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今回のゲーム系プラモデルレビューは、バンダイナムコエンターテインメントの『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(以下、シャニマス)とバンダイスピリッツの「30 MINUTES SISTERS」コラボのプラモデルである「30MS 櫻木真乃」をお届けします。
本キットは2023年10月末に発売したものですが、予約開始から瞬く間に締め切りとなり入手できず、翌月の再販にてようやく手に入れることができました。なお今回は、同日に発売された「30MS オプションヘアスタイル&フェイスパーツセット(風野灯織/八宮めぐる)」も含めた内容となります。
組み立ての前に内容物を紹介しましょう。内容物は、表情パーツを合わせると12枚のランナーにPVCのスカートとシールが付属。説明書には、283プロの事務員である七草はづきさんが記載され、組み立てをサポートしてくれます。
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スタートアップ!真乃を組み立てよう
それでは組み立てに入りましょう。本キットはコラボ先である30MSの構成を踏襲しているために、組み立て順は頭部→衣装+胴体→両腕→両脚で、組み立て説明書の構成や事前準備もほぼ同じです。
まず、頭部+胴体を構成する1番目のランナーと腕を構成する2番目のランナー、そして最後に脚の3番目のランナーをそれぞれ切り分けます。説明書をガイドに、ランナーの各部位を切り分ければ事前準備は完了です。
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最初のステップは頭部の組み立てです。真乃はボブカット的な髪型であることから、後頭部と左右の髪パーツを組み合わせて、最後に前髪を組み込んで完成です。なお、元々30MSのキットは髪の毛の構成に複数パーツを用いて立体感を作り出していますが、少し高価な本キットでは造型に対して余裕とリッチさを感じられるようなパーツ構成となっています。前後左右それぞれボリューム感のある髪の造型を実現しているのが驚異的で、特に前髪の流れるような髪の表現はまるで高額な固定フィギュアに匹敵するほどです。
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この多数パーツによる表現は胴体にも及んでおり、外装となる服を構成するパーツのうち金色パーツが通常の30MSのパーツと併せて内部の骨組みとしても機能する構造です。その金パーツの周りに白や青、そしてクリアパーツを組み立てるとほぼ完璧な色分けの衣装が完成します。
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腹部も同様に色パーツだけでなくチェック柄が印刷された薄いPVCパーツを組み込むことで衣装のスカート部分を表現します。スカート後部や衣装の各部に施されたメッシュ柄の布は、ラメ加工されたクリアパーツを組み込みことで表現しているのもアイデアに富んでいて飽きさせません。
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本キットはスライド金型を活用して成型されているためか、腕や足の一部パーツが一体成形で、全体のパーツ数が抑えられています。30MSシリーズのこれまでのキットは左右のパーツを組み合わせる方法を多くとっていましたが、よりシンプルで作りやすい構造になったのは良い印象です。
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胴体と頭部以外に付属品はないために、二本脚で立たせるには脚を開かなければなりませんが、全てのパーツを組み込んだらとりあえずは完成です。
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ここで灯織とめぐるの頭部パーツ組み立ても紹介しましょう。基本的には真乃と同じですが、髪型を表現するために使われているパーツ数が多く、造型も先が尖っている繊細なもののため、組み立てには細心の注意が必要です。特にパーツ数が多いのが灯織ですが、その分髪の毛の造型を誤魔化さずにほぼ完璧に仕上がっているには感心しました。どの角度から見ても灯織とめぐるとして破綻していません。オプションパーツの価格は2,750円(税込み)ですが、価格相応だと思える納得の造型です。
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“最初の奇跡”と思える素組みの「30MS櫻木真乃」
完成した真乃を見てみましょう。ただし、本キットはラメ加工が施された衣装パーツの重みで重心はリアヘビー。後ろへ非常に倒れやすくスタンドを使わずに立たせるには仁王立ちさせるしかありません……。本キットにも対応した「アクションベース6」を買おうにも品切れだっため、急遽3mm接続に対応した「シンプルベース」を用意しました。
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『シャニマス』公式サイトにあるキャラ紹介の立ち絵のポーズは、スタンドを用いつつ付属の手パーツを用いればとらせることが出来ます。キット自体にはライトブルーとホワイトのグラデーション加工は施されていませんが、この大きさでも「ビヨンドザブルースカイ」の雰囲気はちゃんと出せているのが驚異的です。
