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1986年にアーケードでデビューしてから現在に至るまで、メーカーが変わっても何かしらの作品がリリースされ続ける『くにおくん』シリーズ。ベルトスクロールアクションというジャンルの始祖といえるシリーズでありながら、シリアスなドラマを描くものから時代劇や魔法ファンタジーなど変わった舞台設定のもの、果てはドッジボールや運動会などハチャメチャなスポーツを繰り広げるものまでかなり様々なジャンルに手を広げ、プレイヤーを夢中にさせてきました。
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本シリーズは家庭用を中心に作品が展開されてきたことも特徴ですが、1989年にリリースされた『ダウンタウン熱血物語』はまさにその象徴のような作品のひとつ。サクサクとステージを進んでいくアーケード式のゲームプレイではなく、戦闘を繰り返してお金を入手し、アイテムを買い集めてキャラを成長させていくというアクションRPGのようなデザインとなっており、じっくり遊ぶベルスクとして高い完成度を見せました。
本稿では、そんな『ダウンタウン熱血物語』をリブートし、よりアクションRPG色を強めた形に再構築した『ダウンタウン熱血物語SP』のプレイレポートをお届け。オリジナルである3DS版は近年の『くにおくん』シリーズの中ではトップクラスに評判の高い作品ですが、より触れやすくなった現行機移植版でどのような魅力を持っているのかチェックしていきます。
なお、プレイしているのはニンテンドースイッチ版ですが、Steam版は現在コントローラーや操作周りの不具合が発生しているそう。購入の前にしっかりと情報を確認し、今後のアークシステムワークスの発表をお待ちください。
より“ガチ”なアクションRPGに進化!
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物語は、『ダウンタウン熱血物語』の前日譚から始まります。「熱血硬派」の異名を持つくにおがとある夜を過ごしていたところ、突如として謎の2人組に襲われます。警察の介入によりその場のピンチは逃れられたものの、これをきっかけに他校との争いや街でうごめく陰謀に巻き込まれていきます。
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メインモードでは、くにおくんを操作して3日間を過ごします。なにか行動をするたびに時間が経過していくので、3日間のうちにできることは限られています。街を歩いていると様々な事件やイベントに巻き込まれ、体験するイベントや戦う相手などを選ぶことによって結末が変化。1周のプレイ時間は早くて2時間、長くても3時間前後なので、何度も周回して様々なイベントを楽しむようなつくりになっています。
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街へ繰り出し「よし、ケンカしまくるぞ~!」と意気込んだ筆者でしたが、序盤からつまづきポイントが。ケンカをふっかけてくる敵の耐久力が非常に高く、ザコっぽい敵にもまったく打ち勝つことができないのです。めっちゃカッコ悪い……!
先述したとおり、本作はアクションRPG。アクションの腕前だけでなく、くにおを成長させることが攻略のカギとなっているのです。
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強化の方法は大きく分けて三通り。ひとつめは、技や身体を強くしていくという方法です。ミッションを進めたり弱い敵を見つけて倒したりしてレベルアップするとレベルポイントが獲得でき、それを割り振ってパンチやキックなどの技や打たれ強さなどを強化できます。ベースの身体能力が向上するため、成長すればするほどより多くの敵に勝てるようになってきます。
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次に、くにおが身につける学ランや裏ボタンといった装備を強化するという方法。とあるお店で買うこともできるのですが、ハクスラ的な要素を備えているため強敵を撃破することでレア度の高い装備がドロップすることがあります。装備によってステータスが底上げされたり、スキルが付与されたりと戦い方に変化をつけてくれます。
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最後は、敵を倒して得たお金を使って本屋で教本を買うという方法です。教本をゲットすればSPゲージ消費で使える非常に強力な必殺技が解禁されていき、より有利に戦うことができます。高速で3連パンチを繰り出す「マッハパンチ」など使い勝手の良い技のほか、ジャンプを押すだけで攻撃が繰り出せてしまう「スクリュウ」などのチート級の技まで揃っています。
筆者はオリジナル版の『ダウンタウン熱血物語』しかプレイしていなかったため、同作よりも成長要素が豊富になっていることに驚かされました。最初はザコ敵にボコボコにされるのには面食らいますが、それ故に成長させればどんどん倒せる敵も増えていくのが気持ちよく、徐々に強くなっていく楽しみを味わえます。FC版でみられた死亡時に所持金が半分になる仕様も無くなっており、快適さも向上しています。
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街を自由に歩いて3日間を過ごし、時折起きるイベントで展開や結末が変わるというシナリオのシステムも正当な進化であると感じます。筆者が選んだシナリオは、黒い噂が耐えない暴力校・冷峰学園と対峙するというもの。
街を歩くとどこからともなく他校の不良に襲われるくにおは、さまざまな経験を経て、徐々に冷峰の情報を掴んでいきます。他校生徒と意気投合するアツいシーンや夜のキャバクラで情報収集というドキドキのシーンなど見どころも多く、3時間のプレイながら非常に満足感がありました。
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ただし、シナリオ自体はかなり大きな謎を残していてあまりスッキリしない終わり方なので、別のエンディングもぜひ見てみたいところ。2周目は所持金やステータスが引き継がれるので、周回プレイがしやすいのも嬉しいポイントです。
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シナリオの大筋はシリアスでアツい展開であるものの、コメディチックなテイストのメッセージでも好印象。某バーガーショップ風の店で“スマイル”を頼むと「思わず店員さんも苦笑いだ!」とツッコまれたり、コンビニにある“いやらし本”が未成年のため買えなかったり……と、思わずクスっとくるネタが随所に仕込まれています。
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気になる点があるとすれば、初回プレイだと時間の感覚がわかりづらいということ。本作では何をするにも時間を消費するシステムですが、初回プレイは意外と時間があまることが多め。快適なプレイには時間を飛ばすアイテムや施設が必須なのですが、どの程度飛ばしていいものか、どの程度時間スキップにお金を費やしていいものかといったバランスがわかりません。
プレイを重ね、用意された施設やアイテムの使い方、そしてイベントリストの見方などを覚えれば身についていきますが、特に何もせず過ごしてしまう時間も多くありました。初回プレイでは進行したいイベントをひとつに絞り、細かい探索や他のミッションは後回しにすると遊びやすいかもしれません。
『ダウンタウン熱血物語SP』は、アーケードではなく家庭用として発展することを選んだ『くにおくん』シリーズとして成熟した印象です。幅広い成長要素や繰り返しプレイしたくなるシナリオシステムを備えており、1周は短いながらも全体としてギュッと詰まった体験に仕上がっていると感じます。
まだ本作のすべてを味わい尽くしていないためわからないこともありますが、「アクションRPG」としてのベルスクとしての完成度は高く、近年の『くにおくん』シリーズの中でも人気が高い理由も頷ける作品となっていました。
『くにおくん』がどのような進化を遂げたかがわかる一作スパ!
対応機種:PC(Steam)/PS4/ニンテンドースイッチ
記事におけるプレイ機種:ニンテンドースイッチ
発売日:2023年10月12日
記事執筆時の著者プレイ時間:3時間半
価格:3,740円