パブリッシャーMeridiem GamesとAstrolabe Gamesは、スペインのゲーム開発スタジオChaoticBrain Studiosが手がけるサイバーパンクアドベンチャーRPG『ネオン ブラッド』を2024年11月26日にリリースしました。
本作は、豊かなブライトシティと危険なブラインドシティという二つの顔を持つ都市・ヴィリディスが舞台。プレイヤーは、記憶障害を持つ捜査官であるアクセル・マコインとなり、さまざまな事件を調査していくことになります。
ゲームは美麗な2.5Dアートで描かれた世界を探索するパートと、コマンド式の戦闘を中心に展開していきます。殺人を繰り返す犯罪者や天才ハッカー、大企業の美しい女社長など、個性豊かな多くのキャラクターとの出会いや事件の中で、アクセルは都市に隠された謎や陰謀へと挑んでいきます。

本稿では『ネオン ブラッド』のプレイレポートを紹介していきます!
過去を失った刑事が都市の闇に挑む
物語は、謎めいた陰謀を感じさせる導入部から、プロローグとして主人公であるブラインドシティ警察のアクセル・マコイン警部補が、とあるホテルで発見された死体の捜査を行うシーンから始まります。アクセルは記憶障害を持っており、そこから来る痛みを和らげるために「スパーク」という薬物を使用している人物です。
さらに、この世界の人々は「インプラント」を施しているのですが、アクセルはゲーム開始時点でほとんどの「インプラント」が故障している状態で、視覚スキャナーなどの機能も扱えません。アクセルは仕方なく、昔ながらの自分の目で手がかりを探ることになります。





ゲーム内では、怪しい場所の調査や会話などを行いながら、ストーリーを進めていきます。街では近年ロビン・スラッシュという存在による、大企業ニルクコープ関係者の殺人が横行しているようで、今回の調査でも遺体の身元が偽名を使っていた同社の社員であることが明らかになります。
捜査終了後は、署長からインプラントの修理を命じられ、アクセルは一旦帰宅して翌日は街で用事を済ますことに。自宅のPCに届いていたメッセージは“自分とロビンの繋がり”を示すメッセージが見つかりますが、記憶障害のアクセルにはその理由も全くわかりません。




さらに、インプラントの修理を請け負ってくれた怪しげな技術者・リッパーは初対面のはずなのですが、なぜかその店からは過去の自分の痕跡が見つかります。多くの謎を抱えたまま、やがてロビンとの出会い、新たな事件へと物語は進展していきます。





捜査や戦闘にインプラントが活躍
作中でアクセルは、修理したインプラントを事件の捜査に活用します。代表的なのがスキャナー機能で、現場の怪しい場所を光らせたり、足跡を追跡したり、隠されたメッセージを探すことが主な役割となります。
また、捜査中に戦闘に巻き込まれることもあり、ここでもインプラントに搭載された機能が活躍してくれます。戦闘はコマンド式で、攻撃はダイス判定によってダメージ値が決定します。インプラントを使ったスキルでは、確定クリティカルの「ヘッドショット」などのアクションが可能です。




戦闘では攻撃やスキルのほか、ガードやアイテムなどのコマンド使用可能です。アイテムはターンで解放される形式で、敵の攻撃成功率を下げたりスタン効果を持つものもあります。また、物語が進めばアクセルの機能が強化され、基礎能力アップや新たにスキルを獲得できます。
ただし、この戦闘自体はあまり面白いものではなく、消費コスト無しのスキルを連発するだけになってしまいがちです。大ダメージの「ヘッドショット」と、強敵相手なら定期的に回復スキルを繰り返すだけで勝利を狙えます。負けるときは相手のダメージ値判定が大きい時くらいで、ほぼ戦略性はありません。せっかくのアイテムなども微妙に使いづらく、選択肢が多いのに使う理由がないのはもったいなく感じます。



世界観は魅力的だが気になる部分が多い
物語の舞台となるヴィリディスは、そこかしこにネオンが溢れる街で、お約束のように日本語看板も多いサイバーパンクな世界を作り上げています。そこに住んでいる人々は一癖も二癖もあり、刑事であるアクセルを含めて薬物が蔓延しているなど、実に魅力的で影の多い描写が行われています。
物語が進むことで、警察署長のジョーやニルクコープ社長のルビー、ボクサー崩れのシルバー、そしてアクセルと深い縁があるロビンなど、多くの人物の真実と、その裏にあるひとつのストーリーが明らかになっていきます。発展とともに見捨てられた地区など、色々な場面で陰と陽の対比も描かれています。




それだけに、本作は“描ききれない部分”が気になってしまうのです。ゲームのプレイ時間としてはあまり長くなく、アクセルの過去を中心とした、この街の陰謀と隠された真実を書いては、細かな描写が少なく、ややダイジェストのような印象を受けます(世界観はしっかりしているので理解はできますが……)。
ゲーム内では会話の選択肢などもあるのですが、間違えたら最初から繰り返して世界を探し出すのみ。さらにイベントではQTEのようなコマンド入力シーンがあり、失敗したらこちらも最初からやり直すだけで、物語の進行を妨げる要因になってしまっている印象です。




なによりもテキストのミスが多いのも気になり「突然中国語になる」「喋っている人物名がシャッフルされる」といった場面も。マップ内に世界観を伝える新聞の切り抜きが隠されたりしてるのですが、メニューから読み返す機能がないのももったいない部分です。短編小説を読んでいる気分に浸りたいのですが、それだけに各要素が少し足を引っ張っているな、という印象は拭えません。





『ネオン ブラッド』は、サイバーパンク世界を題材にしたアドベンチャーゲームとして、細やかな2.5Dグラフィックと世界観で大きな魅力を持ち合わせています。刑事のアクセルと犯罪者のロビンの関係性と真実など、気になる物語も描かれています。
ただし、捜査や戦闘などゲームの核となる部分で不要、もしくは不足している部分が多く、ゲームとしてテンポが悪くなっているのが否めません。特に戦闘は本当に単調なもので、2つのスキルを使う以外にやる必要がありません。ドラマチックな戦闘シーンもあるのですが、ギミックもなくフレーバーとしても物足りません。


移動中のスタックや操作不能になる不具合もあり、オートセーブのみなので何度か以前のシーンからやり直しになったこともあります。優れたビジュアルと世界観など評価すべきことは多いのですが、それだけに、とにかく“もったいない”としか言えない要素が多めです。今後の更新で翻訳ミスを含めて直ってくれれば嬉しいのですが……。
サイバーパンクな世界観は最高!ただ、ゲームとしてもったいない部分や不具合が気になるスパ……













