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ゲームを開発する会社は無数にありますが、作り込みの凄まじさから“職人芸”と称えられ、20年以上も業界の最前線を駆け続けてきた開発者集団といえば、「ヴァニラウェア」を連想する人も多いことでしょう。
3Dゲームへの取り組みと進化が活気づいていた2000年代に、『グリムグリモア』や『オーディンスフィア』といった2D作品にこだわり、高評価を獲得。美麗な描画に手応え確かなゲーム性、魅力的なキャラクター陣と、多彩な特長でユーザーから熱烈な支持を集め、独自の地位と作品を築き上げてきました。
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同社が手がけたタイトルは名作・良作揃いですが、今回注目したいのは、当時の購入時に付属した特典たち。設定資料集やサウンドトラックCDなどが一般的ですし、同社もそういった特典を扱っています。が、毎回でこそないものの一部の作品では、ちょっと変わった特典をつけることもありました。
変わった特典とは、ずばり「ゲーム」です。まるで通販番組のように、“1本のゲームを買うともう1本ついてくる”というケースが、これまで何度かありました。しかも、通販番組だと同じものが2個になったりますが、同社がつける特典ゲームは、購入したゲームとは異なる完全な別作品。1本買うだけで、内容が全然違う2本のゲームが手に入ってしまうのです。
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こうした“おまけ”をつけるメーカーは他にもありますが、ヴァニラウェアは特典ゲームの作り込みも凄まじく、「単体で販売してもいいのでは?」と思えるようなものばかり。特典という枠では収まり切れないほどの内容や完成度に、ファンはたびたび驚かされました。
そして、先日発表された同社の最新作『ユニコーンオーバーロード』にも、ヴァニラウェアらしい特典ゲームの存在が判明。今度はどんな特典ゲームがお目見えするのか、そしてこれまでどんな作品を“おまけ”にしたのか。同社の特典ゲームについて振り返ってみましょう。
■PS4版『十三機兵防衛圏』の先着購入で、フルプライスのゲームが特典に!?
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SF群像劇のADVと、リアルタイムな戦局をデジタルな演出で彩るSLGを織り込んだ『十三機兵防衛圏』も、ヴァニラウェアの魅力がふんだんに詰め込まれた1作です。プレイ満足度が非常に高く、ロングランで累計販売本数100万本を超えるヒットを叩き出しました。
この『十三機兵防衛圏』の初出はPS4版(2019年発売)ですが、その先着購入特典として、『プリンセスクラウン』(以下、プリクラ)の復刻版が当時もらえました。『プリクラ』はファンタジー世界を舞台とするアクションRPGで、『十三機兵防衛圏』との関りは設定的にもゲーム的にも皆無です。
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一見関係がなさそうな『プリクラ』が、どうして『十三機兵防衛圏』の特典に選ばれたのか。その関連性の鍵はゲーム同士ではなく、ヴァニラウェアの代表取締役・神谷盛治氏にありました。
神谷氏は、ヴァニラウェアを率いると共に、長く活躍しているゲームクリエイターのひとりでもあります。その活動はヴァニラウェア設立以前から続いており、前述の『プリクラ』も彼が生み出した作品のひとつでした。
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仮に神谷氏の名前を憶えていなくとも、当時話題となった『プリクラ』を作った人物が、今度はSFADVを手がけた──となれば、俄然興味も湧きます。また、一時期ゲームを離れていたものの、『プリクラ』の存在がきっかけで舞い戻った人も中にはいたことでしょう。
また『プリクラ』は、オリジナルのセガサターン版のほか、のちにPSP版が登場。しかし、その後の動きはなく、現行機ではプレイできない環境にありました。ですが、PS4版『十三機兵防衛圏』の先着特典で付属した『プリクラ』は、PSP版を移植したPS4ソフト。そのため、PS4はもちろん、PS5でもプレイ可能です。
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『十三機兵防衛圏』という完全新作が、往年の名作『プリンセスクラウン』をPS4へ蘇らすという偉業を果たしました。この展開に『プリクラ』ファンも喜び、そして『十三機兵防衛圏』という作品を知るいいきっかけとなりました。
オリジナル版はもちろん、PSP版『プリクラ』も当時パッケージソフトとして売られていたゲームソフト。後に廉価版も出たとはいえ、最初は5,000円超えの定価で売られていたゲームが特典として丸々もらえる(しかもPS4版になって!)とは、まるで夢のような話です。
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ちなみに、このPS4版『プリンセスクラウン 復刻版』は先着特典だったので、新規入手はできません。PS4版『十三機兵防衛圏』を早期購入した人だけが味わえる、貴重な作品となりました。