One(Game Pass対応)/ニンテンドースイッチ
記事におけるプレイ機種:PC(Steam)
発売日:2023年8月29日(ニンテンドースイッチ版は8月30日)
記事執筆時の著者プレイ時間:15時間
価格:PC/Xbox 4,000円 PS5/PS4 4,070円 ニンテンドースイッチ 4,400円