日本時間2024年10月8日に『ディアブロ IV』の拡張コンテンツ「憎悪の器」がリリースされます。 このDLCでは新エリア「ナハントゥ」が舞台になっており、DLCを所有していると新しいクラス「スピリットボーン」が追加されます。
Game*Sparkは今月上旬にロサンゼルス近郊のアーバインにあるBlizzard本社に招待をいただき、「スピリットボーン」の開発秘話、インタビュー、そして先行プレイをする機会を頂きましたので、当記事ではその模様をレポートします。
スピリットボーンの設定
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灼熱の砂漠、荒涼とした荒野、そして血に染まった大地。ディアブロの世界であるサンクチュアリは、これまで幾度となく悪魔の侵略に晒されてきました。しかし、サンクチュアリには常に、もう一つの世界が存在していたのです。それは、精霊たちが棲む神秘のベールに包まれた世界です。
古来より、サンクチュアリの人々は精霊の存在を畏怖し、崇拝してきました。自然の力、森羅万象を司る精霊たちは、時に人間に力を貸し、時に試練を与え、常にサンクチュアリの歴史に深く関わってきたのです。
そして、その精霊の力を自在に操る者たちがいます。それこそが大型拡張コンテンツ「憎悪の器」と共に、『ディアブロ IV』の世界に降り立つ新クラス「スピリットボーン」です。
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スピリットボーンの故郷「ナハントゥ」は、サンクチュアリ東部に位置する広大な密林地帯です。手つかずの自然が残るこの地は、古来より精霊の力が強く、他の地域よりも精霊との繋がりが深いと言われています。 ナハントゥの人々は、精霊たちを崇拝し、自然と共存する生活を送ってきました。彼らは、狩猟や農耕、そして精霊との交信を通して、自然の摂理を学び、その恩恵を受けて生きてきたのです。
しかし、ナハントゥの歴史は、決して平穏なものではありませんでした。幾度となく外部からの侵略に晒され、その度に精霊の力を借りて戦ってきました。そして、その戦いの過程で彼らは精霊の力と人間の意志を融合させる術を編み出したのです。それが、スピリットボーンの誕生へと繋がりました。
精霊の力を操るには、厳しい試練を乗り越え、精霊との契約を交わす必要があります。ナハントゥの若者たちは、幼い頃から精霊の存在を身近に感じ、その力を敬いながら成長していきます。そして、精霊との契約の儀式に臨むのです。
儀式は、命懸けの試練です。ナハントゥの奥深くに存在する聖域に赴き、守護精霊の前に立ち、自身の意志と覚悟を示さなければなりません。精霊に認められれば、契約を交わし、その力を授かります。しかし、失敗すれば、命を落とすか、精神を蝕まれる危険性もあります。
自然の力を体現する4体の守護精霊
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スピリットボーンは、4体の守護精霊と契約を交わすことができます。これらの精霊にはパッシブスキル効果とスキルが用意されています。ゲーム序盤では契約できる守護精霊は1体のみですが、ゲームを進めると同時に2体の精霊と契約できるようになります。 同じ精霊を選択して特徴を伸ばすという方法もあります。
各守護精霊の内容は以下の通りです。
ジャガー:アグレッシブな火炎攻撃を何度も繰り出すことで、攻撃力が増加していきます。スピリットボーン版奥義スキルといえる「顕現スキル」は攻撃速度増加やクールダウン時間短縮など効果を得られる蓄積型のバフである「猛威」です。
ゴリラ:防御/物理スキルを得意とし、被ダメージをものともせず、ダメージ減少効果やブロック能力に特化しています。顕現スキルは「決意」で、蓄積させることでダメージ軽減効果がさらに向上します。
センティピード(ムカデ):継続的な毒ダメージで敵から力を吸収し、操作障害スキルで敵を妨害するなど、毒/デバフ能力に特化しています。
イーグル:機動性に優れ、電撃系スキルによって優先度の高い標的にダメージを与えることに特化しているほか、戦場を縦横無尽に移動することができます。移動速度と回避率上昇がメカニクスの中心となっています。
スピリットボーンは、これらの精霊の中から2体を選び、その力を借りて戦います。精霊の組み合わせによって戦闘スタイルは大きく変化するので、自身の個性と戦略に合わせて最適な組み合わせを見つけることができるでしょう。
