2月も暮れに入り寒暖差が厳しく、花粉症の兆候も気になりだす今日この頃。皆様いかがお過ごしでしょうか。今回はLocalThunkが開発、Playstackがパブリッシャーを担当する、まったく新しいビデオポーカーゲーム『Balatro』についてのプレイレポートをお届けします。
『Balatro』とは
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本作の基本となるのは、トランプを使ってポーカーの役を完成させて、出来た役に応じて報酬を受け取る、伝統的なカジノゲームのジャンルである「ビデオポーカー」です。シンプルなビデオポーカーならば『ドラゴンクエスト』シリーズのカジノや、大きめのゲームセンターのメダルゲームコーナーの一角に設置されていることもあるので、ルールをご存じの方も多いかと思います。
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本作では手札8枚が配られ、その中から最大5枚の手札を出してポーカー役を作ることになります。手札が8枚と多く、しかも毎ラウンド3回の手札交換(ディスカード)も可能なため、ストレートやフラッシュ、フルハウスといった手札5枚のみのポーカーでは中々出ない役も比較的簡単に出すことができます。
ポーカー役を作ると役の基本点にカードの点数(A=11、絵札=10、その他のカードは数値通りの値)が加算され、それに役の倍率を掛けた点数が獲得スコアとなります。これを繰り返し、各ラウンドに設定された最低スコアを上回ればそのラウンドは勝利となります。
……とまあ、ここまでの紹介では単に手札の枚数が多く、役の組み合わせの自由度の高いポーカーという程度です。しかし、本ゲームには普通のポーカーゲームでは考えられないような、ルールを拡張する仕組みが多数取り入れられています。それが次項以降で説明する「ジョーカー」などの特殊なシステムです。
150種類×5バージョンものジョーカー。君は使いこなせるか
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本作の肝となるのが「ジョーカー」カードです。一般的なビデオポーカーではジョーカーカードは稀に手札に入って、オールマイティに使える……というカードですが、本作では手札にジョーカーは加わりません。その代わり画面上部にジョーカーカードを最大5枚格納できるスペースがあり、ここに格納されたジョーカーカードは特殊な能力を発揮します。例えば「トリオ」というジョーカーカードは、場に出したカードにスリーカードが含まれていれば得点倍率を3倍にするという、一気にスコアを跳ね上げられる効果を持ちます。
また「出したカードにスリーカードが含まれていればよい」ので、役の一部にスリーカードが含まれているフルハウスやフォーカードを完成させたときも、倍率3倍の効果が発動します。もちろん単純に倍率を跳ね上げるようなジョーカーだけでなく、「フラッシュやストレートを4枚で成立可能にする」「一定条件でもらえるお金を増やす」など、様々な効果のジョーカーが登場します。
デッキ構築型ローグライトゲームに詳しい方々なら、本作のジョーカーはいわゆる「レリック」に相当する……と言えば伝わりやすいかもしれません。こうしたジョーカーカードはラウンドクリア後のショップで主にシングルカードとして購入、もしくは「BUFFOON PACK」と名付けられたブースターパックを買って引き当てることで揃えていくことになります。
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ジョーカーカードの中には、稀にフォイル加工やホログラム加工されたカードが登場します。これらのジョーカーカードは元のジョーカーの効果に加え、持っているだけで自動的に発動する有利な効果を持ちます(フォイル加工:基礎点+50、ホログラム加工:倍率+10、ポリクローム加工:倍率×1.5、ネガティブ加工:ジョーカー枠を1増やす)。
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本作に登場するジョーカーカードは、なんと全150種。ただし最初からそのすべてがゲーム内に登場するわけではなく、一定の条件を満たすと解禁されるジョーカーも多数あります。
そのそれぞれに先述した特殊加工のジョーカーが登場する可能性もあり、それを考慮すると本作には750種もの“特殊能力付きのジョーカー”があるわけで、これらをいかに厳選して採用するかがプレイヤーの腕の見せ所です。
デッキに影響を与える「タロット」「スペクトル」、役倍率強化の「惑星」で理想のデッキを目指せ
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本作のゲーム開始時のデッキ(トランプの山札)は通常のトランプと同じ、スペード・ハート・ダイヤ・クラブのエース~キングからなる52枚の山札ですが、そこに干渉するのか「タロット」カードです。こちらは主にラウンドクリア時のショップでたまに販売される「アルカナパック」を購入することにより使用することになります。
アルカナパックにはタロットカードがランダムに封入されており、その中から1枚(MEGAパックを買った場合は2枚)タロットカードを選んで使用することができます。タロットカードにはデッキのカードに影響を与えるものが多いのが特徴で、例えば「世界」のタロットカードは選択した3枚のカードのスート(マーク)をスペードに変更します。こういったカードを使ってデッキを特定のスートで染め、フラッシュを連発する……というのは本作で有効な戦術のひとつです。
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また、低確率で「スペクトル」カードが入ったパックが出現することもあります。こちらは「山札の10枚のカードをランダムな数値に一律変化させる」「ランダムなジョーカーにポリクローム加工を付与するが、他のジョーカーを破壊してしまう」など、メリットもデメリットも派手な効果が揃った特殊カードです。
上手く使いこなせば強力ですが、下手をするとデッキやジョーカーの編成が極端に偏って手も足も回らなくなる可能性もあるので、ご利用は計画的に……といったところになります。
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もう1種類の特殊カードが「惑星」カードです。これはショップで単品で買える可能性があるほか、「セレスティアルパック」を買う事で手に入れることができます。「惑星」カードには太陽系の星の名前が付いており、使用すると各カードに対応したポーカー役の基礎点と倍率を強化します。ゲーム開始時点ではフラッシュはフルハウスやフォーカードより基礎点・倍率ともに低いのですが、「木星」カードで強化していくことによりこれらの役より得られるスコアを高くなります。
こうしてポーカー役の地味な倍率強化をしつつ、タロットによるデッキ構成の変化で狙った役を出しやすくし、そして完成した役にジョーカー等による倍率加算・乗算がドンと積み重なることにより、入手できるスコアは累乗的に増加していきます。
待ち受ける敵はボスブラインド。妨害に負けず最強の手を叩き込め!
