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ユービーアイソフトが協賛した音楽イベント「フェット・ド・ラ・ミュージック 2024」、その翌日に行われたユービーアイソフト内のスタジオツアー/『Rocksmith+』の試遊会の中で、制作スタッフ三名へのインタビューが執り行われました。今回の記事では、そのインタビューの様子をお届けします。スタジオツアーの様子と「フェット・ド・ラ・ミュージック 2024」の様子も記事になっておりますので、そちらも合わせてお楽しみください。
――最初に自己紹介をお願いします。『Rocksmith+』には、どのような形で関わられていましたか?
Dr. Capital:まいど!Dr. Capitalです。YouTuberとしてもアーティストとしても活動してます。『Rocksmith+』ではリードミュージックコンテンツクリエイターとして音楽制作の仕事に関わってます。
須永:ゲームデザイナーの須永江身子と申します。『Rocksmith+』では、ユービーアイソフト大阪スタジオのゲームデザインチームのリーダーとして、サンフランシスコのデザインチームと一緒に携わりました。ギターは初心者です。
フランソワ:ゲームプレイプログラマーのフランソワ・ジャングイエンです。5年間ずっと『Rocksmith+』にまつわる業務を担当しています。個人的にも前からずっとギターを弾いているので結構興味がある題材でした。
――『Rocksmith+』は日本国内で2024年6月にリリースされましたが、ワールドワイドでリリースされたのは2年前となります。開発自体はどの時期に始まったのでしょうか?
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須永:開発が始まったのは2018年で、大阪スタジオで作業が始まるまでにサンフランシスコのスタジオでコンセプトやゲームのディレクションを大まかにを決めるフェーズが半年ほどありました。
――ワールドワイドでリリースされて以降から直近まで、「まだ日本で出てない期間」はどのように感じていましたか?
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Dr. Capital:やはり日本で開発している身としては、早く日本の友達にプレイしてもらいたくて……ずっと待ち遠しかったですね。
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須永:開発者としてもどかしさを感じました。それこそ家族や友達にもプレイして欲しかったですしね。
――おそらく収録楽曲の権利関係に時間が費やされたのかと推察していますが、日本向けの選曲はどのスタジオが担当されているのでしょうか。
Dr. Capital:ライセンスについては、サンフランシスコのスタジオが担当しています。やはり、レーベルや出版社とのクリアランスの交渉は、とても時間がかかります。
――やはり、日本は特に大変なのでしょうか?
Dr. Capital:そう聞きますね(笑)。
須永:クリアランス以外には日本語対応、例えば楽曲のサーチ画面で日本語入力に対応したりとワールドワイド版にない独自機能を入れないといけなかったので、細かな追加作業でも時間がかかりましたね。
――Game*Sparkの読者層の多くは、楽器の演奏経験がない方や所有していない方だと思われます。もしそんな方々が『Rocksmith+』に興味を持ったとき、「この楽器から始めると良い」といった指針があればお聞かせください。
Dr. Capital:あくまで僕の意見ですけど、「ご自身が“かっこいい”と思った楽器」から始めるといいと思います。最初はやっぱモチベーション、そのインスピレーションがすごく重要ですからね。例えばレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーに憧れてる方であれば、ベースからスタートするといいでしょう。
どの楽器にも、習熟において難しいところと簡単なところがあります。例えば、ピアノは鍵盤を押せばすぐに音が鳴るから「指が痛くなる」と言ったことはギターやベースと比べると少ない。ただし、弦楽器とは違う難しさが演奏する人の両手に求められます。
僕が個人的に「これだ」と勧めるとしたら、ギターを選びますね。ギターは単音のフレーズから始めればそこまで難しくありませんから。
須永:ゲーマーとしてはベースが遊びやすいかなと思います。単音のノートが続くので、演奏しやすいですし。ギターだと、どうしても途中からコードが入ってきて挫折するきっかけになったりもしますから……。もちろん『Rocksmith+』のカリキュラムや練習機能を使えば、コードの抑え方などは乗り越えやすいと思うのですけど、ベースは音ゲーに近いので入りやすい印象です。
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フランソワ:『Rocksmith+』に接続してギターを弾くと、収録曲と非常に近いトーンが出てくるので、ギターはオススメですね。エフェクターを持ってなくても素晴らしい音を鳴らせますから。
Dr. Capital:先ほども話したけど、ピアノだった「ド」を押せば「ド」の音がすぐ鳴るんだけど、ギターはそういう訳ではない。でも、何度も「音が出ないな……」と繰り返し練習して、「こういう抑え方をしたら鳴った!」と上手くできたときに達成感を得られるところが、またモチベーションに繋がることもあるんですよね。一番最初が難しいというところが、そのような達成感を得られるポイントとなっているところが良いなと思います。ギターならではの、秘密の魅力ですよね(笑)。
