シリーズ第1作の発売から40年以上もの歴史を持ち、現在もシリーズが継続中の『ウィザードリィ』シリーズ。その中でもメインシリーズは1981年に発売された第1作から、2001年に発売された『ウィザードリィ8』まで実に足かけ20年にわたって発売されていました。
しかし、その中でもいわゆる「後期ウィザードリィ」と呼ばれる『Wizardry: Bane of the Cosmic Forge』(『ウィザードリィ6』、以下『BCF』)、『Wizardry: Crusaders of the Dark Savant』(『ウィザードリィ7』、以下『CDS』)、そして『ウィザードリィ8』は比較的マイナーな印象を国内では受けるのではないでしょうか。
そういった印象を受けるのは、『BCF』で大幅にゲームシステムが変更されたこと、日本製のウィザードリィが主に本家の『5』以前のシステムを踏襲しつつ、『BCF』以降の種族や職業を導入するという方向性で進化してきたことや、家庭用機への一部の移植作品の出来があまり良くなかったこと、そしてシリーズ集大成たる『ウィザードリィ8』の日本語版が発売されたのがPCのみで、「PCで(成人向け以外の)ゲームを遊ぶ」という文化が、日本ではWindowsへのPC主流の移行後に厳し目に言えば2020年代に入るまでの四半世紀近くにわたり大きく減退してしまっていた状況もあって出回りがごく少数に留まったこともあるでしょう。
気付けば日本語版『ウィザードリィ8』はとんでもないプレミア価格で取引されるようになり、後期ウィザードリィに気軽に手を出せるような環境ではなくなってしまいました。
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そんな中、さまざまなレトロゲームの復刻を手がけるProjectEGGから満を持して発表されたのが『Wizardry Legacy -BCF,CDS & 8-』です。これは現在プレミアがついている『ウィザードリィ8』を含めた後期ウィザードリィの日本語版を現在のWindows向けに復刻した商品で、2024年6月頃から通販にて購入可能になりました。本記事では、このパッケージの開封レポートと収録作品の紹介を行いたいと思います。
まずは開封の儀。当時の再現マニュアルが圧巻
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パッケージを開封する前に、パッケージの裏側をチェック。『BCF』のPC版をそのまま模したジャケットです。なおパッケージジャケットはリバーシブル仕様となっており、ジャケットを反転させると『CDS』のPC版を再現したパッケージとなります。
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いざ、開封。多数の小冊子が目を引きます。
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中には『BCF』~『ウィザードリィ8』のマニュアルを再現した分厚い小冊子が3冊格納されています。当時のマニュアルと比較するとサイズは一回り小さいのですが、内容はほぼそのまま再録されています。
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『BCF』のマニュアルには「マッピングのやり方」を解説したページもあります。本作に収録されているPC版『BCF』および『CDS』にはオートマッピングが存在しないので、気合を入れて遊ばれる方は方眼紙を用意しましょう。
特に『CDS』はマッピングの規模も相当なものになるので気合を入れて臨みましょう。
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また、マニュアル以外にはスターティングガイドやクイックリファレンスなどの小冊子も収録。本作ではこれらのガイドに記載されている「ディスクの入れ替え作業」などは必要ありませんが、『BCF』のスターティングガイドの日本語入力切り替えは重要なのでチェックしておいた方が良いでしょう。
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TRPG風のキャラクターシートや、『CDS』の全体マップを記した地図も付属しています。これらも併せて、「レトロPCゲーム」感が満載なパッケージです。
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ディスクはゲームのインストールDVDと、サウンドトラックCDの2枚組です。インストールDVDから、ゲームをインストールしましょう。
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ゲームのアップデートパッチを適用し、ランチャーを起動してインストールを行えば日本語版『BCF』~『ウィザードリィ8』がいよいよ楽しめます!なお、各作品についてインストールしたあとの起動時やゲーム中にインストールDVDを再度求められることはありません。
コズミック・フォージを求め、後戻りができない旅へ。『ウィザードリィBCF』
