【インタビュー】『ゼンレスゾーンゼロ』生き生きとしたキャラクターたちや街のその裏側…「アニメディア」掲載のデザイン・アニメーションチームインタビュー全文をお届け! | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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【インタビュー】『ゼンレスゾーンゼロ』生き生きとしたキャラクターたちや街のその裏側…「アニメディア」掲載のデザイン・アニメーションチームインタビュー全文をお届け!

キャラクターたちに込められたのは、「共感を重視したリアリティ」。

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イードが発行しているアニメ情報誌「アニメディア」の2024年12月号にて、HoYoverseのアクションRPG『ゼンレスゾーンゼロ』開発メンバーに実施したインタビューを掲載しています。本記事ではそんな「アニメディア」でのインタビュー全文を特別に公開!生き生きとしたキャラクターたちや新エリー都、その裏側にあるチームの哲学に迫っていきましょう。

今回インタビューに応じたのは『ゼンレスゾーンゼロ』のキャラクターデザイン、シーンデザイン、アニメーション、IP運営を担当する4つのチームです。それぞれ所属しているスタッフの7名(敬称略)に向けて、『ゼンゼロ』の大きな魅力であるビジュアル面について様々な質問を投げかけました。

  • キャラクターデザインチーム :Atwo、水熊

  • シーンデザインチーム :L、wokaka

  • アニメーションチーム :Lu Li、Yi Huang

  • IPチーム :毛毛


――デザイン&アニメーションチームの規模や体制、また制作の方針についてお聞かせください。

アニメーションチーム早速ですが、私たちのチーム構造について簡単に紹介しましょう。ディレクター、絵コンテ、アニメーション、ライティング、VFXなどの役割があり、ムービーや戦闘モーションなどといったアニメーションの種類に応じて、チームの規模もそれぞれ異なります。

アニメーション制作は、制作者が頭の中のイメージを徐々に少しずつ表現していく過程だと考えています。演出に対する理解がそれぞれ違えば、表現の仕方も人によって異なります。そのためアイデアさえあれば、いくらでも試行錯誤するというのが我々の制作方針です。

「アニメを作る人は生まれつき反骨精神がある」というジョークがありますが、あながち間違っていないと思います。私たちは絵コンテを受け取ってから脚本に基づいて制作したものとは別に、自分たちの創作意欲に駆られて作った追加バージョンも候補に加え、どれを採用するかについて話し合うことがよくあります。自分たちの好きな作品、満足できる作品を作りたいのです。

――『ゼンレスゾーンゼロ』には独特の世界があり、物語やキャラクターの設定やアニメーションを含む映像の見せ方など、ゲームの枠を超えた独特のこだわりを感じます。そのような『ゼンレスゾーンゼロ』が、作品として目指しているものについてお聞かせください。

IPチームゲームの世界観に焦点を当ててみると、『ゼンレスゾーンゼロ』の背景設定には現代社会を壊滅させた災難「ホロウ」や、終末世界で逆境を乗り越えて復興した現代文明最後の砦「新エリー都」が存在します。このポストアポカリプスな設定は、混沌とした終末を迎えた後もなお、幸せと喜びを追い求める人類の本質を表現するためのものです。私たちがゲームに何らかのレッテルを貼ることはありません。実際のプレイ体験とプレイヤー自身の経験に基づいて、プレイヤーなりの『ゼンゼロ』像を描いて欲しいのです。また、ゲーム内ではなるべくヒロイズムを強調することを避けていまして、たとえ世界を救う必要があったとしても、その出発点は壮大な理想ではなく、ただ「自分たちの日常生活を守るため」だったりします。

キャラクターデザインチームキャラクターデザインの面で言いますと、長期運営のゲームとしての『ゼンレスゾーンゼロ』の目標は、段階的に変化する可能性があります。私たちはチームの強みを活かし、多くの作品の中から際立つ、界隈においても代えがたい、独特な作品を作り出すことを目指しています。実際『ゼンレスゾーンゼロ』では、皆様が思い描いている従来のHoYoverseのアートスタイルとは一風違った新しいものを確立できました。将来的には、引き続き『ゼンレスゾーンゼロ』の強みを活かし、様々な試みを行い、プレイヤーに新たな驚きを提供し、ゲーム体験をよりスムーズなものにしたいと考えています。

