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Game*Sparkと4Gamerは、「とにかくゲーム業界で働きたい!」と志す学生の皆さまに向けた就活イベント「キャリアクエスト ~冒険者から専門職へ~」を開催します。
本記事ではこちらのイベントにあわせて、実際に現場で働いている方に質問を投げかけた“ゲーム業界を目指す学生のためのインタビュー”をお届けします。
今回のインタビューのお相手は、「株式会社WFS(以下、「WFS」)」で働くシニアエンジニア・市川将太郎さん。「WFS」はグリー株式会社(以下、「グリー」)の完全子会社であり、運営するゲームブランド「ライトフライヤースタジオ」において、『ヘブンバーンズレッド』『アナザーエデン 時空を超える猫』など心が震える物語を体験できるRPGを中心に手掛けるゲーム開発会社です。
今回は、「社会人編」として採用後の新卒時代に関係する質問を投げかけました。同時に行われた「就活編」もあわせてご覧ください。
なお、本記事はGame*Sparkと4Gamerによって共同制作された連載記事となります。
「キャリアクエスト」公式サイト◆エンジニアとしての業務内容から「WFSに向いているタイプ」まで質問!
――まずは自己紹介をお願いします。
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市川 将太郎(以下、市川):2020年度新卒の市川将太郎です。第3スタジオ部Engineering 1チームにてシニアエンジニアとして働いています。
携わったタイトルとしては、入社直後に『ソードアート・オンライン アンリーシュ・ブレイディング(以下、『SAOアリブレ』)』(配信:株式会社バンダイナムコエンターテインメント)(※1)の開発、運用を行い、その後に『聖剣伝説 ECHOES of MANA』(配信:株式会社スクウェア・エニックス)(※2)の開発にも携わりました。現在は新規プロダクトの開発を行っています。
(※1)2023年1月16日サービス終了
(※2)2023年5月15日サービス終了
――入社に至るまでの話をお聞かせください。
市川:学生時代の就活イベントで「GREE Camp」に誘われたことが入社のきっかけです。 一緒に参加したプランナーやデザイナーの子たちの熱量だったりとか、一緒に並走してくださったスタッフの熱量がかなり高かったことが印象に残っていますね。
その後の面談では、僕自身が悩んでることに対して寄り添ってもらいながら相談できました。不安なところを取り除きつつ、ワクワクする気持ちが高まっていき、信頼できるなと感じられましたね。
――現在の業務内容についてお聞かせください。
市川:新規タイトルの開発というところで、 「プリプロダクション」と呼ばれる試行錯誤を重ねながら「このゲームの最も面白い箇所はここ」という部分を作る段階から携わっています。
いわゆる「クライアント業務」と呼ばれる“ゲームでユーザーが実際に触る要素”に幅広く携わっていまして、例えばゲーム中でのバトルシステムの構築や、それを操作するボタンなどのUI組み込みから、キャラクターや武器のモデルをロードする仕組みの整備などに取り組んでいます。他には、ゲーム中にキャラクターが3Dの背景上を歩き回るコンテンツがあるのですが、 今はそのTerrain(地形をエディタ上で表示する仕組み。ランドスケープとも)という地形データを、プランナーさんたちが簡単に作れるようなツールづくりなどもしていますね。
CEDECで任天堂さんが「プロシージャルデコレーション」という技術について解説されていたのですが、それに近いものを開発したりと、手広くしています。チームのために「Slack(チームコミュニケーションツール)」用のアプリ開発を行ったこともありました。
――最初の配属先ではどのような業務をされていましたか。
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©2020 川原 礫/KADOKAWA/SAO-P Project
©Bandai Namco Entertainment Inc.
