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“ゲームでステルスアクションといえば?”と聞かれれば多くの人が名を挙げるだろう、タクティカル・エスピオナージ・オペレーション『METAL GEAR(メタルギア)』。2023年時点でシリーズ累計販売本数は6,000万を突破しており、「最も売れたステルスゲーム」としてもギネス世界記録に認定されています。
先日には最新プラットフォームでシリーズ作を楽しめる『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION(MASTER COLLECTION)』のVol.1が発売され、新規参入もしやすくなりました。
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記事公開時点で初代『メタルギア』から『METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER(MGS 3)』までのサーガ(正史)作品が復刻されており、同コレクション公式サイトに“順次お届け”と記載されているため、今後発売されるであろうVol.2では『METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS(MGS4)』から『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN(MGSV: TPP)』までの作品が収録されることが予想されます。
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そこで気になるのが“ボーナスコンテンツはどうなるのか?”という点です。『MASTER COLLECTION Vol.1』では収録ゲーム以外にも、バンドル購入時のボーナスコンテンツとして映像作品やサウンドトラックだけではなく、シリーズ原作者・小島秀夫監督が関わらなかったゲームFC/NES版『METAL GEAR』と『SNAKE’S REVENGE』が用意されていました。
Vol.2でもボーナスコンテンツの収録が期待されますが、本記事では“ぜひ復刻して欲しい作品”として、PlayStation Portable(PSP)向けに発売されたスピンオフ『METAL GEAR AC!D』&『METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS』シリーズ4タイトルを一挙にご紹介。記事内では“何らかの奇跡が起きて本当に復刻された”ことも想定し、新規プレイヤー向けにネタバレを控えた作品解説する前編と、“なぜ復刻して欲しいのか”をネタバレありで語る後編に分けて紹介していきます。
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なお、本記事に掲載しているスクリーンショットはPSPの外部出力機能を使い、それをキャプチャーボードで録画したものから出力しているため、実機の画面と映り方が異なる可能性もあるのでご了承ください。
ストラテジー×カードゲーム!重厚なミステリーも魅力の『METAL GEAR AC!D』
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『METAL GEAR AC!D(AC!D)』とはシリーズ従来のステルスに加え、カードとストラテジー要素を混ぜ合わせた思考型潜入ゲームです。何者かに乗っ取られたジャンボ旅客機326便、ハイジャック犯が要求する謎のプロジェクト「ピュタゴラス」を奪取するため、「ソリッド・スネーク」がロビト島の極秘研究所に潜入します。
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ゲームは事前にデッキ組み、カードを活用しながらグリッド制のマップを攻略していくことで進行。各ミッションには過去シリーズ作を彷彿させるシチュエーションも存在するほか、基本的に敵に見つからない方が有利なゲーム性もあり、異例のジャンルながらも“潜入任務”を表現しています。
しかし、第一作ということもあってかゲームバランスは粗く、調整不足に感じる部分が多めです。例えばマップ中の自動ドアは、キャラクターをドアの前で立ち止まらせなければ開かないため、移動距離の残数に関わらず毎回ドア前で足止めをされ、ゲームスピードに支障をきたしています。
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また、本作は毎ターン開始時などにデッキからランダムでカードを手札に加えるシステムとなっていますが、「カードキー」のようなミッション中のギミックを解く際に必要なアイテムも“カード”となっているため、それらが手札に無い場合はひたすらターンを消費してカードを引き続けなければいけません。
全体的に“ステルスアクション”ジャンルの他シリーズ作であれば問題ない部分が多々見られ、“『メタルギア』らしさ”と“本作特有のゲームコンセプト”のすり合わせが上手く行っていなかった印象を受けます。
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一方ストーリーに関しては非常によく練られており、ミステリー色の強い謎が謎を呼ぶ展開に怒涛の伏線回収、キャラクターたちの背景説明もゲームテンポを崩さないバランスで物語に組み込まれ、『メタルギア』シリーズ全体で見ても完成度の高いシナリオです。
ちなみに本作は、“最も売れたPSP向けストラテジーゲーム”としてギネス世界記録に登録されています。
前作の欠点を乗り越えゲーム性が大幅に進化!『METAL GEAR AC!D 2』
