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自動生成やパーマデス(一度死ぬとすべてを失う)など、さまざまな要素が絡み合い、何度遊んでも楽しむことのできるゲームジャンル「ローグライク/ローグライト」。今週の「げむすぱローグライク/ローグライト部」第9回では、現在Steamにて好評配信中のデッキ構築型ローグライト三国志『三国・帰途』をご紹介します。
『三国・帰途』とは
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『三国・帰途』はSenmu Studioが開発し、2P Gamesがパブリッシャーを手がける「三国志演義」を舞台にしたデッキ構築型ローグライトゲームです。プレイヤーは劉備・曹操・孫権という後に三国を分立することとなる英雄たちを選び、中国全土を混乱に陥れている黄巾党と、その裏で覇王の座を狙う極悪非道の将軍・董卓の討伐を目指して戦うことが目的です。
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最初に選ぶ3戦力によって得意な分野が異なっており、例えば劉備ならば「桃園の誓い」で有名な関羽・張飛などを部下にして、デッキ構築型ローグライトの代表作『Slay the Spire』でいうところの「マナ」に相当する「指揮値」や攻撃力をプラスしていくバフ「士気」の向上を得意とする、割とオーソドックスな戦略を得意とします。曹操ならばドロー・手札入れ替えを駆使したテクニカルなデッキを、孫権の場合は独自の「コンボ」リソースを積み重ねていく他の2名とは違った戦略のデッキを求められます。
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ステージは3つの選択肢から1つを選んで進んでいく形式。本作では攻撃カードが「歩兵」「騎馬」「弓兵」に分かれており、エリアの「兵営」「馬場」「標的場」をクリアすることでそれぞれの分野の攻撃カードを手に入れることができます。また、カードは手に入らないが多額の通貨が手に入る「鉱場」、特殊効果を持った戦術カードの入手と、装備品のユニークアイテムを鍛えて強化できる「城」、戦術に強く影響する陣形カードが入手でき、次に進むエリアを自由に決められる「書院」、HPの回復が可能な「宿場」、カードの購入・削除が可能な「市場」など、多彩なエリアが用意されています。
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本作は「三国志演義」を舞台にしたゲームらしく、踏破したエリアは「領地」として扱われます。それぞれのエリアを一定数「領地」とすると高性能なカードが得られたり、カードのコストが下がったり、ユニーク装備を入手出来たりするので、出来るだけ同じエリアを踏破していくことを狙っていきましょう。
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本作の最大の特徴が「武将」カードです。戦闘画面の左側にある「将領リスト」から武将を選ぶと、プレイヤーの手札に武将カードが追加され、手札から使用できます。武将カードは一定のクールダウンターンごとに手札に加えることができ、劉備であれば指揮値の増加、関羽や張飛、趙雲は敵に強力なダメージを与えるカードとして使用できます。特に関羽には「敵を倒せば倒すほど攻撃力が永続強化される」という能力があるため、積極的に使っていきたいところです。
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なお、ゲーム開始前の武将参加画面において今までのプレイ周回で得たポイントを消費して各武将の能力をアンロックすることができ、そこで2種類のうちから選んだ1つの能力が武将カードに反映されます。プレイを重ね、武将たちを強化していきましょう。
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ステージ1・2での黄巾党との戦いを乗り越え、ステージ3の最後には最終ボス・董卓が待ち構えています。プレイヤーは董卓を倒し、中国大陸に安寧をもたらすことができるのでしょうか?
デッキ構築型ローグライト+「三国志演義」という妙味。武将や兵士たちを組み合わせたビルド追求が熱い
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「三国志演義」と言えば、我々日本人にもなじみ深い物語です。横山光輝先生の漫画「三国志」60巻をひたすら読み込んで三国志ファンになったという方も多いでしょうし(筆者はまさにそう)、コーエーテクモの『三國志』『真・三國無双』シリーズからこの物語に踏み込んだ、あるいはそれ以外に翻訳小説や、無数の「三国志演義」を下敷きにした創作作品から入った方も多いかもしれません。
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「三国志演義」は英雄たちの一騎当千の戦いぶりや、裏に裏をかく戦略で戦う軍師たちの活躍が魅力の1つではありますが、本作は一定のクールタイムおきに使える「武将カード」という形で、英雄たちの強力さを表現しています。先述した関羽や趙雲、他の勢力でも夏侯惇や孫策は一般の兵士カードと比べて敵に圧倒的なダメージを与える一騎当千の英雄として活躍しますし、軍略家として名高い曹操や諸葛亮は直接的にダメージは与えないものの、その後の展開を大きく有利にする、まさしく軍師な戦いを味わえます。
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もちろん、通常の兵士カードも不要という訳ではありません。さまざまな特殊効果を備えていたり、士気の高さや他のカードとの組み合わせ次第では爆発的な火力を叩き出すようなカードも存在します。上手く武将の性能と兵士たちの性質を見極め、最強のデッキをビルドしていきましょう。
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道中のランダムイベントで新たな武将が加入することもあります。諸葛亮や姜維は「三国志」において対董卓の時点ではまだ登場していない武将ですが、こうした「if」を楽しめるのもゲームならではでしょう。
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一度仲間にした武将は、ゲーム開始画面でアンロックすることでゲーム開始時から連れていくこともできます。連れていく武将によって全くと言っていいほど戦い方が変わるので、自分なりの戦い方を試してみましょう。
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もちろん敵にも先述した董卓をはじめ、その配下の武将や、張角・張良といった黄巾党の指導者・幹部といった「三国志演義」登場武将がステージボスやエリート敵として出現します。ディープな三国志マニアの方は、こうしたエリート敵の武将にまで注目してみると良いかもしれません。
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もちろん、進め方次第では三国志最強武将・呂布もプレイヤーと敵対します!「ラスボス・董卓よりも強い」と称されるイメージ通りの圧倒的な強さを誇り、序盤は彼の愛馬である赤兎馬の能力により1ターンに3回しかダメージを受けない堅牢さを持ち、本気モードになるとどこぞの世紀末覇王かと言わんばかりに赤兎馬を降り、とてつもない攻撃力で迫ってきます。倒すと呂布をデッキ内の武将カードとして配下に加えるか(残念ながらプレイヤーが操作できる武将としては加わらない)、裏切りを恐れて処刑して赤兎馬だけ頂くかを選ぶことができます。熟練者はぜひとも呂布撃破にチャレンジしてみましょう。
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最後に本作の短所を挙げていくと「日本語訳が怪しい」「三国志の序盤の山場である董卓戦でゲームが終わる」ことでしょうか。本作の日本語訳のクオリティははっきり言って「良い」とは言えず、説明文を読みつつ実際に触ってみてなんとかゲーム概要を理解できる程度の日本語訳です。ストーリーの流れの日本語文も微妙で、そのあたりはプレイヤーが触れてきた各種「三国志」作品を思い出しながら自分で補完しましょう。
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「董卓戦でゲームが終わる」ことについては、三国を分立することになる英雄たちが「共通の敵」と戦う機会がここしかなく、選んだ勢力によって独自のストーリーを盛り込んだりしない、ひとつのゲームとして仕上げることを考えると無理のなからぬところでしょう。ただ、本作の武将カードとデッキビルドを組み合わせたデッキ構築型ローグライトとしては結構面白いです。三国志愛好家でデッキ構築型ローグライトが好きだ……という方に本作をお勧めしたいですし、筆者はこの後の「官渡の戦い」「魏・呉・蜀の建立」「赤壁の戦い」あたりを舞台にした続編を心待ちにしています。
『三国・帰途』は、PC(Steam)にて1,320円で配信中です。