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最近のインディーゲームは初代のプレイステーションやセガサターンみたいな、低解像度のテクスチャーにローポリゴンを使ったタイトルが数多く登場しています。
そこで最初の『バイオハザード』みたいな、あの時代のハードの低フレームレートや処理能力の限界を生かしたホラーゲームを作るクリエイターもすごく多いんですけど、僕としては不満もあるんですよね。
なんで初代PS的なグラフィックのまま、ハイフレームレートのアクションをやろうとするところが少ないのかと。もう、レトロの再現って死ぬほどみんなやってるから「もういいよ」って思いませんか? いまの技術を、過去の時代に持っていったらどうなるのか?」ってクリエイティブを持つ人は出てこないのか?
そんな思いを抱えて幾星霜……僕が考えていたようなことをそのまま実現するようなゲームが東京ゲームショウ2024に出展されていました。それが『NIGHTMARE OPERATOR』です。
本作は初代PS的なグラフィックの中で、『Dead Space』シリーズや『デビル メイ クライ』シリーズのようなアクションを見せつける、ありそうでなかった一作。過去を再現するのではなく、過去を再解釈しようとするゲームデザインや演出が張り詰められたインディーゲームならではのTPSとなっています。
見た目は初代PS的なのに、ゲームプレイは現代のゲームデザイン
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『NIGHTMARE OPERATOR』は、荒廃した東京で妖怪と戦うTPSとして、プレイヤーは妖怪狩り担当の公安オペレーター・ミーシャとなり、銃剣の入ったアサルトライフルを手に持ち、朽ちた都市で激闘を繰り広げていきます。
地下鉄の構内や、地上の崩壊した街にて幽霊や妖怪が数多く蠢いており、プレイヤーはこれらを始末しながらミッションを達成するのが目的。主にTPSらしい銃撃戦が魅力なんですが、簡単に試遊するだけでも新鮮なのはローポリゴン風なのに常時60fpsで描画されていることです。滑らかな描画もあり、近接攻撃のコンボも鮮やかな手ごたえがあるのです。
また、敵を撃破したときのグリッチノイズ的な演出で消滅する見せ方なども、センスがあると思いますね。これらにより、見た目はレトロなのに、どこか最先端な印象を与えるのに成功しています。
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本作はリロード方法も独特。まるで格ゲーの波動拳コマンドみたいに左スティックを入力することで弾を装填させることができます。リロード用のコマンドは複数用意されており、それぞれのコマンドでどんな効果があるのかは今回の試遊では分かりませんでしたが、本編ではそれらを戦略的に使い分けるのも期待できそうです。
また、スキルゲージを消費しての高速移動や回復なども見逃せなかったです。ここではスキルを使用すると、主人公の背中に漢字が浮かび上がり発光するという演出がカッコよく、こうした演出の積み重ねが本作を本作たらしめています。
舞台がまさかの下北沢。おそらくビデオゲームで3DCGで詳細に描かれのは初めて。
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ちなみに崩壊した東京にて、ミーシャが主に激戦を繰り広げる戦場はなんと下北沢。まさかのライブハウスや演劇で賑わうサブカルチャーの街がビデオゲームに採用されています。
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下北沢がビデオゲームの舞台に選ばれたのはおそらく本作が初めてではないでしょうか?
開発のDDDistortionにお話を伺うと、ゲームの舞台で渋谷や新宿が選ばれるのはもう当たり前なのもあった……とのことですが、一番はシンプルに開発チームの本拠地が下北沢にあるからだそう。なので、街のディテールを作るための資料もすぐ近くにあるため、かなり細かく作りこめたとのことです。
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『NIGHTMARE OPERATOR』はこのように、ゲームデザインからアートワーク、ゲームの舞台に至るまで「ゲーマーの見たことがあるものばかりに見えて、実はまったく見てきていなかったもの」ばかりで構成された洒脱なTPSです。こうした過去と現代の文脈を繋ぐゲームデザインのセンスは、非常に期待できるものでしょう。