『黒神話:悟空』のあのシーンって何だったの?「西遊記」好きのライターが全力で語る元ネタ解説【ネタバレあり】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『黒神話:悟空』のあのシーンって何だったの?「西遊記」好きのライターが全力で語る元ネタ解説【ネタバレあり】

原作改変の例に挙げられがちなドラマ「西遊記」(1978)ですが、実は三蔵法師を女性化させたのではなく、夏目雅子さんが演じているにも関わらず劇中ではちゃんと男性設定でした。

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黒神話:悟空』のオープニングを見た時、字幕を追いきれなかったこともあり、筆者は本作が「取経の旅のその後の物語」だと気づきませんでした。

そのオープニングとは、悟空が顕聖二郎真君(けんせい じろうしんくん)と一騎打ちし、突如として現れた緊箍児(きんこじ/頭の金の輪)の影響で打ち倒される場面のこと。それは「西遊記」本編における、悟空が両界山に封じられる流れそのままで、そのため原作本編を再現したものだと勘違いしたのでした。

※原作でも天界を荒らした悟空を捕らえるために二郎真君が出撃。神のひとりである太上老君(たいじょうろうくん)が「金剛琢(こんごうたく)」と呼ばれるリング状の神具を投げ、それが悟空の脳天に直撃したことで悟空は敗北しています。

※その後、悟空は死刑に処されるのですが、修行の成果などで不死身になっており命を奪えず、最終手段として釈迦如来が現れて悟空を地上に封じます。そこが両界山または五行山と呼ばれる山でした。それから500年後、取経の旅に出た三蔵法師が両界山にやって来て悟空を弟子に迎えます。

「西遊記」の「その後の物語」という位置づけではあるものの、原作をオマージュした展開や、おなじみの妖怪・神具が出てきて「西遊記」好きにはたまらない本作。オープニングに登場した二郎真君も「封神演義」に登場する道士「楊戬(ようぜん)」が神になった姿とする説があり、ファンにはおなじみのキャラクターです。

本稿ではそんな、探せば山ほどある小ネタの中から特に有名な設定や、ストーリーの理解に必要な元ネタを紹介したいと思います。

ちなみにゲーム終盤でやたらと流れる壮大なBGMは、1982年に中国で放送された実写ドラマ版「西遊記」のものと思われます。

「西遊記」の映像化作品は山ほどありますが、そのほとんどが独自要素を加えたアレンジ版。六小齢童が孫悟空を演じた実写版「西遊記」はもっとも原作に近い映像作品として知られています。

※筆者が知る映像作品の中では唯一、原作に忠実な作品でした。


『黒神話:悟空』最終トレイラー

◆「孫悟空」「石猿」「弼馬温」……。悟空のさまざまな呼び名のルーツをたどる

悟空にはさまざまな呼び名があり、ゲーム本編でもシチュエーションによって呼び分けられていました。

悟空は傲来国(ごうらいこく)にある花果山(かかざん)の山頂に鎮座していた不思議な石から生まれたのですが、生まれた直後は「石猿」と呼ばれていました。まだ勇気があるだけのただの猿です。

花果山の猿のコミュニティに合流した彼は、滝の裏にある「水簾洞(すいれんどう)」という洞窟を見つけ、そこを猿たちの住処にします。その際、石猿は勇気を讃えられて「美猴王」(びこうおう/美しい猿の王)と呼ばれ、以後は猿たちを従えるようになりました。

そうやって平穏に暮らしていたある日、悟空は「死」を目の当たりにして震えあがります。そして不老不死の術を求めて大海を渡ることを決意。旅先で師となる須菩提祖師(しゅぼだいそし)と出逢うことになりました。

悟空が七十二般の変化の術、觔斗雲術、身外身の術(分身術)を習得したのもまさにこの時。さらに祖師より「孫悟空」の法名を与えられます。

※実際に不老不死になるのはもう少し後。冥界に乗り込んで閻魔帳から自分や仲間の名前を消したり、長寿の桃や人参果と呼ばれる仙果を食べたりする展開が待っています。

祖師の弟子の中でも特に出来が良かった悟空ですが、特別に法術を習ったことで有頂天に。ほかの弟子たちに法術を見せびらかしたため破門されてしまいます。

そんな彼を故郷で待っていたのは、花果山を我が物にしようとしていた妖怪・混世魔王でした。そこで悟空は部下の猿たちの進言もあり、今後の自己防衛のためにも武器を持つことにします。そして竜宮へと赴き、半ば強制的に竜王たちから如意棒金の冠金の鎧歩雲履(レッグガード)を譲り受けました。とんだジャイアンですね。

