
いま再び、現代で大きな盛り上がりを見せているシューティングゲームシーン。歴史を彩る名作タイトルの復刻からインディー発の気鋭の新作まで、日々たくさんの作品が世に出ていますが、そんな中“シリーズの復活”で切り込もうとするタイトルが存在します。
それは、『ソニックウィングス』。かつてビデオシステムが展開していた縦スクロールシューティングゲームですが、なんと完全新作として現代に蘇るのです。
『ソニックウィングス リユニオン』公式サイト(サクセス)本記事では、サクセスが贈る新作『ソニックウィングス リユニオン』が発表されたイベントのレポートと、本作に深く関わる4名のキーパーソンへのインタビューをお届け。発表されたばかりの本作をディープに掘り下げているので、期待に胸を膨らませながらぜひご覧ください。
『ソニックウィングス リユニオン』とは?ファン歓喜の新作発表イベントをレポート!

本作は、『ソニックウィングス』シリーズの26年ぶりの完全新作となるシューティングゲームです。縦スクロールであること、個性豊かなキャラクターが戦闘機に搭乗することなどといったシリーズの特徴を守りつつ、新たな作品として開発されています。
物語は復活した謎の組織「ファタ・モルガナ」が世界各国の都市を超兵器で掌握したことから始まり、プレイヤーは国際秘密救助隊「プロジェクトブルー」のメンバーを操作して強大な敵に立ち向かいます。
本作は東京・新宿のタイトーステーション 新宿東口店に併設されている「EXBAR TOKYO plus」でお披露目。突然予告された新作の存在に、メディア関係者や熱烈なファンが期待を膨らませながら来場していました。

イベントが始まる前、『ソニックウィングス』シリーズの楽曲を手掛けてきた細井そうしさんと、バイオリニストのMariNaさんが『ソニックウィングス・スペシャル(リミテッド)』の「京都ステージ」を演奏。耳に残るメロディーが特徴の楽曲で、場の空気が温められました。

演奏が終わると、改めてサウンドディレクターの細井そうしさん、プロデューサーの長友慎也さん、テーマソング歌唱のSUZUKAさんが登壇。「ゲーセンミカド」社長である池田稔さんのMCでスタートしました。


イベントでは早速、新作を発表。現在『ソニックウィングス』の版権を持つ「ハムスター」や本作を開発するサクセスのロゴが現れた後、8機の戦闘機が飛行機雲を作りながら青空を飛翔。そして、『ソニックウィングス リユニオン』のタイトルロゴがお披露目されました。


間髪入れずに、PVの中で8人の参戦キャラクターと登場機体がお披露目。男性キャラも女性キャラもバランスよく選出されています。

そして、スタッフの紹介へ。キャラデザに六鹿文彦さん、デザイン協力に横山浩子さん、アドバイザーに中村晋介さん、サウンドディレクターに細井そうしさんと、過去作に携わったメンバーが今作にも関わっていることが明かされました。
ジャンルはもちろん縦スクロールシューティング。『2』や『3』のような横長画面ではなく、初代や『リミテッド』のような縦画面で、画面両サイドの空白は情報などで埋められるようです。家庭用版は2人同時プレイが可能。ステージは全8ステージで、ボリューム感は初代とほぼ同じです。プラットフォームはPC(Steam)/PS5/ニンテンドースイッチ。ダウンロード専用のPS4版も販売予定としています。また、ニンテンドースイッチ後継機用にチューニングしたエディションも検討しているそうです。
さらに、『ソニックウィングス リユニオン』限定版の販売も明らかになりました。特典として収録されるアイテムは真尾まおのアクリルスタンド、真尾まお(ボーカル: SUZUKA)が歌うテーマソング「REUNION」の8cmシングルCD、プロジェクトブルー真尾まお 1日司令官記念ワッペンと、真尾まおづくし。ワッペンはミリタリージャケットにつけるような刺繍のパッチになっているそうです。

