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Steamに存在する「ゲームの脚本執筆などを手掛ける“Sweet Baby Inc.”が制作に関わったタイトルを列挙するキュレーター」をきっかけに、同社などの脚本執筆会社がゲーム表現・設定における「多様性」に対し果たす役割について議論が過熱しています。
Sweet Baby Inc.は多様性を強制している?
Steamのキュレーター「Sweet Baby Inc detected」はSweet Baby Inc.が制作に関わったタイトルを列挙するものですが、脚本執筆などを手掛ける同社の役割を“多様性の強制”だとして、否定的に捉えています。
海外メディアKotakuはこの件について「Sweet Baby Inc.は一部のゲーマーが考えていることを行っていない」と題して、同社の仕事は多様性の強制ではなくナラティブデザイン(ストーリー構築や語る技術)であり、DEI(多様性、公平性、包括性)のコンサルティングではないとする記事を掲載。その中で同社からの「全てのプレイヤーに良い体験を届けたいのであって、多様性は副産物だ」との言葉も伝えています。
Sweet Baby Inc.従業員の問題発言を切っ掛けに議論が過熱
そうした状況にあって、上記のSteamキュレーターのスレッドにSweet Baby Inc.従業員が反論を書き込み、また別の従業員がX上で同キュレーターを問題あるとして報告するよう呼び掛けるなど、同社は激しく反発。一方でその反論の中には、むしろ「多様性」からはかけ離れたような差別的ともとれる言葉や視点があったとして批判も強まっていきました。
議論が感情的で過熱しているといえる状態に至っていますが、上記Kotakuの記事についてRedditではキュレーター「Sweet Baby Inc detected」が存在することは問題視しないが、Sweet Baby Inc.や取引先への暴言や嫌がらせは問題だとする意見など比較的冷静なものが目立ちます。
実際、現実同様のリアルな世界から完全なファンタジーまでありえるゲームのナラティブ面において、多様性の観点から(特に、メジャーAAAタイトルのような「リスクを最小限に抑えたい」場合)手を入れることの是非は一概に決められることではありません。同社従業員による差別的ともとれる発言や、同社に対する誹謗中傷はどちらも許されることではありませんが、そうしたことは様々な観点から脚本執筆を外注する会社の仕事や、そもそも全てのゲームが多様性に配慮する必要はあるか、そして非ゲーマーを含めた第三者と「多様性を持たないゲーム」という存在がどう付き合っていくべきなのか、という元の論点とは分けて冷静に考えたいものです。