
「Who you gonna call?(誰を呼ぶ?)」「Ghostbusters!!(ゴーストバスターズ!!)」
レイ・パーカーJr.の印象的なテーマ曲に乗って颯爽と登場し、ゴースト捕獲用のプロトンパック・ビームを放っては周囲に大損害を与える男たち。ニューヨークの大市民が見守る中、破壊の神ゴーザを追い返した彼らは、インチキゴースト退治屋から一躍ヒーローになるのだった!
ハリウッドのSFX黄金期である1984年に公開され、たちまち世界的大ヒット作となった「ゴーストバスターズ」。2024年3月29日にはシリーズ最新作「ゴーストバスターズ/フローズン・サマー」が公開されるとあってファンの注目を集めています。
そこで本稿では、急に懐かしくなったあなたへ贈る特集記事として、歴代「ゴーストバスターズ」映画の基本解説、そして幻のシリーズ第3弾と言えるゲーム『Ghostbusters: The Video Game』を振り返りたいと思います!
※現在プレイ可能なバージョンはリマスター版の『Ghostbusters: The Video Game Remastered』。
ゴーストバスターズ気分でゴーストを捕獲!
2009年にリリースされ、2019年にリマスター版が登場した『Ghostbusters: The Video Game』。映画シリーズ第2弾「ゴーストバスターズ2」の2年後の物語として、プレイヤーはゴーストバスターズの一員となりゴーストを退治します。

ゴーストを退治するには、まず小型原子炉を内蔵したプロトンパック(ランドセル状の装備)から供給されるビームを照射し、それで実体のないゴーストを縛り上げる必要があります。さらに縛り上げたゴーストを「ゴーストトラップ」と呼ばれる小型の箱の上まで引っ張っていき、トラップの吸引力で箱の中に封印。捕獲完了となります。
この捕獲方法は、映画が公開された1984年当時はまさに画期的!ゴースト退治といえば、神父がお祓いをしたり、超自然的なアイテムで攻撃したり、弱点を見つけて封印したりするなど、ファンタジーの領域に足を踏み入れたものがほとんどでした。
しかし「ゴーストバスターズ」は科学の力で捕獲方法を発明し、その発明を活かして捕獲するという、SFの領域に足を踏み入れたリアルなものだったのです。



しかも『Ghostbusters: The Video Game』は「ゴーストバスターズ2」の後のストーリーであるため、バスターズの装備も大幅進化!従来のビームのほか、散弾銃タイプ、マシンガンタイプ、スライムを使用した謎解き用のものなど、作品世界を体験するだけでなくゲーム的な面白さもあります。





