正月は暇です。暇で暇でどうしようもありません。だからまぁ、やることと言えば映画鑑賞かYouTubeか、それともゲームかという具合です。
言い換えれば、年末年始はボリュームの大きなゲームをする絶好の機会。今回はすでにGame*Sparkでプレイレポも公開している『Shadows of Doubt』について、改めてご紹介。このゲーム、新規プレイごとに世界もNPCも発生イベントも自動生成されるため、共通の攻略法がありません。それ故に「無限に遊べる」という評判もあります。
これは正月の暇な時間を潰すのに絶好のゲームじゃねぇか!?
ミステリーは「ネタバレ」に弱い
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探偵もののミステリーゲームは、ネタバレが致命的要素になってしまいます。
犯人は誰か、どのようにして殺人を犯し、どのようにしてトリックを張り巡らせたのか。攻略サイトでそれを知ってしまったが最後、あとはヌルゲー。もちろんこれはゲームに限らず、小説やドラマにも共通する部分です。
数十年前の偉い人は、そのネタバレを逆手に取った「倒叙法」というスタイルを開発しました。最初から犯人がどういうトリックを使うかを明らかにし、それが見破られてしまう過程を描く手法です。この倒叙法は、テレビドラマの場合は犯人役に大物俳優を起用できるという効果も生み出しました。
そして2023年、「新規プレイごとに異なる登場キャラが生成される」というミステリーゲームが遂に登場しました。
新規プレイごとに自動生成される設定
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本作は架空の1980年代を舞台にしています。巨大企業が支配する都市の中で発生する様々な事件を、ひとりの私立探偵が解決していきます。殺人事件が発生した現場で指紋や足跡を採取し、被害者の交友関係を調べて該当する人物ひとりひとりと接触し、尻尾を掴んでいく……。流れ自体は典型的な探偵ものですが、とにかくボリューミー!
一口に「被害者の交友関係」といっても、それは何人も存在するため誰が怪しいのかすら見当がつきません。
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その上、容疑者の自宅を何とか洗い出していざ訪問したとしても、容疑者とは全く別の名前の人物が出てくることも。こ、これはどうなってるんだ……?
容疑者は必ずしも独り暮らしというわけではなく、家に行くと本人ではなく同居人が現れることもしばしば。しかも、どんなに平伏して訪ねても名前すら教えてくれなかったり……。そういう場合は、隙を見て家に忍び込むという手があります。
そう、この『Shadows of Doubt』ではどんな手段を使ってでも犯人を見つけ、当局に報告しなければなりません。
私立探偵は「捨て駒」
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本作では、なんと私人逮捕が認められています。
どう見ても状況証拠しかなく、しかもその状況証拠すらも少ない状態で報告書を書いて当局に提出……ということも可能です。この世界の警察官や司法当局は、汚れ仕事を全て私立探偵に押し付けています。捜査の大部分を探偵にやらせているくせに、その捜査の中で探偵が違法行為を犯しても尻拭いは一切しません。探偵は当局の捨て駒のようなもの、と書けばいいでしょうか。
警察が規制線を張った事件現場に探偵は踏み入れさせず、それでいて地道かつ危険な容疑者の洗い出しは探偵の仕事。報酬は事件解決後に全額支払う仕組みで、それまでにかかった経費は探偵の負担です。
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チュートリアルシナリオでは、主人公は当初アパートに居住してはいるものの、シナリオ終了後に家賃滞納で追い出される始末。元警官の互助組織の支援でどうにか地下のオンボロアパートへの引っ越しが叶うものの、とにかく公的支援は皆無です。にもかかわらず、このゲームは空腹や乾き、寒さ、身体の汚れに伴う体臭という概念があります。生活費が工面できないと生きていけない、というわけです。
そんな世知辛い世界の中、それでも市民は今日も生活を営んでいます。実は主人公は生活費さえ何とかできれば仕事をする必要はなく、何なら主人公がいなくとも地球は無事平穏に回り続けます。敢えて家に住まず、適当なコソ泥をしながらホームレス生活をするプレイもできてしまうのがこのゲームの恐ろしいところ。
捜査の中心は「指紋」
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新規プレイごとの設定自動生成、多過ぎる容疑者、世知辛いシステム、プレイの多様性。これらが相成ってとんでもないボリュームになっている『Shadows of Doubt』ですが、ここで筆者からのアドバイス。
殺人事件の解説には指紋の採取は必須ですが、該当する容疑者の家を訪問する際は必ずドアノブの指紋を調べましょう。仮に事件現場の指紋とドアノブの指紋が一致すれば、ほぼ間違いなくその家に犯人が住んでいます。
ただ、場合によっては犯人の同居人の指紋しか出てこないということもあります。そのパターンになると結局は総当たりでやるしかなくなり、とんでもない時間を費やしてしまいます。
そういう場合は、敢えてベッドの上で寝て過ごすという手段も。というのも、このゲームの殺人犯は放っておくと第2、第3の犯行に手を染めます。つまり、第1の被害者Aと第2の被害者Bの共通点(職場、交友関係等)を洗い出し、そのつながりの中にいる他の人物をマークする……という手法が使えるというわけです。ま、まるで火曜サスペンス劇場!!
年末年始の退屈な時間を潰すには絶好の内容ですので、購入せずともとりあえずウィッシュリストに入れることをオススメします!