ちなみにその時に奪った装備一式が、あのオープニングにも登場した戦闘スタイルでした。

もはや天界も見逃せないほどの強さを獲得していた悟空。そんな彼をどうにかしようと、天界は彼を天へ招いて役職を与えることにしました。懐柔策を取ったわけです。

その際、新たな役職として、その頃から悟空が自称し始めていた「斉天大聖」を名乗ることを認めます。最初は自称・斉天大聖だったわけです。

その後の展開はオープニング解説で説明した通り。馬屋の番である「弼馬温(ひつばおん)」をはじめ、ろくな役職を与えないことにブチ切れた悟空は天界で大暴れ。釈迦如来によって両界山に封じられることになります。

なお三蔵法師の弟子になってからは、修行僧を意味する「孫行者」とも呼ばれるように。取経の旅を終えると、その功績を讃えて、戦いをつかさどる仏「闘戦勝仏(とうせんしょうぶつ)」に昇格します。ゲーム本編では色々な名前で呼ばれていましたが、実は以上のような経緯があって呼び分けられていたのでした。まるで出世魚ですね。

◆実はストーリーがあった!虎の腰巻エピソード

ゲームを開始すると、プレイヤーは天命人というキャラクターになり、まずは孫行者スタイルで冒険を繰り広げることになります。そこで筆者が注目したのが頭の輪虎の腰巻でした。

初期段階で手に入る頭の防具「行者の戒箍」は、中国では一般的なデザインの緊箍児となっています。特徴は額の三日月模様。中国のアニメや実写作品でよく見るタイプです。

また天命人が登場シーンで着用していた虎の腰巻も原作ではおなじみのアイテム。両界山から救い出された悟空が三蔵と2人だけで旅をはじめた当初、三蔵を食おうとしていた虎を悟空が倒し、その場で毛皮を剥いで作ったのがこの衣装でした。ちなみに虎の皮の衣装は作品によって異なり、腰巻以外にもさまざまなものが登場します。本作がリスペクトする中国のドラマ版「西遊記」では、左肩から腹部までを覆う、初期アシュラマンのようなスタイルでした。

悟空が緊箍児をはめられるのは、ちょうど虎の腰巻を着用するタイミング。その当時の悟空は相手の命を何とも思っておらず、手を焼いた三蔵法師が観世音菩薩から渡された緊箍児で制御したのでした。

※緊箍児は三蔵法師が特定のお経を読むことで発動。ギリギリと頭を締めつけて従わせる神具です。これがある限り悟空は「籠の鳥」。そのため一刻も早く旅のゴールである天竺・大雷音寺に到着して、釈迦如来に緊箍児を外してもらおうとしていました。

◆悟空、八戒、悟浄だけじゃない!4人目の仲間とは?

本作は悟空にフィーチャーしたアクションRPGですが、天命人のサポートとして猪八戒も登場します。

三蔵法師のお供といえば、孫悟空、猪八戒、沙悟浄の3名。それぞれ義兄弟のような関係にあり、旅に加わった順に、長兄・悟空、次男・八戒、三男・悟浄のような扱いとなっています。ゲーム本編で八戒がしばしば悟空のことを「兄貴」と呼ぶのは、そのような事情があったからでした。

ちなみに3人の弟子と先ほど紹介しましたが、実は4人目の仲間がいたことをご存知でしょうか? その人物は竜宮の王子で、名を「玉龍」といいます。彼はまだ三蔵と悟空が2人だけで旅をしていた頃に三蔵の馬を食ってしまい、その罪を償うために白馬に姿を変えました。

そう、三蔵が乗っているあの馬。あれこそ「もうひとりの仲間」だったのです。

ゲーム本編に登場した八戒は、中国では2番目に人気のキャラクター。かつては天界のエリートで、天の川水軍を指揮する「天蓬元帥(てんぽうげんすい)」でした。ところが酔った勢いで天女の嫦娥(じょうが)に言い寄ったため下界に追放。豚の腹の中に入ってしまったせいで豚のバケモノとして生まれてしまいます。つまり「転生したら豚だった件」だったわけです。