アニメーションチーム『ゼンレスゾーンゼロ』のアニメーション制作に関しましては、常にCG映画レベルの品質と、より自由で独特な表現手法を追求しています。『ゼンレスゾーンゼロ』のスタイルにマッチしていて、前衛的で大胆なものであれば、媒体を問わずどの地域のアニメーションでも積極的に挑戦しています。私たちは、少なくともゲーム内のモーションに見合うようなムービー作りを心掛けています。

――『ゼンレスゾーンゼロ』は、ファンタジー世界とは異なる現代~近未来風の世界にレトロな設定も混在しているように見えます。このあたりの世界観の設定や、そこに存在する生物、生命体、文化的な背景、独自のテクノロジーなどをどのように設定して制作しているのか、教えてください。

IPチーム『ゼンレスゾーンゼロ』の世界観の構築には、開発チーム独自の語り方と考えがあります。誰もが共鳴しやすい感情からストーリーを展開し、生活感のある表現を心掛けています。例えば、六分街の雰囲気は隣人との友好的な関係や生活の息吹をより強調し、郊外の荒廃は「カリュドーンの子」と「トライアンフ」の燃料争いにリアル感を持たせています。また私たちは、メインストーリーとサイドコンテンツでそれぞれ異なる方向性を採用しており、メインストーリーの表現は徐々に壮大さを増していき、サイドコンテンツではより生活感のある日常や感情を細かく描いていく所存です。

私たちはプレイヤーに「新エリー都に対する理解はひとつではない」と伝えたいのです。終末世界を生きる人類にとって、新エリー都は唯一の住処ではないかもしれません。それでも新エリー都は単なる「都市」の枠を超えて、ホロウまみれの「惑星」とも言える存在になっています。都心部はホロウの間に挟まる比較的大きな区域で、居住に適しています。その他にも面積が小さい区域で、別の物語が展開されている可能性があります。『ゼンレスゾーンゼロ』の世界観はいくらでも広げることが可能で、計り知れないポテンシャルを秘めています。

――『ゼンレスゾーンゼロ』に登場するキャラクターたちは、自由度が高く、文化的・技術的な背景などが細かく設定されているように思えます。どのようにして魅力的なキャラクターたちを生み出し、制作しているのでしょうか?

キャラクターデザインチーム常々言っているように、私たちはプレイヤーの皆さんが没頭できるような都会ライフを『ゼンレスゾーンゼロ』の新エリー都で体験してもらいたいと願っています。没入感を得られるかどうかは、「新エリー都のキャラクターとストーリーが実在している」と感じてもらえるかどうかにかかっている、と言っても過言ではありません。そのため私たちはプレイヤーに共感を持ってもらえるような「地に足のついたキャラクター描写」を意識した上で、この架空の世界に実際に生きていると感じさせ、彼らのユニークさを描き、深く印象づけます。キャラクターをデザインする際には、「ファンタジー」とプレイヤーの「共感」をバランスよく調整するよう努めています。

キャラクターをより特徴的にするために、私たちは色々な工夫を重ねました。まず「陣営」という概念を導入することで、異なるキャラクターを結びつけ、より特徴的にしました。そしてキャラクターの体型は、プレイヤーが見たことのないような、意外性のあるユニークさを考慮し、シリオンやロボットなどといった多様な種族を登場させています。今後も、目を引くような面白いキャラクターを続々と登場させる所存です。

また、武器の面白さもデザインにおいて重視している要素のひとつです。没入感を高めるため「戦闘シーンが終わると消えてしまう武器」はできるだけ作らないようにしています。そのためには武器の操作感、独特さ、携帯性を同時に考慮する必要がありますが、頼もしいモーション制作チームが後ろ盾となり、私たちの自由な発想が実現されました。キャラクターの個性については、よく「ギャップ」のある設定を作ります。例えば、ベンは豪快な見た目に反して、真面目で繊細な一面があり、会計が得意などというギャップを持っています。