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魅力的なゲームコンセプトを備えつつも多くの課題を抱えていた初代『AC!D』。『METAL GEAR AC!D 2(AC!D2)』はその殆どを解決しつつ、新たな要素が導入された(記事公開時点における)『AC!D』シリーズ最終作です。かつてセレナ共和国でレジスタンス活動をしていた「スネーク」が、逃亡先で囚われた仲間の開放と引き換えに軍事会社「ストラテロジック社」へ極秘調査のため潜入したことを皮切りに物語が展開されます。
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本作ではグラフィックがアメコミ調に一新され、キャラクターの3Dモデリングにアウトラインが追加されたほか、全体的な色遣いも派手目に変更。ストーリーも終始シリアスな一作目から、比較的カジュアルなノリになっています。
ゲーム性においては新カードやカードのアップグレードなどに加え、移動中にドアが開扉するため立ち止まらずに済んだり、「カードキー」のギミックが撤廃されたりするなど、ゲームテンポが大幅に改善されました。
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また、新要素として通信対戦機能「LINK BATTLE」、『メタルギア』シリーズキャラクターと戦える「アリーナモード」、立体視映像を楽しめるゲーム同梱の紙製スコープ「SOLID EYE とびだシッド」を使ったコンテンツも追加されています。
外で遊べる本格3Dステルスアクション!『METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS』
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『METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS(MPO)』とは、2006年12月に発売された『MGS 3』と初代『METAL GERA』のミッシングリンクを繋ぐストーリーが展開されるスピンオフ作品です。スネークイーター作戦から6年後、かつて自身が所属していた特殊部隊、FOXの軍事クーデターに巻き込まれた「ネイキッド・スネーク(ビッグボス)」が若き日の「ロイ・キャンベル」と協力し、彼らに対抗するため現地で仲間を集め、共に敵地へ潜入していきます。
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本作は携帯機向けでありながらも、本家『MGS』シリーズのような3Dステルスアクションとして仕上がっているほか、後発の正史作品で見られる“仲間を集め、部隊を編成する要素”もシリーズ初登場しました。
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仲間には敵地で捕獲した兵士以外にも、Wi-Fiスポットなどからのリクルートに加え、一定条件を満たした上でのサブイベント等を通して入手でき、中には「山猫部隊員」や「GRU兵」のような『MGS3』本編の一般兵士だけでなく、「パラメディック」や「EVA」といったメインキャラクター達も存在(『AC!D』シリーズのヒロイン2名もゲスト参戦)。何れもプレイヤーキャラクターとして操作可能なため、見るからに非戦闘員な兵士で戦場を駆け巡る、シュールでありながらもロマンのある遊び方もできます。
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また本作はローカル(アドホック)・オンラインでの対戦要素も充実しており、相手を倒して得点を競い合う「デスマッチ」や、ステージ内に設置されたケロタンを奪い合う「キャプチャーミッション」などのルールがあるほか、ゲームを所持していないプレイヤーとは、PSPのゲームシェアリング機能を使ったフリー対戦が可能でした(オンラインは記事公開時点でサービス終了済み)。
対戦だけじゃない!ローグライトも楽しめる『METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS+』
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『MPO』発売から約1年後、ストーリーモードをオミットし、対戦と部隊編成要素を拡張した『METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS+(MPO+)』がリリースされました。
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本作では対戦ルールにターゲットを射撃して得点を稼ぐ「シューティングレンジ」のほか、コミュニケーションに特化した「チャットルーム」(チャット機能自体は他ルールでも使用可能)が新設。
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対戦マップには『METAL GEAR ONLINE(MGS3 サブシスタンス版)』から移植されたものだけではなく、なんと初代『METAL GEAR SOLID』から「REX HANGER(REX 格納庫)」も同作BGMの「ENCOUNTER」アレンジ版と共に収録されました。
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なお、シングルプレイ向けには「インフィニティミッション」が追加されており、武器・装備ともに現地調達しながら、ゴール地点がランダムに設置されたステージを連続で攻略していくモードとなっています。本モードでは「EASY」から「EXTREME」までの難易度があり、自身の部隊を強化したい場合は単にクリアするだけではなく、道中の敵兵を捕獲したり、兵士のスキルを強化できるアイテムの回収も狙ったりしなくてはいけません。
