2024年7月19日から21日にかけて、日本最大級のインディーゲームの祭典「BitSummit Drift」が京都・みやこめっせにて開催中です。
本記事では、初日となるビジネスデーに実施した『Dream Channel Zero』の開発者インタビューをお届けします。2023年5月に発表されて以来、大きな続報を発信していなかった本作ですが、今回の「BitSummit Drift」では初の試遊版をお披露目。 不条理でシュールなビジュアルや斬新なサウンド、そして印象的なセリフ回しのトレイラー映像で話題となった作品について、開発者のFuming氏(以下、敬称略)に詳しく聞いてみました。
PC(Steam)向けアドベンチャーゲーム『Dream Channel Zero』は、2024年に配信予定です。
――Fumingさんのゲーム制作者としてのキャリアについてお聞かせください。
Fuming: 最初はフリーゲームの制作から始まりました。フリーゲームが流行っていた頃に『美術空間』という作品を作ったのが初めてで、「RPGツクール」を使っていました。だいたい10時間分くらいのボリュームですね。その後『Zelle』を制作し、初めて有料のゲームとしてリリースしました。
――ゲーム概要について教えてください。『Dream Channel Zero』は“RPGアドベンチャー”とされていますが、具体的にはどのようなゲームなのでしょうか。
Fuming: 大枠で言えばRPGで、細かく説明するとかなりシュールレアリスムなゲームです。美術で言うとダリの作品だったり、ゲームで言えば『ゆめにっき』や『OMORI』を好む方には気に入ってもらえると思います。
――「BitSummit Drift」では初の試遊版を展示されていましたが、Steamでも配信する予定とのことでした。未プレイの方に向けて、これらの試遊版ではどのようなゲームプレイを体験できるのかお聞かせください。
Fuming: 「BitSummit Drift」で展示したものはゲーム全体を紹介するような内容で、それとは異なるバージョンのデモ版をSteamで配信する予定です。そちらではステージ2ぐらいまで楽しめますし、ボスバトルも用意してます。
――『Dream Channel Zero』のストーリーは、どのようなものになるのでしょうか。


Fuming: あらすじとしては「届いたゲームを起動したら謎の世界に飛ばされました」というものなのですが、物語が進んでいくとその“ゲーム”が崩壊していきます。それだけではなく、「そもそもこの“ゲーム”の空間を作ったのは誰なのか」という謎の追求といったストーリーも展開し、終盤ではどんどんヤバいことになっていきます。

Fuming: また、本作に登場する「死霊」は実は“主人公のもとに届いたゲーム”に登場するキャラクターではありません。死霊たちが“ゲーム”を蝕んでゆき、その世界がおかしくなっていく……という設定です。そしてどうなっていくのか、というのはプレイしていくうちに解き明かされていきます。ゲーム内ではちょっとした寄り道やメモのような要素もあり、そこでもストーリーを語っていきます。
――ビジュアル作りで意識したポイントについてお聞かせください。

Fuming: 「こういうビジュアルだとウケそう」という考え方は一切していなくて、完全に自分の好みを追求しました。「自分はこういうものが好きだから!」の一心ですね。ひと目見たときのインパクトも重要視しています。
――サウンドを担当するXavier LeBlancさんは、どういったアーティストなのでしょうか。声をかけた経緯についてもお聞かせください。
Fuming: 『Dream Channel Zero』のようなビジュアルのゲームは“8bitサウンドを使いがち”と感じてます。あくまでも私の好みの話ではありますが、ピコピコした音色だったりゲーム音楽専門のクリエイターに任せないといけない理由もないと思い、クラブシーンで活動されている方に制作を依頼しました。そうすれば新しい風も取り入れられて、「先に行こうぜ!」という雰囲気も出せるんじゃないかなと。
彼はアメリカ在住なのでメールやSNSでやりとりしてるのですが、なかなか連絡がスムーズにいかないこともあったりして。最近お子さんが産まれたということもあって、「最後まで制作してもらえるかな」って心配したりしてます(笑)。いつか日本に呼べたらいいなと思ってます。
――「自分の好みを追求した」ということですが、ゲーム以外のコンテンツでFumingさんが強く影響を受けたものはありますか。
Fuming: 私はドイツ出身で、日本のアニメではなくドイツのアニメを観て育ったんですよね。昔のドイツのアニメってすごく独特で、芸術的な側面が強かったり、哲学的なテーマや暗い展開の作品も多いんです。有名なドイツのアニメキャラクターだと「Die Maus(マウス)」というのがいますね。
――マップ画面はレトロゲームを彷彿とさせるデザインですが、これはどのような作品から影響を受けたのでしょうか?

Fuming: 『スーパーマリオワールド』が大好きなんです。もはやマップをただ散策するだけでステージはプレイしない、なんて遊び方をしたりもします。
――やっぱりそうだったんですね! ということは、『Dream Channel Zero』でも「うらみち」や「ひみつのコース」のようなものを用意されていたり……?
Fuming: あります(笑)。今回出展したバージョンではできないのですが、ゲーム内に「チャンネルを操作する」というパートがあり、そこに秘密を隠したりしてます。
ーー今回はステージ(マス)を進むことで、トレイラーでも紹介されていた「カード」を使うシーンなどのチュートリアルを体験できました。本作の軸となるストーリーも、ステージを進めるごとに展開していくのでしょうか。

Fuming: そうですね。今回、カードについては『スーパーマリオブラザーズ3』のハンマーのようなものを見せていました。カードはあくまでサブですが、世界設定を紹介するための「キャラクターカード」という収集要素もあります。
――『Dream Channel Zero』は過去作『Zelle』の開発中から構想されていたとのことですが、どのような意識でゲーム内容を練られていたのでしょうか。

Fuming: サウンドと同じく私の好みの話ですが、RPGって「戦闘が長い」と感じることが多いんですよね。スムーズにサクサク終わらせたいという気持ちがありつつ、それでも「戦闘をしたい」という欲もあったりして。『Zelle』もそういった意識で戦闘要素を作っていたので、『Dream Channel Zero』では更に進化を見せたくなり、シューティング風のギミックを取り入れて、楽しめるようにしつつ遊びごたえを加えました。
――Fumingさんが過去に手掛けた『Zelle』と本作『Dream Channel Zero』に、ストーリーの繋がりはあるのでしょうか。

Fuming: 『Zelle』のキャラクターみたいなものも登場しますよ。抽象的な説明になってしまいますが、“Fuming Games”という空間的な繋がりがあります。各作品ごとに違う世界ではあるけれど、どこかで歪みが生まれて『Zelle』の世界からキャラクターが紛れ込んでくる……という繋がり方もあります。地続きではないけれど、それぞれ繋がっているイメージです。
――最後に、『Dream Channel Zero』の開発に向けた意気込みをお聞かせください。
Fuming: 今はベースを作り終えて、「今後何をしていくか」というのも決まった段階です。あとは頑張るだけですね(笑)。でも、これが一番難しくて。パブリッシャーのOdencatさんから開発協力も得られているものの、基本は私ひとりです。孤独な制作ではあるものの、あとは気合で進めていこうと思っています。
――ありがとうございました。
「BitSummit Drift」は2024年7月19日から21日まで開催。Game*Sparkでは多数の現地取材記事を掲載していくので、今後もお楽しみに!
インディーゲームの祭典「BitSummit Drift」特集記事はこちら!