――『ゼンレスゾーンゼロ』は、毎月アップデートによって見応えのあるシネマティックが追加されていきます。短いスパンで、あれだけハイクオリティのシネマティックが追加されることには驚きを隠せません。チームではどういったプロセスで作中のアニメーションを制作し、高いクオリティを維持しているのでしょうか。

アニメーションチーム私たちのCGアニメーションチームのメンバーは、大半が豊富な映画やCG制作の経験を持っているため、ムービー制作においては映像作品の流れに従って進めています。最初にディレクターチームが映像の内容を決めて、絵コンテを作り、その後アニメーションチームに制作を依頼します。お互いに分担し、協力しながら、ゲームの更新スケジュールに合わせて仕事をしています。

高い品質を維持するのに大事なのは、技術そのものよりも、制作チームの情熱と努力だと思っています。アニメーションの質の良し悪しは、しばしば非常に些細なことで決まります。自分たちの制作したアニメーションに情があってこそ、究極まで突き詰めて、より細やかで質の高い作品を生み出すことができるでしょう。アニメーションのライティングであれVFXであれ、完璧を追求したいという自発的な意欲があり、自分の魂を注ぎ込むつもりで多くの時間をかけながら試行を重ねていくことで、クオリティを維持し、さらには突破することが可能になります。

――『ゼンレスゾーンゼロ』ならではの滑らかなキャラクターのモーションはどうやって作っているのでしょうか? 専門のクリエイターやチームがいるのでしょうか?

アニメーションチームまず目標は、先ほど述べたように――プレイヤーたちもジョークとして言うことがありますが、アニメーションチームは「ゲームの中でアニメを作る」ということを真剣に考えて、取り組んでいます。これは一朝一夕に成し遂げられるものではありません。モデルのスキニング方法は、このゲームの独特な演出を実現させた重要な理由のひとつです。最初の頃、ムービーにはゲーム内と同じモデルとスキニング方法が使われていました。手足の動作はそのまま流用できましたが、演出にはかなりの制限がありました。特に顔の表情は、ゲーム内における融合と変形にしか使えず、非常に多くの時間を費やす必要がありました。その後、1回目のクローズドテストでスキニング担当に後押しされ、私たちはムービーのスキニングを一から再構築することに決めました。ゲーム内のモデルのスキニングを基本に、映像作品のレベルに合わせ、多くのサブコントローラーを追加しました。顔だけでも数十個のコントローラーを追加して、手足も自由にスケーリングできるようにしました。時にはアニメーションのカメラの需要に応じて、効果を確保した上でコントローラーをさらに追加することもあります。

現在のところ、私たちはキャラクターのモーションなどにおいて、モーションキャプチャーをあまり使用していません。特定の待機モーションやNPCに使用する場合がありますが、キャラクターの戦闘は基本的にアニメーターが作り上げているため、高い技術が求められます。私たちの経験上、モーションキャプチャーでは迫力を表現するのが難しい動きがあり、その出来栄えも俳優の能力にかかっていることが多々あります。そのため現時点では、ほとんどのモーションを直に制作しています。よりよい演出のため、ある程度の効率を犠牲にしていることは否めません。私たちが作るモーションは、基本的にアニメーターが自ら試しています。例えば、猫又の戦闘モーションでは、ネコ科の動物が地面に伏せている姿勢を観察しつつ、アニメーター自身も地面に伏せて真似することで、体の起伏や筋肉の動きをよりよく理解し、リアリティのあるアニメーション作りを実現しています。

――『ゼンレスゾーンゼロ』には、特徴的な衣装のキャラクターや毛量の多いキャラクターも登場します。シネマティックであれだけダイナミックに動くと、3Dモデルの干渉も大きそうですが、そうした制作の中で技術的な苦労はありますか?