Developed by WFS
市川:最初に配属された『SAOアリブレ』では、「Cocos2d-x」という学生時代に触った経験がなかったフレームワークを使っていたこともあり、それを使った開発に慣れることも兼ねたUIの組み込みから始まりました。
そうして数カ月後にはバトル部分に関わるようになりました。さらにゲーム1周年のタイミングには、周年イベントの目玉となるバトル施策にも携わらせてもらいましたね。その後もバトル以外にもアウトゲーム(準備画面やオプション、課金設定など“ゲーム体験のコア”以外のパート)と呼ばれる要素にも守備範囲を広げつつ、サブスクリプションや課金回りの実装といった大きな業務を担当したりもしていました。
『SAOアリブレ』は既にクローズしたタイトルですが、メインプログラマーとして、最後の締めの瞬間まですべて見届けさせてもらいました。
――配属の決定に際して、ご自身の希望はあったのでしょうか?
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市川:入社まで僕は「ゲーム制作」をほとんど経験していなかったので、まずは「ゲーム作りがどういうものなのか」という点を学びながら、どんなところでも技術を吸収してやっていこうというスタンスで入社しましたので、特に希望があったわけではありません。
私は個人的にも『ソードアート・オンライン』が好きだったのですが、入社するまでバンダイナムコエンターテインメントさんがパブリッシングし開発業務をWFSが担っていることを知りませんでした。当時はホームページ上でも他社IPに関してはあまり情報を公開していなくて、入社して蓋を開けてみたら「『ソードアート・オンライン』があるじゃん!」と驚きましたし、最初の配属で『ソードアート・オンライン』に関わることができて嬉しかったです。
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©2020 川原 礫/KADOKAWA/SAO-P Project
©Bandai Namco Entertainment Inc.
Developed by WFS
――グリーおよびライトフライヤースタジオの雰囲気についてお聞かせください。どのようなタイプのメンバーが多い企業だと感じていますか。
市川:ライトフライヤースタジオのバリューに「3R」という言葉があります。これは「Respect,Reflect,Retry」という行動規範で、社内には特に「Respect」の部分を持っている人がすごく多いなと感じます。お互いに不遜な態度をとって「人と人の仲が悪くなる」ということが、ライトフライヤースタジオでは起きませんね。
あとは働き方に関しても、良い印象を持っています。うちのチームにはお子さんがいらっしゃる方が多くて「ちょっと子どものお迎えに行ってくるので、夕方から作業抜けますよ」というやりとりも頻繁に起きるのですが、そのようにプライベートを強く尊重する考え方は“良いこと”だと、みんなポジティブに捉えています。だから非常に働きやすい環境かなと個人的には思っていますね。
――ライトフライヤースタジオにはどのような方が向いていると思われますか。
市川:エンジニア目線にはなりますが「何度も繰り返し作っていく」という行為を、妥協せずに最後までやり通せる方ですね。さらには、ちゃんと周りに頼ったり巻き込んだりしながら仕事を回せる人だと、より働きやすいのかなと感じます。
ひとりで黙々とコードを書いて「自分のことは気にしなくて良いから、話しかけないで」というタイプの方はあまりいない印象ですね。
◆“ゲーム業界ならでは”の楽しさと、チャレンジし続けるWFS
――入社して「ゲーム業界で働いている!」と実感した出来事やエピソードについて、お聞かせください。
市川:「ゲーム業界らしいと感じた瞬間」という表現で正しいのかはわかりませんが、周年イベントの企画をバンダイナムコエンターテインメントさんとWFSと共同で検討し、その目玉施策についてエンジニアのメインとして携わらせてもらえたのですが、リリース後にSNSで沢山の反応をいただけてとても驚きました!
すごく遠い所、もしかすると地球の裏側でプレイしている人もいるかもしれないですし、近所の駅のホームで遊んでいる人を見かけるかもしれない。 日本や世界の様々な場所でたくさんの人に触ってもらえるって、スマホゲームならではですよね。
もちろん家庭用ゲーム機でも多くの人に遊んでもらえるのですが、いつでもどこでも遊べるというのはスマホゲームの強みですし、その方たちから多くの反響をいただけたことは「自分はゲームを作っているんだな」と実感できる出来事になりました。
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――やはりSNSでの反応は調べたくなるものなのですね!
