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「最も売れたステルスゲーム」としてギネス世界記録に認定されている『METAL GEAR(メタルギア)』シリーズ。昨年で35周年を迎え、現在でも多くのファンを抱える本シリーズですが、長らく新作が途絶え、過去作品の多くが現行機で遊べない状況が続いていました。
しかし2023年10月24日、シリーズ正史である『メタルギア』サーガから『METAL GEAR(MG)』『METAL GEAR 2 SOLID SNAKE(MG2)』『METAL GEAR SOLID(MGS1)』『METAL GEAR SOLID 2 SONS OF LIBERTY(MGS2)』『METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER(MGS3)』の5タイトルを収録した『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1』がPS5/PS4/Xbox Series X|S/ニンテンドースイッチ/Steam向けに発売されます(PS4/Xbox Series X|SはDL専売)。
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各作品への理解を深められるデジタルブックに加え、かつて「恐らく最初で最後の復活」とされ再復刻が絶望視されていたFC版『METAL GEAR』、そのNES版の海外限定でリリースされた続編『SNAKE'S REVENGE』なども収録した豪華コレクションとなっています。
筆者は正史とされているシリーズ作やPSP向けの外伝作をプレイしてきましたが、このたび本作Steam版を先行プレイする機会に恵まれたので、各タイトルのプレイフィールをご紹介。FC版『METAL GEAR』ならびに『SNAKE'S REVENGE』については、別記事にて詳しく解説します。
なお本記事に記載されている内容は、各作品のオンラインマニュアルが未公開な時点でのプレイを元にしているほか、発売後の製品版と一部仕様が異なる可能性もあるのでご了承ください。また記事執筆時点でデジタルコミック『METAL GEAR SOLID BANDE DESSINÉE』『METAL GEAR SOLID 2 BANDE DESSINÉE』は未配信であるため、本記事での紹介は控えさせていただきます。
合計1,500ページ以上!?本編を余すところなく楽しめるデジタルブック
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まず、本コレクションの特徴として(ボーナスコンテンツ収録作を除く)各作品にはデジタル書籍「マスターブック」ならびに「シナリオブック」が付属。「マスターブック」ではその作品のストーリーや登場人物、さらには他タイトルとの繋がりや隠し要素を含めた攻略情報も掲載された、「マスター」の名にふさわしいファン垂涎の内容となっています。
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一方、「シナリオブック」ではキャラクター達のセリフが掲載されていますが、前後の状況に関する注釈もあるため実質“小説版”としても楽しめるほか、無線会話から“MGS2の「オウム」”のような細かい部分も網羅されており、MGS3に至っては700ページ近くもある大ボリュームぶりです。また、デジタルブックには“目次”“ブックマーク”のような基本機能だけでなく、それぞれの作品に対応したBGMを流すこともでき、各シーンの情景を鮮明に思い浮かべる一助となります。
サーガはここから始まった『METAL GEAR』&『METAL GEAR 2 SOLID SNAKE』
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シリーズの原点である初代『METAL GEAR』とその続編『METAL GEAR 2 SOLID SNAKE』。MSX2で発売された両作品は“敵から隠れながら潜入する”見下ろし型のアクションゲームです。特に初代は『ステルス要素を完全に取り入れた最初のビデオゲーム』としてギネス世界記録に認定され、“無線通信”や“ダンボール”といった後のシリーズお馴染みの要素もこの時点で既に登場しました。
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過去に様々なハードでリリースされた両作品ですが、今回のコレクションでは2011年に発売された『METAL GEAR SOLID HDエディション』のものと同様、「復刻版」が収録されています。こちらはオリジナルと違い、テキストが読みやすくなっているほか、難易度「EASY」や一部グラフィックの変更(MG2)、クリア後の追加要素などを備えたバージョンです。
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また『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1』では、オプションとして「言語選択」と「画面設定」も用意されており、多言語版でのプレイ、画面の余白を埋める壁紙や画面位置などの調整が可能です。