アニメーションチームご質問にあったように『ゼンレスゾーンゼロ』のスタイルに基づき、キャラクターの多くはブロック状やストライプ状の髪の毛であるため、精密な物理演算を実現するのはかなり難しいです。髪の毛の処理は技術面で最も主要なチャレンジと言えます。現在私たちが採用している方法は、MAYAのダイナミクス・エバリュエータをスキニングに組み込むことに基づいています。時には難易度の低いシーンにおいて、市販の簡易的なプラグインを使用して、なびく髪の毛などの処理を行うこともあります。チーム内には物理演算を担当する者がいて、シーン内の髪の毛の効果をある程度分担してくれますが、残りの部分はすべて手作業で調整しています。特にアクションシーンでは、髪の毛の形状変化をフレームごとにコントロールする必要があります。冗談抜きで「髪の毛はまさに私たちの一生の敵」です。

――登場人物の性格を表現するキャラクター個々のアニメーションを、ライブサービス型のゲームで一貫して演出するのは大変だと思うのですが、どのような工夫をされているのでしょうか。

アニメーションチーム私たちにとって、アニメーションのアイデアや制作は線的なワークフローではなく、プランニング、原画、IPなどのチームと相互に補い、協力し合うものです。基本的には、IPが背景設定でキャラクターの性格に関する制作の方向性を示してくれます。私たちは原画を基に、アニメなどを含む様々な作品のエッセンスを取り入れながら、アニメーションのアイデアを広げます。時には演技室でキャラクターを演じてみることでインスピレーションを探したり、参考資料を撮影してみたりします。ある程度のコンセプトや方向性が固まったら、戦闘デザイナーやIPチームとブレインストーミングを行い、実現可能なものをピックアップし、ゲームのロジックを整理します。最後に、キャラクターの立体感と魅力を深めるために、アニメーションの結論に基づいて、原画チームなどにもう一度手を加えてもらい、既存の要素を強化することもあります。

革新を阻むのは、往々にして自身の美意識や見識から来るものです。この問題を解決するためには、もっとこの世界を感じ、もっと情報を得て、好奇心と活力を保つことが大切です。異なるキャラクターのアニメーションを処理する際に、条件が整えば、アニメーターは、ライトのボクシングや、ジェーンのスケートなど、そのキャラクターが現実生活で関わりうるスキルについて学び、関連するアクションをより深く理解するよう努力しています。

――Ver.1.2までの間に実装されたシネマティックの中で、チームが特に苦労したシーンや、裏話があればお聞かせください。

アニメーションチーム今までで特に難しかったのは「プレイヤーが零号ホロウで星見雅と初めて出会うシーン」です。彼女の初登場をより印象的にするために、チーム内で何度も繰り返し議論し、プランを練りました。リリース直前にも、このシーンの絵コンテは複数のバージョンで再制作されました。最終パッケージの完成までわずか2~3週間しかない状況で、再作成したんです。こんな厳しい時間制限の中でも、さらにアニメーションの可能性を追求したいと思いました。雅が空中の車両で敵を斬撃するシーンに関しては、3人を配置して「完全に絵コンテに従って制作」「基本は絵コンテに従いながら自分なりに修正を加えて制作」「絵コンテを踏まえて更なるデザインを施して制作」と進行し、3つのバージョンのアニメーションを作り上げ、厳選の末に決まりました。困難の中、さらにもう一歩進めないか、もっと上手くできないかを考え続けています。このような決意があれば、困難も自分との賭けのように楽しめるものです。

――プレイヤー側が操作するキャラクターだけだはなく、敵の動きにもこだわりがあるかと思います。プレイヤーに注目してほしいポイントがあれば教えてください。

キャラクターデザインチーム敵のデザインにおいて、私たちは認識度、機械構造、合理性に重点を置いています。通常であればデザインは現実世界の内容を参考にします。例えば、メインストーリー第三章のボスである双子ダンサーは、一目でバレリーナとわかります。優雅に不気味なダンスをする雰囲気、戦闘しながら敵を見て、その演出を楽しんで欲しいです。余分な説明がなくても、プレイヤーが興味を持てば、双子と交わります。また、白祇重工のショベルカーのボスも、軸受や構造には原型があり、プレイヤーの認識に合致しています。さらに、Ver.1.2のツール・ド・インフェルノに登場する各バイクも現実世界に参考としたものがあります。このバージョンの敵、ポンペイの戦闘時の第2段階の武器は、注意深く見ると、バイクが爆破された後の部分であることがわかります。キャラクターデザインと同様に、敵のデザインにおいても、説得力のあるリアリティと魅力的な想像力を駆使しています。

――新エリー都の「近未来でありながらどこかレトロさもあるデザイン」がかなり特徴的です。こうした背景美術をどのような方針で制作し、どのような線引きで一貫性を感じられるバランスを取っているのでしょうか? また、早い段階からこの「新エリー都」というゲームの舞台設定は決まっていたのでしょうか?

