東京ゲームショウ前日となる2023年9月20日、都内にて505 Games主催のメディア向けイベント「FUTURE PLAY 2023」が開催されました。本稿では、『幻想水滸伝』シリーズの元クリエイターが手掛ける『百英雄伝』のプレイレポートおよびインタビューをお届けします。
なお、試遊展示されたものは発売前ビルドであるため、製品版では変更される可能性があることをご了承ください。
キャラボイスがぴったりすぎる!魅力的な英雄100人以上が活躍するRPG
本作の特徴は、なんといっても100人以上の“英雄”が登場すること。英雄たちはただ頭数を用意しただけでなく、それぞれにしっかりと活躍の場が用意されています。
今回の試遊では、ゲームの序盤を体験しました。最初にプレイヤーが触れることになるのは、髪を結った姿がクールなポジティブ思考のノア。彼は田舎の村を出て、連合諸国の警備隊に入隊して冒険に出ます。
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序盤で冒険にお供するのは、明るくもちょっと間抜けな格闘娘リャン、東方からやってきた長い黒髪が目立つ女性剣士ミオ、狼のような風貌で体格の良い獣人ガオウ、戦略家で冷静さがただよう中隊長セイ・ケースリングなどこの段階ですでに個性豊かすぎる面々が揃います。
本作の世界では「魔導レンズ」と呼ばれる神秘的なアイテムを兵器化しています。魔導レンズには攻撃や回復など様々な効能があり、序盤に登場するキャラのほとんどが所持しています。
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ノア一行の目的は、北のルーン遺跡と呼ばれる場所の発見と、「原初の魔導レンズ」という特別なレンズの発見。目的地に向け、探索を始めます。フィールドは立体的な作りになっており、分かれ道も多数。外れた道を進んでみると宝箱やアイテムが入手できるなど、探索しがいがあるようになっています。
森に入ってみると、何やら怪しげな雰囲気。探索を進めていると、謎の装置や霧がかったエリアが現れます。一行が霧の中をさまよっていると、突如「フォレストイーター」という強敵が出現します。
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戦闘はターン制となっており、じっくり行動を選べます。素早さに応じて敵を含む行動順が表示されるようになっているので、敵に攻撃される前に素早いキャラでトドメを刺したり、攻撃によるHP減少を見越して敵より行動が遅いキャラが回復行動を取るように設定したりと、深い戦略性を楽しめます。
戦闘でターンを重ねると溜まっていく「SP」ゲージが一定量あれば、魔導レンズで特殊技を繰り出すことが可能。縦に並んだ敵をまとめて倒したり、普段より1.5倍増しの攻撃を放ったりと、個性豊かな攻撃を繰り出せます。
さらに、ストーリーでキャラ同士に友情が芽生えると、「英雄コンボ」という必殺技を繰り出せます。序盤で使えるものは敵全体に中ダメージを与えるという強力なもので、SPの消費もなし。使いようによってはかなり有利に戦闘を進められそうです。
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試遊で特に良いと感じたのは、グラフィックのスタイル。本作は3Dの背景に2Dドット絵のキャラクターというスタイルを採用しており、初代PS時代の懐かしさと現代らしい綺麗な3Dのいいとこ取りをしたようなグラフィックです。
自然や神秘的な遺跡の雰囲気はもちろん、ドット絵のアニメーションも豊富。汎用的な移動や表情といった基本アニメーションだけでなく、頭をかいたり驚いたりといった物語の展開に合わせたアニメーションが出てくるのには驚かされました。立体的なレイアウトの戦闘画面も美しく、ドット絵ファンでもそうでなくとも惚れ惚れしそうです。
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また、フルボイスであることにも驚かされます。ノアを始めとした愛らしく魅力的なキャラクターたちはすべて日本語フルボイスがついており、すべてのセリフを聴くことができます。キャスティングもバッチリで、キャラのイメージとぴったりな声ばかり。違和感は全くと言っていいほどありませんでした。
試遊はストーリーに一区切りがつく1時間強ほどでしたが、この世界とキャラたちにもっと触れていたいと思わせるほど魅力的に映りました。序盤では8キャラほどが確認できましたが、こういった素晴らしいキャラがあと92人以上も登場すると思うと、今から楽しみでなりません。
試遊にあわせて、本作の脚本・ゲームデザインを担当する村山吉隆氏、キャラクターデザインを担当する河野純子氏、アートディレクションを担当する村上純一氏、システムデザイン兼ディレクターの小牟田修氏の4名に直撃インタビューを実施。本作の開発に関してやグラフィックへのこだわり、そして今後の展望などについてお聞きしました。
――2024年4月23日発売の決定、おめでとうございます!Nintendo Directでの発表後、ファンやKickstarter支援者からの反応はいかがでしたか?
村山吉隆氏(以下、村山)直接来たというよりは僕たちの方から見にいったという感じなんですけど、喜んでもらえていると感じます!
――本作は100人以上の英雄が活躍するという驚きのコンセプトを持っています。これだけの数の英雄がいる中でシナリオやキャラデザを用意するのは大変そうですが、苦労した点はありますか?