スピリットボーンの戦闘モーションは、テコンドー、ムエタイ、カンフーといった様々な格闘技からインスピレーションを受けており、流れるように美しく、それでいて力強い動きが特徴です。精霊の力と武道のエッセンスが融合したアクションは他クラスとは明確に違う動きを楽しませてくれ、新しいクラスとして申し分のない仕上がりになっています。
そんなスピリットボーンの最大の特徴が「ハイブリットビルド」です。
他クラスを圧倒するビルドの多様性
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「ハイブリッドビルド」は、2体の精霊の力を融合させることで、さらに多様な戦闘スタイルを可能にします。
例えば、ジャガーのスピードとセンチピードの毒を組み合わせれば、高速かつ毒ダメージを与え続けるトリッキーな戦法が可能になります。イーグルの遠距離攻撃とゴリラの防御力を組み合わせれば、安定した立ち回りでどんな敵にも対応できるでしょう。
体験会ではワールドティア2でレベル30のスピリットボーンに、各守護精霊に合わせた4つのビルドが用意されていました。実はプレイ前にあるビルドだけ壊れていると教えてもらったので、あえて別のビルドを選んでスタート。 今回選んだのはジャガーです。 つまりジャガーは壊れていません。
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ジャガーはバフを稼ぐためにコアスキルは手数が多く、各攻撃にジャガーの炎のエフェクトが付いてくるのでとにかくド派手です。 ただし手数が多い分、一撃の威力はちょっと低めですが、たまーに『ディアブロ IV』らしく色々な条件が積み重なって凄まじい数値を叩き出すことがありますが、壊れているというほどの強さはありません。 あと打たれ弱いという弱点もあります。
各守護精霊にはスキルが設定されていますが、例えばメイン守護精霊をジャガーにしている時にイーグル用のスキルを選択すると、ジャガー用スキルとして設定されて、ジャガー用パッシブ効果が付与されます。
ジャガービルドにはイーグルの敵を1箇所に吸引してまとめるスキルが用意されており、このスキルには特殊効果として、次にスキルを発動した時に障壁を纏っているとダメージが倍増します。 そしてジャガーのスキルには発動時に障壁を纏うというスキルと、バフでダメージ増強があったので、これらを組み合わせることで大ダメージを狙うことができます。
このように、各守護精霊のスキルはその守護精霊だけでなく、他の守護精霊にもシナジー効果が生み出せるようになっています。
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次に選んだのはイーグル。 イーグルは遠距離攻撃に秀でており、スピリットボーンが近距離も遠距離もこなせる万能型の要となるスキルを所有しています。各スキルのほかに回避アクション時に遠距離を攻撃する矢を飛ばせる上、イーグルがメインだと事前に移動した距離が長いほど回避時の威力が上昇する効果が発動します。
顕現スキルはイーグルが範囲内の敵に強力な電撃を浴びせるというもの。ジャガービルドにも組み込まれていた吸引スキルはこちらのビルドでも選択されており相性は抜群でした。 全ビルドを使って思ったのですが、このスキルの使い勝手の良さは飛び抜けています。
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今度はゴリラビルドを選択。 ゴリラは殲滅力よりもプレイヤーの生存力を引き伸ばしてくれる守護精霊で、ゴリラを選択中はゴリラスキルを発動すると障壁が発動し、スキルが命中した相手に反射ダメージを与える茨棘の加護も発動します。 ゴリラ選択中は他守護精霊のスキルもゴリラスキル扱いになるので、タコ殴りにされても自分は倒れず相手は倒れていくというスタイル。
一方で用意されていたゴリラビルドには火力スキルが少ないという欠点もあり、ダンジョンのボス戦では、ボスも障壁を張りこちらも障壁があるのでお互いに火力が足りず泥沼の一騎打ちに陥ることもありました。
ビルドの選択次第で最強にも最弱にもなれるスピリットボーンの幅の広さを実感しました。