その後、烏斯蔵国・高老荘で人間の女性とむりやり結婚しようとしたところで悟空と対決。三蔵法師の弟子となりました。

八戒は下界に追放された後、三蔵の従者を探していた観世音菩薩から「猪悟能(ちょごのう)」の法名をたまわっていましたが、欲深い性格を戒めるために三蔵が「八戒」の別名を与えたことで「猪八戒」と呼ばれることになります。

ちなみに沙悟浄も元は天界のエリート。「捲簾大将(けんれんたいしょう)」と呼ばれる、天帝の謁見の際の取次秘書のようなポジションにいました。しかし大事な宝を壊してしまったことで下界に追放。その後は流沙河(りゅうさが)で人を食う妖怪になり、食った僧の頭蓋骨をネックレスにするようになります。

彼もまた旅に加わってからは「沙和尚(さ おしょう)」の別名で呼ばれるようになりました。

※悟浄は流沙河の妖怪ということで日本では河童になっていることが多いのですが、本来は「入道タイプの妖怪」です。

◆第1回「火照黒雲」を読み解く

悟空、八戒、悟浄を弟子に加えた三蔵法師は、西の果て(インド)に位置する天竺・大雷音寺を目指すことになります。

目的は仏教の経典(三蔵の経典)を唐の国に持ち帰ること。

※三蔵法師の本来の法名は「玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)」。三蔵の経典を持ち帰る任を与えられたことから「三蔵」の名も与えられました。

しかし「高僧である三蔵の肉を食らえば不老不死になれる」と思った妖怪に狙われたり、時には三蔵の「精」を求める女妖怪に言い寄られたりと散々な目に遭います。そのエピソードは様々。

『黒神話:悟空』でまず登場する妖怪といえば、第1回「火照黒雲」のボスである黒風大王と金池長老です。

悟空が黒風大王や金池長老と遭遇したのは、まだ悟空が三蔵法師と2人旅をしていた頃。たまたま宿を借りた寺で住職を務めていたのが金池長老でした。

「旅の僧なら何か珍しいものを持っているはず。ぜひそれを見せてほしい」と金池長老に言われた悟空は、制止する三蔵法師をよそに、観世音菩薩から与えられた「宝の袈裟」を披露。欲に駆られた金池長老は弟子たちと共謀して、就寝中の三蔵を焼き殺し袈裟を奪おうと画策します。

ちなみに袈裟とはお坊さんが着用している衣装のこと。三蔵法師が保管していたのは観世音菩薩から与えられた特別なものであり、金池長老はその美しさに心奪われたのです。

寺が炎に包まれる中、悟空は就寝中の三蔵を火から守りつつ、あえてその火を消さずにいました。仕返しのつもりです。そのせいで寺は焼け落ち金池長老も死亡。袈裟は火事の騒動に紛れる形で黒風大王に奪われてしまいます。

黒風大王はもともと金池長老の友人であり、仏教に興味があったため虎視眈々と袈裟を狙っていました。しかし悟空と観世音菩薩に倒されて観世音菩薩の弟子になります。

『黒神話:悟空』では、どうやら黒風大王と金池長老は、まだ金池長老が幼かった頃に出逢ったという設定になっている様子。実際、2人は友人関係にありましたからその部分を補強したのでしょう。章終わりのムービーではそんな2人の出逢いからはじまり、三蔵の袈裟をめぐる事件、そして仏門に入った熊の精(黒風大王の正体)の姿が描かれていました。しかし結局は修行から逃げてゲーム本編のように再び悪事を働いたようです。

なお中ボスの「広智」「広謀」は金池長老の弟子のなれの果て。作中設定ではオリジナル要素として「もともと妖怪だった」という設定が加えられていましたが本来は人間でした。てっきりモブキャラだと思っていただけに、本作で出世していて驚きです。

◆第2回「風起黄昏」を読み解く

第2回「風起黄昏」のラスボスは黄風大聖(黄風大王)。原作では八戒が旅の仲間に加わった後、黄風大王が部下の虎先鋒(こせんぽう)に命じて三蔵を連れ去ったことから事件がはじまります。

悟空は黄風大王の妖術「三昧神風(さんまいしんぷう)」にやられて両目を失明してしまいますが、霊吉菩薩のおかげで復活。そして黄風大王を打ち倒します。その正体は貂鼠(テン)と呼ばれる小動物でした。