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まずはウィザードリィ6作目『BCF』から紹介しましょう。本作に収録されているのはアップデート前はPC-9801版のみです。アップデートで、後述する、末弥純氏のモンスターデザインも楽しめる優れたグラフィックのSFC版『禁断の魔筆』が追加されました。
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まずは冒険に出るキャラクターを6人作り、パーティを組む……という作業は今までのウィザードリィを踏襲していますが、本作から種族・職業が大幅に追加されています。本作以降登場する種族は以下の通りです。
全てが平均的な「人間」(シリーズ続投)
魔法の扱いに長ける「エルフ」(シリーズ続投)
体力と力に優れる「ドワーフ」(シリーズ続投)
信仰心に優れる「ノーム」(シリーズ続投)
素早さと運が強い「ホビット」(シリーズ続投)
小さく素早いため回避率が高いが装備品が多く制限される「フェアリー」
強くたくましいトカゲ人間「リザードマン」
人間とドラゴンの混血種でブレスが吐ける「ドラコン」
素早さに優れる猫の獣人種「フェルプール(フェルパー)」
速度・体力・器用さの高い犬の獣人種「ラウルフ」
全てが謎の毛むくじゃら生物「ムーク」
また、本作以降シリーズで採用されている職業は以下の通りです。
武器と盾の専門家「戦士」(シリーズ続投)
強力な魔法を扱う「魔法使い」(シリーズ続投)
治癒の魔法と軽装備が可能な「僧侶」(シリーズ続投)
宝箱や扉の鍵や罠を外し、死角からの攻撃も得意な「盗賊」(シリーズ続投)
弓の扱いに長け、罠・鍵の知識も持ち錬金呪文も使える「レンジャー」
錬金術魔法の達人で、声を出さずとも魔法が唱えられる「錬金術師」
楽器を使った様々な呪歌で敵を惑わし、魔法使い呪文と盗賊技能も少しある「バード」
相手の心を操る超能力呪文のエキスパート「サイオニック」
女性のみが就ける癒しの力を持つ神に愛されし乙女「ヴァルキリー」
魔法使い呪文と僧侶呪文の両方を覚え、鑑定技能も得意な「ビショップ」(シリーズ続投)
聖なる力を操る真の騎士「ロード」(シリーズ続投)
刀を振るい敵を一刀両断、魔法も操る「侍」(シリーズ続投)
手足そのものが武器となり致命傷を与え、超能力にも長ける「モンク」
暗闇の中からすべてを屠り、盗賊技能と錬金術呪文をも持つ「忍者」(シリーズ続投)
以上の11種の種族・14種の職業から6人パーティを編成します。後述の仕様の変化もあり、パーティの編成については、今までのシリーズ以上に悩むことになるでしょう。筆者としては、とりあえずバルキリーとバードはどんな初期編成に入れても役に立つのでおススメしておきます。
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何はともあれ、本作が今までのシリーズと決定的に違うのはパーティを組み、ダンジョンに入った「後」です。
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本作には、今までの『ウィザードリィ』におけるトレボー城砦やリルガミンのような、「冒険者の拠点」は存在しません。「ダンジョンに潜ったら、エンディングまでずっとダンジョンの中にいる」のです。死者が出ても安易に蘇生させることはできませんし(蘇生手段は一部のレアアイテムと、上級呪文に限られます)、馬小屋で休息することもできません。
また、『BCF』以降では、パーティ編成はゲーム開始以降行えません。一部の作品ではゲストキャラクターの参加こそありますが、転職による役割の変化を除けば最初に決めたメンバーで冒険を完遂しなくてはなりません。
今までのウィザードリィに比べ、「サバイバル感」は圧倒的に高くなったといえるでしょう。幸い、セーブがどこででも行える仕様となっているので、こまめかつ念入りなセーブをお勧めします。
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ダンジョン内には固定配置の宝箱も置かれています。本作の宝箱の罠の解除については今までのシリーズ作品と多少仕様が異なりますが、宝箱に仕掛けられていそうな罠を選択するという点は変わりません。気を付けて開けていきましょう。
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登場するモンスターもアニメーションするようになりましたが、リアルタイムで襲ってくるようなことはありません。今までのウィザードリィと同じく、ターン制の戦闘です。しかし戦闘システムには手が加えられており、武器攻撃も「振る」「叩く」などの攻撃方法を選ぶことができ(選んだ方法によって命中率や与ダメージが異なる)、魔法に至っては習得した魔法を選び、威力(パワーレベル)を指定して基礎消費MP×パワーレベルのMPを消費して放つ……という、それまでのウィザードリィの魔法システムと全く異なるものになりました。(リソースの超過投入による効果の増強は一部のTRPGにも同様のものが見られます)