■『ソニックウィングス リユニオン』登場キャラクター&搭乗機体
キートン:PBF22
グリンダ:PBA10A
緋炎:PBF2SKAI
真尾まお:PBF15J
コウフル:PBSAA39
ホワイト卿:PBF35
ホワイティ:PBX29A
チャイカ&プーシカ:PBIL102


この完全新規作品にどのキャラを登場させるかは、長友さんと六鹿さんが話し合って決めたそう。最初は人気のキャラを集めたものの、女性ばかりになり、「それじゃ『ソニックウィングス』じゃないよね」と考え直してバランスよく決めたようです。
原点に回帰しつつ、初期の衣装をベースに、SUZUKAさんが“真尾まお”としてリリースした2枚のシングルCDジャケットの衣装デザインも取り入れられた真尾まおや、メカ要素を残しながら人間らしさを取り戻したキートンなど、ビジュアル面の詳細についても語られました。ホワイト卿は「『ソニックウィングス』と言えば“おじいさん”」という理由で選ばれたことや、チャイカ&プーシカはクセのあるボムのシステムを大きく再設計しているなどのエピソードも披露されました。

概要が語られた後は、スペシャルトークに突入! 最初は誰もが気になる「なぜ今『ソニックウィングス』をリリースするの?」という疑問について。細井さんは、「特に理由はないんです」と語ります。
細井さん主宰のゲーム音楽ライブ「ゲースキ!」にて、SUZUKAさんに気合を入れてコスプレ&歌唱をしてもらったところ、その様子をレポートしていたゲームメディアの記事がバズり、『ソニックウィングス』の人気を再認識したところからCDの制作を決意。その時はまだゲームの新作については考えていなかったそうです。
しかし、徐々にシューティングゲーム界隈が盛り上がってきたことから、池田さんの協力で長友さんに繋げてもらい、『リユニオン』の企画が実現したそう。細井さんは「そもそも『ソニックウィングス』とは何か?」を説明するところから準備していたそうですが、長友さんはすでにタイトルについて把握されていて、即決で開発に踏み切ることにしたといいます。
最初期は「主人公は真尾まおだけで、ボリューム的にも小粒で低価格な作品」として制作する可能性もあったものの、シリーズを深く理解していた長友さんは“『ソニックウィングス』は登場キャラが多くないといけない”と考えていたそうです。

そうしてわずか3日で資料を作り、ハムスターに交渉しに行ったところ、社長の濱田倫さんがふたつ返事で快諾。ハムスターは過去作を復活させる『アーケードアーカイブス』を精力的に発売しているため、保有しているIPを大切にしながら新作を作ってくれる人がいたら、喜んで許諾すると言っていたそうです。
そしてシリーズファンにとってはありがたい“オリジナルスタッフが関わっていること”についても言及。本作は「何かと豪華にするのではなく、あくまで当時のプレイフィールを大事にすること」を目標としていて、それを実現するためにはオリジナルスタッフの協力が必要不可欠だったそう。その上で、アドバイザーの中村晋介さんがビデオシステム退社後に手掛けた『ストライカーズ1945』なども含めて、シリーズ過去タイトルや関連作品のテイストを凝縮した作品になっているようです。

次のトークテーマは、サウンドへのこだわり。細井さんが立ち上げた企画というだけあって、本作のBGMには3種類のモードを用意しています。1つめである「メインモード」は、ノンストップでリアルタイムに変化するインタラクティブミュージックを取り入れた“細井テクノサウンド”が楽しめるというもので、戦況によって細かくアレンジが変化します。

2つめの「真尾まおモード」は、常に真尾まおのボーカル曲が流れ続けるというもので、ラジオや有線放送でアイドルのポップソングを聴いているような感覚で楽しめるのだとか。パワーアップ状態によって、ボーカルのみミュートになるなどのインタラクティブ要素もあるそうです。