令和の時代に改めてプレイすると、両作品はシリーズ初期ながらも既にシリーズの土台が完成されており、30年以上経っても色あせない、当時のステルスゲーム最高峰の体験を味わえました。
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特に『MG2』からはテキスト量が増え、主人公であるソリッド・スネークや宿敵であるビッグボス、そしてサブキャラクターたちの性格や背景の掘り下げが行われているほか、“東西対立”といった現実とリンクする要素が盛り込まれており、小島秀夫監督特有の重厚なストーリーを楽しめます。
他シリーズと比べクリアまでの時間が短めとなっているため、ドットグラフィックに抵抗が無ければ、是非シリーズ入門用としてもお勧めしたい作品です。
あの隠し要素も余すことなく楽しめる!『METAL GEAR SOLID』
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『METAL GEAR SOLID』とは、シリーズ初のフルポリゴンかつフルボイス作品です。後のシリーズでも見られる、ドキュメンタリーのような実写映像を交えたカットシーンが採用されたのも本作品から。アイデンティティとしての“遺伝子(GENE)”をテーマにしたストーリーが展開され、米フォーチュン誌からは「20世紀最高のシナリオ」と評価されています。
本コレクションではオリジナルの『METAL GEAR SOLID』だけでなく、主観に特化したモードやVRトレーニングの新ステージなど数々の要素を追加した『METAL GEAR SOLID INTEGRAL(インテグラル)』、そしてVRトレーニングに特化した海外向けタイトル『METAL GEAR SOLID VR MISSIONS』/『METAL GEAR SOLID SPECIAL MISSIONS』を収録し、今回プレイしたSteam版は出力解像度1920x1080(アップコンバート)、最大30fpsでの動作となっています。
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ゲーム部分に大きな変更点はありませんが、本コレクションでは「画面設定」にくわえ、ボタン配置変更だけでなく“2Pとして接続”できる「コントローラー設定」、仮想メモリーカード内に他KONAMI作品のデータを追加できる「セーブデータ編集」と、“わかる人にはわかる”本作を余すことなく楽しむためのオプションが充実しています。
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本作の見どころはなんといってもその名言の数々です。フルボイスになったことでキャラクター達に感情移入しやすくなったことに加え、本作のエンディングテーマ曲「THE BEST IS YET TO COME」が流れる場面はどれも名シーンばかり。戦場の中で各々が見せる人生観や独特の哲学、そして人間ドラマには思わず胸を打たれます。
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なお、本作は『インテグラル』が「完全版」とされているものの、このバージョンは英語音声になっているほか、一部字幕やテキストにも変更が加えられているので、シリーズ初のプレイヤーはオリジナル版からプレイするのがオススメです。またオリジナル版のクリアセーブデータがあれば、インテグラル版を遊ぶ際に2周目以降に解禁される一部要素をはじめから体験できます。
現代にも通ずるデジタル社会への警鐘『METAL GEAR SOLID 2 SONS OF LIBERTY』
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最も売れたステルスゲームであり、人から人へと受け継がれる“MEME(文化的遺伝子)”をテーマにした『METAL GEAR SOLID 2 SONS OF LIBERTY』。新主人公である“雷電”をメインにストーリーが展開され、本作が鳴らすデジタル化社会への警鐘は発売当時だけでなく、20年以上経つ現代にも通じる内容です。
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ゲーム面においてはエルード(ぶら下がり)、ローリング、ホールドアップといった要素が新たに登場し、ステルスアクションに磨きがかかったほか、麻酔銃によるノーキル(非殺傷)プレイやドッグタグ収集といったやり込みも充実しています。
本作はオリジナル版にくわえ、ソリッド・スネークが主役の外伝ストーリー「SNAKE TALES」などを追加した『METAL GEAR SOLID 2 SUBSTANCE(MGS 2 サブスタンス)』が後に発売。サブスタンス版は英語音声のみとなっており、大塚明夫氏をはじめとする日本声優陣に拘りのあるプレイヤーには、追加要素との悩ましい二者択一となっていました。
