KOHACHI STUDIOは、新作横スクロールアクションシューティング『Black Finger JET』をPC(Steam)向けに発表しました。
本作は、古き良き8wayエイミングのガンアクションを基本とした作品。プレイヤーはハンドガン・マシンガン・ショットガンなどの武器を使い分けてステージを攻略していきます。ときには万能で完璧な相棒「JETカー」に乗り、水陸空のさまざまなステージが待ち受けているようです。
開発メンバーにはakioやみいはあ、HIYA!、HAMACHAN、Kuichinと、これまで『メタルスラッグ』など多くの名作ゲームを生み出したスタッフが集結。さらに、ディレクターは高評価探索RPG『メルヘンフォーレスト』で知られる石黒しなのが担当するなど、信じられないような豪華メンバーによる一作です。
今回Game*Sparkでは「東京ゲームショウ2023」にて開発スタッフへのインタビューを実施しました。
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『Black Finger JET』開発メンバーインタビュー
今回インタビューに答えてくれたのは、本作のディレクター・石黒しなの氏と、プロデューサーのみいはあ氏。本作の開発経緯や作品に対する思いなど、さまざまなお話を聞かせていただきました!
――本日はよろしくお願いします。まずは、お二人の自己紹介をお願いします。
石黒しなの氏(以下、石黒氏) 株式会社KOHACHI STUDIO代表の石黒しなのです。本作『Black Finger JET』ではディレクターという立場を務めさせていただいています。
みいはあ氏 みいはあです。今作にはプロデューサーとして参加しています。開発中に誰にパスしたらいいかわからないような事案が発生したときは、とりあえず私に投げていただく…といった立ち回りをしています(笑)。
石黒氏 やはり『メタルスラッグ』チームの扱いに一番慣れている方ですから、困ったらみいはあさんに連絡するみたいな形ですね。レジェンドの方が多すぎるので僕だと扱いきれない時がありますので(笑)
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――石黒しなの氏はもちろん、少し前にTwitter開設で大きな話題になったakio氏、みいはあ氏やHIYA!氏などなど、本作は信じられないような豪華な開発メンバーですね。このドリームチームが再集結・結成された経緯を教えてください!
石黒氏 結成の流れとして、まず僕が『メタルスラッグ』『キング・オブ・ファイターズ』などのSNK作品で中高生時代を過ごしていたようなファンだったのがキッカケです。SNKファンだったからこそ、その後は当時のSNKプレイモアに就職したんですね。
僕としてはもちろんゲームを作りたかったのですが、配属されたのはパチスロ関連の部署でした。ですが、その開発部署には、みいはあさん達『メタルスラッグ』チームのメンバーもいらっしゃって。皆さんはもちろんパチスロでも面白いものを作ってくださっていたんですが、『メタルスラッグ』で育った人間としては正直なところ『メタルスラッグ』作ってよ!という思いがありました(笑)
その後僕はSNKプレイモアを退職したのですが、その時もみいはあさん達はパチスロを開発していました。でも、僕としてはいつかあのメンバーに「もう一度ゲームを作って欲しい!」という思いが忘れられずで。でも、当時の何の後ろ盾もない僕に「先輩!ゲーム作りましょうよ!」なんてとてもじゃないけど言えませんよね。
そこで、まず最初に、企業じゃなく個人でもゲーム開発をしてちゃんとお金を生み出せるという証明をするべきだと思いまして。そうして作り上げたのが『メルヘンフォーレスト』です。結果として『メルヘンフォーレスト』はそれなりにユーザーの皆様に受け入れていただけた結果となりました。
こうして、一人でゲームを作りきり、PCやコンソールなどの展開も繋げられ、お金も入り、とひと通りの実績を得たことで、ようやく自信がついて先輩方に声をかけさせていただきました。
ひとことでまとめるなら、長年の僕の夢を、レジェンドの皆様にご快諾いただけたのが今回の経緯ですね。
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――お話を受けた時にみいはあ氏はどう思ったのでしょうか?