そして最後の3つめが、「アレンジBGMモード」。『2』『3』『リミテッド(スペシャル)』の楽曲からさまざまなアレンジバージョンを収録しており、アレンジャーの方々に好きなように作ってもらった野心的アレンジが満載だそう。プレイヤーは好きなステージに好きな曲を任意で設定できます。
■「アレンジBGMモード」参加アレンジャー
O.T.K.(ゲームミュージック&テクノバンド)
Fantom Iris(ゲームミュージックバンド)
細江慎治(作曲家)
ヨナオケイシ(作曲家)
WASi303(作曲家)
谷口博史(作曲家)
藤野由佳&谷岡久美(アコーディオン奏者・作曲家)
たかぴぃ(ボカロP)
EHAMIC(作曲家)
細井そうし(作曲家)
今回は楽曲が披露されることはなかったものの、これから開催していくイベントを通して『ソニックウィングス リユニオン』の全容を公開していき、アレンジャーの方々を招いて紹介・解説もしたいと考えているそう。11月10日に実施されたゲーセンミカドのYouTube配信Phantom Irisアレンジによる「Show Me What You've Got!」(『3』より)のパイロット版が流されていました。


ひと通りトークも終わったところで、あっという間の発表会も終了……と思いきや、なんと「One more thing…」が。なんと、セガのAPM3筐体によるアーケード版『ソニックウィングス リユニオン』が同時にリリースされることが発表されました。全国各地のさまざまなゲームセンターにあるため、チェックしてみてはいかがでしょうか。
最後は、SUZUKAさん歌唱による「真尾まお スペシャルライブ」が開催。バイオリニスト・MariNaさんも再登壇して、生演奏されました。今作の真尾まおモードの楽曲は「Aメロ・Bメロ・サビ」という一般的な構成にはならないため、細井さんがオケを作ってSUZUKAさんがメロディーをつけるという制作フローも取り入れている……というエピソードも明かされました。

ライブでお披露目となった最初の曲は「音速娘2023」。爽やかなメロディーのハートフルなラブソングで、バイオリンの音色で上品な仕上がりになっています。SUZUKAさんの決めポーズも印象的でした。

2曲目はテーマソングである新曲「REUNION」。こちらは一風変わってクールな印象の楽曲で、SUZUKAさんの歌声とマッチ。テクノなサウンドの中にロックなギターソロなども含まれていて、聴き応えのあるナンバーでした。
会場が熱気に包まれたままイベントは終了。ファンにとっては、とても嬉しく充実した発表会だったのではないでしょうか。
プロデューサーの長友慎也さんにインタビュー!
ここからは、本作に深く関わる4名のキーパーソンへのインタビューをお届け。まずは本作のプロデューサーを務める長友慎也氏に単独で実施したオンラインインタビューの模様から伝えていきます。
――自己紹介をお願いします。