村山 100人以上いる英雄のみんなを活躍させたい!と思っているのですが、全員を戦闘で使うのはなかなか難しいです。そのため、キャラごとに活躍の場を与えるようなシステムを構築しました。例えば戦闘に強いキャラは戦闘で、将軍のようなキャラは戦争で、商人のようなキャラはお金儲けで……というようにそれぞれ活躍させるようにしたのですが、構想を練る部分に苦労しました。
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河野純子氏(以下、河野) キャラデザで大変だったところは……物量や締め切りですかね(笑)。今回はイチからキャラを作るというよりは最初にテキストで設定をいただいて、それに則したデザインをひたすら描きあげていったので、あまり発想的な部分では苦労しませんでした。
――本作のグラフィックは2Dドット絵のキャラクターに3Dの背景という特徴的なスタイルです。キャラクターグラフィックで、3Dモデルなどではなく2Dドット絵を採用したこだわりポイントを教えてください。
村山 ドット絵キャラの表現力という部分は、まだまだ可能性があるんじゃないかという話になって、その中でドット絵を現代の最新グラフィック環境の中でどう生かすかっていう部分を村上さんに色々と試してもらいました。
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村上純一氏(以下、村上) 自分自身がRPGを遊んでいた頃、リアルじゃないことによる良さがあるということを考えていました。頭の中でキャラクターを補完して、自分で作り上げていくような。この部分は3Dかつリアルになればなるほど「そこに存在するキャラクター」になり、ややプレイヤーと距離があるというか、キャラを客観的に見てしまうのではないかと考えています。
そこで本作では、あの頃のタッチのまま現代らしいクオリティで進化させたら新しいビジュアルができるんじゃないかという話になり、試してみたら面白いものができあがったので、これで行こう!ということになりました。
――このスタイルを採用したことによって苦労した部分などはあったのでしょうか。
村上 苦労しかないです(笑)。キャラクターが大勢存在するという性質上大勢で作らなければならないのですが、現代ではドット絵を描けるドッターが少ないんですよね。それだけじゃなく、描いてくれた人によってクオリティにばらつきが出てしまうという問題もあり、そこを整えていくというところに苦労しましたね。まぁあとは……物量ですね(笑)。
村山 何をするにも×100人以上分作らなきゃいけないですからね(笑)。
村上 しかもアニメーションで動きますから(笑)。
――村山さんと河野さんはコナミ時代に『幻想水滸伝』シリーズを手掛けられており、小牟田さんも『幻想水滸伝 ティアクライス』などを手掛けられていました。なぜ、またコナミ出身のメンバーを集めてゲームを作ろうと思ったのでしょうか?
村山 元々プロジェクトを始める前から『幻想水滸伝』のイベントで招待を受けることも多く、会う機会も多かったので、そこで新作を作ろうかという話が出たり、『幻想水滸伝』ファンからの要望があったりしていました。そしてこの4人が集う機会が訪れて、色々とスタートしていった形です。
河野 たまたまみんながやれそうなタイミングができて、やってみようかという話になったんです。
――では、割と必然的だったんですね(笑)。
一同 (笑)。
――どのような経緯で、505 Gamesと2021年にパブリッシング契約を締結されたのでしょうか。
村山 Kickstarterが成功に終わったあとに、色々なパブリッシャーさんからオファーがあったり、我々からも探していたりしたのですが、その中で最もプロジェクトに対して理解を示してくれたのが505 Gamesさんでした。
今でもそのスタンスは変わっておらず、クリエイターを尊重する姿勢を続けていただいているので、非常に良い状態でここまでやってこれたなと感じています。
――本作は元々2023年発売予定でしたが、リリースの延期を発表されていました。ズバリその具体的な原因は何だったのでしょうか?
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村山 RPGというゲームジャンルは非常に多くのリソースを必要とするため、正確な予定を立てるのは困難なのですが、その中で自分たちが求めるクオリティのために必要な時間をかけるために、申し訳ありませんが発売日を延期させていただきました。
――延期によって生まれた追加期間を使って、どのような点を開発・強化しましたか?
村山 登場する100人超えの大量のキャラクターたちを「いかに生き生きと描き、活躍させる場を用意できるか」といった部分に注力しています。
――延期発表のKickstarterページでは河野純子さんによる『百英雄伝 Rising』に登場したキャラクターたちの新規イラストが公開されていました。少し大人びたような印象を受けましたが、本作は『Rising』から何年後の世界が描かれているのでしょうか?
村山 『百英雄伝』は『百英雄伝 Rising』の出来事が終わってから、数ヶ月後の話となっています。
河野 『Rising』での経験のあと、旅に出ようと心機一転した感じを表現したかったので、ちょっとだけ大人びたかな……というデザインになりました。年月というより、いろいろな経験を経て……という感じですね。ガルーについては「旅立った」というより「帰っていった」というイメージもあります。
――発売前で少し気が早いですが、本編発売後の本IPの展開やRabbit and Bear Studiosとしての展望はありますか?話せる範囲で教えてください。
村山 自分の作る物語は大きな世界、大きな歴史の中の一部をクローズアップして作られます。その方が物語の中でより人間(やその他のキャラクター)の考え、価値観を描きだせると考えているためです。『百英雄伝』もその世界の中でのごく一部を描きだしたものなので、世界観を同じにする別タイトルを考えたいと思っています。
――吉隆さん、河野さんのお二人がコナミ時代に手掛けられた『幻想水滸伝』をプレイしたことがないという方も手に取るかと思いますが、そんなユーザーに向けてのアピールポイントがあれば教えてください。
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村山 JRPGが持つどんな人でも楽しめるという部分が『百英雄伝』には詰まっていますし、100人以上の大量のキャラを用意しているので、あなたが気に入るものが1人はいるはずです。
他にも色々な楽しみ方を含んだゲームシステム、ミニゲームや本拠街の運営、そして多数の魅力あるバラエティー豊かなキャラクターたちなど様々な要素を用意しているので、あなた自身で好みの遊び、好みのキャラクターを見つけ出してください。
――ありがとうございました。
『百英雄伝』は、PC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com)PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/ニンテンドースイッチ向けに2024年4月23日発売。Xbox/PC Game Passにも対応します。