みいはあ氏 その頃の私はすでにゲーム開発の現場から離れていて、田舎で別の仕事に就いていました。
そんな時に「もう一回やりませんか」というゲーム開発の話が石黒くんから来たんです。最初はもっとこぢんまりとチームとか会社とかじゃなくて、僕ら2人だけでやれるものをやろうという話でした。石黒くんと2人だけでやるというので、それは思ったままのことが出来そうだなと思いました。
それでも最初はかなり悩んでいたんですが、彼は言い出したら聞かない性格で、最終的に「やろう!」となりましたね。
――最初は2人で進めていたプロジェクトだったんですね。
石黒氏 はい、実は最初はRPGを作っていたんですよ。ですが、プロジェクトを進めていくうちに他のメンバーとも繋がりができるようになり、これはプロジェクトへお誘いするチャンス……!と思いまして。
みいはあ氏 ある程度プロジェクトが進んでくると、例えばプログラムは誰にやってもらえばいいかな、みたいな感じでメンバーを集める形になりました。
石黒氏 そうして、私がずっと夢見ていたドリームチームの方々へとお声がけをさせていただく流れになっていきます。誰々が参加するなら…というように、レジェンドが次のレジェンドを呼ぶような状況で皆様にお願いしたりしました。
SNKプレイモアで素晴らしい先輩たちに恵まれたなと思いますし、その出会いには今でも感謝しています。
――レジェンドが次のレジェンドを呼ぶ、この出会いは映画ですね。これはもう映画化しましょうよ(笑)
両氏 (笑)
――石黒氏の『メルヘンフォーレスト』は今でも好評ですし、かなりボリュームのあるゲームですよね。本当に強い意志を持って制作されたんですね。
みいはあ氏 (一緒にゲームを作ろうと誘いたい)目的があるとは言え、実際に作るというのはすごいことだと思いますよ。最初に誘われたときに「こういうゲームを作ったので見て話を聞いてもらいたい」と言われたんです。
それで私は「(『メルヘンフォーレスト』の)どの部分を作ったんだ?」と聞いたんですね。そうしたらゲームのストアページが送られてきたんです。それで最初は「もっとわかりやすく教えろ」と聞いたんですが、そうしたら「全部だ」と言われて(笑)。3回くらい聞き返しました。
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――みいはあ氏はインディーゲーム市場についてどう考えていましたか?
みいはあ氏 ゲーム作りからはすでに離れていましたが、ゲームにはより密接に触れていた時期なのでそういった市場があるのは理解していました。誰にでも受けるものではなく、好きな人に向けた作品を小規模でやっていけば十分商売になる、十分存在感のあるものになるだろうなと思いました。
これは昔のように会社に所属してやっていたら難しかったんだろうなとも思いますね。
石黒氏 『メルヘンフォーレスト』は5年間かけて制作してきました。妻にはその想いを告げていましたが、他には誰にもその目的を言ってこなかったんです。それくらいやらないと、一緒に作りたいレジェンドたちに失礼だよなと思っていました。
その目的があったからこそここまで突き進んで来れましたし、開発もまったく苦にならなかったですね。
――そうしてドリームチームが集まったことで、やはりジャンルとしてアクションシューティングにシフトしていったのでしょうか?
石黒氏 そうですね。みいはあさんとakioさんが揃って、このメンバーなのに「RPGを作ってます」じゃ世の中に怒られると思いました(笑)
なのでまずはラン&ガンのゲームを作ることにしました。開発メンバーに聞くと、やはり色んなジャンルのゲームを作ってみたいという思いはあるのですが、それは次に置いといて、やはり最初はみんなが待ち望んでいるものを作ろうという形になりました。
――公開されたトレイラーでは主人公たちやクリーチャー、メカと多種多様なカットが見られます。まさしく見たいものが見られたんですが、公開されてからの反響はどのような感じだったのでしょうか?