長友慎也(以下、長友)『ソニックウィングス リユニオン』プロデュースとプランナーを担当している長友慎也です。アドバイザーの中村晋介さんやアーティストの六鹿(ナントカ)文彦さんといった、元ビデオシステムのスタッフの方々と連携を取りながら敵やステージなどの仕様決定を行っています。
――新作のお話はいつ頃から動き出したのでしょうか。また、『ソニックウィングス』というシリーズを再びリブートさせることを決意したきっかけは何でしたか。
長友企画が動き出したのは2023年の12月頃だったので、ちょうど1年前くらいですね。サウンドディレクターを担当している細井そうしさんからの持ち込みです。『ソニックウィングス』を復活させたいという考えがあった細井さんが「ゲーセンミカド」の池田稔さんに相談して、版権を貸す契約まではできそうだけど、いい開発会社がないか探しているところだったそうです。
そこで、「昔から続くシューティングゲームシリーズの新作」という共通点のある『コットンロックンロール』の評判が良かったため、サクセスならいけるんじゃないか……という話になったようです。池田さんが所属しているバンドのメンバーにサクセスのサウンドメンバーがいたので、その経由でお話をいただきました。
――昔の休眠シリーズを復活させる上で、開発にも色々と苦労があるのではないかと思います。
長友開発に携わっている皆が持っている『ソニックウィングス』像って、微妙に違っているんですよね。キャラデザの六鹿さんの絵柄は昔と違いますし。もっと言うと、六鹿さんは最初の3作、アドバイザーの中村さんは初代だけ、サウンドの細井さんは『2』以降……という感じで、携わっていた作品も微妙に違うんですよ。
もちろん僕の中の『ソニックウィングス』像もあって、個人的には『2』や『3』よりも、初代が一番好きなんです(笑)。そこの意識をうまくすり合わせながら、「じゃあ今回の『ソニックウィングス』はどういう方向性にするか?」と定めるスタート時点が一番大変でした。
――『ソニックウィングス リユニオン』の方向性についてお聞かせください。幅広いユーザーに届けるのか、既存ファンにアプローチするのか、どちらになるのでしょうか。
長友今回は完全に既存ファンに向けています。開発の最初に、新しい挑戦をするのか、既存ファン向けにするのかを検討したのですが、結果的に「Reunion(再会、同窓会)」をタイトルにつけたところから「みんなの考える『ソニックウィングス』ってこんな感じだよね」という懐かしさをベースにした方向性で作っています。
――長友さんが考える“『ソニックウィングス』像”とは、どのようなものでしょうか。数あるシューティングゲームの中でも、特に特徴的な要素についてお聞かせください。
長友ステージが短くてテンポがいいこと、難易度の上昇がゆるやかなこと、トンデモ兵器が出てくること、実在する機体を自機としていること……といったところですね。『リユニオン』も、これらのポイントを踏襲する形で開発しています。
実在の機体が自機のものは難易度が高かったり、最近のシューティングゲームだと弾幕モノになってしまったり、昔の作品だと1ステージの尺が長かったりと、意外とこの条件がすべて揃っているゲームって無いんですよね。
――シリーズ作がゲームセンターで稼働されていた時代と現代では、アーケードゲームの立ち位置も変わっていると思います。そういった点を意識して変化を与えたポイントはあるのでしょうか。
長友基本的に初代ベースなので、おそらくそれほどは変わらないと思います。『リユニオン』はアーケードでも稼働しますしね。演出やステージの長さなんかも初代を基に発展させています。ただ、昔と比べると今のアーケードゲームは「5分でプレイヤーを殺してくれ!」みたいなインカム重視な指示はされないので、難易度的には昔より下がっています。
――現代のゲームとして進化した点はありますか?
長友『ソニックウィングス リユニオン』においては、「進化させないことが進化」ですね。『コットンロックンロール』のようにガッツリ3D化して演出もバキバキ、新システムも盛りだくさん!という方向での開発もやろうと思えばできましたし、思い出を見捨てられる分そっちのほうが楽なんですよ(笑)。今回はそれができないというのが一番難しく、これから一番苦労することになりそうですね。
――なるほど、過去作を大事にすることへの情熱が伝わってきます。ただ、既存ファン向けと言えども新規ユーザーももちろん触れると思います。そんな方々に向けて、アピールできるポイントはありますか。
長友……ないですね。
――ないんですか!?
長友はい。今作の方向性に新規向けのアプローチを絡めると、やはりコンセプトが濁ってしまうんです。ただ逆に言えば、若い新規ユーザーは過去を知らないですよね。そういった方がアーケードで触って「面白いじゃん」と思ってくれたらすごく良いなと思います。
『ソニックウィングス リユニオン』マーケティング担当者 難易度が下がっているところは新規が入りやすいポイントかもしれませんね。
長友『ソニックウィングス』はもともと難易度が低いほうですけどね。
――確かに。「新作ならでは」なポイントではないけれど、新規に優しいポイントかもしれません。『アケアカ』で過去作も遊べますしね。
長友そうですね。アケアカで触ってみて『リユニオン』を手にとってもらうのもよいですし、逆に『リユニオン』を遊んで興味が湧いて、アケアカで過去作を遊んでもらうというのも良いかもしれません。
――本シリーズはキャラクターも大きな魅力だと思いますが、ボイスの追加などもないのですね。
長友そうですね。最初は入れようという案も上がっていたのですが、『ソニックウィングス』にキャラクターボイスはいらないよね、という意見が本作に関わるメンバーの中でおおむね一致しました。開発スタッフ同士の意見にも「リユニオン」が感じられましたね。
――全力で開発されていると思いますが、特に力を入れているポイントはどこでしょう。
長友本作を開発するきっかけになった細井さんのサウンドへのこだわりがメインで、ひとつの大きなウリになっています。ゲーム部分を手掛ける僕らとしては、やはり『ソニックウィングス』らしさの遵守ですね。
ただ、まだ着地点が見えていないというのが正直なところです。『ソニックウィングス』像はお客さんの間でも違うと思うので、もしかしたら「これじゃない」と思われてしまうかもしれません。今後バランスをとりながら、うまく模索していきます。
――ちなみに、長友さんは「現代のシューティングゲーム」のシーンについてどう考えていますか。あえて新作を出すということは、ある程度の盛り上がりを感じているのだと思うのですが……。
長友「超大ヒットをすることもないけど、超大ゴケもしない」というイメージですね。どういったユーザー層がいて、その人たちがどういったものを欲しがっているかというのは作り手側から想定しやすいです。
シューティングゲームが好きなプレイヤーの人口ってある程度固定されていて、『コットン』など我々の過去作や他の会社さんの売り上げを見ると、本数はだいたい固まって安定しているんです。
ただ、やはり年齢を重ねるにつれて、苦手になるユーザーは増えていくと思います。これから爆発的に流行るジャンルではないとも思いますが、面白いジャンルではあるので、今後も新規プレイヤーを少しずつ迎えられるといいのかなと。かつての弾幕シューティングゲームのようなエポックメイキングなものが生まれるとまた変わるかもしれませんが。
――現在の『ソニックウィングス リユニオン』の開発状況についてお聞かせください。
長友開発開始から半年が経っているんですが、今のところ完成度は20%くらいですね。まだまだ素材や演出を作っている段階です。シューティングは開発後半にグンとスピードが上がるのですが、今の段階では序盤といったところです。
『ソニックウィングス リユニオン』マーケティング担当者 発表会ではスクリーンショットをお見せできませんでしたが、今後少しずつ情報を解禁していって、ファンの方々の熱気を徐々に上げていきたいなと思っています。続報を楽しみにお待ちください。
――少し気が早い話ですが、発売後のビジョンはどうでしょうか。
長友僕の中では、シリーズ化を前提で考えています。今回は昔楽しんでいただいた方に「復活したよ」というところを認識してもらった上で、次はだいぶはっちゃけようかと。シリーズで合計30人くらいキャラがいますが、今回はその中から8人しか出せませんでしたしね。
――なんと、すでに続編まで考えられているのですね。
長友今の段階で変なことをやると、「こんなの『ソニックウィングス』じゃない」と思われてしまいますからね。『コットン』の場合は、BEEPが『コットン リブート!』で正統派作品を作ってくれたので、サクセス側では『コットンロックンロール』で好き勝手やったんですよ。我々としては、はっちゃけたり現代風に雰囲気を変えたりする前に、「正統派」の作品が絶対に必要だと考えています。
――ありがとうございました。
細井そうしさん、池田稔さん、SUZUKAさんが語る『ソニックウィングス』への思い
イベント終了後には、本作の企画を立ち上げた細井そうしさん、池田稔さん、そしてテーマソングを歌うSUZUKAさんの3名にインタビューを実施。プロデューサー以外の3名から見た『ソニックウィングス リユニオン』について深堀りしていただきました。
――発表会お疲れ様でした。会場の様子やファンの熱気はいかがでしたか。
SUZUKAすごい人でしたね!想定より多かったかも。
細井そうし(以下、細井) 開場前はそんなに並んでないみたいな話を聞いて、ビクビクしてたので(笑)。
池田稔(以下、池田) でもいっぱい来てくれて嬉しかった(笑)。