市川:自分が作った物がリリースされた時は、エゴサしちゃいます。社内にもSNSでの反応が自動で流れてくるチャットがあるのですけど、 もっとキーワードを絞って深く検索したりしてましたね。そんな中で自分の作業が原因となったバグを見つけると、だいぶショックです(笑)。でもやっぱり「フィードバックをもらうこと」が嬉しいタイプの人間ではあるので、結構見ちゃいます。
それと、僕が入社した時期がコロナ禍のタイミングで、リアルイベントなどが開催されなかったんですよね。最近はCEDECを始めとしたイベントに行って、有名なゲーム会社を見ることで「凄い業界にいるな」と感じられますけど、それはもう本当に最近のことですね。
――CEDECでは他にどんなことを感じられましたか?
市川:CEDECでは、まずそもそも「ゲームを作ってる人ってこんなにいるんだ!」という驚きがありました(笑)。各々がアートを担当されている方なのかエンジニアを担当されている方なのかも全然わからないのですけど、意外と個性的な格好をしてる方が多いことも印象に残りましたね。
――なるほど。コロナ禍での入社ということは、初めの方は出社もあまりなく、オンラインという形だったのですね。
市川:そうですね、オンラインです。今でも僕のチームはリモートワークがメインですが、その代わりに業務中はずっと「雑談部屋」というオンラインミーティングをZoomに立てっぱなしにしてずっと喋っているので、距離を感じることなく仕事ができています。
――「就活生だった頃」「社会人になった今」で、考え方やタスクの進め方は変わりましたか。
市川:これ、実はそんなにないんですよ。強いて言うなら、大学院の時は「深夜遅くまででも、とにかく作業を詰め込む」みたいな開発をしていたんですけど、新卒の頃に「仕事が遅れ気味なので、土日で対応します!」とみんなに言ったら、チームメンバー全員がざわつきました。それでマネージャーに「社会人は土日は休むものなんです!」と指摘をいただいたことがあります。
大学院では研究と、別に参加していたイベント向けの開発を両立させていたから詰め込み気味になっていたのですけど、実は「休むときは休む」というやり方のほうが生産性は高いと思います。業務時間で最高のパフォーマンスを出す、そして終わった後は自分の時間を使うというメリハリがついたことは、学生時代と現在の違いとして挙げられるかもしれないですね。
――もし新卒の頃に戻れるとしたら、どのようなことをしたいと思いますか。
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市川:戻れるとしたら、「コロナ禍じゃない新卒時代」に戻りたいですね(笑)。
“コロナ禍入社組”の当時は、当然ながら入社直後で先輩やチームとの関係性が薄いですし、横の繋がりを直接会って広げることもできなくて、大変でした。どうしてもオンラインでのコミュニケーションがメインになってくると距離を縮めるのに時間がかかってしまうので、
コロナ禍が落ち着いたここ2~3年は、僕も同期や若手社員を見つけて「飲み会やろうぜ」と誘ったりして交流を深めているので、チームの仲間とは良い関係性になれていると思ってます。もしコロナ禍じゃない時に新卒で入社していたら、入社直後から、先輩とのコミュニケーションとか、そういった関係性を大事に育みたいですね。
――ゲーム業界ならではの「こういう仕事が面白い」というポイントを教えてください。
市川:今の新規プロダクトに携わって、特に面白さを感じていることは「ゲームを作るためのツールづくり」という部分にあります。
もちろんゲーム制作のために“短期間でアイデアを形にして遊んで試す”というサイクルは回しているのですけど、新規プロダクトであるため、しばらくお客さんに触ってもらうことはないわけですよ。しかしゲームと違って、開発ツールはゲームを作ってる人たちが扱ってくれるものです。しかも作れば作るほど、その人たちの作業効率が上げられるわけで。
同じチームのメインプログラマーの方が「GREE Tech Conference 2023」で「ゲーム作りとはツールを作ること」と言っているのですけど、これは本当にその通りだなと思っています。