そもそも“幻のゴーストバスターズ3”とは?
映画「ゴーストバスターズ」シリーズは、1984年にシリーズ第1作が公開されて以来、2024年までに合計5作品が制作されました。
「ゴーストバスターズ」(1984)…シリーズ第1作。
「ゴーストバスターズ2」(1989)…第1作から5年後の物語。
「ゴーストバスターズ」(2016)…世界観の異なるリブート作品。
「ゴーストバスターズ/アフターライフ」(2021)…「2」から続く、約40年後の物語。
「ゴーストバスターズ/フローズン・サマー」(2024)…「アフターライフ」の続編。
もともとピーター・ヴェンクマン博士(演:ビル・マーレイ)、レイモンド・スタンツ博士(演:ダン・エイクロイド)、イゴン・スペングラー博士(演:故ハロルド・ライミス)は大学勤めの科学者で超常現象を研究していたのですが、研究成果が芳しくないことを理由に大学を解雇されてしまいます。
しかしその直前に実際の超常現象に遭遇していた彼らは、かねてからの研究もありゴーストの捕獲方法を確立。ピーターの行動力もあって、なけなしの財産をはたいてゴースト捕獲会社「ゴーストバスターズ」を設立することになりました。
そこへ4番目のバスターズとしてウィンストン・ゼドモア(演:アーニー・ハドソン)も入社。事務員のジャニーン・メルニッツ(演:アニー・ポッツ)、2作目で会計係を務めるルイス・タリー(演:リック・モラニス)、最初の依頼者でヴィオラ奏者のディナ・バレット(演:シガニー・ウィーバー)らとともにストーリーを盛り上げることになります。
「ゴーストバスターズ」や「ゴーストバスターズ2」では、破壊の神ゴーザやスライムの影響によってゴーストで溢れていたニューヨークですが、捕獲しすぎたこともありやがて事業としては成立しなくなる状態に。バスターズもそれぞれ別の職業に就き、バラバラになってしまいます。
しかし約40年後の「ゴーストバスターズ/アフターライフ」では、イゴンの孫であるフィービー・スペングラーをはじめ、彼女の家族や仲間たちがゴーストバスターズの装備品を見つけたことで再結集!新たな世代を中心に新たな物語が紡がれることになりました。
もともと「ゴーストバスターズ3」は映画で企画されていたものでしたが、オリジナルキャストが揃わなかったり、幾度となく制作が中止されたりして、なかなか実現には至りませんでした。その間、新たな世代にストーリーを引き継がせる、ピーターが劇中で亡くなる等、ストーリーも紆余曲折します。さらに制作が難航する中、脚本家のひとりでイゴンを演じるハロルド・ライミスが2014年に亡くなったことで、続編としての制作は完全に断念されました。
その後、バスターズ4名を全員女性にしたリブート版、そしてコメディ路線からジュブナイル・ファンタジー路線にテイストを一新した「アフターライフ」が新規始動し、新たな「ゴーストバスターズ」の歴史が紡がれることになります。
なおリブート版にはビル・マーレイほかオリジナルキャストがカメオ出演していますし、「アフターライフ」ではオリジナルキャストがそのまま登場しつつ、さらに故ハロルド・ライミスがCG映像で登場していますから、そちらもおすすめです。
なにより「アフターライフ」は「ゴーストバスターズ」を大ヒットに導いたアイヴァン・ライトマン監督の遺作にもなってしまったため、ハロルド・ライミスの思い出とともに、ファンにとっては大きな意味を持つ作品になりました。
『Ghostbusters: The Video Game』は映画「ゴーストバスターズ3」の制作が断念される中、「3」で描かれるはずだった要素を盛り込んで完成した作品です。シナリオライターには映画と同様、ダン・エイクロイドとハロルド・ライミスも名を連ね、声優としてビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、ハロルド・ライミス、アーニー・ハドソン、アニー・ポッツも同じ役柄で復帰。ハロルド・ライミスの死去により、オリジナルのバスターズ4名が揃った最後の作品となりました。
シナリオとレイ・スタンツ役を演じたダン・エイクロイドも、さまざまな媒体で「実質的には3作目の映画です」と発言する、まさに「ゴーストバスターズ3」なのです。





『Ghostbusters: The Video Game Remastered』のここが好き!
『Ghostbusters: The Video Game』でプレイヤーは新人ゴーストバスターズとなり、ピーター、レイ、イゴン、ウィンストンとともにゴースト退治をおこないます。そしてその中でとある関連性を見出し、やがて大きな存在と対決することになるのです。
注目ポイントはおもに以下の3点。
映画前2作を踏まえての新装備
訪れてみたかった聖地の再現
最初からクライマックスのような大騒動!
基本はプロトンパックでゴーストを捕獲するのですが、まずその方法がゴーストバスターズ気分になれる面白いものでした。
ビームを照射し、ゴーストの体力を削ってからの捕縛。捕縛してもなおゴーストは暴れまくってなかなかトラップに吸い込まれてくれない!そこでプレイヤーはビームでゴーストを捕らえたまま、壁にぶつけたり床に叩きつけたりしてゴーストを失神させます。そのあたりはまさに釣りをしている気分ですね。
捕獲方法にクセがあるので慣れるまでに時間を要しますが、コツを掴むとスムーズに捕獲でき爽快感が増します。
ただし本作のゴーストは殺意が高めで、難易度を上げるとすぐに後ろから追突されてダウンするハメに。ピーターら先輩たちが駆けつけて助け起こしてくれるものの、反対に先輩たちも次々とダウンして収拾がつかなくなるケースも増えるため、最初はイージーモードでチャレンジすることをおすすめします。なお、難易度はいつでも変更が可能です。
プレイヤーは新人ということで試作の新型プロトンパックを背負うことになるのですが、要所要所でアップデートされてさまざまな新ビームが使えるようになります。
従来の赤いビームは捕獲用のもののほかに大型弾丸を発射する「ボソン・ダーツ」が射出可能に。青いビームはゴーストの動きを鈍らせる凍結ビームと、散弾銃のようにビームを飛ばす「ショック・ブラスト」を発射。オレンジのビームは特に使い勝手がよく、マシンガンのようにビームを連射するもの。何かに憑依し、実態を持ったゴーストならたちまち一掃できるので便利ですが、攻撃力が一段落ちるため過信はできません。
グリーンのカテゴリーはおもにスライムを放出するもので、ゴーストに取りつかれた人間を浄化したり、ダメージを負わせる悪玉スライムを中和したり、離れた足場をつないで引き寄せたりします。これは映画「ゴーストバスターズ2」に登場した善のスライムと悪のスライムの設定を踏襲したもので、続編らしさを特に感じさせる要素でした。
またバスターズの愛車である「ECTO-1(エクトワン)」も本作でパワーアップ。出番は限られているものの、ECTO-1の天井にゴースト捕獲装置が増設されており、そこにゴーストを叩きこむ場面も。
「アフターライフ」では翼座と呼ばれる、座席がアームで繋がった機構が搭載されており、シートに座ったままゴーストを捕獲するダイナミックなカーチェイスが楽しめましたが、そこへと至る進化のひとつが垣間見えた形です。