――皆さん、満足そうでしたね。細井さんにお伺いします。改めて、これまでの『ソニックウィングス』にどのように関わってきたか教えていただけますか?
細井最初に関わったのは初代『ソニックウィングス』です。といっても、その時は完成間近のタイミングでバイトとしてビデオシステムに入社しただけだったので、まずは別の作曲家さんがFAXで送ってくる楽譜をデータとして打ち込むという仕事をやりました。それがきっかけでシリーズに関わることとなり、『2』『3』『スペシャル(リミテッド)』と作曲させていただきました。
――26年ぶりということでサウンドの制作技術も進化したと思うのですが、当時と今を比較して新たにできるようになったことはありますか。
細井実は、過去作当時からかなり自由にやらせていただいていた方でした。新入社員の頃からサウンド専任のプログラマーを勝手に連れてきたり、社内のサウンドドライバーを全部捨てて作り直したりと、当時からやりやすかったです。ただ今は、僕の一番やりたいことであるインタラクティブミュージックが実現できるようになったので「ようやく商業作品でチャレンジする夢が叶った!」という気分です。
――プロデューサーの長友さんとはどういったコミュニケーションを取って制作しましたか。
細井浴びるほどの“飲みニケーション”ですね(笑)。
池田行ったことない飲み屋に長友さんが連れて行ってくれるんですよね(笑)。
細井長友さん、LINEみたいなメール送ってくる人なんですよ。社会人のメールとしてはすごいカジュアルな感じで(笑)。僕もそれに近いノリの人間なので、最初から話しやすくスムーズにコミュニケーションできて助かっています。
長友よく聞こえてないけど、いいこと言っといてよ!
池田褒めてますよ(笑)。
――仲の良さが伝わってきます(笑)。本作で音楽を作るにあたって、何か意識している点はあるのでしょうか。
細井過去作では、毎回音楽ジャンルをガラッと変えるという課題を自分に課していました。『3』では全曲ジャングルで統一しました。
今作でもこれまでやってこなかったジャンルにチャレンジしようと思ってまして、大好きなテクノの中でも最近流行りのマイクロハウスやIDM系のちょっとノイズ混じりな音楽を取り入れながら、自分の中のフィルターを通してこれまでと違うものを生み出せればいいなと思います。