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例えば「背景の上に小物を配置するのを便利にするツール」だとか、プランナーが「マップのこの辺りは山!」と決めたら自動でその地形が出てくるみたいなツールだとか。そういうツールを作ることが、巡り巡ってゲーム作りとして大きく影響するのだなと、「ゲーム作りの面白さ」を感じましたね。
うちのチームはツールを作るのが好きな人でいっぱいで、がんがんUnityの拡張とかを作ってはみんなに共有しています。エンジニア以外の人たちが“ゲームを作りやすい環境”をどんどん作っていくっていうことは、リリース時のクオリティ向上や納期の短縮に繋がっていくんです。
今、その先輩は僕の師匠のような存在で、ずっとお世話になっています。今語ったような「ゲーム作りとはツールを作ること」というような名言をよく言ってくれるんですよ。たまに迷言のほうもありますが(笑)。
――ゲーム業界で働く方には、どのような特徴があると感じていますか? 実際に業界に入ってから、気付かれたこともあるのではないでしょうか。
市川:やっぱりみんなゲーム好きだから「寝ても覚めてもゲームに触れている」ような人がたくさんいる。という面白さを感じますね。 業務とは別にプライベートで個人開発している人もいますし、ひたすらテストプレイした後に新作ゲームをプレイして、公私共にずっとゲーム漬けな人もいてたまに圧倒されますね!
今のプロダクトでも「あのゲームの、あの機能のUIみたいにしたいんだよね~」と言われても、ゲームは知ってるけどさすがに細かな機能のUIまでは頭に浮かばない!とか(笑)。もちろん後から認識合わせて対応するんですけどね。
――「好きなモノを仕事にすること」について、どう考えていますか。
市川:僕は就活する時から「仕事を楽しみたい」と考えていました。エンタメに関わる仕事だからこそ、“作ってる人間がそのエンタメ作りに夢中になれる”ということが大切なので、やっぱり「好きだからこそ深掘りし続けられること」も重要になっていくでしょう。自分はそんなにゲームをプレイするタイプじゃないけど、うちの会社全体を見ても多くの人がゲームを楽しみながら制作に取り組んでいます。
社内にはゲームキャラクターの“動き”が好きで、夜遅くまでモーション談義をする人もいますし、やっぱり「好きなものを仕事にする」ということはすごく大事だと思いますね。熱中し続けられるような、“最後までとことんやれること、楽しめることを仕事にするのがいい”というのが僕の意見ですし、自分の周りの人を見てもそう思えますね。
――今後、ゲーム業界での仕事を通じてチャレンジしていきたいことについてお聞かせください。
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市川:中期的な目標は、現在取り組んでいる新規プロダクトがリリースできて運用フェーズに入った時に、リードエンジニアになることです。もう少し長期的な目線で言うと、さらに新しいタイトルを作ることになった時に僕がいちメンバーではなく、メインプログラマーとしてプロダクトに入れるようにスキルを磨いていきたいですね。
あと、僕は学生時代に夢中になった「ソードアート・オンライン」のようなVRゲームがメジャーになる世界を諦めていません。VR・ARデバイスが普及して、スマホのように当たり前に使われる時代が来た時には、この会社ならそこに向かって新しいコンテンツを作るだろうという信頼があります。
グリーはその時々でチャレンジすべきものにチャレンジしていく会社です。「手を上げれば、その仕事をやらせてくれる」というところが魅力ですね!
目指している目標がある人には、グリーにまず入ってもらいたいです。もしその後に悩んだらゲーム以外にも社内異動できる制度もあったりと、様々な場所でチャンスを掴むことができるので、まずは入社してほしいなと思っています!
――ありがとうございました!
【キャリアクエスト】VR研究からゲーム開発の道へ。就活には会ってみないとわからない“相性”がある!?