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高難度のミッションを攻略する際は“どの武器・装備を優先的に拾うべきか”や“いかにスタミナを管理するか”などのポイントにも気を遣う必要があり、そのプレイフィールはさながら“ローグライト”と呼ばれるゲーム達と同様、なかなかに中毒性のあるやり応えです。
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また、本作はプレイヤーキャラクターのバリエーションも大幅に増加。『MPO』では舞台設定を考慮してか一部例外を除き『MGS3』のキャラクターが中心となっていましたが、『MPO+』では初代『MGS』と『MGS2』の一般兵に加え、「雷電(MGS2)」や『MGS4』の「オールド・スネーク(ソリッド・スネーク)」も登場し、“メタルギア・オールスター”と言っても差し支えない豪華メンバーとなっています。
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ちなみに、『MPO』から本作へセーブデータを引き継いだ際は「BOSS RUSH」モードが追加され、本編に登場したボス達と戦うことが可能です。
『AC!D』&『OPS』シリーズを『MASTER COLLECTION Vol.2』に入れて欲しいそのワケ
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ここまで各作品の概要を紹介してきましが、本項では“今後発売されるであろう『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.2』でなぜ復刻して欲しいか”を説明していきます。説明の都合上、ストーリーの核心に触れているので“自分でプレイしたい”方などは閲覧にご注意ください。
サーガ作品とセットならより楽しい!ストーリーの続きも気になる『AC!D』シリーズ
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シリーズの大半がアクションであることを考慮すると、『AC!D』はターンベースゆえに『メタルギア』ファンの間でも好みが分かれるかもしれません。しかし、過去作品を追える『MASTER COLLECTION』があるからこそオススメしたい作品でもあります。
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例えば、『AC!D』シリーズに登場するカードの多くは『メタルギア』シリーズのアイテムやキャラクターを出典としており、その効果も元ネタに準じたものとなっています。ラインナップには『MGS4(日本版では1枚のみ)』までのシリーズ作に加え、『ボクらの太陽』や『スナッチャー』など、『メタルギア』サーガ作品で引用されている小島プロダクション作品も存在。カード説明文には元ネタの概要も記載されているため、『AC!D』シリーズをプレイすることで“あの小ネタは何が元だったのか”と確認したり、逆に“あのキャラクターはどんな風にカード化されたのだろう”といった視点で楽しめたりします。
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またストーリーという観点でみると、『AC!D』シリーズ二作品は少々特殊な関係と言えます。作中描写から両作品が舞台を共有していることを確認できる一方、ストーリー的には直接的な繋がりもなく登場人物も一新されているので、初代『AC!D』に対する『AC!D2』は、続編というよりは“2作目”といった方が近い関係性です。
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しかし、初代『AC!D』のエンディングでは今後の展開を匂わせており、『AC!D2』ではその伏線が回収されるどころか、(2周目以降の)エンディングで伏線とも受け取れるイベントが挿入されています。両作品が好きな筆者個人としては、ストーリー的な続編という意味で初代『AC!D』と『AC!D2』、両方とも別で待っている状態なため、願わくは『MASTER COLLECTION』を機に復刻され、新作に繋げて欲しいです。
スピンオフだけど正史?ここまで来たら復刻して欲しい『MPO』シリーズ
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過去にシリーズ20周年を記念したコレクション『METAL GEAR 20th ANNIVERSARY METAL GEAR SOLID COLLECTION』で正伝作品として収録されていた『MPO』。
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シリーズ原作者・小島秀夫監督が定義する「企画、ゲームデザイン、脚本、演出、監督を全て自分で 、責任を持って創った」“A HIDEO KOJIMA GAME”ではないことに加え、海外インタビューで監督が「細かいところを言うと『メタルギア』サーガから逸れているところがある」と見解を述べていたのもあってか、公式サイト掲載の「正史の概要を振り返る」年表で本作は紹介されていません。