シーンデザインチーム新たなIPである『ゼンレスゾーンゼロ』にとって、シーンデザインを含むすべてがゼロからのスタートでした。最初にシーンの初期設計に取り掛かったときには、すでにいくつかのキャラクターデザインの初稿が見えていたため、頭の中でいくつかのアイデアが浮かびました。例えば「どのような世界観、どのようなシーンがこれらのキャラクターのイメージや設定に合うのか」といったことです。同時に『ゼンレスゾーンゼロ』のシーンデザインの独自性を明確にし、異なるエリアやシーンでスタイルの一貫性を確保するため、ゲームプロデューサーも多くのインスピレーションや方向性の提案をしてくれました。計画から試行、試行から実践へと進みながら『ゼンレスゾーンゼロ』のシーンデザインの特性を明確にしていきました。そして広告看板やビルのデザインなど、シーンの細部にまで反映されています。

新エリー都のシーンを設計するときの我々の原則のひとつは「プレイヤーが新エリー都の中で没入感を感じられるようにすること」でした。そのため、シーンにゲームセンターや火鍋屋など、異なる生活文化を代表する要素を取り入れ、異なる地域のプレイヤーがゲームの中で自分にとって馴染み深く、感慨深い内容を見つけられるようにしました。六分街は、近隣関係が和やかな街で、自然と人々に「生活感」と親しみを感じさせます。一方、ルミナスクエアはにぎやかな商業エリアで、歩道橋や映画館、遊覧船、ライトレールなど、大都市でよく見られる共通の要素を取り入れることで、異なる地域のプレイヤーが自分の街の一部を思い出すことができるようにしています。こうした方向性に基づいて、新エリー都の舞台は徐々に形を成していきました。今後も私たちは、シーンデザインのスタイルにおいてさらに独自性のある挑戦を続け、プレイヤーの皆さんにもっと面白く、意義のある体験をお届けしたいと考えています。

――「新エリー都」という舞台のデザインは、物語やキャラクターにどのような影響を与えていますか?

シーンデザインチーム私たちは、シーンデザインとストーリー、キャラクターは必ず相互に補完し合う関係であると考えています。舞台、ストーリー、キャラクターのデザインは決して一方通行ではなく、時にはシーンデザインが先にあってキャラクターが生まれることもあれば、キャラクターが先にあってシーンが作られることもあります。どのような順序であっても、創意工夫と合理性が私たちのチームにとってもっとも重要な判断基準です。『ゼンレスゾーンゼロ』はプレイヤーに没入型の都市体験を提供したいと考えており、この「没入」にはプレイヤーに納得してもらい、新エリー都の生活が合理的に存在していると感じてもらうことが必要です。

この目標を達成し、『ゼンレスゾーンゼロ』のストーリーやキャラクター像をより立体的にするために、私たちは多くのシーンの細部をデザインするとき「もし自分が新エリー都の住民だったら、今日は何をして、どこに行くのだろう?」と考えます。例えば、「Random Play」の2階をデザインするときは、シーンデザインチームは最初から「主人公には自分が本当に住んでいる場所――兄妹ふたりの寝室が必要だ」と考えました。また、寝室のデザインでは、色や細部が兄妹それぞれの異なる性格を反映する必要があります。部屋のフォトウォールやギャラリーなども、プレイヤー自身の寝室と同じように、自由に装飾をカスタマイズできるようにしています。

さらに、ゲーム内の「ボムコーラ」「ネオンコーラ」「ニトロフューエル」といったアイテムは、シーンの中に登場するだけでなく、テレビ画面や看板上で広告としても表示され、私たちの生活にある商品と同じような存在感を持たせています。また、ホビーショップの前にある「ボンプ」の彫像や、スケートボード型のベンチなど、私たちが面白いと感じたデザインも、『ゼンレスゾーンゼロ』の没入感を構成する一部となり、新エリー都独自の都会の雰囲気をより引き立てています。これにより、ストーリーやキャラクターを含むゲームの設定がより信頼性を持ち、共感を得やすいものとなるでしょう。