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本作のステージ構成は8段階の「アンティ(賭け金)」から成っており、ひとつのアンティは「スモールブラインド」「ビッグブラインド」、そして「ボスブラインド」の3つのラウンドから構成されます(スモールブラインド・ビッグブラインドはテキサスホールデム・ポーカーをご存じならお馴染みですね)。先のラウンドに進めば進むほどクリアに必要なスコアが高くなり、「ボスブラインド」ではプレイヤーに不利な条件がかけられた状況下でスコアアタックに挑むことになります。
プレイヤーに課される不利な条件の例としては、「特定のスートのカードの効果が封印される」「ひとつの役しか使用できない」「逆に一度使った役は通じない」「目標スコアは低いが、1手でワンショットキルを決めなければならない」「目標スコアが異様に高い」など、様々な条件が課されます。「ボスブラインド」をクリアするとアンティが1段階上がり、さらに目標スコアが跳ね上がったスモールブラインド・ビッグブラインド・ボスブラインドに挑むことになります。
なお、スモールブラインド・ビッグブラインドには必ずしも挑む必要はなく、しかも挑まずスキップした場合は何らかの有利な効果を持つ「タグ」が手に入ります。こうして書くとこれらのブラインドに挑む意義がまったくないように思えますが、報酬資金の獲得、およびショップの利用はブラインドに勝利した場合のみのため、ブラインドスキップ時にはジョーカー等の入手チャンスを失うことになります。現在の状況をしっかり見据えた上で、これらのブラインドに挑むのか、それともスキップするのかは大いに悩む事になるでしょう。
筆者の経験上、序盤で次のショップにホログラムかポリクロームジョーカーの入荷確定タグ、あるいはボスブラインドの報酬+15タグが出た場合は、優先的に取りに行くとその後の攻略が楽になる印象です。
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アンティ8のボスブラインドはラスボスブラインドとなり、「手持ちのジョーカーを1枚売るまでほぼ無敵」「使用カードを1枚強制される」などの悪辣な能力持ち……ですが、デッキや所持ジョーカーの構成がかっちりかみ合うと一撃で必要スコアの約35倍を叩き込んでラスボスを1ショットキルすることも可能です。
本作はポーカーというゲームの性質上、どうしても展開に運が絡み、どうしようもなくなる詰んだ場面も多く発生するのですが、逆にこうした無双ビルドが組みあがる事もあります。一度こうしたインフレ無双展開に入ると、他には得難い爽快感と幸福感が得られます。
なお本作はアンティ9以降もゲームを継続することができ、どこまで進めるかチャレンジすることもできます。筆者はアンティ12のスモールブラインドまでは行けました(ここまで来るとクリアに必要なスコアは3億点……無理だろ!!)。
運にも左右されるが、中毒性の高いローグライト。のめり込み危険!
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本作は1回のランのプレイ時間が短く、ゲームのテンポも良いので(オプションで処理速度をx4にすれば文句なし)、運悪くゲームオーバーになってしまっても気を取り直しての再プレイが容易です。そして運良く入手したジョーカーやタロット、惑星カードなどがかみ合って強力なインフレの域に突入した際の感じは格別で、射幸心を強く煽る、のめり込み注意なゲームに仕上がっています。
もちろん本作はデッキ構築型ローグライトゲームらしく、プレイを繰り返して解禁される新たなジョーカーカードや、性能の異なる複数のデッキ、そしてプレイに様々な縛りが追加されていくいわゆる「アセンション」的な仕組みなど、長く遊べる要素も多数用意されており、ゲーム自体のボリュームも充分です。デッキ構築型ローグライトゲームのファンのみならず、ポーカー役を知っている……程度の知識でも、本作を遊んでみて損はないでしょう。
スパくんのひとこと
ビデオポーカーをベースにした異端のローグライト!運の要素はかなり強いけれど中毒性抜群で時間泥棒の、ある意味危険なゲームスパ!
タイトル:Balatro
対応機種:PC(Steam)/スイッチ/PS4/PS5/Xbox Series X|S
記事におけるプレイ機種:PC(Steam)
発売日:2024年2月20日
著者プレイ時間:20時間(SteamNextFesで公開されていたデモ版含む)
サブスク配信有無:無
価格:1,700円(Steam/スイッチ)/ 1,650円(PS4/PS5)/ 1,750円(Xbox Series X|S)(すべて税込)
※製品情報は記事執筆時点のもの