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そして最後に紹介するのがセンチピードビルド。これが体験会のゲームビルドで一番ブッ壊れていたビルドでした。
センチピードは敵に毒を撒き散らし、毒が与えたダメージがプレイヤーのHPに還元されます。 これだけでちょっとヤバそうと分かりますが、毒が拡散して敵に伝播していくので、敵が多ければ多いほど回復量も多くなるのです。しかも、毒ダメージだけでなく毒が発生するスキルそのものの威力も高いのです。
センチピードのあるスキルは通常だと狭い範囲だけを攻撃するのですが、このスキルは毒がかかっている全ての敵を攻撃する追加効果があります。他のスキルは敵を感染させ、感染した敵が死亡すると雲のような虫の集団が生まれて別の敵に毒を撒き散らします。 そのため、スキルを組み合わせることで狭い範囲どころか画面全体攻撃になるわけです。 別のスキルは攻撃されたらその敵を強制的に毒にします。毒ダメージで自力回復するので、ゴリラじゃないのにゴリラみたいなことしてます。
このような事が重なり、 大量の雑魚やエリートがいる部屋に入ったのに棒立ちで敵が全滅していたり、ボス部屋に突入してもなにか知らないうちに大ダメージを出して瞬殺してました。 うん、強さが別次元。
ゴリラとセンチピードをかけ合わせたら最強のコンビになりそうだな~と思っていたら、開発陣にも同じ構成を選んでいる方がおりました。 ビルドの幅が他クラスよりも広いので、取材が終わってからもアレとコレを組み合わせたらどうなるかなと考えるのがとても楽しかったですね。
さらに、「憎悪の器」では、新たなレジェンダリーアイテムやアスペクトが追加されるので、ハイブリッドビルドの可能性は無限に広がります。精霊の力を極め、自分だけの最強ビルドを構築することが、スピリットボーンの醍醐味と言えるでしょう。
スピリットボーンはどのように生まれたのか、開発陣が選んだお気に入りビルドを聞いてみた
ここからはスピリットボーン開発チームから、ゲームディレクターのブレント・ギブソン氏と、デザイン面を制作したニック・チラノ氏との合同インタビューをお伝えします。
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――今回プレイしたビルドでは、ムカデがとにかく強かったんですが製品版までにバランス変更の予定はありますか?
ブレント:今回のイベントに関してのビルドは、本当に制作途中のビルドとなりますので、もちろんバランスの調整は行っている最中です。まだ、ファーストパーティに承認をいただくための提出もしていないので、それまでには調整を続けていく予定になっています。
皆様のフィードバックに関してもずっと聞きたかったものなので、本当にありがとうございます。今までにいる五つのクラスにスピリットボーンを加えても、特色がありつつ違和感なく、しっかりディアブロの世界観になじむクラスにしていきたいと思っています。
――今回はレベル30のキャラクターでプレイしましたが、パラゴンを開放するにあたってスピリットボーンはもっと特徴的なものになっていくのでしょうか?
ブレント:今回はレベル30でしたが、実際シーズン4でアイテムに関して大幅な調整が入ってます。それに紐づいて、ゲームプレイに関しても変化があって、エンドゲームだったりとか、後半の方のビルドを割と初期の方にもう作り始められるようにしたいというのがあり、スピリットボーンもそういった考えのもとにキャラクターを作っています。
今回パラゴンに関しては話ができないんですけども、そこも含めて自分がやりたいようなキャラクターを仕上げられるように考えて作っていきますし、レベルが上がる事によって、新しくできる事をどんどん解放できるようにも作ろうという風に考えているので、レベルとアイテムが一緒に成長していくと考えていただければと思います。
――「憎悪の器」を所有していれば、DLC解禁直後からスピリットボーンを使用できますか?
ブレント:そのとおりです。 スピリットボーンでゲーム本編を1からプレイすることもできますし、「憎悪の器」のストーリーから始めることもできます。
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――4体の守護精霊としてジャガー、イーグル、センチピード(ムカデ)、ゴリラを選んだ理由はなぜでしょうか?