――では「過去作の曲を使う」といったことはあまりないのですね。
細井ちょっとまだ悩んでいるところではありますが、イベント用のPVで使ったBGMに関しては『3』の1面の曲を少しオマージュしているところがあるので、そういったお遊び的なアレンジは入れてもいいのかなと思います。
池田過去作の曲は、BGMアレンジモードで別の作曲家さんにアレンジしていただいていますしね。
――SUZUKAさんにお訊きします。今回のイベントに向けて、どういった準備をされましたか。
SUZUKAちゃんと新曲「REUNION」を歌えるように準備してました。実は、歌詞が完全に完成したのは昨日の夜で……(笑)。コーラスを録ったのもこのイベント当日(笑)。
池田今日(イベント当日)は金曜日ですけど、火曜日の段階でまだできてなかったですもんね。
細井ミックスも、今日会場に来る合間に進めていました。
――それはまたギリギリなスケジュールですね……。
SUZUKAもうこれ、ただの愚痴なんですけど……(笑)。
細井愚痴はやめてくれよ!(笑)
SUZUKA今回も独特な節回しや転調、変拍子をここぞとばかりに詰め込んだ”細井節”が炸裂してるので、リズムが取りにくかったり、ハモリが思ってもみない方向に行ったりするんです(笑)。「これ、歌えないかもしれないな……」って弱音を吐きそうになるくらい難しい曲だったんですが、すごくカッコいいので、なんとか頑張って仕上げました。
――個人的な感想なのですが、SUZUKAさんの歌声は真尾まおのイメージに合っていると思います。「真尾まおの曲」として歌うにあたって、意識していることはあるのでしょうか。
SUZUKA真尾まおの曲を元々歌われていた方がもう引退してしまっていたので、歌う人がいないから……という理由で担当させていただいた立場でした。「可愛らしいアイドルだけど、戦闘機に乗って戦うぐらい勇ましい」というイメージを壊さないよう自分なりに考えて歌っていますね。