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一方、正史作品『METAL GEAR SOLID PEACE WALKER』で『MPO』内の出来事を指している思われる発言があったり、KONAMIによる作品単体の紹介ページでは「シリーズの正統派となる続編」と記載されていたりと、『メタルギア』シリーズ内における立ち位置が曖昧となっていました。
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しかし、先日発売された『MASTER COLLECTION Vol.1』に収録されたデジタル書籍「マスターブック」の項目「METAL GEAR ARCHIVE」にて、『MPO』に関するいくつかの点が明かされています。
本項目ではシリーズのメインタイトルと関連タイトルを紹介していることに加え、劇中の出来事と史実を併記した「『メタルギア』シリーズ歴史年表」を掲載。その中で『MPO』は“スピンオフ作品”と表記されつつも、他サーガ作品と並べられています。
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本年表からは、「サンヒエロニモ半島」でのFOX部隊によるクーデター、ネイキッド・スネークとロイ・キャンベルの出会い、試作「メタルギアRAXA」の存在が少なくとも正史であると確認できるほか、作中では明言されていませんでしたが当時ネイキッド・スネークが結成した部隊がFOXHOUNDであると判明しました。
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作中で明らかとなったソコロフの生存、グレイ・フォックスことフランク・イェーガーの過去、クーデターの首謀者であるジーンなどの扱いについては依然と不明なままですが、たとえ部分的でもメインタイトルと同じタイムラインに入っている以上、ぜひ『MASTER COLLECTION Vol.2』での復刻に期待したいところです。
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また『MPO+』については、ストーリーモードは無いものの、「インフィニティミッション」だけでも十分なリプレイ性があるうえ、最悪オンラインモードは実装できずとも、歴代シリーズキャラクターを操作できる点は『MASTER COLLECTION』とあわせて遊ぶにピッタリな魅力といえます。
3/4タイトルは中古市場頼りに…今では薦めにくいプレイするハードルの高さ
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最後に4タイトルに共通する問題点として、ハードとソフト入手の利便性に起因するプレイするハードルの高さが挙げられます。
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国内向け出荷が完了してから9年以上が経つPSPですが、2019年には修理対応も終了。今からPSP向けタイトルを遊ぶ際、ハード面における劣化の少なさを求めるなら、2023年時点でもサポートが継続しており、“PSPとの後方互換性がある後続機「PlayStation Vita(PS Vita)」”が有力な候補となるでしょう。
しかし、同ハードはPSPで採用されているメディア「Universal Media Disc(UMD)」を読み取ることができないため、今回紹介したタイトルのうち、記事公開時点でもダウンロード販売されている『MPO』しか遊べません(『MPO+』ダウンロード版は記事公開時点で販売終了済み)。
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また『MPO』ダウンロード版に限定しても、PSP向けオンラインストアが終了(購入済みコンテンツの再ダウンロードは可能)している関係で、PS VitaまたはPlayStation 3向けオンラインストアから購入する必要があります。4タイトル全てを網羅したい場合、PSP本体とゲームソフトともに中古市場を頼らなければいけないため、 “手軽にプレイできる”と言える環境とは言えません。
どのタイトルもこのまま埋もれさせておくには勿体ない魅力を備えているため「発売当時のゲームをそのままに 最新のプラットフォームで遊べるように」をコンセプトにした『MASTER COLLECTION』で復刻されることを望みたいものです。
おわりに
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本記事では、PSP向けに発売された『メタルギア』作品4タイトルを紹介しました。うちストーリーモードのある3タイトルでは、ステルス要素、巨大兵器との戦闘、そして個性的な超人的能力を持つボスといった、『メタルギア』として象徴的なポイントを抑えつつも、小島監督の“A HIDEO KOJIMA GAME”に見られるキャラクターの背景や関係性などに散りばめられた“GENE”や“MEME”のような一貫した"メッセージ性のある”、見方を変えれば"説教臭い”とも言える部分は薄めとなっているため、デジャヴを感じさせつつも新鮮な気持ちで楽しめます。
“そもそも『MASTER COLLECTION Vol.2』が発売されるのか”という大前提すら確定していないため、かなり先走った空論ではありますが今回紹介した4タイトルが何らかの形で脚光を浴び、多くのプレイヤーが手に取れる機会が訪れることを願います。
※UPDATE(2023/11/6 11:55):PSP向けPlayStation Storeについて、本デバイス内やPlayStation公式サイトでは案内が出ていませんが(パスワード生成画面では説明有)、PS3 / PS Vitaと同様に機器設定パスワードを使ってログインする必要があることを確認したため、記事内のスクリーンショットの注釈を修正し、追記しました。