――路地の隙間にあるガスメーターから映画館のポスター、ラクガキまで、ゲームとまったく関わりのない箇所にもこだわられていますよね。こうしたオブジェクトには、やはり『ゼンレスゾーンゼロ』の世界を生きる住人たちのストーリーが感じられます。こだわりのオブジェクトがあればぜひ教えてください。

キャラクターデザインチームおっしゃる通り、『ゼンレスゾーンゼロ』のシーンには、映画、ポスター、雑誌、広告、ゲームセンターのゲームIP、レコード、生活用品など、非常に多くの細かい要素が含まれています。ポスターだけでも何百枚にも及びます。実際、ゲーム内に登場するすべての要素には、それぞれに対応した細かい設定やIP展開があります。例えば、テレビ番組には放送時間帯やキャスターの名前など、詳細な設定が施されています。「スターライトナイト」に関しては、変身アイテムや敵キャラクターに至るまで事細かに設計されました。また、一部の映画ポスターには、プレイヤーがよく知っているクラシック作品へのオマージュも含まれています。具体的な内容に触れることになるので詳しい言及は避け、プレイヤー自身に発見してもらう楽しみを残しましょう。これらの細部に多くの労力を注いでいる理由は、プレイヤーが気づかないような数多くのディテールを通して、新エリー都の没入感を演出し、ゲーム全体の環境や設定がプレイヤーと共鳴し、まるでそこに存在しているかのように感じてもらいたいからです。

シーンデザインチーム『ゼンレスゾーンゼロ』自体は箱庭世界であるため、私たちは壮大な世界観の構築に重きを置くのではなく、情報の密度を追求することにしました。各エリア、そして土地のひとつひとつに非常に多くのディテールを込めており、例えばメモ用紙1枚、広告1つ、ポスター1枚など、細かくデザインされた要素のなかに多くの情報を詰め込んでいます。

いくつか例を挙げましょう。バレエツインズとその周辺シーンのデザインでは、私たちはビルのオーナーが「風変わりなアート作品の蒐集を愛好する」と設定したので、IPチームと相談した後、該当シーンに「バナナの皮を踏んで駆ける馬」や「トイレで考えるボンプ」といった風変わりなアート作品をたくさん追加しました。また、ルミナスクエアには、シリオン美容サロンやボンプの公共充電スタンドなど、見慣れた生活様式に架空の世界観を組み合わせた新鮮なコンテンツを追加しました。

これらのコンテンツをデザインするとき、さまざまなアイデアを浮かべました。例えば「自分がボンプかシリオンだとしたら、いつどこで充電スタンドが必要になるか? 街でどんなサービスが欲しいか?」と。荒廃した郊外のシーンでも「ヘンリーおじさん」のマスコットのように、背景にあるIP設定に工夫を凝らしています。

実際、私たちが心を込めてデザインしたディティールは数え切れないほどあります。こうしたディティールはシーンにはめ込む前に、グラフィックデザインやIPなどの各チームと協議を重ねて、シーンに面白みを加えるだけでなく、ディティールがゲームの世界観と一致し、ストーリーのなかでも自然に登場するよう心がけています。すでにプレイヤーの皆さんがお気づきの内容も数多くありますが、まだ見つかっていない小ネタもあります。そこはあえてお伝えせず、皆さんがひとつずつ発見してくださることを期待しています。

――ホロウ内と、ホロウ外の背景美術で、意識して描き分けている部分はありますか?