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本コレクションに収録されているリマスター版『METAL GEAR SOLID 2 HDエディション』では、『MGS 2 サブスタンス』の殆どの要素を引き継ぎつつ日本語音声を実装しているため、上記のジレンマが解消されています。また、英語音声を聞きたい場合はゲーム起動前のオプションから海外版を選択することも可能(※表示されるテキストは選択した言語に準拠します)。
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また、今回プレイしたSteam版は出力解像度1920x1080(アップコンバート)、最大60fpsで動作します。
サーガの始まりを描いた意欲作『METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER』
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アメリカとソ連が対立していた冷戦時代。『METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER』は、その中でも世界がキューバ危機を乗り越えた直後―1964年を舞台にした作品です。“時代(SCENE)”をテーマに、時の中で移り変わる政治や立場、そしてそれに翻弄される人々を描く一方、本作は“ビッグボス”誕生の物語でもあり、『メタルギア』サーガの時系列上で最古に位置します。
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過去作では“人工的な建造物”への潜入がメインでしたが、今作は主に“大自然のジャングル”を進みながら任務を遂行することになります。システムにはフェイスペイントや迷彩服を使い環境に自身を溶け込ませる“カムフラ―ジュ”、捕らえた動植物を食糧にする“キャプチャー”、骨折や切創などを自力で治療する“キュアー”などが追加され、サバイバルゲームとしての側面が強めに。
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さらに、新アクションの近接戦闘術“CQC”の登場だけでなく、起伏や草むらがある、隠れる場所の多い自然環境を活用したプレイングも可能になったため、アドリブで臨機応変にゲームを進めやすくなりました。後に発売された『METAL GEAR SOLID 3 SUBSISTENCE(MGS 3 サブシスタンス)』では、シリーズ初のオンライン対戦モード『METAL GEAR ONLINE(サービス終了済み)』にくわえ、自由に視点を操作できる“3Dカメラ”などが導入されています。
本コレクションでは『MGS 3 サブシスタンス』から一部要素を引き継ぎ、HD&高フレームレート化した『METAL GEAR SOLID 3 HDエディション』を収録。今回プレイしたSteam版は出力解像度1920x1080(アップコンバート)、最大60fpsで動作します。
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また、移植元のHD版は一部機種で“「SNAKE EATER」が流れるOPで映像と音楽がズレてしまう”不具合が起きていましたが、本コレクション収録にされているものはオリジナルと同じタイミングで音楽が再生されるようになっています。
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オリジナル版『MGS3』は前作(サブスタンス版)と比べると、VRミッションこそありませんが、隠された小ネタの数々やプレイ自由度の高さは目を見張るものがあり、本編のリプレイ性という観点ではシリーズトップクラス。現在開発中の本作リメイク版『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER』発売前に遊び、“あの部分はどう変わっているのだろう”と想像し、思いを巡らせるのもまた一興です。
おわりに
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本作は『メタルギア』シリーズを現行機で遊べるようにした『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION』の第一弾。筆者は今回が5年以上ぶりの再プレイでしたが、どの収録作も2005年以前とは思えない完成度であり、最後までクラッシュなどに遭遇せず遊べたほか、先行プレイ時点でキーボード操作(一部作品は+マウス操作)にも対応しているようです。デジタルブックなどのゲーム外コンテンツも充実しており、各作品プレイ後も楽しめるコレクションとなっています。
また今回収録されていないサーガ作品には、『METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS』をはじめとした名作がまだまだあるため、コレクション第二弾にも期待です。
『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1』は、PS5/PS4/Xbox Series X|S/ニンテンドースイッチ/Steam向けに2023年10月24日発売です。
©Konami Digital Entertainment