――学習用のカリキュラムや練習機能で、特にオススメなものや「これはスゴい」とアピールしたくなる要素を教えてください。
Dr. Capital:私が好きな『Rocksmith+』の機能は、「ノートバイノート」というものです。これは、ゲーム自体がプレイヤーが鍵盤を押したり弦を弾いたりするまで待ってくれるという、素晴らしい機能です。
須永:「エクササイズ」がおすすめです。単調な練習って一人でやるのは多分すごく大変だと思うんですけど、「エクササイズ」であれば本当にゲーム感覚で繰り返せるので、何回でもやりたくなるいいモードだと思います。
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Dr. Capital:そうですね。僕も「リフ・リピーター」の中に入っている、全ての要素がすごく好きです。何か新しい技術や楽曲を練習したいときは、まず「ノートバイノート」で演奏してみて、少し弾き慣れたら速度を落として演奏してみる。そして、一部分だけをループしながら練習して、速度を徐々に徐々に上げ、次のパートに行って次のフレーズに行って……と同じことを繰り返す。「ノートバイノート」「スローテンポ」「フルスピード」を何度も続けて、そして次のフレーズへ移行するように練習すると、本当に習熟しやすいと思います。
――『Rocksmith+』では自分で楽譜を作れるんですよね。作った楽譜は、ネットを通じてどのように共有できるのでしょうか。
須永:「ロックスミスワークショップ」のことですね。用意されている曲のアレンジメントを自分で作って、ツールの中でそのアレンジメントをWeb上にアップロードして、承認されると『Rocksmith+』のアプリ上で共有され、他のプレイヤーも弾くことができるという仕組みになっています。
――楽器初心者のお困りごとは、演奏そのもの以外にもあるかと思われます。例えばケーブル(シールド)をどのように繋いだら良いか分からなかったり。そのような演奏以外のカリキュラムなども、用意されているのでしょうか?
須永:ピックの持ち方とか、そういう基礎を教えてくれるビデオがたくさん収録されています。
Dr. Capital:ギターのメンテナンスのようなことを教えてくれる映像もあります。また、練習し過ぎて肩が凝らないようにするためのストレッチの仕方なども紹介していますよ。ピアノの初心者向け動画だったら、「ピアノベンチにはどういう風に座ればいいのか」とか。肘の角度など、基礎の基礎から教えてます。
――本作のチューナーアプリでは、「変則チューニング」が多数用意されていると伺いました。となると、変則チューニングが学習できるような楽曲などが、そのチューニングごとに用意されているのでしょうか?
Dr. Capital:変速チューニングを使っている曲は、検索フィルターで選択できます。例えば「ドロップDチューニング」の曲だけを表示することができる、といった形ですね。また、現在のチューニングでプレイできる楽曲を探すこともできます。
――収録楽曲に馴染みがない楽器初心者に向けて、「まずはこの曲から」とオススメできる曲があればお聞かせください。
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須永:これも検索のフィルターで、難易度ごとに選択できます。また、「学ぶ」のタブには、様々なレッスン動画や、コンテンツが表示されています。ほかにも、「プレイ」のタブには、「最近あなたの地域で流行っている曲はこれ」とか「新着の曲はこれ」とか、「メタルだったらこれ」「ブルースだったらこれ」と言った風に、おすすめしてくれるシステムがあります。
Dr. Capital:僕個人としては、知らない楽曲がたくさんあることにすごくワクワクします。音楽って、本当に大きな世界なんですよ。素晴らしい作品がたくさんあって、どれもミュージシャンがとても丁寧に作った曲なわけです。本作は新しい曲を発見するためにも、すごく楽しいきっかけになると思います。
――なるほど。
Dr. Capital:音楽好きであれば、やはり新しい音楽に出会いたいじゃないですか。そして楽器が上手になりたいのであれば、新しい試みにも挑まないといけないわけなので、挑戦しないと損でしょう。
――iOS/Android版ではデバイスのマイクから楽器の音を入力できますが、PC版でも同様にマイクから入力できるのでしょうか。
Dr. Capital:可能です。“Phone As Mic”という、スマートフォンのマイクを使ってPCと接続する仕組みもありますよ。
――最後に「これから『Rocksmith+』で楽器を始めたい」と考えているゲーマーに向けてメッセージをいただけるでしょうか。
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Dr. Capital:ゲームと楽器は似ていると思います。ゲームプレイも「リズム」が大きな割合を占めているじゃないですか。反射神経とか手先の器用さとか、ものによっては運動神経も求められます。それは全部、楽器にも置き換えられますよね。それと同じ楽しみを、音楽でも味わえるということです。楽器演奏を身につけるのは楽しいですし、『Rocksmith+』は「人生を豊かにできるゲーム」と言えると思います。
須永:リアルタイムのフィードバックで、本当にゲーム感覚で楽器を練習できるところはやはりおすすめポイントです。「次はもっと高いスコアを目指そう」とモチベーションを上げたくなるところもゲーム好きの性を刺激してくれて、ゲーマーに向けても本当にいいアプリになってると思います。
フランソワ:あとはプラットフォームが多様で、家庭用ゲーム機やSteam、スマホやタブレットにも対応したアプリってなかなか珍しいです。そういう意味でもおすすめです。
――本日はありがとうございました。