また、各行動には「スタミナ」を消費するというリスクが付きまとい、「スタミナ」が底を付くと「休む」以外の行動ができなくなるという、近年の「ソウルライク」にはるかに先駆けたリソースシステムも実装されています。なお一部の職業は特殊なアイテムを使った攻撃ができ、中でもバードが初期所持している「リュート」は無限に睡眠効果を放てるという強力な楽器です。上手く活用しましょう。
失った体力やスタミナ、MPを回復するためには「休憩」が必要になります。いつでもどこでも「休憩」はできますが、モンスターが出現しやすい領域で「休憩」すると敵からの不意打ちを受けてしまう事があるので注意が必要です。
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ダンジョンの中ではモンスターのみならず、NPCとも遭遇することがあります。NPCとはアイテムの取引ができ、実質的に商店として機能するほか、交渉することで貴重な情報を聞き取ることができるかもしれません。但し、PC-9801版ではキーワードは自分で実際に文字を入力して尋ねる必要があるので、怪しいキーワードはひたすらメモっておきましょう。
古城、山脈、地下水脈に寺院……さまざまなダンジョンを抜けた先には、はたしていったい何が待ち受けているのでしょうか。それを解き明かすのが冒険者たちの使命です。『BCF』『CDS』『8』はいずれもマルチエンディング。果たしてあなたの冒険の結末はどのようになるのでしょうか。
なお、PC-9801版はクリアデータを続編『CDS』に持ち越すことができます。3部作の制覇を狙う方はこのPC-9801版から始めましょう。クリアデータの移行方法は、エンディングへの到達後、出力されたファイルを指定の場所へとフォルダー移動するだけです。
もう1つの『BCF』。SFC版『ウィザードリィ6 禁断の魔筆』
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『Wizardry Legacy -BCF,CDS & 8-』本体に公式のアップデートを適用後に遊べるようになる、もう1つの『BCF』が、SFCへの移植版『ウィザードリィ6 禁断の魔筆』です。
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「この世には知らねばならないことがある」というオープニングデモから始まる本作。オープニングデモではバックストーリーが詳しく記述されており、一見の価値ありです。
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ゲームの大まかな内容は原作通りですが、SFC版『禁断の魔筆』にはいくつかの追加機能が加わっています。その1つが「顔グラフィックエディター」で、PC版『BCF』ではいくつかのパターンから選ぶしかなかった顔グラフィックですが、本作では自前で顔グラフィックを描くことができます。とりあえずスパくんを参戦させてみました(ドット絵が今一つなのは許せ)。
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スパくんを中心にパーティ編成するとこんな感じになります。
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ゲームを開始するとダンジョンに放り込まれ、出ることができないのはPC版同様です。しかし本作はモンスター・NPCグラフィックに末弥純氏、音楽に羽田健太郎氏というFC版『ウィザードリィ』と同様のスタッフが関わっており、しかも末弥純氏デザインのモンスターがこれでもかと動き回ります。それ以外のグラフィックもSFCの色数を活かした非常にリッチなものになっています。
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戦闘中の命中計算式がPC版と異なるのか、序盤のモンスターにやたら攻撃が当たりにくいのが本作の欠点なのですが、NPCとの交渉にキーワードを覚えておく必要がない、ワンボタンでオートマッピングを呼び出せる……など、SFC版ならではの長所も多いです。
FC版・SFC版の『ウィザードリィ』に慣れているのなら、本作から『BCF』の世界に飛び込むのもアリかもしれません。但し、本作をクリアしてもクリアデータを『CDS』へと引き継ぐことができない点は注意してください。
舞台は広大な惑星ガーディアへ!実は『TES』シリーズの成り立ちに大きな影響を与えた『ウィザードリィCDS』
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舞台を「惑星ガーディア」へと移し、広大なオープンワールド的な冒険が待ち受けるのがウィザードリィ第7作『CDS』です。
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プレイヤーキャラクターたち冒険者は、前作で明らかになった秘宝「コズミック・フォージ」と、それを正しく使うために必要な秘宝「アストラル・ドミナ」を手にすべく、それらを狙う宇宙の帝王「ダーク・サヴァント」、宇宙人「ティーラング」「アンパニ」といったさまざまな勢力がひしめく、宇宙の秘境「惑星ガーディア」へと宇宙船で降り立ちます。