シーンデザインチームもちろん、ある程度の違いはあるため、ふたつのエリアにおいてもゲーム機能と位置付けはそれぞれ異なります。ホロウの外は災害発生後に逆境を乗り越えて復興した新エリー都、ホロウ内部は災害発生後に人が寄り付かなくなった侵蝕エリアで、ゲームの主な戦闘シーンを担う場所でもあります。

正直なところ、私たちはデザインの方向性を明確に定めた当初から、ホロウ内部が多くの人々のイメージする「終末の荒野」になることを望んでいませんでした。主な理由のひとつに『ゼンレスゾーンゼロ』全体のキャラクターなどのアートスタイルが、リアルな情景には向いていないと考えたことが挙げられます。そこで、プレイヤーのゲーム体験とアートスタイルの一貫性を保つという原則のもと、ホロウ内部のシーンを処理する際には本来の情景をできるだけ維持しつつ、ガラス片や倒れたキャビネットなどに損傷の痕跡をわずかに残して、エリアの廃墟化した様子を強調しました。同時にシーンの違いをより明確化するべく、ホロウ内部に異化の産物を、上空にはドーム状カバーを追加しました。外からホロウを見ると真っ暗で、中にいるプレイヤーはホロウ内部の空を見上げられるものの、その境界に触れることはできない仕様です。

――シネマティックの中には、普段ゲーム的に表現できない演出の自由度があると思います。星見雅がニネヴェ戦で見せた剣戟アクション、カリンのチェーンソーによる列車切断などは、いずれも見応えがありました。しかしライブサービスでこういったシネマティックの制作を続けていくとなれば、プレイヤーの期待に応えていく中で、プレッシャーを感じることもあるのではないでしょうか。

アニメーションチームアニメーションとゲームのアクションは、言わば相互補完の役割を果たしています。心ゆくまでゲームをお楽しみいただき、プレイヤーの皆さんとキャラクターの距離が縮められるように、戦闘以外にも多くのリアリティを加え、キャラクターたちのイメージをより豊かに印象付けています。バージョン更新が続く中で「プレッシャーはない」とは言い切れませんが、プレイヤーの期待を超えるアニメを作ることは、私たちの追求のひとつでもあります。なにより、プロデューサーと監督チームはアニメーションへの試みに常にオープンな態度で、過剰な制限もありません。アニメのスタイルを模索する最中も、アニメーターは自由にその個性を発揮できました。その結果、ビリーのアニメのような躍動感あふれるカットが生まれたのです。今後もより柔軟な発想で制作を行い、皆さんはより多くのキャラクターたちと出会えることでしょう。引き続き、私たちのアニメ作品にご期待いただけましたら幸いです。

――制作チームの中で、お気に入りの場面やアクションなど、これからゲームを遊ぶ人にぜひおすすめしたいシーンはありますか? またお気に入りのキャラクター、見てほしいキャラクターなどがいたら、教えてください。

アニメーションチーム私たちは、アニメの各カットに全身全霊を注いでいます。おかげで、チームメンバーはだいぶ髪の毛が薄くなってしまいましたが(笑)。そういうわけですので、選びにくいんですよね。すべてのアニメを、プレイヤーの皆さんに楽しんでいただきたいです。

シーンデザインチーム一番お気に入りのシーンを選ぶのは難しいです(笑)。新しいシーンを作るたびに、これまでの制作経験や皆さんからのフィードバックを参考にしながら、皆さんに気に入っていただける新しいコンテンツをデザインしようという一心ですので。別の言い方をすれば、皆さんに気に入ってもらえたものが、私たちのお気に入りと言えます。しいて挙げるとすれば、新しく皆さんにお披露目するシーンが、どんなときも一番好きなデザインかもしれません。

――『ゼンレスゾーンゼロ』は確かにゲームですが、ある意味「アニメ」と言ってもよい作品だと考えています。また「アニメディア」は名前の通り、アニメ作品を中心に取り扱う老舗のアニメ雑誌でもあります。そんなアニメ雑誌を読む日本のアニメファンと『ゼンゼロ』ファンに向けて、今後の意気込みやメッセージをお願いします。

アニメーションチームまだ『ゼンレスゾーンゼロ』をプレイしたことのないアニメファンの皆さん、待つことなくゲームにログインして、雷雨の夜にデッドエンドブッチャーとの対決に夢中になり、合体機械モンスターに立ち向かい、覚醒するプロトタイプ機に王道の力を感じてください。魅力的なキャラクターが他にもたくさんいます。これは我々の一生のお願いです! どうぞよろしくお願いします!


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編集:Game*Spark
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