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【キャリアクエスト】『ダンまち~メモリア・フレーゼ~』プロデューサーにインタビュー。看護師の道から“ゲーム運営のお姉さん”に向かった異色の経歴

就活イベント「キャリアクエスト ~冒険者から専門職へ~」が、6月30日(日)に開催されます。

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【キャリアクエスト】『ダンまち~メモリア・フレーゼ~』プロデューサーにインタビュー。看護師の道から“ゲーム運営のお姉さん”に向かった異色の経歴
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Game*Sparkと4Gamerは、「とにかくゲーム業界で働きたい!」と志す学生の皆さまに向けた就活イベント「キャリアクエスト ~冒険者から専門職へ~」を6月30日(日)に開催します。

本記事ではこちらのイベントにあわせて、実際に現場で働いている方に質問を投げかけた“ゲーム業界を目指す学生のためのインタビュー”をお届けします。

今回のインタビューのお相手は、「株式会社WFS」で働くプロデューサー・和田 佳奈美さん。「WFS」はグリー株式会社(以下、「グリー」)の完全子会社であり、運営するゲームブランド「ライトフライヤースタジオ」において、『消滅都市』『アナザーエデン 時空を超える猫』『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~メモリア・フレーゼ~』(以下、『ダンメモ』)『ヘブンバーンズレッド』など心が震える物語体験ができるRPGを中心に手掛けるゲーム開発会社です。

なお、本記事はGame*Sparkと4Gamerによって共同制作された連載記事となります。

「キャリアクエスト ~冒険者から専門職へ~」公式HP

◆看護医療学部からゲームプロデューサーに!

――自己紹介をお願いします。入社年度、部署、入社するまでの経歴についてもお聞かせください。

和田: 2020年度に新卒で入社して、5年目になります。ライトフライヤースタジオの『ダンメモ』チームに配属され、様々な経験を経て、プロデューサーとして、予算や人員の管理はもちろん、ゲームの施策を考えるところから実装・プロモーション、SNS運用など、幅広く担当しています。

最近は『ダンメモ』がちょうど6月末にサービス終了するので、『ヘブンバーンズレッド』のプランナー業務にも関わらせていただいています。

――業務としては、“SNSの中の人”も担当されているということでしょうか。

和田: 私のようなケースはイレギュラーでもあります。とは言えマーケティング担当者と相談しながら、プロダクトについて最も深く理解している人間が実際に文章を投稿するというのは、ライトフライヤースタジオのゲームではよくありますね。

――看護師への道からゲーム業界への転身は、やはり気になるところです。入社したきっかけについてお聞かせください。

和田:元々、慶應義塾大学の看護医療学部で看護師になるための勉強をしていました。なので、凄い方向転換をしている形になりますね(笑)。その医療学部の同期は100人ほどいますが、99%が医療系の進路をとっているような環境でした。

看護学部だったので、やはり入学当初は「看護師になろう」と思っていました。今思うと我ながら大胆な方向転換をしたな……と思うのですが、「やりたいことは“看護師”ではないかもしれない」と思い始めたきっかけも大学にあったんですよ。

それは当時所属していたアカペラサークルの活動で、規模としては150人が在籍していて、年に数回大きめのコンサートを作り上げたりもしていました。お客さんを数百人呼ぶようなコンサートですね。そこで、150人のサークルメンバーとコンサートを作ることが楽しくて楽しくてしょうがなくて! 気付いたらのめり込んで、サークルの副代表になっていました(笑)。「チームで一丸になってモノづくりに取り組む」「誰かを楽しませるモノを作る」という体験が好きでたまらなかったんですね。

和田: 看護師は病気や怪我をされた方に寄り添って、身や心を“マイナスからゼロの近くまで戻していく仕事”なのですが、ゲーム業界やエンターテインメント業界は多くの人の気持ちを“ゼロから100に持っていく仕事”です。サークルの活動を通して、こちらの方が私に向いているんじゃないかと感じて、ゲーム業界への就職活動を始めました。

グリーのインターンシップに参加したときには、大人たちが子どものように楽しそうにゲームを作っているところに関わることができて、「私もこんな大人になりたいな」と心を動かされました。そこでの体験が決め手で、入社を決意しました。

――看護師がマイナスをゼロに上げていく、ゲーム開発者がゼロを100に上げていく。方向性は違えど芯は同じということですね。

和田: そうですね。「人を元気にする仕事がしたい」という気持ちが軸にありました。

――入社前と入社した直後の印象の違いについてお聞かせください。

和田: 入社前は「仕事は大変なもので義務感をもってやっていかなければならない」という印象でした。学生の頃は「3年、4年もしたら仕事に飽きてしまって惰性で働いていくのかな」とぼんやり思っていましたね。でも入社してからここまで5年、全く飽きないんです!

