11月4日、石川県羽咋(はくい)市にある商業施設「LAKUNAはくい」にてゲームイベント「Challenge Day 2024」が行われました。
このイベントは「HAKUI esports City Project」のキックオフイベントであり、「鉄拳」シリーズのプロゲーマーであるdouble選手も参加していました。
いま、石川県羽咋市がeスポーツイベントを行う真意とは? 同日に行われた記者発表会も含めて、その模様を詳しくお届けします。
羽咋市が取り組むeスポーツ事業とは?——市外からも利用者が来る商業施設の狙い
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まずはイベント中に開かれた記者発表会の内容について。羽咋市市長の岸博一氏、羽咋市商工観光課の担当職員、そして本プロジェクトの運営に携わるGLOEの吉永亜耶氏より、羽咋市が今後どのようにeスポーツに取り組んでいくのかについて説明がありました。
羽咋市は能登半島の入り口にある人口19,618人の市で、年間301万人ほどの観光者がいます。最も有名な観光地は、波打ち際まで車で走れる「千里浜なぎさドライブウェイ」ですね。
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さて、そんな羽咋市が打ち立てたのが「HAKUI esports City Project」。ゲームに触れたことがない人から、ゲームが大好きな人まで楽しめるように、本プロジェクト全体で6つの柱を用意しているとのこと。
まず第1弾として、キックオフイベント「Challenge Day 2024」が行われた交流拠点施設「LAKUNAはくい」です。
2024年7月にグランドオープンした4階建ての複合施設であり、カフェスペース、屋内公園、eスポーツスタジオ、イベントホールなどが併設されています。もうすでに10万人以上の来場者が来ているそうです。
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今後も、次世代のプロゲーマーを育成するeスポーツコーチングキャンプ、自治体・教員向けのeスポーツに関するセミナー、小学生向けのプログラミングセミナー、高齢者のフレイル予防を目的とするeスポーツ推進事業と、ゲーム・eスポーツ関連事業を多角的に展開していく予定です。
そして、最後の柱として構想されているのが、来年3月に開催予定の「LAKUNAカップ」。こちらは羽咋市の伝統行事「唐戸山神事相撲」のように、大勢が見に来る格闘ゲームの大会を開きたいと熱く語られました。
eスポーツに全力を傾ける市の熱意が十分に伝わる発表会に続いて、質疑応答が行われました。
――なぜeスポーツに注目したのでしょうか? そのきっかけはなんでしょうか?
商工観光課我々のeスポーツ事業は2022年から行ってきたものですが、大きなきっかけは「LAKUNAはくい」の建設計画にあります。計画段階で「ここをeスポーツ施設にするのはどうだろうか」という話がありまして、eスポーツはまだ北陸に馴染みがありませんでしたが、面白い試みなので採用しました。
すでに1300人以上の来館者がeスポーツスタジオを利用しています。
――本プロジェクトに関して、来場者数などの具体的な目標値は設定されていますか?
商工観光課イベント単位で考えているので、まだ何とも言えないところではあります。
岸計画段階でこの「LAKUNAはくい」の利用料金をどこまで有料にするかという話がありました。たとえば、市内に住まわれている方は無料で、市外からいらした方は有料ですとか、そういったお話です。
しかし、やはり多くの市外の方に来てほしいという思いがあり、それは採用せず、すべての方が無料で利用できるようにしました。その結果、本日もたくさんの方々に足を運んでもらっています。
施設ができてから駅前や市役所にも人が来るようになり、羽咋市全体に元気が出てきました。昨年は初めて市内への転入者が転出者を上回ったので、この調子で頑張っていきたいと考えています。
吉永今回のイベントでもアンケートを取っていますが、市外から来ている人が多いことがわかりました。SNSの告知を見ていらっしゃった方々も多いようです。
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――「LAKUNAはくい」の建設に至るまでの過程と、現在の利用状況について、岸市長にご意見を伺いたいです。
岸この「LAKUNAはくい」は元々商業施設の跡地だったんですが、活用については4年前から話がありました。一番大きい話は若いお母さん方からのご意見です。交流の場が欲しい、天候に左右されない運動場が欲しい、といったものでした。
そのため、多世代が集まるサードプレイスとして計画した形です。結果、多くの利用者に満足してもらえている施設になったと感じています。
――本プロジェクトにおいて、公共交通機関などのインフラと協力する体制は考えていますか?
