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4月25日に発売されるスクウェア・エニックスのRPG『サガ エメラルド ビヨンド』。1989年から続く『サガ』シリーズの完全新作であり、『サガ スカーレットグレイス』から実に8年ぶりの発売となります。当然、今回も河津秋敏氏がディレクターを務めます。
この度、スクウェア・エニックスから先行プレイの機会をいただき、新しい『サガ』の世界に触れてみたところ、『サガ スカーレットグレイス』から継承された「タイムラインバトル」はさらに奥深くなり、シナリオも誰が読んでもわかりやすく面白いものになっていました。是非ともチェックしてみてください。
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●そもそも「サガ」とは? スクウェアが誇るユニークすぎる名作RPG
1989年の『魔界塔士Sa・Ga』から続くスクウェア・ソフト(現スクウェア・エニックス)の看板タイトルシリーズ、それが『サガ』です。
シリーズの特徴をいくつか挙げますと、レベルの概念がなくランダム寄りに成長するキャラクターたち、ひらめきや連携という唯一無二のバトルシステム、すべてが明かされないことで美しい余白を感じられる神話体系、「アリだー!!」や「ころしてでも うばいとる」といった河津節と評される珍妙な台詞回しなどがありますが、どれもこれもあまりにユニークすぎて、まるで語りきれません。
筆者は過去に「レベルに縛られない冒険を今こそ体験しよう…『DQ』や『FF』とは一味違うRPG『サガ』シリーズの魅力に迫る」と題して『サガ』シリーズの魅力を考える記事を執筆しています。まだ『サガ』に一切触れていないという方は、是非ともこの記事から入門してみてください。
●進化したタイムラインバトル……何千回でも楽しめそうな奥深さを感じる戦略的コンバット
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『サガ』シリーズを支える大きな柱であるバトルシステムですが、今回もとんでもなく作り込まれています!
基本的には『サガ スカーレットグレイス』と同じく、敵味方の行動順がタイムライン上にすべて明記されていますが、大小様々なテコ入れが入っています。よって、今のうちに『サガ スカーレットグレイス 緋色の野望』で予習しておくのもありかもしれません。
まず、シリーズお馴染みの「連携」が帰ってきました。今回は、すべての技の右下に緑色の数字が記載されているのですが、これが連携範囲で、この連携範囲同士が触れ合うと、その技を使用するキャラクターで連携が成立します。要は、緑のラインをなるべく(敵や防御中の味方を挟まずに)くっつける遊びなわけです。
もちろん、これは敵も行ってきますので、あえて割り込んだり、バンプ技で行動を遅らせたりして、敵の連携を妨害するのも重要です。
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基本的には連携で凄まじいダメージを叩き込み、一匹ずつ敵を倒していく形になります。『サガ フロンティア』を初めて遊んだときの熱狂を思い出しますね……。
今回から、連携技がひとつの攻撃という扱いではなくなり、連携の途中で敵が倒れると、次の攻撃から自動でターゲットが他の敵に変わるようになりました。素晴らしい改良点です!
しかしながら、単に連携だけバンバン狙えばいいわけではありません。「独壇場」といって、周囲に2マス以上キャラクターがいない状態で攻撃をする場合、自分だけで連続攻撃ができるので、そっちを狙うのも手です(当然、敵もこれを行ってくるので、孤立させるのも危ないです)。
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集めるか、孤立させるか……たった一本のタイムラインなのに、すでに駆け引きがたっぷり用意されています。1ターンたりとも見逃せないバトルシステムは、今回も健在といっていいでしょう。
ちなみに『サガ スカーレットグレイス』の要であった「連撃」は省かれていました(キャラクターが倒されたときにタイムライン全体が縮まり、同陣営のキャラクター2人以上がくっつくと全体攻撃が発生するシステム)。たしかに『サガ スカーレットグレイス』では結局連撃ばかり狙ってしまっていたので、今回は連携や独壇場をメインに考えて欲しいということなのでしょうね。
なお、河津氏は「スクエニの創りかた」という動画で「ゲームの時間の大半を占めるのはバトルなので、バトルの遊び心地とかUIの連動性とかは、実はゲームでは一番大事なところ」と語られているので、良かったらこちらの動画もチェックしてみてください。
●多岐に渡る成長システムと、世界観と融合した多様な種族たち
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『サガ』シリーズは、神話に裏打ちされた世界を舞台に、多種多様な種族が登場することもウリのひとつですが、今回ももちろん様々な種族がプレイアブル・キャラクターとして用意されています。
ヒトだけでも、人間・吸血鬼・騎士・廃人・短命種などがいて、それぞれ成長の仕方や、使用できる技や術に細かく違いがあります。廃人だの短命種だのという残酷な運命を背負ったキャラクターが当たり前のように登場するところも、とても河津節を感じますね。
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最初にカーソルが合っている主人公キャラクターである御堂鋼紀(みどう つなのり)は、クグツというユニットを操れるのですが、こちらもなかなかユニーク。ひらめきが出来ない代わりに、他人の使った技を真似して習得することができます。また、モンスターを倒した際に落としたソウルを装備して、能力値の底上げやバフを管理することになります。
『サガ フロンティア』のように、あらゆる世界を渡り歩いて、色々な種族のキャラクターをコレクションし、最強のパーティを編成する楽しみが今回も詰まっているようです。
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●誰にでもわかりやすく楽しめるようになったシナリオ
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『サガ』といえば、神話は壮大ですが、人間ドラマはあっさりしているものが多かった印象があります。「仲間になるかー」の一言でパーティーが増えるのも、もういい加減ツッコミを入れるのすら野暮だと思っていましたが、今回はその点もパワーアップしました。
今回筆者が選んだのは、御堂鋼紀という主人公キャラクター。なんと官僚の甥っ子であり、幼い頃から運命の糸が見える体質だったようです。曲がったことと複雑なことが嫌いで、ミヤコ市の大学に通っており、しかもクグツ使いという、特盛ラーメンみたいな設定の山にクラクラします。とはいえ実際に会話劇を読んでみると、ちょっと大人しめのレオナルド(『サガ スカーレットグレイス』の主人公のひとり)のような印象を受けました。
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世界を救うという使命を帯びた彼は四つの精霊の力を集めるためミヤコ市から旅立ちます。そうして旅立った先の世界では、ドロレスというメイドが、闇の王を復活させようと頑張っていました。彼女の目前にある墓場から飛び出してきた御堂を、闇の王だと勘違いしたドロレスに同行することに。
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闇の王が管理を任せていた塔では、怠惰や色欲などそれぞれの塔名になぞった塔主たちが悪さを働いていました。彼らを機知に富んだ解決法で罠に嵌め、闇の王として力を取り戻していく過程は、ダークファンタジー系の児童書を読んでいるような面白さがあり、RPGにシナリオを求める層にも強く勧めたい完成度になっています。
もちろん、世界から世界に落下するときに「ウォー」と気の抜けたセリフを吐く主人公であるとか、細かい点に『サガ』らしさを感じるテキストも残っているので、ご安心ください。
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以上、『サガ エメラルド ビヨンド』の先行プレイレポートでした。
8年振りの『サガ』として、正当進化を遂げている部分もありつつ、現代のRPGとして誰にでもオススメできるシナリオがたっぷり詰まっているという隙のない作品に仕上がっているようです!徹夜必死のバトル体験を是非ともお楽しみに!
『サガ エメラルド ビヨンド』は、PS5/PS4/ニンテンドースイッチ/iOS/Android/Steamを対象に、4月25日(※Steam版は4月26日)に発売予定です。