職場に恵まれたこともあると思いますが、「毎日違うことをしているな」という感覚があります。「新しい驚きをお客さまに届ける」という目的があるため、同じことをし続けることがないのです。

「飽きが来ないよう新しいゲーム施策を考えましょう」「エイプリルフールに向けた面白い施策を考えてください」などと様々な企画が降ってきても、私はそれを楽しめる性格なので、毎日気持ち良く仕事できています。

また、上司との関係性もかなりフランクで、いい意味で驚きました。新卒の社員が「こういうゲームが良いと思うんです」と提案したとしても、それがお客さまに寄り添った意見であれば取り合ってもらえるという会社の姿勢は、新鮮に感じました。

――「入社後の最初の一年間」でどのような教育を受け、知識や技術を身につけましたか。

和田: 元々が看護学部の人間なので、PCはせいぜい「触っている」というくらいで、プログラミングなどは未経験でした。入社後は2つ上の先輩にメンターとしてついていただいて、その方に教わりながら学んでいきましたね。

そして基本的な「ログインボーナスの実装」や「ガチャの実装」などに慣れていったところで、私ならではの企画にアサインされるようになってきて、先輩に見守ってもらいつつ、実践的な教育を受けました。

――会社が手掛けたゲームの中で、特に思い入れがあるタイトルとその理由についてお聞かせください。

和田: 私にとっては『ダンメモ』が一番思い入れのあるタイトルです。今はもうサービス終了が告知されていますが、入社してから5年間、全盛期からサービス終了まで関わってきて、「お客さまと一緒に作り上げてきたゲーム」だったなと実感しています。

実は私はゲームの公式生放送で『ダンメモ』アシスタントの「みかん」としても登場しているんです。声優の方々と一緒にゲームの最新情報を届ける、“ゲーム運営のお姉さん”として出演していました。

なので、自分の口からお客さまにゲーム内容を直接プレゼンするということもありました。そこでは良いリアクションだったり悪いリアクションだったり、いろいろな反応がもらえるんですよね。『ダンメモ』は、お客さまの反応を見ながら作ってこられたと感じています。

――入社後から現在に至るまでで、最も印象に残った「ゲーム業界のお仕事」に関するエピソードをお聞かせください。

和田: 入社2年目の終わりごろに任されたエイプリルフール施策の開発・ディレクションが、私の中で強く印象に残っています。「予算はこれくらいで、この期間で開発してください」と言われて、企画をすべて任せてもらいました。

エイプリルフールの企画って“笑いを取りにいくもの”なので、凄く難しいんですよ! 気合を入れて作ったゲームがスベったら恥ずかしいじゃないですか(笑)! でも、やるからには面白いモノを作りたい。良いモノが作れたら企画者として成長したと思えるので、かなり気合を入れて制作しました。そして完成した企画が「無限ファイアボルト」というイベントです。

企画の中心となるのは、「ダンまち」の主人公「ベル・クラネル」の必殺技「ファイアボルト」です。その「ベル・クラネル」の声を担当する声優の松岡禎丞さんに「とにかく多種多様なシチュエーションで、ファイアボルトを撃ってもらいたい」とお願いして、ボイスを100種類も収録したんですよ。

「寝起きでファイアボルト」、「関西弁でファイアボルト」、などなどたくさん収録してもらって、お客さまはボタンを連打して再生してもらう。「すべてのシチュエーションをコンプリートして、君もファイアボルトマスターになろう!」という企画だったのですが、それが結構好評で!実際にSNSでも反響があり、エンタメ枠でトレンドになったりもしまして、企画立案の自信がつきました。作業時間が限られている中でもあったので、手応えを感じられましたね。

