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皆さんは『The Last of Us』と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。もちろん、マルチプレイという声が多いと思います。筆者もストーリーそっちのけでオンライン対戦ばかりしていたので、ヒゲモジャおじさんが未成年の女子を連れて殺戮のかぎりを尽くすシングルプレイモードの方がオマケという認識でした。
が、このマルチプレイは"弱肉強食"という言葉を体現するかのような作りで、過酷な生存競争を強いられることに反発するプレイヤーも少なくありません。仕舞いには、開発元であるNaughty Dogが新マルチプレイ作品をあーだこーだと何年も先延ばしにした挙句、突如として開発中止を発表したのが2023年12月のことです。
マルチプレイで人気があった『The Last of Us』シリーズからマルチプレイを抜くというのは、ハンバーグのないハンバーグ定食と同義。このニュースを聞かされた筆者は思わず動揺し、モニターの前で激震しました。というわけで今回は、何故かマイナーコンテンツな扱いを受けている『The Last of Us』のマルチプレイを振り返り、この開発中止によって我々の夢や希望を一身に背負ったまま消失した幻のスピンオフ作品への未練を断ち切ります。
どう考えてもマルチプレイが本編だった件
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すべてのはじまりは、2013年の『The Last of Us』に実装されていたマルチプレイ。正確には「ファクション」モードと呼ばれるもので、勢力(ファイアフライもしくはハンター)の一員として生き残るために敵プレイヤーを倒して“物資”を奪い、自分のグループを存続させるという設定で戦いが繰り広げられます。
開発元のNaughty Dogは『アンチャーテッド』シリーズにも見られる映画的演出、本格的なアクションを特徴とするシングルプレイヤー体験の実績で知られ、世間的にもそちらが有名です。
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率直に言ってシングルプレイ作品は短命になりがちですが、こうして10年近くもプレイされ続けているのはマルチプレイあってこそ。事実、筆者も本作のプレイ時間の大半はマルチプレイのもので、PS4版に至っては一度もストーリーに触れることなく800時間以上も働かずに遊んでいました。
これは、もはや筆者にとっては“マルチプレイこそが本編”とでも言うべき奇妙な事例であり、たとえ偶然の産物であったとしても『The Last of Us』のオンライン対戦が紛れもない傑作であったことは疑いの余地がありません。
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当時、筆者の周りにいたプレイヤーも『R6S』など、シビアなマルチプレイ作品で腕を鳴らした猛者揃いだったという印象。戦うことでしか生きられない彼らのような戦士たちを虜にした『The Last of Us』のマルチプレイとは、いったいどんなものだったのか。その内容を次の章で簡単に振り返ります。
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弾は1マガジンで開始!暴力が奏でる生命の芸術
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まずはじめに『The Last of Us』は、パンデミックによって崩壊した世界を舞台にしたサバイバルアクションであり、マルチプレイも本編同様の世界観に倣っています。
ルールはいくつかありますが、4対4のチーム戦がベースとなり、プレイ中は“1キルの重み、1発の重み”とでも言うべき緊張感で1発も無駄にできないほど銃弾は貴重。マップの各所にある箱から弾薬とクラフト素材を回収し、手製の爆弾や火炎瓶、近接武器などの装備を蓄えながら戦闘のタイミングを探るのが基本的な流れです。
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こうした仕様もあり、拳銃クラスの攻撃でも当たりどころが悪ければ、2~3発で瀕死になるキルタイムの異常な早さがマルチプレイ最大の特徴。ヘッドショットはもちろん、先述の爆弾をはじめとしたクラフト武器も基本的には即死です。慣れないうちはワケも分からず虐殺される反面、ひとりで複数の相手を全滅させることもできます。
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さらに、聞き耳を立てて敵の位置を把握し、死角にまわって奇襲するという本編のシステムが引き続き登場。走ったり発砲すると相手のミニマップに大きく表示され、かといってモタモタしていると逆に背後を取られます。
そうした不利を補ってプレイスタイルを確立するスキル、武器を含めた取捨選択による装備ポイント制など、刺激的で奥深いマルチプレイの作り込みは当時から肌で感じられました。
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また、グループの運営に必要な物資とは別に“部品”という概念も存在し、戦闘や回復など特定の行動を行うことで取得可能。集めた部品で初期武器の強化ができるほか、防弾アーマーやショットガン、アサルトライフルといった強力な装備の購入にも使えます。
活躍するほど強くなるので勝っているチームが有利ですが、負けている側は箱から入手できる物品の量が大幅に増え、根本的なバランスは変わりません。
