Kalypso Mediaは、ポーランドの開発スタジオThe Dustが手がける断罪アクションアドベンチャー『ジ・インクイジター(The Inquisitor)』をPC/PS5/Xbox Series X|S向けにリリースしました。
本作は、ポーランドの小説シリーズ『I, the Inquisitor』を原作とした作品。舞台となるのは、十字架にかけられても殺されず、怒りと復讐に燃えるイエス=キリストによってすべての不信仰者を断罪せんとすべき“暴力による宗教”となったキリスト教が中心となった世界です。
プレイヤーは主人公の異端審問官(インクイジター)モーディマー・マダーディンとなり、派遣された街でさまざまな事件の調査を行います。不信仰者への断罪や町の人々との交流、巻き込まれる事件など、さまざまな場面で決断が求められます。
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本稿では『ジ・インクイジター』のプレイレポートをお届けします。
街に潜むヴァンパイアを探し出せ!
本作は冒頭でこの世界観の背景となるイエス=キリストのストーリーが紹介されます。ゴルゴダの丘で十字架にかけられたイエスは、嘲笑う周囲に怒りを燃やし磔から自力で脱出して彼らの土地を燃やし尽くしたのです。審問官はその怒りから逃れた異端を断罪する職業で、イエスの時代からおよそ1,500年後も強い力を持っています。
ゲームは主人公・マダーディンが、目的地であるケーニッヒスシュタインの街へ到着するシーンからスタート。出迎えてくれた警備隊長との会話にて“聖府”から派遣された目的がこの街に潜む「ヴァンパイア」を見つけることだと明かされます。また、この街では現在凱旋祭と呼ばれる祝祭が開催されているようです。
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そんな中で、警備員の一人が審問官に対する悪口を言うシーンが挟まります。ここでその警備員に対して「凱旋祭の場所を聞く」「おい、貴様聞こえているぞ」という選択肢が出たので、まずは軽い挨拶代わりに後者を選択。審問官への侮辱は“聖府”への侮辱であると怒るマダーディンに、その警備兵は土下座して詫びるしかありません。
無礼な警備兵に適切な対応をしたあとは街の中心部へ向かっていきます。途中でスリに遭うなどのトラブルを経て到着した祭りの会場で市長と会い、その後は祭りの催し物に参加することで操作のチュートリアルが発生(スキップ可能)。また、情報を視覚化する「祈り」などの基本的なシステムも学べます。
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こうしてマダーディンの仕事が始まります。一癖も二癖もあるキャラクターたちから情報を集め、ヴァンパイアを調査していかなければなりません。
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街を巡って情報を集めろ!
本作はヴァンパイア探しという目的を背景に、さまざまなキャラクターたちの思惑やそれぞれの目的が絡み合っていく大きなストーリーで構成されています。いくつかのサイドストーリーはあるものの基本的にはクエスト目標を達成していくのが中心で、そこでプレイヤーの選択が重要になる形式です。
クエストではキャラクターとの会話だけでなく、ベンチに座って人々の噂話に耳を傾ける「盗み聞き」などを駆使して情報を集めます。殺人事件の調査など、一部の事件では死体を調べて怪しい場所を発見するといった要素も。手に入れた情報はノートで自動的に更新されていきます。
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さらに、マダーディンの能力として、事件の背景の断片が見える「幻視」というものがあります。この幻視で見た情報は、真実を見通せる裏の世界【非=世界】で記憶の断片を集めることで一つの映像となり、本来知り得るはずのない真実を見つけ出すこともできるのです。
幻視や【非=世界】の冒険は自由に行えるものではなく、物語における重要な場面での一つのギミックのようなものとして登場します。メインストーリーも多彩なアプローチができるということではなく、あくまで一本のストーリーを追いながら進めていくタイプの作品です。
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多くの悪意から身を守れ!
ゲーム内では大きな権力を持つ審問官ですが、この世界にはそれでも多くの危険が待ち受けています。ストーリーやクエストでは戦闘が発生することもあります。戦闘では弱攻撃・強攻撃・ガード・回避と、特別な効果を持つ「聖なる灰」というアイテムを駆使して戦います。
戦闘は基本的に多数との戦いになり、あまり複雑な操作ができるわけでもないので少し単調になりがちです。「聖なる灰」は敵をスタンさせるor自身の体力を回復する回数制のアイテムで、使い所の見極めはわりと難しい印象です。戦闘やイベント中は色々な場面でQTEも発生します。
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また、【非=世界】には「穢れ」と呼ばれる悪意たちが待ち受けていて、彼らに発見されるとダメージを受けるので注意が必要です。マダーディンは「祈り」や派生するスキルで穢れの注意をそらせるので、上手に身を守っていくことが重要です。なお、戦闘などで倒された場合はチェックポイントからすぐ再開できます。
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ゲーム内には段階的にアンロックされる機能はあるものの、アップグレードなどの要素はありません。そのため、常に今できることを考えながら戦闘や【非=世界】で生き残りを考えなければならないのです。
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重要なのは審問官の「選択」
情報集めや戦闘など多くの要素はありますが、本作で最も重要なのはやはりプレイヤーによる「選択」です。最初の無礼な警備員への対応から厳しく接するか、それとも多少の慈悲を入れるかといった選択がありましたが、ストーリー上ではさらに色々な選択肢も待ち受けています。
例えば私刑での魔女狩りを行った人への裁き、罪人に対して命を奪うか奪わないかといったものから、やむを得ず食べ物を盗んだ家のない子供にどのように接するかと言った選択肢もあります。この選択によって、キャラクターとの会話や結末にも大きな影響を与えています。
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この選択肢はロールプレイ要素も高く、プレイヤーにとって「審問官はどういった存在なのか」を形作るものでもあります。筆者は厳格ながらも子供には優しい面がある審問官としての選択肢を選びながらプレイしました。物語を楽しむためにも、やはり自分が好きな選択を行うことが大切です。
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物語が進むにつれ、街に住む複数の権力者による依頼や立場争いも発生していきます。それらの多くの物語はメインの目的であるヴァンパイア探しにも絡み、ストーリーはどんどん複雑になっていきます。ストーリーのプロットは非常に丁寧で、ドラマや小説を見ているような雰囲気もある作品です。
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「イエス=キリストが磔で死なず怒りで復讐を果たした世界」の『ジ・インクイジター』は、その印象的な設定を活かしながら、プレイヤーに「選択」を与えながらとても丁寧に物語が作られています。主人公・マダーディンはキャラクター設定も良く、主人公の選択によって色々な顔を見せてくれるのも大きな楽しみです。
ゲームのプレイスタイルとしては決して自由度の高い作品ではなく、基本的にはメインストーリーを追いながら物語を楽しんでいく形式です。コレクション要素などもありますが、序盤から街中にサイドクエストが散りばめているというタイプでなく、進行のための町中の移動が単調になっているのが惜しくもあります。
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街の権力者による思惑や重なっていく事件、そして関連する人々の物語は非常に魅力的。日本語翻訳も精度が高く、会話や資料などはもちろん、ジョークや皮肉と言った難しそうな部分までしっかりと訳されています。質の高いアドベンチャーゲームを楽しむためにはとても嬉しい部分です。
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あまりにも印象的な世界で紡がれる丁寧なストーリー!派手さや自由度はないものの堅実に楽しいADVスパ!
タイトル:ジ・インクイジター(The Inquisitor)
対応機種:PC/PS5/Xbox Series X|S
記事におけるプレイ機種:PC(Steam)
発売日:2024年2月8日
価格:6,160円