2024年9月3日にリリースされた『Star Trucker』は、宇宙を駆けるトラックに乗って銀河のさまざまな場所に荷物を配達するシミュレーションゲームです。一見では宇宙版『Euro Truck Simulator』とも思える本作ですが、実際に遊んでみると、さまざまな点で差別化がされており、宇宙を舞台にしたタイトルならではの体験を提供しているゲームになっていました。本記事で、そんな本作のプレイレポートをお届けします。
究極の宇宙トラック運転手ロールプレイ
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「カウボーイビバップ」を観たことがある方なら、宇宙のトラック運転手と聞いて「ヘヴィ・メタル・クイーン」のエピソードを思い出す人も多いでしょう。『Star Trucker』は、まさしくあのエピソードに登場したトラック運転手たちのようなロールプレイが楽しめるゲームになっています。
本作でプレイヤーが運転することになるロケーションは、地球の軌道上に浮かぶ宇宙ステーションから、工場とパイプがひしめく工業地帯、見渡す限りデブリが浮いた宇宙の墓場のような場所までさまざま。全体的にレトロフューチャーな意匠の建物や音楽で世界観が構成されており、トラック型の宇宙船はまさかのガソリン(満3,000リットル)駆動です。
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本作のチュートリアルは、故障したトラックを修理するところからスタート。宇宙服を着て船外にでて、穴の空いた箇所を修理することになります。ゲームが進むと、この「トラックの外に出られる」という要素がさらに活用される場面も出てきます。デブリの中から使えるアイテムを拾って回収したり、宇宙ステーションの壁に描かれた落書きを消すといった場面もありました。
荷物を決められた場所で降ろせば配達完了。報酬が即座に振り込まれます。そして、またジョブステーションへと赴き新たな仕事を受注し、荷物を拾ってまた届けるというのが本作の基本的なサイクルになっています。
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施設にアクセスするにも、荷物を拾うにも、トラックの背面と磁気でドッキングさせる必要があります。これは、トラックに搭載されたドッキングカメラを利用しながら、慎重にバックして行う形式。十分に距離を近づけたら「マグロック」を行って固定します。
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配達を進めていると、突然運転席に大量の荷物が飛んできました。何事かと思いましたが、どうやらトラック内が無重力状態になってしまっている様子。これはトラックに装備されている重力制御装置のバッテリー切れによって引き起こされているようです。
重力制御装置のバッテリーを交換すると、浮いていた荷物がボトッと地面に落ちます。散らばった荷物をしっかり整理するか、それともトラック内が多少散らばっていても構わないと配達を続行するかもプレイヤー次第。筆者は気になってすべて棚に戻すことにしました。いかにも「宇宙船で生活している感」のある作業です。
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重力制御装置にバッテリーがあるように、トラック内にはさまざまな設備があり、それぞれバッテリーと回路(UCC)で駆動しています。特に、回路は衝撃に非常に弱い部品です。デブリとの衝突や無重力化によってダメージを受けないよう、予備の回路はハードケースに入れて保管しておいたほうが良さそうです。筆者はバッテリーなどもここに収納しています。
本作における配達は、これらトラック内の設備のマネジメントと並行して行うことになるため、プレイ中に考えるべきことはかなり多いです。酸素生成器や空調など、生死に関わるような設備もあります。筆者は、予備のバッテリーをしっかりストックしておかなかったせいで、空調のバッテリーが尽きて、高温の車内で気絶することに。配達の放棄による多額の違約金と、医療費を払わされることになりました。宇宙トラック運転手の世界はなかなかにシビアです。
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トラックのマネジメントに必要な情報はほぼすべて運転席のインターフェースで確認することができます。運転中にかかってくる無線への応答や、ラジオのオンオフ、ワープゲートの作動、施設や荷物とのドッキングなども、すべて運転席のレバーやらボタンやらで制御する形。荷物の整理や、車外に出ての修理なども含めて、あくまで“等身大のトラック運転手としてのロールプレイを楽しませたい”という意図が伝わるデザインになっています。
『Euro Truck Simulator』との違いは?
『Star Trucker』における配達は、基本的にワープゲートで各ロケーションを経由しながら行う形になっています。そのため、『Euro Truck Simulator』と違って、長距離をドライブするようなチルな時間は少ない印象。常にトラック内の設備に気を配らないといけないという部分も含めて、体験としてはだいぶ異なっています。
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本作は宇宙空間を飛ぶトラックに乗るゲームなので、左右だけでなく上下にも移動することができます。自由な方向に飛べますが、道路があったらなるべくそこを通りたくなります。なぜかといえば、道路が敷かれている場所には「デブリ」がないからです。
このゲームの航行における最大の敵はデブリです。デブリに衝突すれば船体はダメージを受け、時に穴が開き、宇宙服で外に出て修理する必要があります。船体のダメージの修理費は高く、修理ステーションが近くにないロケーションもあるので、なるべくダメージを抑えたいところです。「デブリは多いが直線で辿り着けるルート」を取るか、「遠回りになるけど安全な道路」を通るかといったリスクリターンの判断を迫られることもあります。
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また、『Euro Truck Simulator』との明確な差として、キャラクターたちの存在があります。このゲームは、他のトラック運転手仲間が無線で話しかけてくる展開が多く、主人公は「Lucky Jay」という愛称で呼ばれるようになります。彼らにはそれぞれクエストラインが用意されている様子で、時には配達以外の頼み事も発生します。そのため本作は、シミュレーターというよりはアドベンチャーゲームな側面を多く有している印象です。
まだ日本語に対応していない本作ですが、無線で彼らに返事をする時にも時間制限があるので、ある程度の英語力が求められそうです。有志の方々による日本語翻訳MODも存在しているので、気になる方はそちらもチェックしてみてください。まだ作業中とのことですが、看板やトラック内のUIまで訳されているなど気合の入ったものになっています。
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宇宙を駆けるトラック運転手ならではな体験が詰まった『Star Trucker』は現在PC(Steam, Microsoft Store)/Xbox Series X|S向けに配信中。Xbox Game Passにも対応しています。