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改めて思い返してみても、本当に完成度の高いマルチプレイでした。一撃で死に至るキルタイムの早さ、ステルス、ゴリ押しが通用しない戦略性。弱者を徹底的に追い詰めるような非情極まるシステムは、一部のプレイヤーにとってはネガティブに感じられるかもしれませんが、筆者をはじめとした対人志向のプレイヤーとしては忘れられない伝説の作品です。
続編の『Part II』でより鮮明になった“暴力と復讐”というテーマは、このマルチプレイにも反映されています。瀕死の敵にとどめを刺したり、燃えながら絶叫したり、ハサミをくくりつけた角材で叩きのめしたりと全く遠慮がありません。ここまでくるとある意味、爽快でもあるスタイリッシュな暴力描写が『The Last of Us』一番の魅力でしょう。
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我々は『Part II』版マルチプレイに何を求めたのか
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そういうわけで、『The Last of Us』のマルチプレイはただのオマケなどではなく、むしろ何年もプレイできる立派なコンテンツとして成立しています。その内容からオンライン主体のシリーズになる可能性も十分に考えられましたが、現実というものは常に残酷で、どういうわけか続編の『Part II』ではマルチプレイが除外されました。
他でもない開発元のNaughty Dogが諦めた以上、ここからは完全に仮定の話になってしまうのですが、もともと『Part II』に併せて開発された新しいマルチプレイには、当然『Part II』のシステムが使われていたはずです。いまとなっては想像することしかできませんが、間違いなく面白いコンテンツになっていたでしょう。
『Part II』をクリアした筆者が覚えているかぎりでは、グラフィックが劇的に向上した以外にも新要素がざっとこれぐらいありました。
新勢力(WLF、セラファイト、ラトラーズ)が登場。
ホフクができるようになり、草むらや隙間に隠れられる。
マップが開放的で広い形になった。
殴り合いの際、敵の攻撃を回避できる。
矢で射られたときに抜く処置が必要になる。
ペットボトルサイレンサー、爆弾矢など、クラフトアイテムが増えた。
作業台で武器カスタマイズが視覚的に行われる。
ストーリーの要所で人間や感染者、人間同士による三つ巴が頻繁に発生。
NPCが名前で呼び合って高度に連携したり、仲間の死に激怒する。
ワンちゃん。
マルチプレイでは劇中に登場した勢力の一員として戦うので、『Part II』の二大勢力であるWLFとセラファイトが最有力候補。ただ、すでに公開されているコンセプトアートには割とラフな格好をした人物が写っており、勢力は関係なくキャラメイクをする形なのかは不明です。ついでに、セラファイトは口笛で仲間と連携を取っていましたが、そこらへんがどういう形で検討されていたのかも全く分かりません。
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そして、地味に気になっているのが三つ巴について。以前、この新マルチプレイが基本無料らしいという情報が流れたこともあり、個人的にはバトロワ作品を予想していました。
何かと三つ巴展開が多かった『Part II』なので、第三勢力のラトラーズを入れた3チーム制なのか、あるいはマップ上を感染者が徘徊するPvPvE形式になる予定だったのか。その両方だとしても面白そうです。
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PS3からPS4に移ったことでハード性能も向上し、広いマップでシームレスなプレイが楽しめたのも『Part II』のポイント。ホフク動作が実装されたことで草むらや小さい段差も遮蔽物となり、視界の開けた屋外での野戦シーンも多く登場します。
武器のカスタマイズ演出も手の込んだ作りになっていて、必要な部品を集め、その場で改造するというのもバトロワに合っているでしょう。
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最後に、NPCとイヌは『Part II』発売前から個人的にも期待していたもので、敵味方が状況に応じてよく喋るのは臨場感そのもの。本編でイヌが殺されたときの「そんな、ウソだ……ゴンタあああ!」という感じで飼い主が怒り狂うのも、このゲームは一味違うと思わされた部分なので、やはりNPCとイヌの存在感は最も印象に残っています。
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イヌは攻撃が基本即死だったり、ニオイで追いかけてきたりと人間より強かった気がしますが、試合中に貯まった部品で購入する支援攻撃のような形であれば、バランスブレイカーにはならないでしょう。マルチプレイでイヌを出すのはFPSなどで前例があるので、そこまで導入の敷居は高くないと思いますが、すべては永遠に謎のままです。
シングルプレイヤー作品のサブコンテンツとは思えない圧倒的な完成度を誇っていた『The Last of Us』のマルチプレイ。それに取り憑かれた我々が夢見た『Part II』版マルチプレイはとうの昔に消え、この度、すがる思いで完成を祈り続けてきたスピンオフ作品も正式に開発中止という運びになりました。
はたして、我々はこれから何を希望に生きていけばよいのか、何を信じればいいのか。それは誰にも分かりません。いまはただ、冥福を祈りましょう。ひとつの約束された傑作がこの世に生まれ落ちる前に損なわれてしまった。それは決して変えることのできない事実なのですから。
スパくんのひとこと
24インチのモニターにコメットパンチを喰らわした拳よりも、ただひたすらに心が痛むスパね。この数年、スパたちが信じて待ち続けたのは何の意味もなかったのかスパ?あまりにもムゴい仕打ちスパよ……。
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