『CDS』では『BCF』からの引き継ぎデータを用いた場合、『BCF』で到達したエンディングで開始状況が異なります(プレイヤーたちが宇宙に行った理由や、誰から冒険の目的を聞き依頼されたか、ゲームの開始位置など)。ただしいずれの場合も後述の、問答無用のテレポートで船外へと放り出される展開は変わりません。
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冒険者たちは惑星ガーディアに到着するやいなや、いきなりテレポートで惑星に降ろされたため持っていたアイテムはほぼ失われ、最低限の装備しか持っていません。レベルも1に戻っていますが、これは長く、狭い宇宙船の生活の中でレベルが失われたか、惑星ガーディアの生物が群を抜いて強いかのいずれかなのでしょう。
ゲームシステム的には本作は前作と大きな違いはありませんが、探索すべき領域が1つのダンジョンだけではなく、複数のダンジョンを含む惑星全体となったことでゲームのボリュームが大幅に増加しています。
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森を歩いていると突然エアバイクに乗った女性が登場するという、『BCF』冒頭の純粋な中世ファンタジーの空気はプレイヤーキャラクターの故郷とともにもはや“宇宙の彼方”といった具合の雰囲気も本作が異彩を放つ点の1つです。
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今作からの新規スタート等の場合、道なりに進むと現れる、「ラットキン」族の集団。本作の代表的な初見殺しポイントです。
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新規スタートの場合の序盤の進行の正解は道から少し外れたところにある、「スターターダンジョン」。ここでしばらく修業を積んでから、ラットキンの集団へと挑むことになるでしょう。
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「ニュー・シティー」に到達してから、本格的な冒険が始まります。本作では秘宝「アストラル・ドミナ」を狙う勢力が複数いることは前述したとおりですが、それぞれの勢力のNPCが独自のAIを持ってフィールド上を徘徊しています。進行次第ではクリア必須のアイテムをNPCが発見し、奪ってしまうことも……。(その場合はなんとか交渉などで手に入れられないか頑張るか、いわゆる「ころしてでもうばいとる」の2択)
はっきり言ってこのゲームの難易度は非常に高いのですが、難しい分、達成感があるのも確かです。
なお、さまざまなゲームドキュメンタリーを制作している有名YouTubeチャンネルNoClipが制作し、トッド・ハワードなどのBethesda各クリエイターも取材に協力した「ベセスダゲームスタジオの歴史」というドキュメンタリーによると、『The Elder Scrolls』シリーズ第1作『The Elder Scrolls: Arena』は『ウィザードリィ7』を3Dグラフィックで進化させることを目的として開発されたことが語られています(動画の6:08前後)。後の『Oblivion』や『Skyrim』も、もしかしたら『CDS』がなければ無かったのではないか……と思ってしまうところです。
なお、本作もクリアデータを特定のフォルダーにコピーすることで『8』にデータを引き継ぐことができます。完全制覇を目指す人は頑張りましょう。
全ての謎が明らかになる。究極のシリーズ完結編『ウィザードリィ8』
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1992年リリースの『CDS』から9年の沈黙を経てリリースされたウィザードリィの完結編、それが『ウィザードリィ8』です(間に発売中止作品『Stones of Arnhem』とか『ウィザードリィ ネメシス』とかあるんだけど、本稿では触れない)。
『CDS』までは『ウィザードリィ5』からディレクターを務めたデビッド・W・ブラッドレー氏の作風が大きく現れたゲームでしたが、『CDS』開発後に氏はシリーズを降板。代わってディレクターに就いたのが、『ウィザードリィ』の1作目からマニュアル作成などでシリーズに裏方として関わってきたブレンダ・ブレスワイト氏(現ブレンダ・ロメロ、『DOOM』の開発者であるジョン・ロメロ氏の妻)です。
今作では、『CDS』のエンディングからの直接の続き、「コズミック・フォージ」や「アストラル・ドミナ」をめぐる壮大な冒険の最終的な結末が、「アストラル・ドミナ」が示した、謎が眠る地「惑星ドミナス」を舞台に描かれます。
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『ウィザードリィ8』も、『BCF』『CDS』とゲーム開始時の流れはあまり変わりません。機械を操る新職業「ガジェッティアー」が追加された、また基礎能力値が1~100の範囲になり、ボーナスポイントの重要性が相対的に薄れた程度で、6人パーティを組んで新たな惑星の冒険に出発……という流れは同じです。