本作における黄風大王は、どうやらもともと民想いの領主だった様子。虎先鋒もそんな彼に心酔して従っていました。しかし強大なパワーを手にしたことで闇落ちしてしまい、「黄風大聖」として第2回のボスに。民を救うために巨大な妖怪に立ち向かう姿がとても頼もしかっただけに残念な結果でした。

一方、本作に登場する虎先鋒の変化も衝撃的でした。以前は「2人の子」を愛し、黄風大王の隣で勇敢に戦っていた彼。しかし、いつの頃からか“血の池”で獲物を食らう大妖怪に変貌してしまいます。そのあたりの真相はゲームを進めると明らかになるのですが、なんとも複雑な気分にさせられました。

ちなみにゲームに登場した「定風珠」は原作にも登場するアイテムで、黄風大王に対抗するために使われたものでした。

◆第3回「夜生白露」を読み解く

第3回「夜生白露」のラスボスは黄眉。原作では黄眉大王と呼ばれ、三蔵一行の旅の目的地である大雷音寺を偽装した「小雷音寺」を構え、そこに一行をおびき寄せました。

そして三蔵を食らうために悟空を神具「金銅鑼」(きんどら/金の銅鑼)に閉じ込めて溶かそうとするのですが、天界から援軍がやって来たことで形勢逆転。援軍の一人である「亢金龍(こうきんりゅう)」に救い出されて黄眉大王を討ち負かしました。

ゲーム本編では金銅鑼は円盤型のオブジェとして登場。八戒をその中に閉じ込めていました。それをおこなったのが「亢金星君」(こうきんせいくん)と名乗る美女。なお「亢金龍」と「亢金星君」は同一の存在で、龍形態を「亢金龍」、人間形態を「亢金星君」と呼ぶようです。

その後に登場した大亀は、おそらく原作の別のエピソードに登場する通天河の老亀でしょう。

老亀はもともと通天河のヌシのような存在でしたが、霊感大王(れいかんだいおう)という妖怪が現れたことで住処を奪われてしまいます。しかし三蔵一行が通天河を訪れたことで状況が一変。最終的には倒されることになりました。

本作第3回の面白いところは、実は黄眉大王のエピソードだけを扱っているのではなく、通天河のエピソードも絡んでいるところ。原作の通天河のエピソードでは霊感大王の罠で一夜にして通天河が凍りつくという展開がありますが、第3回の雪景色はまさにそのエピソードを彷彿とさせるものでした。

ちなみに何度か対戦する赤尻馬猴も、どうやら原作由来のキャラクター。竜宮で武器を調達するよう悟空に提案した猿のひとりだったようで、筆者は調べるまで名前のあるキャラクターだと思いませんでした。

◆第4回「曲度紫鴛」を読み解く

第4回「曲度紫鴛」には女性妖怪の「くもの精」姉妹(+母親)が登場。

原作では盤糸嶺・盤糸洞に住む7人の姉妹妖怪で、三蔵法師の肉を食らおうとして悟空に捕らわれます。

その後、黄花觀という寺の主で姉妹の兄でもある百眼魔君が三蔵の身柄を奪取。悟空が三蔵と姉妹を交換するよう要求しますが、その要求が拒否されると悟空は姉妹を打ち倒してしまいました。ゲーム本編に登場する「くもの精」は、その時に生き延びた“母”と彼女の娘たちという設定のようです。

本作では、姉妹の母親と八戒が愛し合う仲として描かれていましたが、原作では八戒が一方的に色香に惑わされることはあっても姉妹が彼を受け入れることはありません。むしろ嫌われて当然の行動を取っていましたから、よくここまで壮大なラブロマンスにできたなと驚くばかりです。

また八戒には、転生した当初、卯二姐という婚姻関係になった女性妖怪がいました。悟空や三蔵と出逢った、あの高老荘よりも以前の出来事です。ゲームに登場する姉妹のひとりが「二姐」という名前だっただけに卯二姐のエピソードをイメージしているのかと思いつつも、もしかしたら考えすぎなのかもしれません。

「くもの精」のエピソードは、まさに恋多き八戒らしいエピソード。八戒は中国で2番人気のキャラクターということですから、おそらく開発陣は、1話くらいは八戒にフィーチャーしたエピソードを作りたかったのではないでしょうか。