第2の「ここ好きポイント」はやはりゲーム内の聖地巡礼です。
おなじみのゴーストバスターズ本部はもちろんのこと、ピーターたちが映画劇中で最初にゴーストと遭遇するニューヨーク公共図書館、初出動の場であるセジウィック・ホテルも登場。レイアウトは劇中そっくりそのままとはいきませんが、映画と同じような装飾が施されていたり、消防署の滑り棒が実際に使えたり、ニューヨーク公共図書館では映画と同じ心霊現象に遭遇できます。
なおそれら聖地は映画1作目をベースにデザインされているので映画本編と見比べるとさらに楽しめるでしょう。








そして最後のおすすめポイントは、最初からクライマックスのような大騒動です。
本作もストーリーを進めるうちに大きな事件に発展していくのですが、2時間しかない映画と違ってゲーム版は要素が盛り盛り!なんと序盤にあのマシュマロマンが登場します。しかもニューヨークの市街地を丸ごと巻き込む大騒動となっており、さながら映画1作目と2作目のラストバトルがいきなり繰り広げられるような展開で熱くしてくれます!
これはゲーム本編でぜひ体感してほしい部分ですが、マシュマロマンの大きさ、そして大混乱に陥るニューヨークの街は臨場感たっぷりで、それだけで元が取れた気分になります。
そのほか映画シリーズを意識したシーン、やり取り、懐かしいゴーストたちなど、オールスターで繰り広げれる本作は、まさに「ゴーストバスターズ3」にふさわしいものでした。



過去には鬼畜仕様が楽しかったファミコン版も……
「ゴーストバスターズ」は、やはり現実に存在してそうな世界観が魅力です。本作の企画立案者であるダン・エイクロイドは、当初は宇宙を舞台にした未来SFを考えており、その脚本を映画スタジオに売り込んだそうです。
しかし監督として白羽の矢が立ったアイヴァン・ライトマンは、もっと地に足が着いたストーリーラインの、現実的にありそうな世界観にしたいと考えました。そこで「クビになった科学者たちがゴースト退治の会社を立ち上げる」という起業物語にしてはどうかとエイクロイドを説得。ハロルド・ライミスも共同脚本として参加して現在の設定が完成しました。
交霊会をおこなうほど心霊世界に造詣が深かったエイクロイド家で育ったダン、そして幽霊をまったく信じておらずロジカルに考えるタイプだったライミス。それはまさに劇中のレイとイゴンそのもの。そんなエイクロイドとライミスがライトマンの指揮のもと、起業物語として作り上げたのが「ゴーストバスターズ」でした。
この「起業物語」がまさに当時としては斬新だった部分で、一度は失敗した科学者がドン底から這いあがる逆転劇、発明品であるプロトンパックひとつで成り上がるサクセスストーリーはただのキャラクター映画にとどまらず、ゴースト退治を描きながらも大人も楽しめるコメディ作品として大ヒットしたのでした。
そのあたりの詳しい裏話は、Netflixで配信中の「ボクらを作った映画たち」で詳しく語られているので必見です。なおNetflixでは映画シリーズ全4作が観放題となっているので、最新作の前にまとめて視聴してはいかがでしょうか。

