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8方向ループレバーで敵をなぎ倒せ!懐かしのアーケードシューティング『ゲバラ』で学ぶ「大逆転のキューバ革命」

キューバ革命をテーマにしたゲームなので史実を無茶苦茶に改変した内容……と思いきや、実は案外史実に沿っている場面もあったりします。

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8方向ループレバーで敵をなぎ倒せ!懐かしのアーケードシューティング『ゲバラ』で学ぶ「大逆転のキューバ革命」
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PS4とニンテンドースイッチ向けに配信されている『アーケードアーカイブス ゲバラ』は、80年代のSNKが送り出した快作アーケードシューティングゲームとして知られています。

ゲームの舞台は1950年代のキューバ。そのタイトルの通り1Pキャラはチェ・ゲバラ、2Pキャラはカストロ兄弟の兄フィデルです。そう、これはキューバ革命をテーマにしたシューティングゲーム。史実を無茶苦茶に改変した内容……と思いきや、実は案外史実に沿っている場面もあったりします。

また、『ゲバラ』は後述する斬新な操作機構を有し、今でも根強い人気を保っています。

ゲバラとカストロ兄弟の武力闘争

1953年7月26日、キューバでは「モンカダ襲撃」という事件が勃発します。大量の武器を保管していたモンカダ兵舎に、フィデルとラウルのカストロ兄弟率いる武装組織が攻撃を仕掛けました。これは鎮圧され、カストロ兄弟は投獄されます。

なぜ、このような事件が発生したのか。それは当時のキューバ大統領フルヘンシオ・バティスタが、キューバ国内へのアメリカ資本の流入・拡大を促していたから。もちろん、それだけなら他の西側諸国も同様ですが、バティスタの場合はそれと引き換えに米企業やマフィアから膨大な額の賄賂を受け取っていたと言われています。また、米資本による現地市民からの搾取も横行していました。バティスタはそれを黙認していた、ということです。

政権転覆を狙ったカストロ兄弟の最初の武力闘争は、しかし失敗に終わりました。逮捕・収監ののちにメキシコに亡命し、再びの武力闘争の準備を進めます。ゲバラとはこの最中に合流しました。

1956年12月2日、ゲバラとカストロ兄弟を含む82名はプレジャーヨット「グランマ号」に乗ってキューバに上陸します。そこで国軍と激しい戦闘になり、何と82名が12名にまで減ってしまいました。やむを得ずマエストラ山脈に逃げ込みますが、これが奇跡的なキューバ革命の序曲だったのです。

強大な政府軍相手にゲリラ戦

ゲバラとカストロ兄弟の率いる抵抗運動「7月26日運動」は、逃亡先で勢力を拡大しながら闘争を継続します。政府に対して大きな不満を持っていた民衆を取り込むことに成功したのです。

しかし、いくら勢力を拡大しているといっても相手はアメリカの軍事支援を受けた強大なキューバ軍。その闘争は熾烈でした。ゲームの『ゲバラ』でもわらわらと湧き出る敵に対してゲバラとフィデルがたった2人で戦っているような描写がされていますが、それはあながち嘘ではありません。

革命勢力は山脈とジャングルを利用したゲリラ戦を展開し、何と外国著名人の誘拐も実行します。伝説的F1ドライバーのファン・マヌエル・ファンジオを、首都ハバナのホテルからアジトに連れ出した事件です。

もっとも、革命勢力はファンジオに暴力を振るったことはなく、できる限りのVIP待遇でもてなしました。フィデルが革命後のキューバの国家元首になった後もファンジオを主賓として招待するなど、その交流は長く続いていくことになります。

全方位から迫り来る敵

我々現代人は、ゲバラとカストロ兄弟の武力闘争が成功したことを結果として知っています。しかし、まさに闘争真っ只中だった当時は「象のようなバティスタ政権に抵抗する蟻のような革命勢力」であり、ゲバラとカストロ兄弟は全方位から迫ってくるキューバ軍と戦わざるを得ない状況に追い詰められていました。

『ゲバラ』の最大の特徴である八角形の「8方向ループレバー」は、画面上のゲバラを素早く方向転換させるシステム。これを使いこなせば、どの方向から敵が出てきても素早く対応できます。そして、実際のゲリラ戦も「どこに敵がいるか分からない戦闘」です。

数で大きく上回る敵を相手にしたゲリラ戦では、敵の装備をかっぱらうこともしょっちゅう。『ゲバラ』でも戦車を奪って乗り回すことができます。突き詰めて考えると、このゲーム結構ゲリラ戦のイロハを理解してるんですよね……。

仲間と協力して独裁者を倒せ!

また、『ゲバラ』は当時珍しい「2人協力プレイのシューティングゲーム」でした。ゲリラ戦では、仲間との連携が必要不可欠。ゲバラとフィデルが協力し、全方位から襲いかかるキューバ軍を撃破します。これぞまさにゲリラ戦!最後は首都ハバナに進撃し、バティスタの待つ大統領官邸で決戦だ!

もっとも、史実のバティスタは革命勢力の進撃を前にして国外へ逃亡し、反共独裁政権下のポルトガルとスペインを頼ります。革命達成後の新生キューバは、その後アメリカの露骨な冷遇措置に耐えかねてソビエト連邦と接近し、共産主義国家の道を進んでいきます。そうした経緯もあり、『ゲバラ』の海外輸出版はゲバラとカストロ、そしてキューバの名を伏せる措置が施されました。

題材が題材なだけに政治色を拭えない面もありますが、それでも伝説の革命家に対するリスペクトがふんだんに込められた『ゲバラ』はアーケードゲーム史を飾る名作として語り継がれています。

《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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