2024年5月24日にSteamで早期アクセスを開始した百合3DダンジョンRPG『ウィッチ・アンド・リリィズ』。本記事では、本ゲームの早期アクセス時点におけるプレイレポートをお届けします。
『ウィッチ・アンド・リリィズ』とは
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『ウィッチ・アンド・リリィズ』はストロマトソフトが「百合」+「3DダンジョンRPG」を掲げて2022年12月にクラウドファンディングを開始したプロジェクトで、同プロジェクトはクラウドファンディング目標金額の約21倍の支援額を獲得するなど、各所から注目を浴びた作品となります。そしてクラウドファンディングの開始からおよそ1年半を経て、PC(Steam)版が早期アクセスとして公開されました。
『世界樹の迷宮』ライクなキャラクターメイキングと5人パーティ編成。よく考えてパーティを組もう
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手にしたものはあらゆる願いをかなえることができるという「女王の遺品」が眠るという迷宮が存在する都市「コフィン・ロック」。プレイヤーはこの街にやってきた「ウィッチハントリーダー」と呼ばれる冒険者として、迷宮を潜ることのできる才能を秘めた女の子たちを雇い、5人パーティを指揮して前人未到の迷宮に挑みます。
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迷宮に潜る女の子たちは10個の職業から1つを選び、キャラクターの名前・容姿や信条、ボイスタイプを決定して作成します。本作ではなんと100人までキャラクターを作成することができます。
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作成したキャラクターは宿屋に登録され、ここで前衛3人・後衛2人、または前衛2人・後衛3人の5人パーティを組むことになります。こういったキャラクターメイキングの流れやパーティの構成は、DRPGの代表作『世界樹の迷宮』に類似しています。同作を遊んだことがあれば、本作の導入にもすんなりと入っていけることでしょう。なお、本作には「それぞれの職業のメンバーをパーティに加える」ことで解禁される10個の実績があるため、実績取得にこだわる方は最初に職業の異なる10人のメンバーを作り、5人ずつパーティ編成をすることをおススメします。
スキルを駆使して強大な敵を討伐せよ!時には敵シンボルを避けることも重要
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本作は主にレベルアップで得られる「スキルポイント」を消費し、木構造になったスキルの一覧からスキルを選んで習得していく「スキルツリー」を採用しています。このスキルツリーシステムも『世界樹の迷宮』シリーズをほぼそのまま踏襲しています。スキルの振り方でキャラクターの個性が出てくるので、よく考えてポイントを振りましょう。なお、拠点で「休養」(レベル-5)することで、スキルポイントの振り直しを行うことができます。
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ダンジョン内では多くの危険な敵に出会います。本作は序盤から敵の強さに割と容赦がなく、レベルの低いうちは毎回全力を尽くして戦うくらいがちょうどよいくらいになっています。
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そして、ダンジョン探索中に注意しなければならないのがマップ上を移動している「上級魔女」の存在です。「上級魔女」はマップ上の一定のルートを周回しており、こちらを発見すると見失うまで執拗に追いかけてきます。「上級魔女」はそのフロアに足を踏み入れた段階だとまず太刀打ちできない敵なので、動きをよく見て回避していくことが重要です。これも『世界樹の迷宮』に登場する「F.O.E.」の存在に類似しています。
少しずつ深まっていくメンバーの絆。そして……
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迷宮から帰還すると、次の冒険に備えてパーティメンバーに対して修行・採集・料理の指示を出すことができます。修行を行ったメンバーは次のダンジョン探索中に永続バフ、採集を行ったメンバーは換金アイテムの入手、料理を行ったメンバーは次のダンジョン探索中にのみ使える完全回復アイテム「手づくりのお弁当」を担当した人数分だけ入手できます。
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そして、共同作業を行った2人のメンバー間でデートイベントが発生する可能性があります。デートを繰り返すことで、メンバーは単なる同僚を超えて友人へとランクアップしていきます。
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友人となったキャラクターの間では、相方の行動直後に援護攻撃「絆チェイス」が発動することがあります。この「絆チェイス」の発生により、パーティ内に友人関係が多いほど味方の攻撃回数は大幅に上昇します。
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なお、迷宮内に設置されたキャンプポイントで休息することでもパーティメンバー2人の好感度が上がることがあります。他のメンバーが寝静まってる中、ナニをやっているのか……プレイヤーの想像力が喚起されるところです。
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友人となった後もさらに絆を深め続けると、友人を超えた「パートナー」として2人は共に歩むことになります。この状態になると戦闘中に2人の絆ゲージを深め合う「ユニゾンチャージ」が使えるようになり、絆ゲージがMAXになると2人の合体攻撃「ユニゾン」が使用可能になります。
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全力の百合エナジーを込めたラブラブアタックは威力絶大!ザコはもちろんのこと、装備や能力値次第では「上級魔女」やエリアボスまで一撃で屠れるほど、計り知れない威力を誇ります。実質1ターンの仕込みが必要とはいえリソース無消費で放てるユニゾン攻撃は、ゲーム性を一変させます。百合は力だ!!