――CDだけでなく、ゲームの新作が出ると聞いた時の心境はいかがでしたか。
SUZUKA「まじか!」ですね(笑)。「パノラマの世界(ステージ)」や「Hello World」の新曲CDを発売したときは、まだ「生きてるうちに新作を作れたらいいね」というレベルでした。そんな中、私がコスプレして歌ったイベント「ゲースキ!」を通してシングル8cmCDを出したところ思ったよりも反響があり、細井さんと池田さんが動き出してくれたんです。
細井池田さんに協力いただけたのは大きかったですね。あそこから急に話が前進しはじめましたから。
――新曲「REUNION」を通じて、プレイヤーに感じてほしいことはありますか。
SUZUKA「REUNION」には“集結する”というような意味合いがあります。それこそ、過去作を開発していた当時は細井さんと池田さんは直接の接点がありませんでしたが、今こうして同じ志のもとにゲームを作るに至っています。
私やプレイヤーのみなさんの思いもここに集まって、ひとつのものが作り上げられています。なので「プレイヤーのみなさんも“再結成”の当事者だよ」という気持ちを伝えたいですね。歌詞を公開したら、読みながら聴いてほしいです。

――次に池田さんにお伺いします。過去作リリース当時、池田さんはプレイヤー側だったと思います。『ソニックウィングス』はどういったところが画期的でしたか。
池田初代がリリースされたのは1992年のことです。その頃は『ストリートファイターII』が出たばかりで、格闘ゲームがめちゃくちゃ盛り上がっていたんですよね。『雷電』や東亜プラン作品などは残っていましたが、基本的には格ゲーが主でした。
そんな中で出てきた『ソニックウィングス』は「なんかこれまでのシューティングゲームとちょっと違うな」と感じました。キャラクターを押し出していること、世界地図を飛び回ること、2人プレイでキャラ同士の掛け合いが見られるところなど、格闘ゲームから良いところを取り入れていて。ゲーム自体はシンプルだけど、やっている演出はすごいと感じていました。
――確かに、言われてみるとかなり『ストII』っぽい要素が取り入れられてますね……!
池田あとは、あの頃のゲームセンターにおいて「連射装置」は知識を持った人のいるお店でしか実装されていなかったので、店舗によってばらつきがあったんですよね。
ただ、『ソニックウィングス』は元からセミオート射撃なんです。だから、連射装置のあるなしで売り上げが変わったり、ハイスコアラーが特定の店に偏ったりするといった状況を全部フラットにするような仕組みは、新しかったですね。

――シリーズ自体にはかなり思い入れがあるんですね。
池田そもそもシューティングゲームが好きなので、どのメーカーの作品もそれなりに思い入れはあります。その頃は大手メーカーが大型筐体やポリゴン、アミューズメント施設なんかに注力していたので、普通のビデオゲームの主役はビデオゲームや東亜プラン、セイブ開発といった中小メーカーに移った瞬間でもあったんですよね。
僕は当時からすごくマニアだったので、そういった中小メーカーのゲームはとにかく好きでした。内容的にも大手のものに負けていないし、インカムも良く、世界でも売れている。これはすごいことだと思っていて、そういった意味で「世界を取っているタイトル」のひとつだと思いますね。
――このプロジェクトを実現するにあたってかなりご活躍されたと思いますが、苦労したことはありましたか。
池田苦労は……しなかったです(笑)。僕自身が細井さんのファンでもあって、自分のバンドとしてよくイベントにも出させていただいている中で、細井さんの曲がカッコいいということは何度も再認識してたんです。
今後10年、20年と『2』『3』の曲ばかり演奏し続けるのはもったいないよなぁと思っていました。そこで「新曲」を作ってもらうなら「新作」しかないだろうと考えてはいました。そんな中、8cmシングルCDを発売する際にかなりバズって、3万リツイートくらい伸びたんです。それで、もうこれはやるしかないだろうと。
――そこからサクセスさんに相談したと。
池田そうですね。それで、サクセスさんは乗り気になってくれました。そこから、ビデオシステムの権利を持つハムスターさんにダメ元で頼みに行ったのですが……熱意が伝わってあっさりオッケーをいただけて、嬉しかったですね。かなり熱意ベースで楽しんで動いていたので、あまり自分としては苦労とは感じませんでした。
――本作は既存ファンに向けた作品でありつつ、気になっている新規ユーザーもいると思います。この作品はどういったタイプのゲーマーにおすすめでしょうか。
池田僕らのようなアーケードゲーム大好きな40代50代のゲーマーに刺さるのは、まず間違いないです。そんな中、本作には『雷電』や『TATSUJIN』にはない「真尾まお」という存在がいます。歌がゲームで流れて、インタラクティブにBGMが変わってといったキャラクター的な要素は若い人にも絶対響くんじゃないかなと思います。
同じシューティングゲームで言うと『東方Project』なんかが分かりやすい例ですが、今やキャラクターだけで広がって人気になることもありますからね。真尾まおも、あのレベルで有名になればいいなと思います。