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『シャニマス』を代表する曲である「Spread The Wings!!」の振り付けを『アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism』(以下、シャニソン)や『アイドルマスター スターリットシーズン』(以下、スタマス)を参考にポージングさせてみました。握りこぶしやピストルポーズがあるため、比較的近いポーズをとらせることができます。完璧ではないですが、ほぼそれに近い動きが出来るのは嬉しいです。
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続いては、灯織とめぐるのヘッドを胴体に接続してみましょう。本来なら、「ビヨンドザブルースカイ」単体キットに、灯織とめぐるの体型再現のため背丈などを調整するパーツが付属しています。真乃のキットには2人のパーツが付属しておらず、そのまま接続すると本来のバランスと異なってしまいますが、雰囲気は掴めると思います。
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加えて、灯織とめぐるのヘッドを装着した状態で「Spread the Wings!!」の振り付けを取らせてみました。
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ここで可動範囲を紹介しましょう。腕や足も1軸関節ですが90度以上曲げられるため、全体的な可動範囲としては見た目から思った以上に動かせると思えました。しかし、衣装の一部が腕や足などに干渉するため、「腕を前に突き出す」などの特徴的なポーズが取らせにくいです。
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コストや作りやすさなど様々な要素を考慮して作られていることがよく分かる素晴らしいキットでした。では続いて塗装に移ってみましょう。
真乃の塗装―きらめく虹にするために
ここからは、真乃の全体塗装を行っていきます。胴体や四肢含めて極力合わせ目が出ない構造となっており、服の右側にあるラインは縫い目に相当するもので処理しなくて良い部分です。しかし、四肢のパーツには少々パーティングラインが目立つ部分もあるために処理をしておきます。
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全体塗装は想定されていないのか、塗装レシピは説明書に記載されておらず、どの色をどの割合で塗れば良いのかは手探りになってしまいます。読みやすくユーモアも盛り込まれた説明書なだけに、そこが抜け落ちているのが残念です。
まずは金パーツから塗ります。黒サフを下地にC9ゴールドを塗装。続いては白パーツです。黒サフを下地に、シャドー吹きとしてC323ライトブルーで陰色を塗り、最後にGX1クールホワイトで上塗りをします。これまで披露されてきた実衣装の写真やライブ映像などを見る限り、衣装の襟に相当する部分は、本来細かな装飾パターンが施されていますが、このスケールとなると判別しにくいためガイアの039プライマリーメタリックブルーで塗りました。
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加えて「ビヨンドザブルースカイ」は衣装の各部分にグラデーションが施されているため、特定の部分に対してエアブラシの風圧を絞り細吹きを行ってグラデーション表現をしました。
続いて生身に該当するパーツです。光の透過防止のためグレーサフ→ピンクサフ→HMS02ボディカラーB→CL09スムースパールコートの順で塗装します。なお塗装することで身体と顔の色味が異なってしまいますが、無地の顔と瞳デカールがないために泣く泣く塗装を諦めました。ヘッドパーツ全体の質が良いために残念です。
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生身に相当するパーツに灰サフを塗ったのは、数年前にフレームアームズガールのキットを制作した時に使用したピンクサフの隠蔽力が足りないように感じられたためでした(もしかしたら希釈しすぎていたのかも)。そのため、発色を考えて灰サフ→ピンクサフの順で塗ったものの予想より彩度が低くなってしまい、狙った発色を得る事が出来ませんでした。普段取り組んでいないモチーフを制作することの難しさを今一度実感してしまいます。
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髪の毛の明るい栗毛は、灰サフを全体に塗った後にCL102で陰色を塗った後に、C318レドームとCL102 栗毛を5:1の割合で調合して塗装しました。全体的には最も良く出来たように思えますが、陰色として使用したCL102栗毛が案外目立つため、塗装面積を狭めても良かったかなとも思ってしまいます。仕上げとして髪の毛のハイライトが目立つようにCL06クリアーホワイトを塗りました。
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加えて灯織とめぐるの髪も塗装しました。灯織はC328を陰色として塗ったあとにCL103濡鴉を本塗装。めぐるは、CL102栗毛を陰色に、CL101ブロンドを本塗装として塗っています。