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しかしながら、パートナー関係となった子が他の女の子とデートするところを目撃してしまうと、キャラクターの中に黒いものが芽生えてしまう場合もあります。迷宮第1層~第2層の間の筆者のプレイでは人間関係の悪化や破綻といったものはみられませんでしたが、ゲームが進むとそれぞれの関係のしっかりとした管理も必要になるのかもしれません。
早期アクセス故の粗削りな部分は多数あり。しかし素早い改善やロードマップの提示は好感が持てる
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ここまで本ゲームの特徴について説明してきましたが、本ゲームには欠点と捉えられる点が多いのも確かです。筆者が最初に思ったのは「ダンジョンの全体的な暗さ」で、ダンジョンの画面を見ただけでどこが歩けるのか、どこが歩けないのかが一目で分かりづらいのです。おそらく多くのプレイヤーは、画面右上に常時表示されているミニマップを見ながら移動することになるでしょう。
もともと常時ミニマップを採用したDRPGは「ミニマップを見て空きマスを埋めるゲーム」と化すきらいがあるとは言え、ビジュアルでの操作判断も困難だと、主観視点を採用している意義がやや薄れてしまっているように感じられます。
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戦闘画面のUI構成にも問題があり、白系統の立ち絵を採用したキャラクターを選択している状態だと、隊列右側に指定したキャラクターのHP・MPがほとんど確認できません。各キャラクターの情報を半透明の枠で囲むなり、文字を黒で縁取りするなりするなどして、視認性を高めて頂きたいところです。
また、本ゲームの戦闘では被ダメージを受けたキャラクターの上部にダメージ数が出るだけで、振動やダメージ音などのエフェクトがないため、誰が大ダメージを受けたのか気付きにくいし、戦闘不能エフェクトもないため、気付くとキャラクターが戦闘不能になっている……という場面も多いです。本作は、UI演出の欠如が尊ばれるようなタイトルでは決してないはずなので、このあたり、改善の余地が多くあるのではないかと筆者は思います。
ただ、「戦闘後に戦闘不能者に対しても等しく経験値が入る」という点は低レベルキャラクターの育成がしやすく、かつキャラクターの経験値が不揃いだと気になる……という人にも配慮した、良いアイデアだと思います。
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ほかには、本作ではメッセージのオートスキップなどの機能がなく、毎回ボタンを押してメッセージを送る必要があります。個人的にはボタン押しっぱなしでのメッセージ送り、あるいはメッセージスキップの実装を期待したいところです。
ゲームが進むとダンジョンから帰った後にほぼ確実に誰かのデートイベントが発生する(そしてほぼ確実に誰かが曇る)のは、現状の仕様ではテンポに大きな影響を与えてしまっているようです。
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デートイベントの回数の多さの一方で、読み物としての綿密で劇的な百合シチュエーションやディープな百合を期待する人にとっては、プレイヤーキャラクター間のかけ合いボイスやメッセージが全体的に簡素な点は不満が残る要素かもしれません。
ただし、主要キャラクターを複数自作するゲームで制作キャラクター同士に細かい百合描写を求める、ということ自体が困難でしょうから、ランダムイベントの存在も鑑みて、本作の場合は個々のシチュエーションそのものではなくキャラクターの関係性の移り変わりのドラマこそを主題においているのだとは思います。それでもイベントバリエーションが多ければ多いに越したことはありませんが。
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ところで、登場キャラクターの中にマフィア梶田氏が声優を演じる黒い妖精がいる……という点が気になっている方もいそうですが、このキャラクターは「百合の物語を愛する」という妖精で、百合の間にCV:マフィア梶田が挟まる……ということはありませんので、男性的な要素の強いキャラクターの存在そのものの是非はともかくとして安心してください。
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全体的な話をすると、イラストレーションなど長所がしっかりしているだけに良くも悪くも『世界樹の迷宮』のフォロワー色が強すぎることが気になるほか、習得・使用条件を鑑みてもなお強力で個人スキルとのバランス調整が必要に見える百合合体攻撃をはじめ、粗削りで気になる部分が多数見受けられるのが早期アクセス開始時点での印象です。しかしながらコンセプトや世界観の骨子は悪くないと思います。
早期アクセスであればなおのこと重要な製作者陣の意欲面についても、配信後1日目で早くも細かいバグの修正のアップデートが行われていますし、今後の展開のロードマップについても素早く公開されました。
そのうえでクラウドファンディング支援者向けのDiscordサーバーでは開発スタッフが熱心にユーザーの質問やバグ報告に対応しているので、筆者は製作者陣にかなりの好感を抱いています。
何はともあれ、本作はとにかく「百合」を肯定する、「百合」は強い、「百合」こそ力だ!と言えるDRPGに仕上がっていますので、このコンセプトに惹かれた方は触れてみてはどうかと筆者は思います。
スパくんのひとこと
やはり百合……百合の力は世界を変える……
タイトル:ウィッチ・アンド・リリィズ
対応機種:PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:PC(Steam)
発売日:2024年5月24日
著者プレイ時間:8時間
サブスク配信有無:無
価格:3,480円(税込)(2024年6月7日まで2,958円)
※製品情報は記事執筆時点のもの