細井シューティングゲーム初心者のSUZUKAさんにも過去作をプレイしてもらっているのですが、ちょっとしたコツを覚えれば誰でも遊べます。そういったところを一生懸命広めるといいかもしれないですね。
池田シューティングゲームは分かりやすくてシンプルなゲームプレイが良いところで、『ソニックウィングス』もその点をしっかり守っていますからね。そこがもっと遊びやすくなっていればさらに良いと思います。
――みなさんにお訊きします。『ソニックウィングス』にはいろいろな特徴があると思うのですが、その中でも「『ソニックウィングス』ならではの魅力」を教えてください。
細井「曲」がいいこと(笑)。それはもちろんなんですが、効果音も聴いてほしいですね。アーケードゲームにおいて、プレイヤーの行動に対するフィードバックとしていかに気持ちよさを演出するか、ずっと研究しています。『リユニオン』では気持ちよさを損なわず、より没入するための音作りにこだわって、集大成的なものをお見せできると思います。
池田僕は「キャラクター」です。そもそもなぜこの企画をサクセスさんに持ち込んだかと言うと、可愛いキャラを全面に出した『コットン』で成功されてて、『ロックンロール』もすごく出来が良かったんです。だから、まずサクセスさんに持ち込むというのは決めていました。
めちゃくちゃ面白いゲームを作る長友さんと、めちゃくちゃいい曲を作る細井さんが高次元で融合して、すごく良いものを作る。そこで出来上がるのが『ソニックウィングス リユニオン』なので、ぜひ注目してほしいです。
SUZUKA私は「ひとつのステージが短いところ」ですね。プレイしているとサクサク局面が進んでいくので、飽きる暇なく次の刺激が来るのが楽しいです。
池田今はオープンワールドのMMORPGみたいな超大作もありますが、“タイパ”な世の中の今、気楽に遊べるゲームの需要はどんどん高まっていくと思います。その気楽に遊べるゲームの中でも最強に面白いのがシューティングゲームだと思っているので、その集大成を見せたいですね。

――最後に、『ソニックウィングス』ファンに向けてメッセージをお願いします。
細井アーケードでの稼働は僕の念願でした。この発表で喜んでくれる人はきっと多いと思います。家庭用はもちろん、ぜひゲーセンでもプレイしてください!
池田僕も同じ気持ちです。ゲームが面白いのか、自分に合うのかはゲームセンターに行けばすぐに試せるので、まずは遊んでいただいて、面白かったら家庭用版を買っていただきたいです。限定版であれば、サントラが聴けたり、アクリルフィギュアで真尾まおを鑑賞できたりしますしね。完全新作のシューティングゲームは珍しいと思うので、真似されるのも大歓迎です(笑)。
SUZUKAボーカリストとして、シューティングゲームは正直自分が関わることのない世界だと思っていました。そんな中、今回ガッツリ歌も入れてもらえるということで、「なんか男子楽しそうにしてていいなぁ」という輪の中に入れる嬉しさがあります。プレイヤーの皆様もぜひ入ってきて、一緒に楽しんでいただければ幸いです。真尾まお、飛びます!
――ありがとうございました!
『ソニックウィングス リユニオン』は、PC(Steam)/PS4/PS5/ニンテンドースイッチ/アーケード(APM3)向けに5月29日発売予定。通常版・DL版は6,380円(税込)、限定版は1万780円(税込)です。
『ソニックウィングス リユニオン』公式サイト(サクセス)
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