石黒氏 予想より遥かにすごかったですね。目指していたSteamのウィッシュリスト数があったのですが、ありがたいことに、大きく上振れしました。たくさんのポジティブなご感想や、応援のコメントをいただきとても感謝しています。
Steamの掲示板にも色々な書き込みをいただいていますが、是非色々書き込んでいただけると嬉しいですね。
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――かなりワールドワイドな反応があったと思います。
石黒氏 日本よりも海外の反応のほうが大きかったですね。掲示板やX(旧Twitter)などでも英語での反応が非常に多いです。海外にファンが多いんだなと言うのは肌で感じています。
みいはあ氏 もともと『メタルスラッグ』は、当時のゲーセン事情もあったのですが、海外のプレイヤーがワクワクするような内容を目指していたところもあります。今回の反応も踏まえて、『Black Finger JET』がワールドワイドな展開を目指すのも自然なことなんだろうなと思いますね。
――『メタルスラッグ』と『Black Finger JET』は、主人公や世界観の雰囲気が少し異なる印象です。今作のコンセプトについて教えてください。
石黒氏 世界観の設定やコンセプトは基本的にメインアーティストのakioさんが担当しています。akioさんとしては、また『メタルスラッグ』のような戦争ものにしたら、過去の自分への挑戦になってしまうし、すでに完成してる世界観や過去の自分に挑む必要はないなと思ったようです。
なので、せっかく次をやるんだからもっとバラエティ豊かな、新しい世界観を造りたかったと言っていました。『Black Finger JET』の世界観にしたことで、当時使えなかったアイデアなども盛り込まれています。
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――『メタルスラッグ』の完成されている世界観だからこそ、シリーズファンが求めているものがありますね。だからこそ当時活かせなかったものというのがあるんですね。
石黒氏 そうなんです。なので『Black Finger JET』には『メタルスラッグ』で没になったアイデアが実は採用されていたりします。アイデア稿なんかでは昔のキャラクターの名残があったりしてるものもありますよ(笑)
例えば、“カメラが回り込む”という表現はハードや手間などの制約から、『メタルスラッグ』開発当時では表現が難しかったですが、『Black Finger JET』では3Dと融合することで、そういった表現が使えるようになっています。
――多くのレジェンドが揃っているだけでなく、石黒氏もSNKプレイモアに所属していたこともあります。そういった意味でSNKとしっかり関係を築いて開発を進めているんですね。
石黒氏 そうですね、SNKさんとは慎重に良い関係性を築きながらやらせてもらっています。今回のTGSでも、個人的に何人もSNKの方がブースにいらっしゃって「応援しています!」という声をかけていただきました。
――SNKの遺伝子もしっかり受け継がれているんですね。
石黒氏 SNKというだけでなく、もっと遡ってアイレム、そしてNazca(ナスカ)の系譜じゃないかなと僕は考えています。アイレムとナスカの血がSNKに入ってきたものであり、その系譜ですね。
みいはあ氏 『メタルスラッグ』チームが集合して完成する新作が『メタルスラッグ』と同じものだったら、ある意味お客さんにとって期待外れになってしまうんです。それはもう『メタルスラッグ』でやってるじゃないかと。
なので『Black Finger JET』ではテーマや世界観も異なりますし、グラフィック表現もドット絵と3Dと融合させるなど見た目も大きく変えています。お客さんの期待をいい意味で裏切るべく、意識して進めている部分ですね。
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――ゲームのジャンルはラン&ガンの横スクロールアクションシューティングゲームということですね。ステージ内で武器を拾いながら進んでいくイメージでしょうか?
石黒氏 そうですね。武器を拾って「ヘビーマシンガン!」と言うような感じですね(笑)
――数多くのメカやクリーチャーのようなakioさんのデザインはとても痺れますね!ギャラリーなどでじっくり見るような機能はありますか?
石黒氏 現在はまだまだゲームの開発を最優先しているので、そういった機能まではまだ考えていませんでしたが、akioさんから提出される設定画や、企画が素晴らしいものばかりなので、是非それらを公開するような機会を用意したいと考えています。
――ゲームの「JETカー」の説明にワクワクしています。色々な変形やスーパー機能が見られそうですね。
石黒氏 『メタルスラッグ』でもあったような陸海空のステージは当然ありますし、ちょっとオカルティックな雰囲気もありますね。僕も知らないような驚きのアイデアがakioさんからまだ出てくるのではないかと思います。
akioさんはかなり色々なアイデアを出す人でこちらも驚くことがあるのですが、どれも面白い内容ですね。
――『メタルスラッグ』での捕虜は、今作ではどういう存在なのでしょうか?
石黒氏 akioさんのX(旧Twitter)にも投稿されていますが、眼鏡のキャラクターがそれに該当します。「捕虜のエージェント」ですね。
――今回はまずSteamでのリリースが発表されています。今後のコンソール展開などは考えているのでしょうか?
石黒氏 そこは前向きに検討しているということで(笑)
――最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします!
石黒氏 僕は『メタルスラッグ』『R-TYPE』のファンとして育った子供で、そのファンがレジェンドに「あのときみたいに、またゲームを作ってよ!」とお願いしている作品です。当時ゲームセンターに通ってた人々はきっと喜んでもらえると思います。楽しみに待っていてください!
みいはあ氏 開発チームも老体にムチを打って頑張って開発しています。ぜひともリリースまで名前を忘れずに応援していただければいいなと思います。
――ありがとうございました!
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『Black Finger JET』はPC(Steam)向けに発売予定。石黒しなの氏およびakio氏のX(旧Twitter)では、さまざまな情報やアートも紹介されているので、こちらも要チェックです!
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