――入社後に初めて感じた「困難」についてのエピソードをお聞かせください。

和田: コロナ禍のさなかで入社したので、同僚の方とはもちろん、メンターの方ともモニター越しのコミュニケーションばかりで、戸惑うことがありました。しかしゲーム業界ならではかもしれませんが、仕事用のツールなどでカバーしていただいたので無事に乗り越えられましたね。

あとは、「自分がやりたい!」と言ったことは任せてもらえる環境だったので、作業過多になってしまったことも「困難」だったかもしれません。だけどそれも上司が助けてくれて、タスクをコントロールしてもらえました。

――看護師からの転身ということでしたが、IT業界に慣れない……といった困難はあったのでしょうか?

和田: 分からないことは多かったのですが、それは「困難」ではありませんでした。分からなければきちんと聞くことで教えてもらえましたからね。むしろ“分からないとちゃんと伝えること”に抵抗がない性格だったのが、良かったのかもしれません。

◆学生時代からやり込んできた経験は、ゲーム開発で活きる!

――ゲーム業界で働く中で「楽しいと感じていること」や「やりがいを感じていること」についてお聞かせください。

和田: ジャンルにもよりますが、ソーシャルゲームって「リリース頻度」がすごく多いんですね。2週間に1回、1週間に1回とリリースする要素があるので、チャレンジの回数がすごく多いなと思います。

「1か月前にこういう結果だったので、次はこうやってみよう」とPDCAサイクルを速く回せることはソーシャルゲーム運営の特徴です。ユーザーさんの反応もSNSでチェックできたり、年に数回のリアルイベントにも立ち会えたり。そういうときに喜んでくれるユーザーさんを実際に見ると「やってよかったな」と思えます。

――やはり実際にユーザーの姿を見ると、感慨深いものがあるのですね。

和田: あるとき、仕事とは関係ないところで偶然自分が携わったタイトルを遊んでいる方に遭遇したこともありますが、そういうときって、逆に冷静になるんですよ! どのような方がプレイされているのか、どのような順番で操作するのか、どのようなタイミングでアプリを終了するのかなどを、すごく冷静に観察してしまうんです! もちろん後から冷静になって嬉しさがこみ上げたりもしますが、つい開発者目線になってしまいますね(笑)。

――職場環境について、どのような印象を持たれていますか。

和田: 割と自由だなと思います……私の場合は「看護師」に比べて、ですが(笑)。髪型も何でもいいし洋服も何でもいいしネイルもできるし、自由に感じますね。

良い意味で必要以上の上下関係がなく、フラットな雰囲気に感じてます。もちろん上司を尊敬してアドバイス通りに進行することもありますが、自分が「こうしたら面白いのではないか」というアイデアを会社の雑談チャットにふらっと投げたら、プロデューサーなどに拾ってもらって採用されるということが結構多くあります。

「ゲームを良くするためならなんでもしよう」という熱量があって、良い意味で仕事上の距離が近いですね。もちろんプライベートとは分けられてる方もたくさんいるのですけれど、凄く話しやすい環境だなと思っています。

――プライベートではゲームをプレイされますか?

和田: 実は1年半くらい前から「週に1本新しいゲームをする」ということを続けています。3年目でアシスタントディレクターを担当することになって、他の方の企画のフィードバックをする機会が増えました。そういうときに今のゲームをプレイしていないとどういうモノが良いのか分からないなと感じました。そこで、欠かさず1週間に1本は新しいゲームを遊ぶということを始めました。

ソーシャルゲームはもちろん、コンソールやSteam含めいろんなジャンルのゲームを遊んでいるのですけれど、最近はサブスクがあって遊びやすいですね。とりあえず絶対に遊ぶ。その感想をスプレッドシートに1行でいいので書くということをやっています。

――ゲーム以外ではどんな余暇の過ごし方をされているのですか?