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全てが狙った色味へ届きませんでしたが、最後に塗装したパーツを組み合わせて完成です。
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塗装を終えた真乃
完成した櫻木真乃を見てみましょう。塗装したことで各部位が強調され、より表情豊かになりました。最も影響を受けると思えたのが衣装の金部分です。元のパーツでも金パーツとしての光沢感が表現されていますが、塗装を施すと金表現が強く強調されるため、衣装の端々の形が理解しやすくなりました。
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ホワイトの陰色表現にライトブルーを選択したのは良かったものの、下地を黒にしてしまったために狙った発色に届かないものになってしまったのが残念です……。これなら白サフを間に挟んでから重ね塗りするか、下地をより明るいものにして白を強調するのが良かったかもしれません。これは肌に関しても同様で、もう少しピンクサフを濃くしてから塗装に挑めばよかったと悔やんでしまいます。
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失敗はいくらかあれど、高額なスケールフィギュアであるような白部分におけるブルーを使った影色の効果は高く、情報量を豊かにしてくれたのは一つの大きな発見でした。
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今回塗装は全て上手くいきませんでしたが、ボディ部分の単体売り「ビヨンドザブルースカイ」のキット自体の価格は2,420円(税込み)なので、再挑戦しやすい価格帯であることも魅力でもあると思えます。
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少々物足りなさはあるが素晴らしいキット―『シャニマス』を知ることでより感慨深いものに
プラモデルにおいて組立は、バラバラなパーツが見知った形となる最もエキサイティングな一時であると同時に、意味が分からない/地味な物も組み立てる退屈な時間です。「30MS 櫻木真乃」については、コラボ元となる30MS自体のコンセプトに寄るところが大きいのですが、一体成形されたパーツと予め必要な部位ごとに大まかなランナーに切り分けるチュートリアルを経ることで、煩わしいランナー探しと組み立ての労力を極力減らせているのが他に無い良い要素です。
本体の価格は4,180円(税込み)で、一般的な美少女プラモデルに比べて比較的低価格ながら、高精細なディテールで全体で見れば造型にも満足感が高いです。灯織とめぐるのヘッドもとてもよくできており、こちらも価格相応の高いディテールを持つと思いました。
しかしながら、微妙に気になるのが真乃の顔の印象。正面こそ真乃らしい顔立ちをしていますが、造型の問題か縦長気味になってしまっており、少しでも違う角度から見ると『シャニソン』や『シャニマス』本編における3Dモデルやイラストと少し異なる印象を与えてしまっています。髪の毛が高精細なぶん余計に目立っているのです。
加えて、様々なポージングのためスタンド類も付属してほしかったのが正直なところ。なぜなら劇中ポージングをさせた時の感動と躍動感は代えがたく、キットの満足度に直接的に響いてくるからです。とはいえ、細かな不満はあれども、全体としてみると良いキットであることには変わりません。
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ところで……。
本記事の執筆にあたり、改めて『シャニマス』におけるW.I.N.Gやイベントコミュを含めてプレイしたところ、「イルミネーションスターズの櫻木真乃」の魅力に再び気付かされることになりました。
今でこそ、天井社長を筆頭とした複雑な事情が見える283プロダクションや、強い個性を持つアイドル達がいますが、真乃は真乃として等身大の少女でありつつも特別な人として描かれていることが心に残ります。
一番に目立つセンターにいて良いのか、イルミネーションスターズの一員として資質があるのか、どれほど頑張ればいいのか、彼女の悩みやメンバーの知られざる一面を通じて、小さくとも大切な答えを一つ一つ導き出していく様が彼女の魅力であり、『シャニマス』の持つ本質でもあるだろうことを今一度知ったのです。
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そこから『シャニマス』のプラモデルである「30MS 櫻木真乃」のことを考えると、彼女の1側面を切りとったものではありますが、本編をより良く知ることでポージングが味わい深くなる、現実のプレイヤーと『シャニマス』を物理的に繋ぐコラボ以上のものを与えてくれるキットであると思えます。
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・比較的低価格で密度とクオリティが高い
・驚異的な色分け
・可動範囲も比較的十分で合わせ目やパーティングラインが目立ちにくい
悪い点
・リアヘビーで後ろへ倒れやすいのにスタンド類が付属しない
¥3,200
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)