また映画「ゴーストバスターズ」の映像表現は、当時としては最高水準で作られたものでした。
特殊効果のスーパーバイザーを務めたのは、ILM創設メンバーのリチャード・エドランド。ILMとはジョージ・ルーカス監督が設立した特殊効果のスタジオで、1977年の「スター・ウォーズ」を担当して以降、当時としては最高技術の特殊効果スタジオとして引っ張りだこだったスタジオです。
現在はオブジェクトもすべてCGで制作する「VFX(ビジュアル・エフェクト)」が主流ですが、当時はアナログ撮影したものをアナログで合成する「SFX(スペシャル・エフェクト)」しかなかった時代。人気ゴーストの「スライマー」も、黒バックに全身黒のスタッフがスライマーの着ぐるみを動かし、それを合成するという方法で誰も見たことがない、夢のような映像を作り上げていました。
ちなみに映画が公開された1984年は「スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!」「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」「スーパーガール」「スプラッシュ」「グレムリン」なども公開に。まさにSFXで映像表現の幅が一気に広がり、様々な名作映画が誕生した時代でした。
なお日本では「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」「さよならジュピター」「ウルトラマン物語」「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」「SF新世紀レンズマン」「ゴジラ」などが公開され、こちらも特撮もの、オリジナル作品、アニメ映画が花盛りでした。
日本国内のムーブメントとしては、真っ先に思い出されるのがレイ・パーカーJr.によるテーマ曲のブームです。「ゴーストバスターズ」では挿入歌が大きく扱われており、一部シーンはまさにミュージックビデオのような作りに。筆者も当時、挿入歌を1本にまとめたサウンドトラック(しかもカセットテープ!)を親に買ってもらいました。
中でもテーマ曲の「Ghostbusters」はビルボードランキングで3週連続1位に。アカデミー歌曲賞にもノミネートされました。
歌詞の中で「Who you gonna call?(誰を呼ぶ?)」と呼びかける場面があるのですが、それに「Ghostbusters!!(ゴーストバスターズ!!)」と返すあたり、さながらライブ会場のコール&レスポンスです。あのパートがあったからこそ、テーマ曲の「Ghostbusters」は誰の記憶にも残る名曲になったのではないでしょうか。
個人的には『Ghostbusters:The Video Game Remastered』のメニュー画面でも流れる「Main Title Theme」も好きですし、一番好きなのは飛び跳ねるようなピアノの旋律が気分を高揚させる「Cleanin' Up The Town」です。コメディ作品だからできた幅の広さではないでしょうか。
また、ファミコンブームだった当時は徳間書店がリリースしたファミコン版『ゴーストバスターズ』も話題になりました。理不尽なまでのお金稼ぎ要素、ひたすらマップを眺めるだけの動きのないゲーム内容……。
何より衝撃的だったのは、20階以上もあるビルの階段を歩いて昇らないといけないことです。しかも方向キーではなく、ボタン連打しないと歩いてくれない!劇中でも長い階段を、息を切らせながら歩くシーンがありましたが、まさかの完全再現という今なお忘れられないゲームでした。


3月29日公開の映画最新作「ゴーストバスターズ/フローズン・サマー」ではオリジナルのバスターズが再結集するだけでなく、映画シリーズ第1作を思い出させる仕掛けが数多く登場することが予告編から伝わってきますから、過去のシリーズ作品を視聴しつつ、『Ghostbusters: The Video Game Remastered』をプレイしてゴーストバスターズになりきってみてはいかがでしょうか。
"GHOSTBUSTERS" with the "GHOST DESIGN" is a trademark of Columbia Pictures Industries, Inc. "GHOSTBUSTERS" and "GHOSTBUSTERS 2" movies: © 1984, © 1989 Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.
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