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“圧倒的に好評”のサイコスリラー『Mouthwashing』をプレイ。狂気に蝕まれていく極限の世界、巧みなストーリー構成など、近年稀にみる傑作短編ホラー

難破した宇宙船に取り残された5人の運命は……

連載・特集 プレイレポート
サイコスリラー『Mouthwashing』をプレイ。狂気に蝕まれていく極限の世界、巧みなストーリー構成など、近年稀にみる傑作短編ホラー
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今年も10月に入って涼しくなった……と思いきや、突然暑くなったり湿度が高まったりと不安定な日が続きます。そんなときこそ、気だるいカラダに喝を入れる「ホラーゲーム」にまだまだどっぷりと浸れるチャンスです。

そんなわけで今回は、スウェーデンのインディーデベロッパーWrong Organが手掛ける『Mouthwashing』のプレイレポートをお届けいたします。なお、本記事はネタバレ要素を含んでいますので、閲覧には十分注意してください。

発売後たちまち「圧倒的好評」に

本作は、一人称視点の物語主導型ホラーアドベンチャー。プレイヤーは、難破した宇宙貨物船「タルパ号」の一員として、瀕死の危機にさらされ狂気の渦へと突き進むクルー5人の行く末を追体験していきます。

2024年9月27日にリリースされた本作ですが、執筆時点でSteamレビュー数は早くも1,070件を超え、ステータスは「圧倒的に好評」を獲得。

不気味さを増す独特のローポリグラフィック、個性の際立ったキャラクターたち、閉鎖空間が与える精神的恐怖、そして巧みで容赦のない物語展開など、ユーザーの90%以上が高評価している注目作です。

加えて、さらに作品を特徴付けるのは「個性的キャラの独特なセリフ回し」です。本作は物語性が強く、登場人物同士の会話が色濃く反映された群像劇に近い構成になっています。

チャラそうな日本人クルーダイスケの「地元の少年野球チームじゃ一番のスイングの持ち主だったんです!」とか、毒舌で皮肉屋の中年男性スウォンジーの「ただのオッサンだよ デンタルケアを気にしてる」など、プレイヤーの心に爪痕を残すような、強烈なパンチラインが次々と出てくるところも魅力的でした。


日本語ローカライズ対応

本作は、日本語字幕・インターフェイスに対応しています。独特の倒置法とウィットに富んだセリフの日本語表現は高い没入感に貢献していて、完璧なローカライズだと感じます。

操作方法はキーボード及びコントローラーが使用可能。他にはBGM音量や画質、操作感度など、ゲーム設定はシンプルなものでした。

“永遠の黄昏”に取り残された5人の運命は…

物語は、宇宙空間を漂うポニー運送の長距離貨物船「タルパ号」が、予期せぬ危機に見舞われる場面から始まります。

どうやらタルパ号は軌道上の天体に衝突する見込みのようで、この緊急事態を回避するため急いで進路変更しなければなりません。

コクピットを見て回り、なんとか緊急用キーを発見。基本的な探索パートは、ストーリーの状況によってクエスト目標が与えられキーアイテムを探していくという、ホラーゲームとしてはオーソドックスな設計でした

しかし、注意深く周囲にあるポスターや登場人物の会話等からヒントを観察しなければ、暗証番号などの答えを引き出せない程度には手応えがありました。

キーを使用して自動操縦モードを解除してもダメらしく、「衝突間近」の文字と警告音が鳴り出します。このままではヤバいので、一旦コクピットを離れて船内へ移動します。

壁にはポスターなどが張り出されていて、廊下は薄暗く気味の悪い感じ。そのまま歩いて行くと、ある異変に気づきます。

というのも、道なりに歩けども同じ場所をループするばかり。それに、さっきまで入れた扉が開かない。そして戻ろうとすると……

振り返った瞬間、マスコットキャラが突然眼の前に出現。しかも錆びた配管が絡まったように行く手を阻んでいます。不条理な展開にかなりの恐怖を感じますが、とにかく今は逃げなければ……!

だんだんと異様な雰囲気が加速し、まるで悪夢でも見ているかのような姿になった船内。これは衝突によるものなのか、あるいは操作キャラの不安定な精神状態を反映した幻覚なのか。そして最後は、奇怪に変形したマスコットに追いつかれ力尽きてしまうことに……。

ゲームオーバーかと思いきや、一転場面は天体衝突事故から2ヶ月後の船内へと遷ります。ここはスクリーンに偽物の夕日が投影された「永遠の黄昏」とも言える、孤立した宇宙の閉鎖空間。クルーは全員無事に生還できるのでしょうか。

狂気に蝕ばまれる過程を描く、秀逸なストーリー展開

こうして生き残ったのは、現船長の「ジミー」、メカニック担当の中年男性「スウォンジー」、元看護師の「アーニャ」、チャラ男風新人クルー「ダイスケ」、そして元船長「カーリー」の5人。

本作が秀逸なのは、直線的な時系列ではなく交互に物語が進んでいくオムニバス形式を採用していること。それによって、衝突事故前のまだ平穏だった頃と、事故後に地獄の閉鎖空間へと変わり、登場人物らが少しずつ狂気に蝕まれていく過程を見事に表現しています。

差し迫った危機に対処するため、自分たちポニー運送が運んでいる物資を確かめることにした一行。倉庫は厳重にロックされているので、コードスキャナーを入手して解除しなければなりません。

事故後の船内は、至るところに気泡が溢れ出ていて通れない場所も多くあり、閉鎖空間の息苦しさが伝わってきます。コクピットへ行く前に、とりあえず辺りを探索してみましょう。