とにかく原作では叶わなかった八戒の恋も、ゲームでは悲しいラブロマンスとして描かれており強く心に残りました。

◆第5回「日落紅塵」を読み解く

第5回「日落紅塵」は「西遊記」でトップ人気を誇る牛魔王のエピソード。なぜなら牛魔王は、悟空が花果山水簾洞に住んでいた頃からの義兄弟だったからです。

そんな彼も悟空が取経の旅に出るころにはパートナーができており、パートナーの羅刹女(別名:鉄扇公主)、息子の紅孩児とともに3人家族を築いていました。

原作の紅孩児は、すでに親元を離れ、火雲洞の主として多くの手下たちを従える「聖嬰大王」(せいえいだいおう)の身分。彼は三蔵一行の敵として登場し、火炎術である「三昧真火」(さんまいしんか)や5台の火車(いわゆる戦車)を駆使して悟空たちを追い詰めました。しかし最終的には改心して仏門に入り、以後は天界側のキャラクターとなります。

一方、牛魔王は玉面公主(白面狐狸の精)と浮気をしており羅刹女の元に帰らない日々が続いていました。そんな時にやって来たのが三蔵一行でした。

一行の前には業火に包まれた火焔山が横たわっており、その業火を消すには羅刹女が持つ芭蕉扇であおぐしかありません。しかし牛魔王の義弟という悟空が頼みに行っても、羅刹女にしてみれば愛しい我が子(紅孩児)を仏に売り渡した相手。反対に交戦状態に入ってしまいます。しかもそれは牛魔王も同様で、八戒が玉面公主を打ち倒してしまったこともあり対立が激化してしまいました。

本作はその後の時系列がベースとなっているのですが、まず驚くのは紅孩児の出生の秘密です。なんと牛魔王の実の子ではないという過去が追加されていました。

どうやら羅刹女はもともと霊鷲山(雷音寺のある山)の天女で、「夜叉」の一族が絶滅寸前であったことから妊娠効果のある「子母河」(しぼが)の水を飲まされたそうです。そして生まれたのが紅孩児でした。

その事実に耐えきれなくなった牛魔王は羅刹女と疎遠になったとのこと。羅刹女は、牛魔王と玉面公主の間にできた娘「萍萍」(ピンピン)を引き取るなど懐の深い女性でしたが、その優しい行いとは反対に運命に翻弄され、ただひたすらに理不尽な苦難に耐え忍びます。

※子母河の水をめぐるエピソードは、火焔山とは別のストーリーとして原作にも登場。そうとは知らずに飲んでしまった三蔵と八戒が妊娠してしまうというあらすじで、特に羅刹女とは関係のないものでした。

ゲーム本編では紅孩児が反乱を起こし、三昧真火の術で火焔山を再び火の山にしたり、戦車を投入したりして辺りを制圧していました。その目的は牛魔王が隠し持つ悟空の六根を奪うこと。もちろん非道を働き、牛魔王一族を不幸にした霊鷲山に復讐するためです。

章終わりのアニメーションでは牛魔王の苦悩が描かれていましたが、その人生は天界に翻弄され続けたものでした。なんとも言えない空しさを感じる、いいエピローグだったのではないでしょうか。

◆結局『黒神話:悟空』とはなんだったのか

第6回については先に説明した設定やエピソードを知っていれば理解できるかと思うので、本稿では割愛したいと思います。

さて本作はエンディングに到達すると、いわゆる「強くてニューゲーム」の項目が追加されます。それを本作では「輪廻に入る」と表現するようです。

もともと三蔵法師は何度か天竺チャレンジに失敗したという設定があります。三蔵は「金蝉子(こんぜんし)」と呼ばれる釈迦如来の弟子だったのですが、教えを軽んじたために人間に転生。取経の旅に出るものの失敗して何度か転生しました。

※近年の映像化作品では「バッドエンドかと思いきや、転生してまた新たな旅が始まる」……という展開を描いたこともありました。

またゲーム本編でもマルチバース的な設定を語るセリフがあることから、「西遊記には異なる作者が描いた様々な物語がある。『黒神話:悟空』もそのうちのひとつであり、進行中のプレイもまたその輪廻のうちのひとつである」ということを表していたのではないでしょうか。

もちろん輪廻転生とマルチバースはまったく異なる概念です。しかしその考え方を踏まえると、原作を踏襲するかのようなゲームのストーリー展開も納得できるというもの。

皆さんはこのゲームをプレイしてどのような感想を持ちましたか?


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