「BMIs(ブレイン・マシン・インターフェース)」の研究開発を行う米企業Neuralinkは、開発中のBMIインプラントを利用した人における実証実験において、実験参加者のFPSプレイ体験を向上できるといった成果を上げたことを発表しました。
脳に埋め込んだデバイスでマウスカーソルを自由自在にコントロール!
Neuralink社は脳に埋め込むインターフェイスの開発を目指す企業で、さまざまなテック系スタートアップ企業のCEOを務めるイーロン・マスク氏が設立、運営に関わっていることでも知られています。今回の研究報告では、同社のBMIインプラント「Link」を利用した人における2例目の実験の成果を公開。それによると脊髄損傷により四肢に麻痺を抱える実験の参加者が、マウスカーソルのコントロールを思考のみでスムーズに行えるようになったといいます。
四肢が動かずともモノづくりができるように!FPSもさらに楽しく
参加者のアレックス氏は元自動車整備士で、脊髄損傷を受けて以降はコンピュータ支援設計(CAD)を利用しての3Dオブジェクト設計を学ぶ方法を模索していたとのこと。しかし現行の操作支援デバイスではCADを扱うのに十分な精度や機能があるとは言えなかったといいます。
そんなアレックス氏がLinkの装着を終え、コンピューターへデバイスを接続して5分も経たないうちにカーソルのコントロールが可能に。それから数時間のトレーニングを終えるとWebgridというテストで他の操作支援を大きく上回る結果を出せたそうです。
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さらにアレックス氏は研究セッションが終了した後も独自にデバイスのテストを続け、念願のCADを利用してLinkの充電器用カスタム マウントを設計。その後も暇ができればアイデアを形にしているといいます。また、人気FPS『Counter Strike2』のプレイも行ったとのことで、これまでは行えなかった移動と照準の同時並行が可能となるなどプレイ体験が大きく向上した様子。「ただ走り回っているだけでも楽しい」と喜びを露わにしました。
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経過は良好。将来的にはロボットアームや車椅子の制御も
執筆時点では最初の被験者に見られたというBMIsのパフォーマンス低下や、脳に埋め込んだ糸の移動といった問題は認められず経過は良好である様子。今後はLinkに併せて利用する高速なテキスト入力アルゴリズムや、コントローラー、マウスの利用への最適化といった体験の向上を進め、将来的にはユーザーがロボットアームや車椅子の制御にもLinkを利用できるよう開発を続けるとしています。
まだまだ発展途上の技術ではありますがハンディキャップのある方はもちろん、将来的には誰もが思考でデバイスを動かせてしまうような未来の到来も期待させる研究結果。サイバーパンクな世界は思ったより早くやってくるのかもしれません。