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なお、日本語版『ウィザードリィ8』限定の「忍者」ポートレートもキャラクターメイキングで使用可能です。
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本作でも前作のエンディング種類で開始時の導入が異なるのですが、どの場合でも乗っていた宇宙船が撃墜され、惑星ドミナスに不時着こそできるものの、所持品もほとんどなくレベルも1から始まります。またか。ただし今回は開始位置自体は同一なので安心。
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本作の最大の特徴は「グリッドベースの疑似3Dの平面ダンジョンではなくなったこと」です。マップ構造は完全に3Dとなり、FPSに近い操作でフィールドを自由に歩くことができます。またパーティメンバーも設定した個性に応じてさまざまな場面で(英語ボイスで)話すようになり、賑やかになりました。
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ターン制の戦闘であることは変わりませんが、敵もランダムエンカウントではなくフィールド上に直接出現するようになり、視認できていればある程度距離のある状態から先制で戦闘に持ち込めます。そのあたりは近年で言えば『バルダーズ・ゲート3』のような感じです。(敵はリスポーンするし、TRPG的な想像力を使った戦術は使えませんが)
遠距離では弓矢やスリングといった遠距離武器や魔法攻撃、近距離では剣・斧といった近接武器の使い分けが重要で、四方向+中央に自由に配置できる陣形と併せて戦術性が今までのシリーズに比べてグンと増しました。
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3Dであることを活かして、怪しい場所を進んでいくとお宝が手に入ることもあります。もちろん宝の前に強敵が配置されていることもあるので、力の差を見極めるのも重要です。
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宇宙船が不時着した浜辺を抜けると小規模なダンジョンへ。ここではスライムやコウモリが出迎えてくれます。
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マップは3Dならではの立体構造も含めて複雑ですが、本作のオートマッピング機能は優秀です。ある意味マッピングに関しては一番遊びやすい『ウィザードリィ』かもしれません。
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小規模なダンジョンを抜けると、本作のメインの街となる「アルニカ」へと続く過酷な道「アルニカロード」が待ち受けています。本当の冒険は、ここから始まります。
本作はダンジョン構造の変更で、狭義での3DダンジョンRPGではなくなりましたが、未探索空間を埋めていく一歩一歩の重さは今までの『ウィザードリィ』シリーズと変わらないものがあり、またキャラクターも多彩な成長をするので、これを見守るのも楽しいものです。
ゲームシステムは『BCF』『CDS』を経て順調に進化しており(特に『8』の戦闘システムは近年まで類似作品をあまり見ない特殊なものでした)、パーティも無数の組み合わせで楽しめる、まさに本家シリーズを締めくくるにふさわしい究極のウィザードリィといえるでしょう。
なお、本作に今までの作品のクリアデータを持ち込めることは先述した通りですが、『BCF』→『CDS』→『8』のすべての作品間で特定のアイテムを持ったデータを引き継いだ時のみ見ることができるミニイベントも存在します。非常に長い冒険の旅になりますが、チャレンジする甲斐は充分にあります。
余談ですが、本作には(普通にプレイしていたら絶対に気付かない)隠しダンジョンが点在します。それらのダンジョンはウィザードリィの初期作のワイヤーフレームを意識した構成になっているのですが、本来は「隠しダンジョンで初代『ウィザードリィ』を再現するつもりだった」「当時は初代の権利関係が揉めていたのとゲーム自体の工数の問題で、隠しダンジョンは独自の構造となった」そうです。
隠しダンジョンの最深部にいるボス「Nebdar」(ディレクターの”Brenda”のアナグラム)を倒すとゲーム中最強のアミュレットをドロップするのはその名残なのだとか。
ここまで『Wizardry Legacy -BCF,CDS & 8-』と各作品の魅力について語ってみましたが、いかがだったでしょうか。はっきり言ってお安い買い物ではないし、20~30年前の作品群なので「古い」ゲームであるというのは正直否めません。しかしながら、こういう『ウィザードリィ』の世界が確かに存在したのだ、という事が伝われば、筆者としてはこれに勝る喜びはありません。
『Wizardry Legacy -BCF,CDS & 8-』は、AC-MALLにて販売中です。