和田:それ以外では、結構アクティブに外で過ごすことが多いです。流行りのエンタメを遊ぶようにしていて、最近できた体験型のテーマパークだったり、流行っているアニメや映画などを意識してインプットするようにしていますね。

――ゲーム業界に勤めるようになってから、趣味としてゲームに接する機会は増えましたか。「好きなモノを仕事にすること」に関してもお聞きできれば幸いです。

和田:ゲーム業界に勤めるようになってから「ゲームを遊ぶこと」には半分くらい仕事モードが入っているかもしれませんね。そういう意味では仕事と趣味の境目があいまいになっているかもしれません。

ゲームに触る時間が増えたとも思いつつ、「週に1本プレイする」という縛りを自分に課しているので「遊びつくすゲーム」は少なくなったかもしれませんね。もちろん自分が手掛けるゲームはしっかりやっています。

和田:「好きなモノを仕事にすること」については……「ゲームが好きなこと」と「それを仕事にする」ことは結構違うかな、と感じています。

例えばプロデューサーや企画としての仕事は、ひとりでゲームを黙々とプレイすることが少なくて、むしろいろいろな企画・職種の方とディスカッションして連携していくことになります。なので「チームでモノを作ること」が得意な方は、すごく向いている仕事だと思いますね。

「好き」と仕事に向いているかどうかは乖離があるので、自分がどういう立ち回りで仕事をするのがやりやすいかと分析することは、仕事を選ぶ上で重要なのかなと思います。ただ、もちろん「好き」は大前提です。

――今後、社内での業務を通してどのようなチャレンジをしていきたいと考えていますか。

和田:今、プロデューサーとしてひとつのゲームのリーダーをやらせてもらっているのですけれど、途中でジョインしたタイトルではあるので、1から人を集めて立ち上げる経験もしてみたいですね。エイプリルフール企画のように「私の企画」で人に喜んで欲しい気持ちもあります。

今は『ダンメモ』のクローズの瞬間を見ているのですけれど、その告知をしたときお客さまから「『ダンメモ』は俺の青春だったよ」とか「人生で一番やり込んだ」という暖かいお声をたくさん頂けました。このように“お客さまと一緒に時間を作り上げていくという経験”は、これからも何度でもしたいと思っています。

――なるほど。それでは、これから入ってくる学生さんたちが、和田さんの考える新しいプロダクトにジョインしてことも有り得るのでしょうか?

和田:もちろんです!

――最後に、ゲーム業界での就職を志す学生に向けてアドバイスをお願いします。

和田:私自身が「最初からゲーム業界を志望していなかった」という立場なので、その前提を含めてのアドバイスですが、「学生時代になにかひとつでも夢中になれることを見つけて、極めて欲しい」と思っています。私自身、アカペラサークルで歌い100人規模のイベントを開催していたことが、「サークルメンバーをまとめてきた」という経験となり、今の「いろいろな人とモノを作る」という仕事に活きていると感じています。

実は「ゲーム内で歌唱曲を作る」というイベントも過去に実施していて、歌詞をオーダーするところから自分で行いましたし、そこでもアカペラサークルでの経験を活かせました。自分が夢中になってやり込んだことはどこに繋がるか分からないんです。ゲームは全ての人がターゲットとなるコンテンツなので、なおさら様々な経験を活かせる仕事だと感じます。

あとは個人的な出来事なんですけど、昨日ピザ屋で「チーズの量が2倍!」という広告を見て嬉しくなったのですが、それをゲームに置き換えて「SSレアの提供割合が2倍!」としてみたら、ソーシャルゲームのプレイヤー目線ではとても嬉しいことに感じられるじゃないですか。そうやって日常にアンテナを張って「どうしたら人を楽しませられるだろう」と考えて日々を過ごすと、アイデアマンになれたりします。ですので、「いろいろなところにアンテナを立てて、夢中になれることにひとつ打ち込んでください」というのが私からのアドバイスです。

――ありがとうございました!

「キャリアクエスト ~冒険者から専門職へ~」公式HP
《高村 響》

ゲームライター(難易度カジュアル) 高村 響

最近、ゲームをしながら「なんか近頃ゲームしてないな」と思うようになってきた。文学研究で博士課程まで進んだものの諸事情(ゲームのしすぎなど)でドロップアウト。中島らもとか安部公房を調べていた。近頃は「かしこそうな記事書かせてください!」と知性ない発言をよくしている。しかしアホであることは賢いことの次に良い状態かもしれない……。

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