岸考えています。羽咋市にも少子高齢化の問題があり、どうしたら人口が流入するのかについて真剣に検討しています。たとえば、私が市長になってから駅前周辺や千里浜ICなどを整備しました。駅前はこの「LAKUNAはくい」で、千里浜のほうは道の駅や千里浜ヒルズを建てたといった具合です。
また、この施設の脇を通る長者川の整備もして、地震・津波対策も行ってきました。その点については、「LAKUNAはくい」が建設されるなら、と石川県も助けてくれました。
施設ができることで周りが改修していくという意味で、この「LAKUNAはくい」の役割は大きいと考えています。今は商店街も寂れてしまっていますが、そういった商業空間に刺激が与えられればと思っています。
Challenge Day 2024——プロゲーマーdouble選手と交流する子どもたち
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「Challenge Day 2024」の模様についてもお届けします。
こちらは「LAKUNAはくい」の4階イベントホールで行われたゲームイベントです。遊ばれていたタイトルは『スイカゲーム』『Minecraft』『太鼓の達人 ドンダフルフェスティバル』『鉄拳8』の4つ。
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会場は、とにかくちびっ子でごった返していました。親子揃って『鉄拳8』で対戦したり『太鼓の達人』で遊んだりと、どの子も楽しくてしょうがないという様子。
また、それぞれのコーナーではサポートスタッフが常駐してゲームのルールを教えたり、子どもたちに危険がないかをよくチェックしていました。これなら保護者も安心して遊ばせられます。
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とりわけ人気だったのが、プロeスポーツチーム「ZETA DIVISION」所属で、先日サウジアラビアで開催された「Esports World Cup」の『鉄拳8』部門で3位入賞を果たしたdouble選手。年上のお兄さんがゲームを手とり足とり教えてくれるということで、喋っているあいだも子どもたちに腕を引っ張られるほど、ちびっ子たちに大人気でした。
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最後に、そんなdouble選手のミニインタビューの様子をお届けします。
――まずは「Esports World Cup」での3位入賞おめでとうございます。大会を振り返っていかがでしたか。
doubleありがとうございます。日本を背負う気持ちで戦いました。『鉄拳8』というタイトルで結果を残せたのがなにより嬉しくて、これを機にゲーム自体もどんどん注目されてほしいと思ってます。
また、僕は今ZETA DIVISIONに所属させていただいている立場なので、恩返しができたのも嬉しいですね。本当に安心しました。
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――石川県出身のdouble選手が活躍したことで、地元の方々からの注目もあるかと思います。ご自身にも応援や反響の声は届いていますか。
double僕はこの「鉄拳」というシリーズを学生の頃からやってたので、 その頃にお世話になった人からもメッセージを貰いました。ファンの方からも「おめでとう」と言ってもらえましたし、中学・高校の友達からも連絡が来ましたね。
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――本イベントのような一般の参加者の方々との対戦はいかがですか?
double僕は家で黙々とゲームしてばかりなので、こうやって皆で交流会ができるのは楽しいですね。小さい子がいっぱい来てくれて、自然と笑顔がこぼれちゃいます!
普段家でゲームをしているだけでは笑うことも少ないので新鮮な気持ちです!僕自身、これからも活動を頑張ろうと思えました。
――地方自治体がeスポーツで地域を盛り上げる取組みが増えていますが、プロeスポーツプレイヤーとしてどのようなことを期待しますか。
doubleおそらくゲームの大会だけで生活が成り立ってる石川県民って僕しかいないのではないかと思うのですが、それってプロゲーマーを目指すことに夢があると証明しているとも言えるんじゃないかと思ってます。「鉄拳」に限らず、ゲーム業界に新たなスターが生まれたら嬉しいですね。
――ありがとうございました!
LAKUNAはくいの建設から始まり、LAKUNAカップの開催へと至る羽咋市の壮大なeスポーツプロジェクトは、今回のChallenge Day 2024を見る限り、かなり現実的な構想ではないかと思われます。ちびっ子からお年寄りまで楽しめるイベントと空間を作り上げていこうとする羽咋市と、それに答える企業やプロゲーミングチームの全力が垣間見えるような、素敵なイベントでした。