5月4日にインディーゲームイベント「東京ゲームダンジョン 5」が開催されました。多くのインディーゲームが並び盛況を見せた本イベントの中で、本稿では語学学習ソフト『ことのはレルナード』を紹介していきます。
『ことのはレルナード』は百合な世界観で語学を学ぼうという異世界語学アプリで、シリーズにあたる“純百合アドベンチャー”『ことのはアムリラート』『いつかのメモラージョ』で登場する異世界語学「ユリアーモ文字」“など”をしっかりと学ぼうという派生作です。

本シリーズで描かれる“異世界”はこちらの世界に似ていますが、空がピンク色、「ユリアーモ文字」で会話しているなど多く点が違っています。
従来のシリーズでは、主人公の凜が語学学習をしていき少女達と意思疎通していくADVゲームとなっていましたが、今回は異世界言語の学習のみに特化したアプリとなって登場。「ユリアーモ文字」を始めとした語学を集中して学ぶことが可能です。
……そして本作最大の特徴といっても良いのは「ユリアーモ文字」は実在の言語「エスペラント(エスペラント語)」をベースに作られているということ。両言語に大きな差異がないため、つまり本ソフトで異世界言語を習得していたらエスペラント語も話せるようになるということです! 『ことのはレルナード』ではもちろんそこを意識して「エスペラント語学習ソフト」としても成立しています。
わかる方ならわかると思いますが、これは「純百合の世界で異世界語学を学ぶなんて尖っているよね」レベルじゃないインパクトで、エスペラント語習得ソフトというだけで、本ソフトの存在意義は強いと断言できます。もちろん「エスペラント語って何?」という方も多いと思いますので、本稿ではエスペラント語の解説も交えてプレイフィールをお伝えしていきます!
◆“純百合”なエスペラント語学習アプリ…「学ぶなら今でしょ」と思ってしまう出来!
「エスペラント語ってどの国の言葉?」と感じる人も多いと思いますが、(過去には公用語とした国もあったものの)これはどの国の公用語でもありません。エスペラント語とは1887年にラザロ・ルドヴィゴ・ザメンホフ(Lazaro Ludoviko Zamenhof)によって 創案された人工言語で「国際補助語」としての役割を担っています。

言語と文化は密接な関係性を持つとして、文化を持たないエスペラント語は「新たな公用語」ではなく、どこの国でも使える「国際補助語」と名乗っている背景もあり、世界に話者は約200万人存在と、最も成功した人工言語とも言われています。Google翻訳にも搭載されているほどですので、「人工言語を作って遊ぼうぜ」というレベルじゃありません。
しかしながら、「第二言語でエスペラント語を学びます!」という人が少ないのも確か。こう言っては失礼かもしれませんが、選ぶにはやや特殊な領域で、ニッチとも言える存在です。だからこそロマンがあり、生活圏内で見かけないからある意味で“異世界感”も感じます。

教育機関の第二外国語などでも選べませんし、知ってても学ぶにはハードルが高いエスペラント語ですが……なんとこの『ことのはレルナード』で学べてしまうんですよ!

さて、ここからは実際にゲームをプレイ……とはいっても本作は『ことのはアムリラート』シリーズと違いADVではなく“語学学習アプリ”ですので、その視点からレポをお届けします。


まずはホーム画面。チュートリアルがかなり「突き放し気味」で初めは戸惑いましたが、短い試遊の時間で把握できます。主要な項目は(ちゃんと日本語で)表記されているのでわかりやすいでしょう。そして唯一チュートリアルで“???”と謎の表記になっていたボタンを押すと、ホーム画面がユリアーモ文字からエスペラント語に切り替わります。


異世界と現実を行き来する演出が挟まり、ピンク色の空とユリアーモ文字に彩られた世界から見慣れた現実へ……戻ったはずですが、こちらもエスペラントがびっしり。思わず「え、何語?」と感じてしまいますね。
「単語の練習」「例文の練習」ホーム画面に掲げられた項目のほかに、タイトル画面には“まだ”読めない文字が多く並びます。中央に書かれた文章は意味深で、自らの語学習得が進むにつれ読む事ができるようになるでしょう。今回、特別にこの内容を伺ったところ、『ことのはレルナード』の世界観を感じさせる文章となっていました。


『ことのはレルナード』ではアルファベットの発音からユリアーモ文字およびエスペラント語を学ぶことが可能です。可愛らしい女の子たちを切り替えて「エスペラント語(およびユリアーモ文字)の発音」を学んでいけるので、ただの学習ソフトにはない魅力を持っています。


ホーム画面からは各キャラクターの紹介を見る事ができ、シリーズ未履修のプレイヤーにも優しい仕組み。もちろんここにもユリアーモ文字やエスペラント語がちらほら。「横浜は「Jokohama」って書くんだ……!」とちょくちょく知的好奇心が満たされていきますね。
『ことのはレルナード』でシリーズを知ったという方は、“語学学習アプリ”として特化している本作とあわせてADVである『ことのはアムリラート』『いつかのメモラージョ』と同時にプレイしていくのもアリでしょう。各キャラごとにご褒美シナリオもありますので、シリーズファンも楽しめるはず。

そして今回、筆者が最も驚いたのは『ことのはレルナード』に搭載されたエスペラント語の辞書! なんとこちらは日本エスペラント協会に了承を受けたうえで、同協会の発行する「エスペラント日本語辞典」頻出単語A・B・CのうちAとBを使用しているとのことで、エスペラント語に対する本気具合が伺えます。


こちらも学習用の辞書になっていて、単語の説明を一部隠すことなどができるようになっています。「語学学習!」と肩ひじを張っていても、ちょくちょく可愛らしい“純百合”な要素が出るのが普通の語学学習ソフトとは違う所でしょう。
もちろん『ことのはレルナード』はそれ単体で「エスペラント語の学習ソフト」と他に類をみない最大の特徴を持っていますが、“楽しく学習できるソフト”としても優秀です。ヒロインたちの可愛さもADVシリーズの派生作品とあって言わずもがな……本シリーズファンだけではなく、こちらからシリーズに入るのも大いにアリです。
『ことのはレルナード』は純百合が好きでなおかつエスペラント語に興味がある人間にオススメできる一作……こう書くとニッチすぎる感じがありますが、要するに“知的好奇心を満たしていくことに快感を覚える”タイプのユーザーに向いています。
ただし『ことのはレルナード』自体はがっつりとしたADVゲームではなく、“語学学習ソフト”ではあるので、その点だけはご留意ください。