1階にはスウォンジーの作業室があります。彼の言動はとにかく毒舌で皮肉っぽく、一見気難しい印象ですが、実は凄腕のベテランエンジニアでもあります。

そして、「オツムに大ケガして生まれてきたのかクソガキ!」や「これぞ 酔生夢死ってな!」など、名言の宝庫といえるほど数多くのインパクトあるセリフを吐き出す人物です。

唯一の日本人クルーである「ダイスケ」は、茶髪にロン毛のチャラそうな男で、言動も若さゆえの軽薄でアホっぽい印象。しかし、先輩のスウォンジーに師事する新人エンジニアとして、素直さと情熱を持った人物でもあります。

アーニャは元看護師という経歴の持ち主で、紅一点の女性クルーです。ただ、元看護師にしては言動は頼りなく、常に不安そうな表情を浮かべています。

欠損した四肢、火傷で爛れた全身の皮膚、血まみれの包帯、むき出しの眼球……事故により無惨な姿となってしまったのは、元船長の「カーリー」です。

彼は、定期的に鎮痛剤を投与しなければ、とても苦しんでしまう瀕死の状態。医務室にはうめき声が響いています。

この作品の悪趣味なところは、プレイヤーを半ば強制的にストーリーイベントに関与させること。例えば、瀕死のカーリーに鎮痛剤を与えるシーンでは、アイテムを選んだら自動で終了、ということにはならず、カーリーの口を開いて薬を与える動作までプレイヤー自身で操作する必要があります。

確かにカーリーの苦しさや痛みが伝わってくるようで、物語への没入感は高まりますが、プレイヤーとしてかなり辛い作業でした。

コクピットでスキャナーを発見し、コードを読み取りました。さて、長距離貨物に積み込んだ物資はいったい何なのでしょうか……?

ここでザッピングして、時系列が遡ります。アーニャから適正資格のための心理テストを受けたり、ダイスケが通気口を壊したり、旧知の仲であるカーリーとジミーの確執が深まったり……衝突前の船内の雰囲気や人間関係、そして物語の重要なキーとなる出来事が徐々に明かされていきます。

場面が切り替わる時は、決まって幻覚じみた奇妙な世界を体験することになります。しかし、この演出が精神的恐怖を生み出す良いフックになっていると感じました。

一行が倉庫で発見したのは、なんとただの「マウスウォッシュ」。殺菌効果のあるデンタルケア用の薬品です。期待していた物資の正体に、5人は落胆します。

途方にくれるジミーは、現船長である自分の責任が重くのしかかり、さらに精神の均衡を失っていきます。哀れな姿のカーリーの幻想が現れたり、彼を「ごちそう」と称して斧で殺そうとしたり……船内の世界は明らかに崩壊して来ています。

狂いだしているのはジミーだけではありません。「審判」が近づくにつれ、他のクルーたちにもさまざまな異変が訪れます。アーニャが医務室に閉じ込められ、それを助けにダイスケが向かったところ……通気口で大怪我を負ってしまいます。

大した医薬品もない船内で、苦しむダイスケを見兼ねたスウォンジーが、斧で彼を殺害していまいます。

さらに医務室に様子を覗きに行くと、無惨な死体となったアーニャが……おそらく自殺してしまったのでしょうか。もう、狂気の連鎖を止めることは不可能なようです。

ジミーとカーリー以外全滅してしまった「永遠の黄昏」で、果たしてジミーが取った行動は……そして現実と幻想が曖昧な世界の結末はどうなるのか。それは、ぜひプレイヤー自身で確かめて見てください。


本作の良かった点は、クリア時間までおよそ2~3時間程度で品質の高い短編ホラーを体験できるところ。ザッピングによるオムニバス的なストーリー展開は秀逸で、狂気に至る過程を見事に描いていました。個性的なキャラクター造形もピカイチで、没入感の高い物語に仕上がっており、万人受けではないがコアなホラーファンには絶対的にオススメの傑作ホラーゲームです。

全体のジャンプスケアは控えめで、ジワジワと精神を追い詰めてくる心理的なホラー要素に重きを置いています。ただし、何度か発生する一発死のチェイスイベントは、実際のところは冗長でテンポが悪くなっているのは気になる点でした。

ちなみに、あくまで筆者個人の考えですが、本作にはさまざまなホラー作品のオマージュがあるように思います。例えば、冒頭のループする廊下や非常灯の赤い光などは『P.T.』からの影響を受けているのかもしれません。

また、天体衝突の前後で様変わりする世界の対比や、ジミーの精神状態を反映する奇怪な幻覚、バルブや換気扇といったオブジェクトは『SILENT HILL 2』からの影響も伺えました。

  • タイトル:『Mouthwashing』

  • 対応機種:Windows PC(Steam)

  • 記事におけるプレイ機種:Windows PC(Steam)

  • 発売日:2024年9月27日

  • 著者プレイ時間:4時間

  • 価格:1,500円
    ※製品情報は記事執筆時点のもの

スパ君のひとこと



狂気のストーリーと精神的恐怖が味わえる短編ホラー!ラストの結末は思わず泣きそうになったスパ……




《DOOMKID》

心霊系雑食ゲーマー DOOMKID

1986年1月、広島県生まれ。「怖いもの」の原体験は小学生の時に見ていた「あなたの知らない世界」や当時盛んに放映されていた心霊系番組。小学生時に「バイオハザード」「Dの食卓」、中学生時に「サイレントヒル」でホラーゲームの洗礼を受け、以後このジャンルの虜となる。京都の某大学に入学後、坂口安吾や中島らもにどっぷり影響を受け、無頼派作家を志し退廃的生活(ゲーム三昧)を送る。その後紆余曲折を経て地元にて就職し、積みゲーを崩したり映像制作、ビートメイクなど様々な活動を展開中。HIPHOPとローポリをこよなく愛する。

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