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近年eスポーツやストリーミングなどの普及もあって、ゲーミングギアの需要が増しています。そして需要の増加に伴って多様化し、価格帯や機能のバリエーションも年々幅広くなっているように感じられます。
そんな中、「ロジクールG」はゲーミングヘッドセットの新製品である「ASTRO A50 X」を発表しました。今回の記事ではそんなゲーミングギア多様化の時代の中にあってもひときわ目を引く特殊なスペックを持った「ASTRO A50 X」を試用し、その機能を紹介していきます。なお、記事執筆に当たってはロジクールから提供された製品を使用しています。
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「ASTRO A50 X」はロジクールのゲーミングブランド「ロジクールG」の中でも宇宙的なデザインで知られる「ASTRO」シリーズの新作、かつ最上位モデルです。
外見的な特徴はなんといっても充電器を兼ねたベースステーションでしょう。公式オンラインストアでの価格は59,950円(税込)と、ハイエンド級のお値段。もともとは別会社であり、ロジクールに買収されることとなった「ASTRO」ですが、この製品からロジクールGブランドの「G」ロゴがヘッドセットにあしらわれることとなりました。主観ですが、見た目も今までのモデルよりロジクールらしさが増しており、ちょうどASTROとロジクールの中間っぽい印象で非常にいい感じです。
スペックとしての特徴は、現行ロジクールの最もハイエンドなヘッドセットである「G PRO X 2」と同じく「PRO-G グラフェンドライバー」を搭載しているということ。ドライバーというのはヘッドフォンの音が出る部分で、要はその部分が軽量かつ堅牢な素材で出来ているのです。ドライバーのサイズは「G PRO X 2」よりも小さい“40mm”ということですが、これは決してダウングレードしたわけではなく、ロジクールGの担当者いわく「ヘッドセットのサイズに最も適したドライバーを新規開発したもので、なんだったらコストアップしている」とのことです。
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「ASTRO A50 X」の音質は非常に良好。ゲームプレイ中の定位感、分離感が売りとのことですが、たしかにひとつひとつの音が重ならずクリアに聞こえるような感覚があります。音楽のリスニング用途としても悪くなく、低音が目立つヒップホップのようなジャンルの楽曲もかなりクリアに聞こえました。
今回は筆者所有の他社製ゲーミングヘッドセット(購入時2万円程度のもの)と、音楽リスニング用途の有線モニターヘッドホン(こちらも2万円ぐらい)を使って、Mos Defの「Mathematics」という楽曲を聴いて比較しました。ゲーミング用途の商品だと低音がややモコモコしたように聞こえる印象があったのですが、「ASTRO A50 X」はそういうクセがかなり控えめに感じました。
モニターヘッドホンのほうは音がひとつひとつ尖った質感で聴き取りやすく、やや耳が疲れやすいのですが、「ASTRO A50 X」はいい感じにカドが取れて、長時間の使用にも適している印象です。DTMなどに使えるかどうかはちょっと分かりませんが、強いこだわりを持つオーディオマニアでなければ充分な音質でしょう。音楽を聴いて違和感を覚えることはないと思います。
装着感はかなりしっかりしていて、やや側圧が感じられます。見た目のゴージャスさに比べ、重量は軽く感じました。実際には“363g”だそうなので、無線ヘッドセットという製品全体で見ても「重量級」というわけではないと思います。バーチャルサラウンドやアクティブノイズキャンセリングのような機能を搭載していない分、軽量化が出来ているということなのかもしれません。
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これだけ高額なモデルですから、音質がいいというのは当たり前のことかもしれません。「ASTRO A50 X」の最大の特徴はやはりベースステーションを介した接続であり、そこが本機の「他とは違うところ」です。「ASTRO A50 X」ベースステーション背面にはPS5用とXboxコンソール用の2つのHDMI入力・HDMI出力が備えられています。要はゲーム機をモニターに接続する前にこのステーションを介することで、ゲーム音をヘッドセットから聞くことができるようになるという仕組みです。
HDMI端子の横には、各ゲーム機に対応したUSB接続の端子もあります。このUSB接続はヘッドセットのマイク入力をゲーム機に送るもので、ワンボタンで接続をXboxコンソール→PS5→PCと切り替えていくことが可能です。
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基本的にコンソールとPCを併用している環境で、ひとつのヘッドフォンからすべて音を聞こうと思うと、おそらくオーディオインターフェースを介して細かく設定したりせねばならないのですが、本機であればそのややこしさから開放されるわけです。また、マイク入力を無視すればHDMIの音が入力されるわけですから、理屈としてはニンテンドースイッチなど他のHDMI入力を持ったゲーム機なども使用可能となると思われます。
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少々ややこしい話ですが、本機ではHDMI入力はオーディオミックスできず、「PS5とPCの音を同時に聞く」というようなことも不可能。都度、切り替える必要があります。そういった用途で使用したい場合は相変わらずオーディオインターフェースを用いてあれこれ設定する必要があるわけですね。
ただ、その方法だと今度はヘッドセットマイクをゲーム機に入力することが困難になるわけなので、本機にはオーディオインターフェースを超えたメリットがあるとも言えます。正直かなりニッチなメリットには思えますが、ゲーム内のボイスチャットを多用するプレイヤーにとっては嬉しい利点です。
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また、「ASTRO A50 X」ではLIGHTSPEEDとBluetoothの同時接続が可能。こちらはオーディオミックスも可能となっています。つまりPCやゲーム機を使いながらスマホの音を聴いて通話したり、その逆も可能ということ。ゲーム機で遊びながらスマホで通話するというのは現実的な用途に感じられますよね。
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ということで、「ASTRO A50 X」について紹介していきました。筆者としては、「PCとゲーム機を同時に扱う機会が多いユーザー」にとってかなり理想的な製品であると感じます。ストリーマーやプレイ動画の制作者、そして我々のようなゲームライターにも向いているかと思います。また、ゲーム機でのボイスチャットをよく使うユーザーや、Xboxコンソール版とPS5を同時に所持していて「1台のヘッドセットを簡単に使いまわしたい」と考えるユーザーにもマッチするかもしれません。
注意点として、本機はベースステーション前提の設計となっています。そのため、ヘッドセット本体だけで他のデバイスとBluetooth接続することはできません。本当に尖っていてニッチな仕様のヘッドセットですが、「ASTRO A50 X」の機能がまさにマッチする方もいることでしょうし、本機のユニークな技術に合わせてゲームプレイ環境を構築するというのも面白いと思います。もちろん「G Hub」にも対応していて、ロジクールの他製品のように設定プリセットを共有することも可能。かなり先鋭的な商品なので、ユーザーによってどのような使い方が発明されるのかが楽しみです。
MixAmp内蔵ワイヤレスゲーミングヘッドセット 「ASTRO A50 X」は、2024年5月16日(木)より発売予定。ブラック・ホワイトの2色をラインナップに揃え、ロジクールオンラインストアでは59,950円(税込)で販売されます。詳細はこちらの記事からご覧ください。