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毎日滝のように発売している新作ゲームたち……当然ながらそのどれもこれもがどこかの誰かが丹精込めて作っている作品なわけです。昨今は個人開発も増えてきましたが、やはりまだビデオゲームはチームないし会社組織が作っているものが多いですね。
そこで今回は筆者の友人に声を掛けて、ゲーム会社での仕事について匿名でのインタビューを実施しました。いったい誰がどんな仕事をして、どうなったらゲームが完成するのか……根掘り葉掘り聞いてきましたので、是非ともチェックしてみてください!
インタビュアー:筆者。シナリオライター&ゲームライターの各務都心。
インタビュー対象者:Nさん(仮名)。筆者の友人。都内の某ゲーム会社で正社員として勤務している20代後半の男性。
――1本のゲームが出来上がるまでのざっくりとしたフローを教えていただけますか?
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Nさん(仮名)「新作ゲームの企画立案」、「ゲームプレイを検証するプロトタイプの制作」「仕様書の内容が一通り実装されるα版の制作」「製品版相当のβ版の制作」……といった順で進行します。元大手ゲーム会社勤務の同僚によると、大手ではプロデューサー主導で企画が決まるそうです。
自分の会社では社員が企画を立ち上げることがよくありますが、プロトタイプの出来が悪くて凍結したり、企画立案者や重要人物が会社からいなくなることも起こりますので、最初から最後まで問題なく進行することは稀ですね。
――社内では、主にどのような業務を行っていますか?
Nさん(仮名)過去携わっていたものをすべて含めると、ゲームデザイン、ゲーム内イベントの実装、カットシーンの実装、ゲーム内マップの作成、ミニゲームの作成など多岐に渡ります。現在はゲームデザインやエンジニアなど様々な業務を並行しているほか、外部スタジオのサポートも行っています。
自分は中小規模のスタジオに所属しているのでこういう働き方をしていますが、大手企業だと社内兼業は少ないのではと思います。
――プライベートの時間で、ゲームはどれくらい遊びますか? また、どのようなゲームを遊びますか?
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Nさん(仮名)月に2~3本は新作を買い、Epic Games Store、GOG.comやAmazonプライムでの無料配布ゲームをもらいつつ、PS PlusやXbox Game Passといったサブスクリプションサービスもチェックしています。買い切りゲームはSteamの話題作や任天堂のゲームをプレイすることが多いです。
自分が今まで買ったゲームのうち、アクションやアドベンチャー要素の強いゲームが多い気がします。ゲーム仲間のDiscordフレンドからオススメされたゲームをプレイすることも多いですね。
――ご自身でプレイして「これはしてやられた~」と思ったゲームはありますか?
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Nさん(仮名)直近で一番感銘を受けたのはミステリーADV『The Case of the Golden Idol』と、デッキ構築型ローグライクポーカー『Balatro』です。
――ゲーム会社に勤めている中で、どういう瞬間に喜びを感じますか?
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Nさん(仮名)自分の頭の中で想像していたものが、実際にプレイできるゲームになったときや、ゲームデザインを調整したことで、目に見えてゲームプレイが改善されたときですね。その他は、身の回りで「プレイしましたよ!」と言われたり、街中やSNSで自分の関わったゲームに関するものを偶然見かけたときなど。
あとは試遊会などで一般ユーザーが面白そうに遊んでいる様子を生で見たり、その場で意見を直接もらったりしたとき、などですかね。
――逆に、どういう瞬間に「ゲーム会社のここが辛い」と感じますか?
Nさん(仮名)ディレクションの方向がブレブレだったり、ディレクターの意図がまったく伝わってこないときですね。あとは指示通りに作って、想定通りに面白くないゲームができたとき。ユーザーの感想・メディアのレビューで想定通りの批判や文句が出てきたときや、自分が心血を注いだ創作物が、ユーザーのお金と時間を無駄にしてしまったことを実感したときにも感じます。
――将来的にどのような業務を担当してみたいですか?
Nさん(仮名)ゲームディレクションをしてみたいのですが、現実的にはなかなか厳しいので、個人制作のプロジェクトを進めています。アーティストやエンジニアと違い、企画職は自分の実績を第三者に客観的に証明することが困難なんですよね。
――いつ頃から「ゲーム関係の仕事に就きたい」と考えましたか?
Nさん(仮名)小学生の頃にアクションゲームを作れるフリーソフトに触れたことがきっかけで、ゲーム開発に興味を持ち始めました。それ以降は、中学、高校、大学とゲーム業界への就職を継続して目指していました。大学生のとき、研究室で教授から「たいていはゲーム業界志望の学生もしばらくすると一般職に鞍替えするけど、最後までゲーム業界志望を維持した人は珍しい」と言われたことを覚えています。
――ゲーム会社に就職するため、どのような勉強をしてきましたか?
Nさんが参考にした書籍: ゲームデザインバイブル 第2版 ―おもしろさを飛躍的に向上させる113の「レンズ」(リンク先はアフィリエイト)
Nさん(仮名)自分は企画職を志望していたので、就活の時期に企画書の書き方を練習しました。大抵のゲーム会社は一次審査として企画書の提出が条件となるためです。しかし、二次審査では面接で集団活動の経験を説明するよう求められて、大学では個人活動が中心だった自分はどう説明したものか非常に悩みました。
ゲーム会社への就職を目指す学生は、グループワークや集団によるモノづくりも経験しておくとよいでしょう。ゲームジャムへの参加が良い手段じゃないでしょうか。
――入社してから「想像と違った……」と感じたことはありますか? 逆に「期待通り!」と思ったことは?
Nさん(仮名)学生の頃は「アマチュアから見えない場所に“ゲームデザインの効率的な制作フロー”があるのでは」とわずかに期待していましたが、そんなことはなく“小規模だろうか大規模だろうがゲームデザインは手探り”だと分かったことでした。精度の高い企画というのは、具体的な指針の有無とテストサイクルを回した数の問題ということです。
期待通りだと感じたのは、勤務開始時間が少し遅めなところで、午前10時半に職場に来ても数人しかいないことがよくあります。それに釣られて自分の起床時間と就寝時間も遅めにズレて、生活習慣が悪化するのが悩みの種ですが……(笑)。
――今のゲーム業界に対して、思うところはありますか?
Nさん(仮名)日本でもダウンロード販売が浸透してきて、短編でヒットさせるインディーゲームが増えてきましたよね。日本や欧米のユーザーだけがターゲットだと売上的に限界があったようなソフトでも、プラットフォームの国際化によって様々な国々でヒットする土壌ができたことは素晴らしいことだと思います。
以上、ゲーム会社の社員にインタビューさせていただきました。プロの世界で自らのクリエイティブを発揮するとはどういうことなのか、チームで物作りをすることの面白さや苦悩も垣間見れたかと思います。非常に勉強になりました……。これからはいちゲーマーとしても、ボタンを押す力がいっそう増す気がしてきますね!