ニック:コンセプト段階ではまだどの動物を選ぶか決まっていませんでした。ただ、プレイヤーにさせたいゲームプレイに関しては、もう既に頭の中にあったので、そのゲームプレイにはこれらの動物がふさわしいんじゃないかと考えて決定していきました。
例えばセンチピードは毒を使った時間経過のダメージをさせるゲームプレイというコンセプトがあり、ムカデが体に這い回ってくるとイメージしたら恐怖や嫌悪感に襲われるのでムカデになりました。
――現実の神話体系を基にしたのでしょうか?
ニック:現実の神話はあまり考えておらず、サンクチュアリの世界観をベースにしています。私達からしたら精霊の話は突然出てきたように見えますが、天使と悪魔がいるのだから精霊がいてもおかしくないよねということで、サンクチュアリには昔から伝わる伝承として存在していると設定しました。
――スピリットボーンのビルドの幅が他のクラスよりもとにかく広いんですが、それを初心者の方に上手く説明する方法やチュートリアルなどは用意されていますか?
ブレント:今までのクラスは育成しながらどのようなプレイスタイルになっていくか探っていきましたが、スピリットボーンは各守護精霊が一つのプレイスタイルとなっていて理解するのは簡単な部類です。ただし、守護精霊を組み合わせ始めるとマスターするのが難しいクラスとなると考えています。
――お二人のお気に入りのビルドをご紹介ください
ブレント:お気に入りが毎月変わっています(笑)今はジャガーとムカデのコンビで、スピーディに時間経過ダメージを画面全体の敵にバラまいて敵がバタバタ倒れていくのが眺めるのが楽しいです。
ニック:私は最初一つの守護精霊をマスターしようと同じ守護精霊でプレイしていましたが、今はムカデとゴリラを使って敵に殴られることで毒を拡散しつつ自分は回復していくシナジー効果を愛用してます。
――『ディアブロ IV』には近接職と遠距離職がありますが、スピリットボーンはどちらのプレイスタイルの方に遊んでほしいでしょうか?
ブレント:一般的なクラスは長所と短所があり、通常は長所を伸ばしていくのですが、スピリットボーンは短所を補うことも可能です。オールラウンダーなのでそれぞれのクラスが得意とする部分を上回ることはしたくないので、ちょうどいいバランスを見つける必要があります。 そこがスピリットボーンの良いところなので皆さん遊んでください(笑)
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――スピリットボーンのジャガーの被り物のキャラクターアートがとてもかっこいいのですが、コンセプトやこだわりはありますか?
ニック:スピリットボーンのコンセプト段階ではどのようなキャラに仕上げたいかという案が沢山ありましたが、クラスの特徴がはっきりしてくると、アート上の必要な点が分かってきました。その頃には色々なコンセプトアートが出来上がっていて、そこからは色々なアイデアを取り入れていきました。
スピリットボーンの目を光らせたいというアイデアが出てきたときは、どの色でどのように光らせるか等の議論を重ねていきました。そういったことをキーアートに反映し続けていくことで、最終的なキーアートが完成しましたが、完成品は見たときはまるでこうなるのが当然だったように思えたから正解だと感じています。
――『ディアブロ IV』は各シーズンごとに全クラス共通コンセプトのスキンが提供されていますが、スピリットボーンは他クラスよりも軽装という特徴があります。 今後はスキンのコンセプトが優先されるのでしょうか?それともスピリットボーンの特色が優先されるのでしょうか?
ニック:キャラクターのビジュアル特色が全クラスにあります。そして、スピリットボーンも変わりません。この特色は絶対に変えたくありません。これはスピリットボーンに限らず他クラスも同じです。
シーズンやコンテンツに合わせた重ね着装備がありますが、それらは各クラスの強力なアイデンティティを考えてデザインされているので、一目見ただけでどのクラスのものか分かるようになっています。今後も私たちは各クラスの象徴的なコンセプトを維持して制作し続けてきたいと思います。